イナリの奇妙な冒険   作:狐っ娘の幽波紋使い

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フー・ファイターズ

 懲罰病棟の徐倫に、エルメェス・コステロに会って話をしたことを伝える。

 

 その次の日、農場エリアでの作業中に行方不明になった囚人を捜索するため、ボランティアとして人員を募集することになった。

 

 徐倫に看守の言うような慈悲の心があるかは別として、彼女は立候補してエルメェス・コステロも話をするために同じく手を上げる。

 しかし親機から、50メートル以上離れると爆発する手錠をつけられていた。

 

 この状態でのディスクを探すのは、なかなか難儀だ。

 

 けれど事前に情報を得ており、農場で使っているトラクターにあるはずだった。

 妾は幽波紋(スタンド)を出して、徐倫たちに少し離れて探してくると伝える。

 いつも通りの単独行動だ。

 

 ここは人が少ないので、子狐なら早々見つからない。

 それに二人が一緒に居れば、身を守りやすい。

 

 腕の爆弾は怖いが、新手の幽波紋(スタンド)使いよりはマシだ。

 安心して捜索できるというわけだ。

 

(あの倉庫が怪しいのう)

 

 遠くにある大きな倉庫に当たりをつける。

 人間たちに見つからないようにトコトコ歩いて行く。

 うっかりやらすこともあるけれど、もう決して油断はしない。

 

 承太郎の再起不能で十分に懲りたし、平和ボケしていた気持ちを引き締める。

 

 人が来る前に、入り口の扉を嵐の狐(ストーム・フォックス)で少しだけ開けた。

 小さな体をするりと潜り込ませる。

 

(トラクターと小麦粉か。あのタイヤの中に、ディスクがあるかも知れぬな)

 

 だが妾の後ろから囚人が早足でやって来て、彼女も扉を開けて倉庫に入ろうとする。

 これではディスクを探すどころではないが、ある意味では都合が良い状況と言えた。

 

 なので五人のはずなのに途中で加わった六人目、バンダナを巻いた褐色の女性が入ってくるのを隠れて待つ。

 

「ディスクに近づく者は、誰であろうと始末する!」

 

 彼か彼女かはわからない。

 死体を乗っ取っている寄生タイプの幽波紋(スタンド)使いは、倉庫の中を探し始める。

 先に潜り込んで隠れたので、まだ見つかっていないようだ。

 

(しかし、どうしたものやら)

 

 途中で紛れ込んできたので、このまま隠れていても立ち去る保証はない。

 普段なら問答無用で一方的にボコボコにするが、ここは刑務所だ。

 

 ジョンガリ・Aやホワイトスネイクのように明らかに敵対していなければ、なるべくなら騒ぎを起こさずに穏便に済ませたい。

 

 妾は嵐の狐(ストーム・フォックス)を出して、風を操作して位置を特定されないように声を送る。

 

「まあ待て。とにかく話し合おう」

「何者だ! 何処に隠れている! それに、話だと!」

 

 女囚人は警戒して周囲を見回しながらも、手当たり次第に暴れたりはしないようだ。

 相変わらず妾を排除する姿勢は変わっていないが、取りあえず話は聞いてくれるらしい。

 

「妾は、ホワイトスネイクが友人から奪ったディスクを取り戻したいだけじゃ。

 抜き取られたままでは、そう遠くないうちに死んでしまうからのう」

「私とそのことが、何の関係がある!」

 

 良心というのものを持ち合わせていないのか、取り付く島もない。

 

「私に知性と力を授けてくれた恩に報いるため! ディスクは守らねばならん!

 それは、私という存在の証明でもある!」

 

 見上げた忠誠心だと思いはしたが、すぐに違うと否定する。

 彼にとってはディスクを守ることが、自分が今ここで生きている理由になっているのだ。

 

 どうしてそうなっているのかは良くわからないけれど、交渉が決裂したなら仕方ない。

 

 まだ他に人が来るには、少し時間がある。

 妾は嵐の狐(ストーム・フォックス)で狐っ娘に変身し、新手の幽波紋(スタンド)使いの前に出る。

 

「やはり私と同じ! 人外の幽波紋(スタンド)使いか!」

「やはりその体は借り物か。妾とは、ちいと違うのう」

 

 妾は幽波紋(スタンド)を人間そっくりに変えているが、彼は生命活動が停止した死体を利用している。

 何処まで擬態できるかは知らないし、彼女が第一の犠牲者かも不明だ。

 

 とにかく、放っておくわけにもいかない。

 

「ここは先輩として、お灸をすえてやらねばのう」

「このフー・ファイターズに勝つつもりか!

