ガンダムSEED 〜守るための戦い〜 作:てこの原理こそ最強
一悶着あったが一旦場所を変えてアークエンジェルはサイーブ達の拠点に案内された
到着してからレオとキラにアークエンジェルの偽装をお願いしてマリュー、ナタル、ムウのいつもの3人が拠点の奥へ入った。そこには普通のレジスタンスとは思えないほどのまるで軍の拠点のような設備が整っていた
「こんなところに住んでるのかい?」
「ここは前線基地だ。家は皆街にある。まだ焼かれてなければな...」
「街?」
「タッシル、ムーラン、バナディーヤから来てる奴もいる。俺達はそんな街の有志の集まりさ。コーヒーは?」
「ありがとう」
「好きなの使いな」
「えっ...」
聞いたはいいものの淹れてくれるわけではないようだ
「補給のことも助かりました」
サイーブはその場にいる例の金髪の少女に目を配る。実際マリュー達をここに連れてくるよう提案したのは彼女であった
「彼女は?」
「ん?」
「あの子だよ」
「俺達の勝利の女神。そんなところだ」
「へぇ。名前は?女神様なら知らなきゃ悪いだろ?」
「...。カガリ・ユラだ」
サイーブは金髪の少女、カガリの名前を伝えるのに一瞬間を開けたように感じる。何か訳ありなのか...
「んで、お前さんらはアラスカに行きたいってことだが」
「えぇ」
「ここはザフトの勢力圏だが砂漠のそこら中に軍隊がいるわけじゃねぇ。だが3日前にビクトリア基地が落とされちまった」
「ビクトリア基地が!?」
「3日前に!」
「あらら...」
<ビクトリア基地>はアフリカ、ビクトリア湖付近にあった地球連合軍の基地。地上から宇宙へ上がるための施設<マスドライバー>があるため地球軍の最重要施設の一つであったが、そんな基地の陥落にマリュー達は驚く
「今奴らの勢いは大きい。アフリカ共同体は元々プラントよりだ。頑張ってた南部の南アフリカ統一機構も遂に地球軍に捨てられちまったんだ。ラインは日に日に変わってくぜ」
「そんな中でよく頑張るねぇあんたらは」
「...」
軽口が出てしまったムウを睨みつけるサイーブ
「俺達にとっちゃザフトも地球軍もおんなじだ。どっちも奪いにやってくる」
地球軍人である3人にとっては耳の痛い話である
「あの艦は大気圏ではどうなんだ?」
「あまり高度は取れんな」
「山脈が越えられないってんならあとはジブラルタルを突破するか」
「この戦力で?無茶言うなよ...」
「ん〜。なら頑張って紅海へ抜けてインド洋から太平洋に出るっきゃねぇな」
「太平洋...」
「補給路なしに一気に行ける距離ではありませんね」
「太洋州連合は完全にザフトの勢力圏だろ?赤道連合はまだ中立か?」
「おいおい気が早いな。もうそんなとこの心配か?」
「ん?」
「ここ!バナディーヤにはレセップスがいるんだぜ?」
「あ、頑張って抜けてってそういうこと...?」
どの道を行っても茨の道。しかし突破しなければならないのもまた事実。3人はまだまだ頭を悩ませねばならないらしい
一方レオは特にすることもなかったのでノワールのOSチェックをしていた
「レオくん」
「キラか」
そこへキラがやってきた。何やら不安げな様子で
「どうした」
「その、謝らないとって思って...」
「頭は冷えたのか?」
「うん。僕、レオくんにこれ以上無理させないようしなきゃって思ってたら空回りしちゃって」
「え?」
「え...?」
「キラ。そんなこと考えてたのか...?」
「うん」
レオは自分が考えていたこととキラが実際に考えていたことが違っていて少し戸惑った
(俺はてっきり原作通りフレイとお楽しみしたばっかりと思っていたが...)
「キラ」
「なに?」
「ちなみに昨日の夜はどこにいたんだ?」
「え、自分の部屋だけど」
「1人でか?」
「当たり前だよ」
(ん〜〜〜〜〜〜???)
