イナリの奇妙な冒険   作:狐っ娘の幽波紋使い

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 暗殺チームを丸ごと引き抜いて、しばらくは安全な拠点に避難させた。

 ボスの手がかりもなしに、動き回ることはできない。

 お互いが持っている情報のすり合わせを行い、スピードワゴン財団のデータも照合したりと長丁場になりそうだ。

 なお妾が知っていることは、財団と殆ど同じである。

 

 さらに後日到着する増援の幽波紋(スタンド)使い、ポルナレフとアブドゥルと花京院の三人と電話で連絡を取ったりと、割りと忙しく時間が過ぎていく。

 

 

 

 だがそう簡単に進展はしないため、妾は狐耳と尻尾を隠す変装をする。

 そして年若い観光客として振る舞いながら、もう一つの依頼を果たすべく匂いを追跡していく

 

 少し日が経ったが、ネオポリスを歩き回る。

 やがて新しい痕跡を発見したので、それを追っていった。

 

「……まさか、本当に学生をしておるとはのう」

 

 つくづく学校に縁があるが、ここは日本ではなくイタリアだ。

 もし騒ぎになったら厳重注意では済まないし、下手をすると国際問題になりかねない。

 

 どうしたものかと門の前で足を止めて考えていると、遠くにジョルノを見つける。

 近くに清掃員のおじさんが居てライターに火をつけたが、特に変わったことはない。

 

 そう思っていると、突然そこに第三者が現れる。

 

「あれは! 幽波紋(スタンド)じゃと!?」

 

 どうやら、影の中を歩き回る幽波紋(スタンド)のようだ。

 もはや黙って見ていられる状況ではなく、目にも留まらぬ速さで駆け出した。

 

「お前! 再点火したな!」

 

 ジョルノを無視して階段の掃除をしていたおじさん、その魂を引っ張り出している謎の存在に急接近する。

 

「チャンスをやろう! お前が進むべき! 二つの道を!

 一つは! 生きて選ばれる者への道! さもなくば! 死への道!」

 

 その造形には見覚えがあり、条件反射で口に出す。

 

「あの矢は! まさか!」

 

 謎の幽波紋(スタンド)が口から出している矢は、ボスを放置できない原因の一つだ。

 もし悪用すれば、社会秩序を破壊するが可能な代物である。

 

「お前は再点火をしたのだ! 受けてもらうぞ!」

「やらせんよ!」

 

 そうはさせまいと、敵幽波紋(スタンド)を右ストレートでぶん殴った。

 当然のように吹き飛んだが、影の中に吸い込まれるように姿が消える。

 やがて見えなくなったどころか、匂いも感じ取れない。

 

「キミは! イナリ!?」

「久しぶりじゃのう! じゃが! 話はあとじゃ!」

 

 おじさんは一時的に魂を抜かれて、何とか戻したが気を失ったようだ。

 ジョルノの素行調査の途中だが、今は目の前の敵への対処が最優先である。

 

 妾は先程の現象を分析し、幽波紋(スタンド)能力に見当をつける。

 

「奴は恐らく、影から影に移動する能力!

 魂を強制的に引きずり出して、矢で攻撃してくるぞ! 影に近づくな!」

 

 倒れたおじさんを担いでその場から跳躍し、日向に逃れる。

 ジョルノもすぐに火のついたライターを持って、階段から離れた。

 

 何故そんな物を大事そうに持っているのかは知らないが、気にするのは後回しである。

 そして彼は状況を分析し、大声で叫ぶ。

 

「どうやら日光の中を、追ってはこれないようだ!

 しかし、もうすぐ太陽が校舎の向こう側に沈むぞ!」

「そうなったらもう、逃げ場はなくなるのう」

 

 妾はおじさんを助けたられたので一安心しつつ、安全な場所にそっと横にする。

 

「じゃが、ジョルノよ。さっきは一体何をやっていたんじゃ?

