ガンダムSEED 〜守るための戦い〜   作:てこの原理こそ最強

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第十六話

 

 

<バナディーヤ>は砂漠の虎ことアンドリュー・バルトフェルドが本拠地を置く街。そんな街にサイーブやナタル、キラやカガリ、レオまでもがが訪れていた

 

「じゃあ4時間後だな」

 

「気をつけろよカガリ?」

 

「わかってる。そっちこそな」

 

「少...少年。頼んだぞ...」

 

「わかりました」

 

カガリとキラ、そしてレオは途中でバギーから降ろされ他のサイーブやナタル達は本来の目的地に向かった

 

「おい、何ぼけっとしてる。お前は一応護衛なんだろ?」

 

「ついこの前まで民間人だった、しかも学生だった俺達が護衛と言われてもな」

 

「ぶつくさ言うな」

 

「ここが虎の本拠地...?随分賑やかで平和そうなんだね」

 

「ッ!なら教えてやる...着いてこい!」

 

()()()()という言葉がカガリの癇に障ったのか商店街を離れて裏道の方へ連れて行かれるキラとレオ

 

「あんなものは見せかけだ。これが全員目を背けていることなのさ」

 

連れて行かれた先には地面に大きなクレーターができており周りにはまだ撤去されていない瓦礫なども点在していた

 

「あれがこの街の本当の支配者さ」

 

そしてそのまた先には砂漠の虎の母艦である大型地上戦艦<レセップス>が停泊していた

 

「逆らう者は容赦なく殺される...ここはザフトの、砂漠の虎のものなんだ...」

 

キラもレオも特に言葉を出さずカガリの話を淡々と聞くのみにとどめた

 

「さ、買い出しに行くぞ」

 

「あ、うん」

 

「頑張れよ?荷物持ち達?」

 

「仕方ない。こんだけ買い出し用品頼まれちゃあな」

 

レオはポケットから出した大量のメモ用紙をヒラヒラさせて愚痴をこぼす。その中身の大半はフレイとミリアリアの女性陣からだったから従うしかなかったのは秘密だ

 

 

 

 

 

 

 

このバナディーヤは本当に賑わっていた。人、物がよく回るとその分経済も回る。ということは労働場所もそれなりにできて働くことができる。働ければ金が手に入り物が買える。この流れが正常であればその土地は必然的に景気が良くなるのだ。そんな繁盛している商店街や店で買い物をしていくと既に持ってきたリュックも紙袋にも買った商品でパンパンになってしまった

 

「これで大抵揃ったろ」

 

「とんでもない量になったな。女性は毎度これを買い込むと思うと大変だ」

 

「毎度ってわけではないだろうがな。ただ文句ならこのフレイってやつに言え。無茶苦茶なものしか書いてないぞ」

 

「頼んだぞキラ」

 

「えっと...」

 

買い物を終えたレオ達は食事ができる店に立ち寄りようやく座ることができた

 

「あー腹が減った」

 

「オマタセネ」

 

「きたきた!」

 

「なにこれ?」

 

「ドネル・ケバブさ。お前らも食えよ。この食べ方はまずこのチリソースをかけてだな」

 

「あいや待った!」

 

カガリがケバブの食べ方をレクチャーしようとすると突然サングラスにハットを被った男性が待ったをかけた

 

「ケバブにチリソースなんてなにを言ってるんだ。このヨーグルトソースをかけるのが常識だろうが」

 

「あぁん!?」

 

「いや常識というよりこう...そう!ヨーグルトソースをかけないなんてこの料理に対する冒涜だよ!」

 

「なんなんだお前は!見ず知らずの男に私の食べ方をとやかく言われる筋合いはない!あむっ!」

 

「あー!なんと酷いことを!」

 

「あー!う・ま・いー!!」

 

カガリは男の言うことなど一切聞かずに大量のチリソースをケバブにつけてかぶりついた。そして嫌味ったらしく男に向かって味の感想を言う

 

「ほらお前らも!ケバブにはチリソースが当たり前だ!」

 

「いや待ちたまえ!彼らも邪道に落とす気か!」

 

「なにをする!引っ込んでろ!」

 

「キミこそ引きたまえ!ええい!この!」

 

なんともまぁ子供じみた張り合いを見せる2人。そして結局どちらのソースもキラの前に置かれているケバブにかかってしまい一番の被害者はキラとなってしまった

 

「「あ...」」

 

「はぁ、まったく」

 

あまりに子供じみた言い合いを見たレオは無意識にも溜息を吐いた

 

「い、いや~悪いね~...」

 

「い、いえ...まぁミックスもなかなか...」

 

気を遣って言葉を選ぶキラだったがケバブを食べたあとは必ず飲み物で流しているところを見ると言葉通りではなさそうだ

 

「それでキミは?」

 

「俺?申し訳ないけど俺はこっちのオーロラソース」

 

「「それは一番ない!!」」

 

「美味いのにな」

 

レオは2人がオススメするものとはまた違うソースを使っておりこれだけは許し難いと先ほどまで意見が分かれていた2人が口を揃えて否定した

 

「しかし凄い買い物だね~」

 

「余計なお世話だ。っていうかなんで当然のように座っているんだ!」

 

