イナリの奇妙な冒険 作:狐っ娘の幽波紋使い
そんなある日、徐倫とエフエフがキャッチボールしていると、突然現れた女囚人が賭けを提案してきた。
100回続くか続かないかの勝負だ。
口癖に聞き覚えがあるし、コイツ絶対
直感とかそういうのは関係なく、バレバレである。
なので、人気のない場所で
100回続けて賭けに勝ったが、彼女はまだ続けようとしている。
「もう100回は続かないほうに、1000ドル。
聞こえなかった? 1000ドル賭けようって言ったのよ」
どう考えてもまともではない、ギャンブル狂いだ。
妾は物陰に身を潜めて、姿は一切見せずに話しかけた。
「これ以上、賭けるでないぞ! 其奴は新手の
「何だって!?」
エルメェス・コステロが声を出して妾を探すが、隠れているので見つからない。
しかしミラションも周囲を見回している。
これで彼女が
狐っ娘になれば一般人にも姿が見えて声も聞こえるが、
「妾の
何故他に人が大勢居る中で、迷うことなく徐倫たちを賭けに誘ったのか!
わざわざ口に出さずとも、誰でもわかるわ!」
「……くっ!?」
動揺して一歩下がったミラションだが、徐倫たちは逃がす気はない。
素早く周りを囲んだけど、当たり前だが他の囚人には自分の声は聞こえていないのだ。
なのでこっちのことを全く気にすることなく、自由時間を楽しんでいた。
「
過去に戦った者は賭けで魂を奪っておったし、何にせよろくなことにはならん」
妾が倒して魂を解放したが、場合によっては全滅もあり得る。
それほど強力な
「それで対処法は?」
徐倫が尋ねてきたので、はっきりと答える。
「賭けに負ければ、どれだけ強力な
じゃから、賭けに応じなければ良いのじゃ」
特殊なルールを守らせる
だが条件を満たさない外からの攻撃には、非常に弱い。
「特殊な条件を満たさねば、発動せぬ
ようは、使わせなければ良いのじゃ。その前に殴り倒せ」
「ありがとう。参考になったわ」
条件を満たせば格上にも勝てる
しかし徐倫は、さらに詳しく尋ねてくる。
「もう一つ聞きたいんだけど、その賭けって公平?」
「イカサマをしたり、心を読む者もおる。
じゃがこと勝敗に関しては、間違いなく公平じゃったぞ」
賭けはイカサマや不正だらけでも、取り立ては真っ当だった
なので妾が勝利したら、敵はそのまま再起不能になったのだ。
徐倫はそれを聞いて少しだけ考えて、青い顔をしているミラションに声をかける。
「ミラション! キャッチボールが1000回続くか! 1000ドル賭けるわ!」
「徐倫よ。人の話を聞いておったのか?」
妾はやれやれと呆れながら口を出すが、徐倫は止める気はないようだ。
「もちろん聞いていたわ! だからこそ、賭けるのよ!」
「はあ、頑固さは父譲りじゃのう」
まあ妾も、賭けは別に嫌いではない。
過去の
恐らく徐倫には、何か考えがあるんだろう。
しかし場数を踏んでいないミラションは、そのことに全く気づかない。
中途半端に力を得てしまったせいで、自分が仕込んだ罠や
確かに強力で、ルールさえ守れば格上にも勝てる。
だが穴がないとは、絶対に言えないのだ。
なので結局、彼女はその場でストーンフリーで固定された野球ボールを、全身に1000回も当てられてしまう。
自業自得ではあるが1000ドルを強制的に取り立てられ、そのまま再起不能になって医療監房に送られる。
現場を看守や囚人が見ていなくて良かったが、最終的には大騒ぎになってしまうのだった。
そして徐倫は二人を庇って罪を被り、厳正懲罰隔離房に行くことになる。
逃げられる可能性があったし、倒す以外の選択肢もなかった。
しかし行動が脳筋すぎて一体誰に似たのやらと、妾はやれやれとため息を吐く。
おまけに新手の
どうやら自分の存在だけ、消すこともできるようだ。
奴のほうが一枚上手で、厄介な敵だということが改めてわかったのだった。
