イナリの奇妙な冒険   作:狐っ娘の幽波紋使い

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気化冷凍法

 因縁の相手であるディオが現れた。

 村の少年であるポコはジョジョが背中に担いでいて、ツェペリ男爵と一緒に迫りくるゾンビを蹴散らしながら、目標に近づいていく。

 

 太陽の光がなくても、波紋を流せば倒せるのだ。

 仙道の修行をした、妾たちの敵ではない。

 

 数だけは多いがポコからの称賛の声を浴びながら、少しずつディオとの距離を詰める。

 

「図に乗るなよ! たかが虫けらが! 俺は生物界の頂点!」

 

 やはり完全に調子に乗っている。

 圧倒的な悪意を放って、ツェペリ男爵とジョジョを怯ませた。

 

「未来を開く、新しい生物となった! 人間ごときと、対等の地に降りていけるか!」

 

 妾は涼しい顔だが、脳筋的な思考をしている。

 心の内ではボコボコにしてわからせねばと使命感を抱いていた。

 

「この腹の傷を癒やせば、貴様らにつけられた負傷は全て完治する!」

 

 あれはきっと、妾が貫いた腹の傷だ。

 そしてどうやらディオはツェペリ男爵がご指名のようで、ビシッと指差している。

 

「貴様、一体何人の命を、その傷のために吸い取った!」

 

 ジョナサンはそんな彼に苛立ちながら大声で呼びかけると、すぐに答えが返ってくる。

 

「お前は、今まで食ったパンの枚数を覚えているのか?」

「ディオーーッ!!!」

 

 とんでもないことを言い出した。

 そしてツェペリ男爵も対決に応じるようだ。

 手出しは無用だと妾たちに告げて、引き続き無限湧きのようなゾンビの処理を任せる。

 

 何にせよディオに接近して波紋を流し込めば倒せるのだ。

 問題なく勝てると思っていたのに、どういう理由か途中で止まってしまった。

 

「貧弱貧弱ゥーッ!!!」

 

 波紋を流したはずのディオの腕が凍りついている。

 さらに今度は逆に、ツェペリ男爵まで凍らせようとしてきた。

 

「こっ、凍っている! これは!? うわああああーッ!!!」

 

 このままでは不味いと判断した妾は、手出し無用だと言われたが落ちている小石を口に咥える。

 そして波紋を流しながら、ディオに向けて勢い良くぶん投げた。

 

「鬱陶しいぞッ! イナリーッ!」

 

 いつの間にか、狐からイナリに呼び名がランクアップしていた。

 これっぽっちも嬉しくないのだが、ディオは波紋入りの小石も凍らされて無効化される。

 

 ちょっと悔しいけれど、どうやら血管ごと凍らせることで波紋エネルギーを遮断する仕組みらしい。

 水分を気化させることで温度を下げて瞬間冷凍するなど、とんでもない技を編み出したものだ。

 

 

 

 それでも妾が小石を投げつけたことで、ジョジョが駆けつけるまでの時間をほんの少しだけ稼げた。

 本当に間一髪でツェペリ男爵に振るわれた拳を防いだものの、二人がかりでも波紋エネルギーが途中で遮断されてしまう。

 

「水分気化による冷凍によって、お前らの血液は腕を流れん!

 したがって波紋エネルギーも、流れ出てこんと言っただろうが!」

 

 二人なら腕が瞬時に凍結することもなかったが、ジリジリ押されている。

 ジョジョの腕も凍って砕けるのも時間の問題であり、非常に不味い状況だ。

 

 しかし、この気化冷凍法でディオの底は見えた。

 崖下のゾンビたちを、地面に大津波のように波紋を流してまとめて倒す。

 

 これで邪魔をされることもなくなったので、妾は少し送れたがディオとの戦いに参戦する。

 ヒラリとジョナサンの肩に乗って、不敵な笑みを浮かべた。

 

「貴様ッ!? イナリ! いつの間に!?

 まさか! 俺の兵士たちを!?」

 

 妾の波紋エネルギーは、人間の比ではないほど強大だ。

 全力を出すと色々ヤバそうなので本気は出したことはないし、小さな子狐になんでそんな超パワーがと疑問には思う。

 

 しかし、それも今だけは感謝したい。

 妾が大声で叫びながら波紋を流し込むとジョジョの腕を瞬時に癒やし、さらにディオの凍った腕を高熱で溶かしながら強引に広がっていく。

 

「のじゃあっ!!!」

「があああああっ!!?」

 

 しかし敵もただでは殺られるつもりはないのか、すぐに自ら腕を切断して強引に波紋を止める。

 だが全身が崩壊しかけているので、バランスを崩して叫びながら崖の下に落ちていく。

 

「うげえええっ!!? おっ、おっおっ!? 俺の体が溶けていくっ!?

