ガンダムSEED 〜守るための戦い〜   作:てこの原理こそ最強

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第十三話

 

 

静かな夜。月明かりに照らされ、見渡す限りの砂...アークエンジェルが降り立ったのは砂漠だった

 

「アラスカはここ。そんで俺達が降りたのは...やだねぇ。見事にザフトの勢力圏内だ」

 

「仕方ありません。あのままノワールを見放すわけにはいきませんでしたから...」

 

ノワールと離れ離れにならずに済んだはいいものの、当初の降下地点よりもだいぶ離れた場所かつ敵の勢力圏内に降り立ってしまって頭を悩ますマリュー

 

「ともかく、我々の目的は変わりません」

 

「大丈夫か?」

 

「えぇ」

 

「ならいいが。じゃあ俺はあいつの様子見て寝るわ。あんたもいい加減寝ろよ?艦長がそんなくたくたのボロボロじゃあどうにもならないぜ」

 

ムウは艦長室を出てレオが未だ目を覚まさないでいる救護室に向かった

 

「あんな環境の中で戦ってたんだから無理もないでしょ。内臓にも問題はないし他の数値も正常に戻ってる」

 

「でも!」

 

「俺だってコーディネイターを診たことなんてないけど、彼らって元々俺達よりも身体能力とか体の作り自体が違うんだから。そんな心配しなくともそのうち目を覚ますって」

 

「そんな...」

 

「見た目は同じだろうけど中身は全然違うんだろ?遥かに力を持てる肉体と遥かに知力が得られる頭脳。死ぬような病気にはならないし抵抗力は高い。そりゃ撃たれれば死ぬし熱を出すこともあるだろうけど、俺達に比べたらそのリスクは遥かに低いんだから」

 

医者からそう説明を受けるも集まったキラや戦闘配備が解除されてからつきっきりでレオのことを看ているミリアリア達は心配を隠せない

 

「戦闘中のコックピット内の温度、体験した君ならわかるんじゃないか?」

 

「...」

 

「俺達じゃきっと助からなかっただろうよ」

 

『フラガだ。入るぞ』

 

ここでムウが到着した

 

「どうかしたのか?」

 

「い、いえ!」

 

「そうか。どうだ様子は?」

 

「彼らにも話したんですが...」

 

医者はキラ達にした説明をそのままではなく言葉を濁して伝えた。未だレオは目覚めないまま...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...」

 

夜も明け日が昇った。それと同時にレオにも意識が戻る

 

「知っているようで知らない天井だな...」

 

目の覚めたレオの目に映るのは天井にカーテン、そして自分に繋がれているであろう点滴。そして視線を落とせば足元でベッドを枕に眠っているミリアリアの姿

 

「地上か...ということは砂漠なのだろうな」

 

「ん...」

 

独り言が思いのほか大きかったのかミリアリアが起きてしまった

 

「レ、オ...」

 

「おはようミリアリア。すまないが今どう...「バカ!!!」ぐえっ!」

 

レオが目を覚ましたことに気づいたミリアリアは涙を流しながら枕でレオを叩きまくる

 

「どれだけ心配したと思ってんのよ!このバカ!!」

 

「ちょっ!ミリアリア!俺病人!!」

 

「うっさい!ずっと眠ったままで目を覚ましたと思ったらなんなのよ!!」

 

「おい!まず落ち着けって!!」

 

「ッ!?おいミリィ!」

 

そこへタイミングよくトールが入室。急いでミリアリアを止めに入る

 

「なにやってんだ!落ち着け!」

 

「だってこのバカがー!!」

 

「おいレオ!お前なにやったんだよ!」

 

「なんもやってない」

 

ミリアリアはトールに抑えつけられるもまだ気は収まらないらしくバタバタと暴れている

 

「とりあえず落ち着かせてくっからお前はもう少し大人しくしとけ!」

 

「あぁ」

 

「離してよトール!」

 

「いいから行くぞ!」

 

ミリアリアはトールに連れられ救護室を出た。レオはそれを確認して深いため息をつく

 

「はぁ...まさかね...」

 

起きたてなのにもう疲れてしまったレオはもう一眠りすることにした

 

 

 

 