 私は知性だけでなく! 実力も、お前よりも上だ!」

 

 何を根拠に言っているのかは不明だが、彼女は突然指先を水道の蛇口に向けた。

 そして黒い水を撃ち出して破壊して、溢れ出た水を床に撒き散らす。

 

 する水溜りから無数の触手が生え、妾に向かって勢い良く伸びてくる。

 

嵐の狐(ストーム・フォックス)!」

「何ィーッ!?」

 

 イマジナリーフレンド的に影響を及ぼさない幻が出現し、迫りくる触手を風の刃で一本残らず切断して吹き飛ばす。

 

 射程距離は短いが全方位に対応できるため、危な気なく処理しきる。

 

「さて、まだ続けるか?

 お前の幽波紋(スタンド)は水、妾は風じゃ。

 地の利は得たようじゃが、ここからどうやって逆転する?」

 

 妾はそう言って、足元の水溜りに風を吹かせる。

 一滴残らず、湿地帯まで飛ばしてしまう。

 

 蛇口が壊れているのですぐに補充されるが、ならば何度でも散らせば良いという脳筋的な発想である。

 

 前世では増援が出なくなるまで倒し続けることが良くあったし、このぐらいどうってことはない。

 

「妾は人に見られると困るが、その前にお前を吹き飛ばせば勝ちじゃ」

 

 そんなことをする気はないが、彼女は妾のことを知らなかった。

 なので、なるべく命を大事にしていることも知らないため、今は焦りながら考えているようだ。

 

「先程も言った通り、妾はホワイトスネイクに奪われた友人のディスクを取り戻したいだけじゃ」

 

 しかし、あまり時間をかける気もない。

 妾は大きな溜息を吐いて続きを話していく。

 

「それ以外にも殺人を止めてもらうし、奴にディスクを渡すのもなしじゃ。

 あとはお前の好きにして構わんよ」

 

 あまりにも目に余るようなら口を出すけれど、スピードワゴン財団や徐倫たちと情報を共有すれば早々問題は起きないだろう。

 何にせよ彼女の返事次第なので、黙ってしばらく待つ。

 

「……わかった。お前の気持ち、何だか良く理解はできないが、もう戦う気がしない。

 そして、私の負けだ。……完璧に」

 

 どう足掻いても勝ち目がないのを本能的に理解したのか、彼女は思ったよりもあっさり降参した。

 実力差を肌で感じ取ったのか、戦う理由がなくなったのかは知らないけれど、とにかくもう悪さはしないということだ。

 それに承太郎のディスクを探して、幽波紋(スタンド)のほうだけを回収できた。

 

 しかし、フー・ファイターズ。エフエフに話を聞くと、ホワイトスネイクはこの場所に滅多に来ずに本体も知らない。

 記憶のディスクについてもさっぱりらしく、ここにあるのは使えない物とのことだ。

 

 いくら強力な幽波紋(スタンド)ディスクでも、素質が合わなければ弾き飛ばされてしまう。

 妾は星の白金(スタープラチナ)を普通に使えたけれど、自分の幽波紋(スタンド)にする気はないので、すぐに排出した。

 

 

 

 もちろん徐倫たちと情報共有を行い、エフエフのことを紹介して色々話をする。

 気が合うのか新しく仲間になった。

 そして今後は囚人として、一緒に過ごすことになる。

 

 別にそれは構わないし、味方の幽波紋(スタンド)使いが増えるのは大歓迎である。

 なので妾はその間に、夜になったら空を飛んで最寄りのスピードワゴン財団に向かう。

 

 そして承太郎のディスクを届けて、応接室で紅茶でも飲みながら簡単に事情を説明する。

 だがゆっくりしている時間はないので、同じようにすっ飛んで日帰りで刑務所に戻ってくるのだった。

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