レオは想定と違いますます困惑する
「あの、どうしたのレオくん...」
「あーいやすまん。俺の勘違いだったみたいだ」
「それってどういう...」
「キラー!」
キラがレオの言っている意味を尋ねようとすると下から大声で呼ばれた
「サイ?」
「やっぱりここにいたか。ちょっといいか?」
「う、うん」
「レオ。お前も頼む」
「俺も?」
サイに呼ばれる心当たりがないキラとレオはお互いに顔を見合わせ下に降りた
「どうしたの?」
「ちょっと聞きたいことがあって。キラさ、フレイのことどう思ってる?」
「どう、って?」
「そりゃ好きかどうかってことさ」
「えっ!?」
サイの質問にキラは驚く。レオも違う意味で驚いた
「その話俺必要か?」
「いや、キラの返答によっちゃ保証人が必要かなって」
「保証人?」
「あぁ。それでキラ、どうなんだ?」
「えっと...」
「あ、俺がフレイの許嫁ってことは抜きにして。もしフレイが今フリーな状態でって話だよもちろん」
「...」
あまりにもイレギュラーな出来事にレオはサイとキラから見えないながらも目を見開いて目玉が左右に振れていた
「フレイは、優しかったんだ。こんな僕のことを励ましてくれて、側にいてくれて、抱きしめてくれて。フレイはサイ達と同じぐらい大切で。好き、なんだと思う...」
「そうか。だってよ!」
「え...フレイ!?」
サイが扉の方へ向かって叫ぶとそこからフレイが恥ずかしそうに出てきた
「なんで!?サイ!」
「実は薄々気づいててさ。それでフレイと話したんだ」
「ッ!?」
レオにとって更なる驚くことに、もう目玉が飛び出そうなくらい目を見開く
「話...?」
「俺達の関係ってさ、元々フレイのお父さんが決めたことだったんだ。でもさ...」
「でも、そのパパはもういない」
「フレイ...」
「あ、違うの!別にそれでキラ達を責めようってわけじゃないのよ!でも、話を決めたパパもいないし、この先どうしよってサイと話したの」
「そう、なんだ...」
「俺もフレイのことは好きだった。でも軍に入ってから生きるのに必死でフレイのこと放置しちゃってたし」
「でもそれは!」
「いいんだ。逆にちゃんとした理由があってよかったとさえ思ってる」
「サイ...最低ね私...」
「そんなこと言うなってフレイ。ちゃんとお互いに同意あってのことなんだし」
「サイ...サイ!」
「おいっ!何でレオがそんな号泣してんだよ!」
いつの間にか話を聞いていて顔をくしゃくしゃにして号泣していたレオ
「ずびっ...サイ、友達になろう!」
「え...今まで友達じゃなかったのかよ」
「え...」
「薄情だな。こんな生活を一緒にしてきて、友達だと思ってたのが俺だけだったなんて」
「う、うぉぉぉ!!!俺達はずっ友だサイ・アーガイル!!」
レオは興奮のあまりサイと勢いよく肩を組んだ。その衝撃でサイのかけているメガネがずれるほどに
「おいやめろよ!」
「そう言うなって!今夜は俺と一緒に寝るか!?」
「やめろ気色悪い!失恋はしたが男と一緒に寝るほど落ち込んじゃいねーよ!」
「そんな恥ずかしがるなよっ」
「離れろって!」
「...ぷっ!ちょっと2人とも!あははは!」
「あ、あははは!」
「笑ってないで止めてくれよ2人とも!」
肩を組んできたレオを必死にどかそうとするサイ。しかしそんな嫌がっているはずのサイの口角も上がってしまっている。その2人を見て涙を流しながら笑うフレイとキラ。そしてその笑い合う4人の会話を物陰から聞いている1人の少女の姿に誰も気づいていなかった
しかしせっかく友情の芽生えた瞬間も束の間、アークエンジェル内に警報が鳴った
「なんだ!?」
「せっかくいいところだったのに」
『総員警戒体制。第二戦闘配備発令』
「フレイ、俺達は」
「うん!」
「キラ」
「うん!」
「サイ!フレイ!」
「ん?なんだ?」
「?」
「終わったら祝賀会をしよう。あと、サイの失恋慰める会もな。トール達も呼んで」