そして一時間ぐらいした後、レオは部屋の扉が開くおとで目が覚めた

 

「目が覚めたみたいだな坊主」

 

「フラガ大尉?えぇ先ほど」

 

「それはよかったわ」

 

そこにはマリューにムウ、キラ達もいた

 

「ともかく目が覚めて本当によかった」

 

「ありがとうございます艦長」

 

「体の具合はどう?」

 

「特に痛みなどはないです。ご心配おかけしました」

 

「そう」

 

医師から意識を失っている最中もレオに体の異常はないという報告を受けていたのだが、こうして直接確認ができてほっとするマリュー

 

「まったくどうなってんだろうねお前も」

 

「も?」

 

「キラもだがな。普通単体で大気圏突入なんて...想像するだけで体が焼けこげちまう」

 

「ともかく今は安静に」

 

「わかりました。重ね重ねありがとうございます艦長」

 

目を覚ましたことを確認したかっただけなのかマリューとムウはすぐに部屋を出ていった

 

「レオくん」

 

「お互い無事だったみたいだなキラ」

 

「うん。なんであんなことを...」

 

キラは大気圏突入前にレオがしたことに対して静かにだが珍しく怒っていた

 

「あんなこと?あぁ。どちらかが助からないよりはいいと思ったんだ」

 

「でもそれなら...!」

 

「ノワールは単体でも大気圏突入可能なのはわかっていた。でも結局気を失って気づいたらこの様だけどな」

 

「...」

 

キラはレオにツラい思いをさせてからか自分が無力だったからか悔しさで拳を握り締める。それに気づいたレオは体を起こした

 

「おい。起きて大丈夫なのか?」

 

「心配するなサイ。痛みはないって言ったろ?」

 

「だが...」

 

サイがまだ起きたてで体を動かすことを心配することとは裏腹にレオはいつも通りの感覚で体を起こす

 

「なぁキラ。俺はお前を助けようとした。だが俺自身死ぬつもりは毛頭なかった」

 

「レオくん...」

 

「まぁ結局気失ってちゃ説得力もないとは思うが」

 

「でも僕は...」

 

「なら次はお前が俺を助けてくれ」

 

「え...」

 

「俺もいつかピンチになる時が来るかもしれない。そのときは助けてくれ」

 

「...。わかった。約束する。今度は僕がレオくんを助ける!」

 

「あぁ」

 

今回助けてくれたレオの対して今度は自分がと強く決意したキラ

 

「みんなにも心配かけたみたいだな」

 

「お前ってやつは」

 

「マジで心配したんだかんな!?」

 

「でも無事に目が覚めてよかったよ」

 

サイもトールも、カズイもレオを心配していたようだ

 

「...」

 

「フレイ?」

 

キラの側にいたフレイがレオの目の前にしゃがみレオの胸を軽く殴った

 

「これはキラ達を心配させた分...」

 

「それは甘んじて受けよう」

 

「私も心配したんだから...」

 

「それは意外だな。でもありがとう」

 

フレイはレオと顔を合わせようとしないが、心はキラ達と一緒だったようだ

 

「じゃあ俺ら行くわ」

 

「交代だし」

 

「おう」

 

「あ、まだ終わりと思うなよ?」

 

「は?」

 

「これからはミリアリアからのお説教が残ってんだから」

 

「えっ」

 

そういえばミリアリアの姿が部屋にないことをここで気づいた

 

「あんま人の彼女拘束すんなよな...」

 

「それは俺が悪いのか?」

 

「うっせぇ!ミリィ怒ったらマジ大変だかんな!覚悟しろよ!?」

 

「そうなのか。なぁキラ...」

 

「じゃあレオくん。僕達も行くから」

 

「薄情者...」

 

「甘んじて受けるべきよ。あの子が一番アンタのこと心配してたんだから」

 

「ウッ...」

 

キラにも見捨てられレオは覚悟を決めるしかないと心に決める。そしてサイ達と入れ替わるようにミリアリアが入室した

 

「...」

 

先ほどのように怒鳴るわけでもない。静かに俯きながら入ってきた

 

「あの...ミリアリア、さん...?」

 

「すごく、心配した...」

 