 がああああ!!! この激痛! この熱さ!

 何世紀も未来! 永久へ! 生きるはずの! このディオがあああ!!!」

 

 最後の悪あがきに、体液を収束して放ってカッターのように切り裂いてきた。

 無理な姿勢からの攻撃だったからか、狙いが外れて無傷で済んだ。

 

 それはそれとして、ジョジョは色々と思うところがあるらしい。

 悪人とは言え兄弟同然に育ったので、悲しみの涙を流してディオとの最後の別れを惜しむのだった。

 

 

 

 

 

 

 崖の下に落ちたディオの痕跡は、何も残っていなかった。

 放っておけば数分保たずに崩壊するので、死亡したあとは風で灰が飛ばされたのだだろう。

 

 何にせよあの状態から復活するのは流石に無理だ。

 妾が最後に見たとき、頭部以外は殆ど崩壊していた。

 たとえあの場を逃れても、長くは生きられないだろう。

 

 

 

 それに、ディオばかり構ってはいられない。

 他にも早急にやらなければいけないことが残っている。

 ウインドナイツロットは、まだ多くのゾンビが潜伏しているのだ。

 

 統率者を失っても死ぬわけではなく、今度は無秩序な集団として暴れまわる。

 もし何処かに逃げ出すか被害が拡大したら、目も当てられたないのだった。

 

 

 

 その途中で、ジョジョが鎖に繋がれて大男と対峙する。

 ツェペリ男爵が思わせぶりなことを呟くが、妾は悠長に聞いている暇はないので、速攻で鉄の扉をぶっ壊した。

 勢いのままに部屋に雪崩込んで、敵に直接波紋を流して消し去る。

 

 だがジョジョは少なくないダメージを受けていたため、深仙脈疾走(ディーパスオーバードライブ)で妾の生命力を分け与えて治癒する。

 

 この技は仙道の中ではもっとも消耗が激しくて疲れるので、あまりやりたくない。

 だが負傷状態で連れ回したり、放置するわけにはいかないので仕方なかった。

 

 とは言え生命エネルギーを海の水に例えると、一人分減ったところで大した負担にはならないため、あくまでほんのちょっとだ。

 

 

 

 そして妾がジョナサンを癒やしている光景を見て、師匠ポジのツェペリ男爵が困惑していた。

 倒せたし皆が無事だし良いじゃんと思いはしても、何か少々腑に落ちない顔をして、真面目な表情で口を開く。

 

「ひょっとしてイナリは、運命を覆せるのかも知れん」

「どういうことですか?」

「コン?」

 

 傷が癒えて鎖を外して自由になったジョジョと、峠を越えて安堵した妾は首を傾げる。

 するとツェペリ男爵は、隠すことなく教えてくれた。

 

「私は師匠より、自らの死について予言された。

 それが今だと思ったのだが、どうやら違ったようだ」

「そいつがイナリと何の関係があるんだ?

 予言ってだけで嘘臭えがよお。実はまだ、ずっと先だってこともあるぜ?」

 

 スピードワゴンのもっともな指摘を受けて、ツェペリ男爵は少しだけ考える。

 

「そうかも知れん。私も、明確に時と場所を伝えられたわけではないからな」

 

 次に深仙脈疾走(ディーパスオーバードライブ)で、無駄に全身に力が漲っているジョナサンが質問する。

 

「では、運命を覆せるとは?」

 

 ポコのお姉さんは捕まったままなので、取りあえず移動しながら話を進めることになる。ゾンビも全滅させていないのだ。

 

 そしてジョジョの質問に、ツェペリ男爵は率直に答える。

 

「この世にはあらかじめ定められた運命があり、人は決して逃れられん。

 私の師匠の予言は本物で、過去にも多くの者の運命を言い当ててきた。

 外したことは一度もない。……しかしイナリ。キミは例外のようだね」

 

 本物の占い師には興味があるし、妾も含めて殆どの人が己の未来など知る由もない。

 ゆえに気にしすぎると生き難くなるし、そんなもんだと話半分に納得しておく。

 

 妾は他の次元から来た影響かなと考えつつ、今はゾンビ退治に集中するのだった。

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