「お、俺の慰める会はいらないんだよ!」
「ははっ。じゃあな。行くぞキラ」
「あ、うん!」
「キラ!」
「ん?」
「気をつけてね」
「ありがと!」
レオとキラはパイロットスーツに着替えるために上に上がった
「サイ?」
「どうした?」
「今までありがと。それと、これからも仲間としてよろしくね」
「ッ!あぁ。こちらこそ」
「あと、レオってあんなやつだったのね」
「そうだな。意外だったよ」
「うん」
初めの頃よりもフレイのレオを見る表情がどんどんと柔らかくなっていっているように感じるサイだった
警報の内容はとある街が焼かれているというものだった。その街には明けの砂漠に所属している者の家族もいた
現地に赴いたのは一番足の速いスカイグラスパーを操るムウとある程度の食糧などを積んだバギーで向かったナタル達だった。報告によると街は焼かれたはしたものの死人は0。怪我をした者はいるが全員無事とのことだ
キラとレオに出撃命令が下されたのその後だった。どうやら街に駆けつけた明けの砂漠は街を焼いたであろう砂漠の虎、アンドリュー・バルトフェルドの隊を追ったらしくその救援に向かってほしいとのこと
『APU起動。カタパルト接続。ストライカーパックはエールを装備します。エールストライカースタンバイ。システムオールグリーン。ストライク発進、どうぞ!』
「行きます!」
『ストライクE、ノワールストライカー装備完了。システムオールグリーン。ストライクノワール発進、どうぞ!』
「行ってくる」
フレイとミリアリアの声と共に発進するキラとレオ。すぐさま戦場に急行したが既に戦闘、いやザフト軍による蹂躙が始まってしまっていた。いくら何でもレジスタンスの戦闘車両やバズーカとモビルスーツであるバクゥとじゃ喧嘩にもならない
到着早々キラはバギー1台に迫るバクゥ1機に対してビームライフルを放った
『逸れる!』
「熱対流だ。今の気温は夜と20度以上違うぞ」
『はっ!すぐ調整する!』
レオに指摘されすぐさまビームのパラメーターを調整するキラ
「まったくその場所特化性能ってのは羨ましい。できることなら俺のにもホバー機能ほしい」
キラがパラメーターを調整している間に今度はレオが射撃。片方のビームライフルショーティで敵を向かって左の方に誘導するように射撃。そして2射目でまんまと誘導された側に移動したバクゥの背中のミサイルランチャーを貫いた
『敵は3機。1機は動けないか』
「チッ!移動するぞキラ」
『うん!』
そこには明けの砂漠の連中がまだいる。その中にカガリの姿を確認したレオは舌打ちをしながら移動することをキラに通信した
「行ったぞキラ!」
『ッ!』
レオが背の武装を失ったバクゥの足元に2連装リニアガンを放つと読み通りジャンプで回避した。その空中で制御が効かなくなったバクゥにキラが狙いをつける
「ッ!キラ!」
『うわぁっ!』
キラが撃つ前に先ほどまで動けなかったはずの3機目のバクゥからのミサイル攻撃が直撃した
『3機目!動けたのか!』
「驚いてる暇はないぞ!」
さらにキラに迫り来るミサイルをレオは冷静に全て撃ち抜いた
『...レオくん。この3機は僕がやる』
「ッ!おいキラ!」
『わかってる!でもこれから先僕もこれくらいの数の敵は相手しなくちゃいけない...レオくんばっかりに負担をかけるのも嫌なんだ!』
「キラ...」
『お願い。レオくん』
キラが先日みたいにまた暴走しだしたのかと思ったがキラは冷静だった。そしてキラの言うこともわかった。今までは1vs1での戦闘が多かったがこれからはそうはいかない。キラにもそれなりに経験が必要ではあると感じていたレオ
「わかった...ただし危なくなったら助けるからな」
『ありがとう』
なんとキラはレオが一緒にいるにもかかわらず迫り来る3機のバクゥを1人で対処すると言うのだ
「キラ」
レオはすぐに助けに入れるように、そしてレジスタンスの方に攻撃が誤射されないように気は抜かないままキラの戦いを見守った