「あ、あぁ...」

 

「あんな通信の終わり方されて...呼んでも返事がなくて...」

 

「...」

 

「いなくなっちゃうんじゃないかって...もう会えないんじゃないかって...」

 

「...」

 

「帰ってきても目を覚まさなくって...このまま起きないんじゃないかって...」

 

ミリアリアは未だ顔を上げず…しかし体はプルプルと震えている

 

「すまなかった」

 

レオは謝罪を一言。その瞬間ミリアリアをレオを押し倒した

 

「う...うっ...あぁぁぁぁ!!!!」

 

ミリアリアはレオの上で大声で泣いた。レオはその鳴き声を聞いて本当に心配をかけてしまったと反省した

 

 

 

 

ミリアリアが泣き止み始めたのは1分後か2分後か。はたまた5分経っていたか。その間レオは罪悪感に見舞われたため時間感覚が変になっていた

 

「ずびっ...」

 

「大丈夫か?」

 

「なんで...」

 

「え?」

 

「なんで、頭撫でたりとしないのよ...」

 

「え...いや、だってなぁ...」

 

「意気地なし...」

 

「勘弁してくれ...この状況だけでもヤバいってのに...」

 

「根性なし...」

 

「その言葉は響くな...」

 

「もう少しこのままがいい」

 

「えぇ...」

 

「なんか、安心する...」

 

「さ、さようで...」

 

その後もレオからミリアリアに触れることは一切なかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アークエンジェルが地球に降り立って2度目の夜がやってきた。砂漠から移動していないアークエンジェルを遠くから見ている目が2つほどあった

 

内1つ大勢の兵士を連れている彼は双眼鏡で砂漠の真ん中でひっそりとしているアークエンジェルを観察していた

 

「どうかな?噂の大天使の様子は」

 

「はっ!以前なんの動きもありません!」

 

「地上はNジャマーの影響で電波状況が最悪だからな。彼女は未だすやすやとおねんね中ってわけか。んっ!」

 

「なにか!?」

 

「いや、今回はモカマタリの量を少し減らしてみたんだがね?これはいいな」

 

アンドリュー・バルドフェルド。彼が今趣味で自作しているコーヒーを嗜みながらアークエンジェルを見ている1人。通称<砂漠の虎>という異名を持ちザフト軍地上部隊のアフリカ方面の指揮官である

 

彼は自分の管轄内に敵地球軍の新型艦が地球に降りてきたと報告を受けて軍を率いて偵察にやってきていた

 

「ではこれより地球軍新造艦への作戦を開始する。目的は敵艦及び搭載モビルスーツの戦力評価である」

 

「倒してはいけないのでありますか?」

 

『ははは!』

 

兵士の1人の発言に周りの連中も軽く笑い出す。その笑い方はまるでアークエンジェルのことを見下しているような、そんな笑い方だった

 

「ん〜、その時はその時だが...あれは遂にクルーゼ隊が仕留められずハルバートンの第8艦隊がその身を犠牲にしようとしてまでも降ろした艦だぞ?それを忘れるな?では諸君の健闘を祈る」

 

「総員搭乗!」

 

司令官であるバルトフェルドの指令を受け敬礼で返す部下達。そしてそれぞれモビルスーツや戦闘ヘリに搭乗した

 

「さぁ、戦争をしに行くぞ」

 

 

 

 

 

そしてアークエンジェルを見ているもう一方の視線。多くのバギーが列をなし、来ている服などから軍人というわけではなさそうだった

 

「図面でしか見ていないが間違いないだろう。あれがヘリオポリスで建造された地球軍の新型強襲機動特装艦、アークエンジェルだ」

 

地球軍でもザフトでもない。言うなれば地元の人々のような格好をしている集団。その中で金髪の少女はアークエンジェルのことを知っているようだった

 

「サイーブ!」

 

「どうした!」

 

「虎が動くってよ!」

 

「ッ!」

 

「やはり動くか...」

 

彼らが言う虎というのは砂漠の虎、ザフト軍司令官のアンドリュー・バルトフェルドのことを指す。アークエンジェルのことだけではなくザフトのことまで知っているとは、彼らは一体何者なのか...

 

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