 ライターの火がついたぐらいで大袈裟な」

「まさか! ライターの火をつけるのを見たのか!」

「ああ、見たぞ」

 

 確認を取るということは、余程大事なことらしい。

 そしてこの状況で、ジョルノが取り乱す原因に一つ心当たりがある。

 

 つまりは幽波紋(スタンド)に関係があるのだと察した。

 

「なるほど。あの幽波紋(スタンド)は遠隔自動操縦型じゃな」

 

 妾はいつの間にか出現し、影の中をウロウロしている幽波紋(スタンド)に視線を向ける。

 そして何のことかわからずに、冷や汗をかいているジョルノに説明していく。

 

「距離に左右されずに強い力を発揮でき、ほぼ無限の射程距離。

 他に幽波紋(スタンド)を攻撃しても、本体へのダメージは皆無で耐久力も高い。

 倒されても再発動が容易じゃし、できれば相手にしたくないのう」

「弱点は! 何か弱点はないんですか!」

 

 ジョルノが焦って質問してきたので、妾は落ち着いてそれに答えていく。

 

「弱点は、幽波紋(スタンド)の周囲の情報を、本体は得られぬ。

 行動に融通が利かず、ルールに沿った攻撃が大雑把な攻撃しかできぬ。

 それに本体からの操作を全く受け付けず、任意に呼び戻すことが困難じゃ。

 さらに幽波紋(スタンド)発動中は、本体が無防備になるぐらいじゃな」

 

 この弱点を突けば幽波紋(スタンド)を倒すキッカケになるが、妾は校舎の向こうに沈みかけている太陽を少しだけ眺める。

 次に真っ直ぐ、建物の影に向かって歩いて行く。

 

「何をしているんだあ!? 影に触れると攻撃されるぞ!」

「そうじゃな。奴に攻撃される。じゃが、これでいい」

 

 不敵に笑いながら影を踏む。

 何処からともなく奴が現れ、妾に掴みかかろうとしてくる。

 

「これがいいんじゃよ。ジョルノ・ジョバーナ」

 

 周囲の気流が乱れれば、敵の攻撃を察知できる。

 射程距離こそ短いが、奴の攻撃手段は接近して掴みかかって対象を矢で刺すことだ。

 

 つまり遠距離からではなく、どうしても近接戦闘をしなければいけない。

 妾との相性はとても良いのだ。

 

 ゆえに紙一重で避けて、足元の幽波紋(スタンド)の頭部を勢い良く蹴り飛ばした。

 

「グオオオオーッ!!?」

 

 狙い通りに、周囲に影などない日向に落ちた。

 幽波紋(スタンド)は断末魔をあげ、このまま消滅を待っても良いが悪あがきをされると面倒だ。

 

 殴り倒そうと考えていると、ジョルノ前に出る。

 そして代わりにラッシュで始末をつけてくれた。

 無関係な清掃員を殺そうとしたことが、彼には許せないことらしい。

 

 

 

 その後、彼がギャングスターを目指していることが明らかになる。

 街を支配している組織を、ボスを倒して乗っ取ることで、裏側からより良く変えていくのが夢らしい。

 

 ジョルノは妾を信用して、秘密の計画を教えてくれたようだ。

 だったらこっちも誠意を見せないとと考え、組織の暗殺チームを雇ってボスの正体を追っていることを伝える。

 

 道は違うが目的地は同じなので、いつか何処かで交わることもあるだろう。

 

 なのでもしジョルノに志を同じくする仲間ができて、ボスと戦う覚悟を決めたのなら、その時は手を取り合うことができる。

 

 ただしあまり頻繁に連絡を取り合うと、妾や暗殺チームの存在がバレてしまう。

 

 しばらく距離を取ったほうが良いだろうと判断し、顔の知られてないスピードワゴン財団の職員に、不自然にならない頻度でジョルノとの情報交換を頼む。

 彼の素行調査は、しばらくお休みだ。

 

 それと幽波紋(スタンド)の矢の回収もだが、そちらは融合状態だと本体の死亡と共に消滅して無理そうだと、半分諦めているのだった。

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