「来る!」
キラに向かって3機のバクゥが突撃してきた。わざとすれすれを通り抜け体制を崩させる
「クッ!ッ!」
振り返ると目の前にはミサイル。当然避けることができず直撃。体制を立て直そうと飛び上がるも読まれていたのか敵が目の前にいた
「うわっ!」
必死にバルカンで抵抗するも効かず叩き落とされてしまう
「うーっ!」
いくら頑丈なフェイズシフト装甲でも通常弾頭だいたい70発程で効力を失ってしまう。それと同時にライフルのパワーも尽きてしまうのだ
「...」
キラはそれを把握しているかどうか。どちらにしても既に20発以上は食らってしまっている。敵の連携はそれほど卓越しておりキラは突破口を考える暇もなく集中攻撃をされてしまっている
もうレオの助けがないとダメなのか...その時、キラの中で何かが弾けた
キラはブースターを急停止。ストライクの移動先を狙っていたミサイルはストライクが急停止したことにより機体を追い越しミサイル同士ぶつかって爆発した。そしてキラは反転。横並びに追いかけてくるバクゥに対してシールドを捨てながら横切った。そのため捨てられたシールドにバクゥ1機が当たり隊列が乱れる
「ッ!」
またも反転したキラは武装のないバクゥに対してビームサーベルを抜き斬りつけ撃破はできなかったもののバクゥ側面を切り裂いた。
そして縦列で迫り来る残りのバクゥ2機。前のバクゥがミサイルを放つがキラは機体を縦回転させブースターを使って地面の砂を巻き上げる。ミサイルはそれに当たり爆発した。後方にいたバクゥは爆風の中に飛び込むまいと飛び上がったが、その下をキラは低空で飛んでいた。無防備になったバクゥの腹部を撃ち抜きやっと1機撃破できた
「...」
残った1機が反転してまた突撃してくる。キラはすれ違いざまビームサーベルを斬りつけ敵の足1本を切断した
「はぁ...はぁ...」
これをもってか敵は後退。戦闘は終了した
『キラ』
「レオくん...」
『やったな』
「うん...」
勝ったはいいがギリギリだった。あと何発か直撃を食らっていたらダメだったのは自分かもしれない。キラはまだまだ自分はレオのように上手く戦えていないことに苛立ちを覚えた
戦闘が終わったところへ明けの砂漠の連中も集まってきた。ずっとこちらを見上げているのでレオとキラはその場に降りた
「死にたいんですか...?」
「ッ!」
「こんなところでなんの意味もないじゃないですか...」
「なん、だと...!?」
キラの言ったことに苛立ったカガリがキラの胸倉を掴んだ
「貴様!見ろ!」
そこに横たわっていたのはバクゥの攻撃で亡くなった団員の1人だった
「みんな必死に戦ったんだ!戦ってるんだ!大事な家族や仲間を守るために必死でな!」
「ッ!」
「キラ」
カガリの言葉に怒りの感情をあらわにして手を振りかぶったキラ。しかしレオがその手を掴んで止めた
「レオ、くん...」
「お前も一時の感情で行動するな」
「うん。ごめん...」
レオからの注意を受けて冷静になったキラ。それに気づいたレオはキラの手を離した
「えっとあんたさ。守りたいって気持ちは大事だと思う。だがじゃあなんで戦場に向かわせたんだ」
「なんでって...そりゃ街を焼かれたからに決まってるだろ!」
「確かに街は焼かれた。でもお前の言った大切な家族や仲間はその街で殺されたのか?」
「ッ!」
「街は焼かれたが死亡者は0。俺達はそう報告を受けている」
「それは...」
「お前の言う守るための戦いなら今回の戦闘は本当に必要だったのか?俺からすれば街を焼かれた仕返しのために動いたように見えるが」
「なんだとっ!?」
「だから感情で動くなと言ったんだ。お前達が一時の感情で動いた結果が、このありさまだろ...」
本当はレオもキラのように感情任せに怒鳴りたい気持ちでいっぱいだった。しかしそれでは彼らと同じこと、とレオは自分で自分を抑えたのだった