それからは三人がバラバラに行動するようになる。
妾はあっちに行ったりこっちに行ったりと大忙しだ。
まず徐倫は、厳正懲罰隔離房で牢獄生活がしばらく続く。
エフエフはそんな彼女の身を案じてエンポリオの居る秘密の部屋に行き、ウェス・ブルーマリンとナルシソ・アナスイに協力を頼むようだ。
次にエルメェス・コステロは、刑務所に服役中の姉の仇を見つけた。
最近は、ずっと彼を付け回している。
どうにも嫌な予感がするし、新手の
そして妾はと言うと、今は音楽室の楽器の裏で息を潜めている。
最近ずっと妾たちの周囲を嗅ぎ回っている男がいるのだ。
それは文字通りで、獣のように匂いを嗅いでいるため、どう考えても怪しい。
まだ攻撃されてはいないけれど、新手の
肝心なところで邪魔される前に、確認次第ぶっ飛ばしておくべきだろう。
(本当に
誰に聞かせるわけでもなく、内心で愚痴をこぼす。
そのまましばらく待っていると、一人の男が四つん這いで匂いをかぎながら音楽室に入ってきた。
妾はバレないように
「何か捜し物かのう?」
明らかに彼の体が跳ねて、慌てて周囲を見回し始める。
奴も嗅覚が鋭いようで、すぐに妾が隠れている場所を見つけ出す。
だが奴がこっちの正体を突き止める前に、続きを話していく。
「当ててやろうか? ホワイトスネイクの計画を邪魔する者を、探し出して始末する。
それがお前に与えられ任務じゃろう?」
妾が抹殺対象に含まれているかは不明で、この場合は徐倫とエルメェスとエフエフ、あとは幽霊部屋の三人も念のためにといったところだろう。
しかし、まだ話の途中なのに四つん這いの男はこちらに背を向けた。
一目散に音楽室の外に逃げ出そうとする。
「逃がしはせぬ!」
そしてネタバラシをされたら、即逃げ出した。
恐らく、ホワイトスネイクから妾のことを聞いているのだろう。
こんな独特な喋り方をする者はそうはいないので、特定は容易だ。
とにかく部屋の外に向かっていた彼を突風で強引に押し戻し、妾の元に引き寄せた。
「お前には、色々と聞きたことが──」
空を飛んでこちらに近づいてくる男に話しかけると、向こうも
「お前との戦いは避けたかったが! ジャンピン・ジャック・フラッシュ!」
やはり敵だったようで、人型の
さらには唾までは飛ばしてきた。
こっちもバレているなら隠す必要はない。
音楽室に居るのは妾と奴だけだ。
すぐに狐っ娘に変身して一旦引き寄せを解除し、隠れている楽器を壊さないように風の盾を展開する。
戦いの勘が、あの唾に触れるのだけは何としても避けるべきと警告していた。
攻撃の軌道を変えて、跳躍して距離を取る。
さらに両手足を天井に吸着して敵と対峙した。
「ちいっ! そんなこともできるのか!
やはり俺の
奴の
妾も決着がつくまで気を抜く気はない。
再び逃走に移ろうとしたので天井を蹴って距離を詰め、勢いままに飛び膝蹴りをぶちかました。
「のじゃあッ!」
「げうううッ!?」
妾と同じ近距離パワー型のようだが、強制的に真っ向勝負に持ち込んだ。
ここからは純粋な力比べだ。
そして当然のように
ご機嫌なBGMまで流れ始めた。
「のじゃのじゃのじゃのじゃあッ!!!」
敵も何で音楽が流れているのは知らないだろう。実際、妾もさっぱりだ。
とにかく全身の骨という骨が砕けて絶叫が響き渡っているので、それどころではない。
最後に力強い一撃を叩き込んで吹き飛ばすと、ちょうどその場所に大きめサイズのゴミ箱が置かれていた。
今回も頭からホールインワンする。
BGMはキリの良いところでピタリと止まった。
そしてどうせこの男もホワイトスネイクの情報は持ってないだろうが、念のためにディスクの回収や確認をさせてもらう。
予想通りだったことに溜息を吐き、
あとは大騒ぎしたので、人が来る前にその場を急ぎ立ち去る。
名前も知らない彼には、当分医療監房で過ごしてもらうのだった。