「そうつれないこと言いなさんな。僕らの仲だろ?」

 

「初対面のやつと仲云々あるわけがないだろ!大体お前は何なんだ!」

 

「ッ!」

 

「キラ」

 

「うん!」

 

「なんだ?」

 

「伏せろ!」

 

カガリが男の正体を聞こうとしたところで突然男はテーブルを蹴り上げた。そしてキラがカガリを庇うように覆いかぶさる。すると同時に店が爆発した

 

「無事かねキミ達!」

 

「な、なんなんだ一体...!」

 

周りでは既に銃撃戦が始まっていた

 

「死ねコーディネイター!宇宙(そら)の化け物め!」

 

「青き清浄なる世界のために!」

 

「構わん!すべて排除しろ!」

 

男も懐から銃を取り出し周りの者と同じく応戦に入る

 

「ウッ!」

 

「ガハッ!」

 

襲撃を仕掛けてきた連中は次々と撃ち殺されていく。テーブルが盾となっているためキラ達に当たりはしていないが相手がどんな連中なのか状況もよくわからない

 

「ッ!」

 

「おまっ!」

 

混戦の中レオは周囲の警戒をしていた。すると案の定、後方の店の陰から銃を持った男が現れ、銃をこちらに向けてきた。レオは咄嗟に落ちている皿をその銃で狙ってくる男に向かって投げた

 

「ふぅ」

 

「隊長!ご無事ですか!」

 

「あぁ私は平気だ。彼のおかげでね」

 

「ッ!?」

 

隊長と呼ばれた男。サングラスとハットを取りその顔を露わにした。その顔にカガリは身に覚えがあった

 

「アンドリュー・バルトフェルド...」

 

「え...」

 

「砂漠の、虎...」

 

カガリのつぶやき。近くにいたキラは聞こえたが他の者には聞こえたのかどうか。姿を見せたバルトフェルドはまっすぐカガリ達の方に近づく

 

「いや~助かったよ。ありがとう」

 

「いえ。誰が狙われていたのかわからなかったので」

 

「そうか。しかし結果的には救われた。なにか礼が必要だな...ん?これはいかんな」

 

「は...?」

 

バルトフェルドは顎に手を当ててカガリのソースだらけになっている髪や服を見ていい案が思いついたのか二ヤリと笑った

 

「とりあえず屋敷まで行こうか。車出してくれ」

 

「はっ!」

 

「え...いや僕達は...」

 

「お茶を台無しにした上に助けてもらって。それに彼女なんか服ぐちゃぐちゃじゃないの!そのまま返すわけにはいかんでしょ~」

 

相手が砂漠の虎、自分達が今戦っている相手だと認識し警戒するキラだったが今強く断れば逆に怪しまれるかもしれない。いろいろ試行錯誤した結果言う通りについていくしかなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

繁華街から車で少し離れたところにバルトフェルドの屋敷は建っていた。さすが司令官なだけにザフト軍、モビルスーツまでもが常時警戒をしておりアリ1匹でも侵入を許さないとでも言わんばかりだった

 

「あら?」

 

中に案内されるとそこには綺麗な長髪にオレンジのメッシュが入った女性が待っていた

 

「この子?アンディ」

 

「あぁ。彼女をどうにかしてやってくれ。見てわかるようにソースまみれになってしまってね」

 

「あら~それは大変。さ、いらっしゃい」

 

「え...いや...」

 

「大丈夫よ、すぐ済むわ。アンディと一緒に待ってて」

 

「キミ達はこっちだ」

 

カガリは女性に連れられ屋敷の奥へ。残されたレオとキラはカガリを心配しつつもどうすることもできないのでバルトフェルドの声のする部屋に入った

 

「僕はコーヒーを淹れるのに少々自身があってね。まぁかけたまえよ。くつろいでくれ」

 

「はぁ...」

 

キラは敵本拠地の最深部ということで常に警戒をしておく

 

「これは...」

 

「エヴィデンス01。実物を見たことは?」

 

「いえ...」

 

「ありませんね」

 

キラとレオはふと暖炉の上にあった化石のレプリカだった

 

<エヴィデンス01>は木星で発見された化石で地球外生命体が存在した証拠として地球にもたらされたものであるが、これが一体なんなのかはまだわかってはいなかった

 

「なぜこれをくじら石と言うのかね。これくじらに見える?」

 

「そう言われても...」

 

「これどう見ても羽じゃない?普通くじらに羽はないだろう?」

 

「まぁ...でもそれは外宇宙から来た地球外生命体の存在証拠って事ですから」

 

「僕が言いたのはさ、なんでこれがくじらなんだって事だよ。ほい」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「いただきます」

 

レオとキラはバルトフェルドから自家製コーヒーを受け取る

 

「じゃあなんならいいんですか?」

 

「ん~...なんならと言われると困ってしまうが...ところでコーヒーどう?」

 

「あ、ウッ...」

 

「ん~、なんとも」

 

「そうか。まだキミらにはわからんか大人の味は。いや残念だ」

 

バルトフェルドから渡されたコーヒーに口をつけるとなんとも形容しがたい苦みが口に広がった

 

「ま、楽しくも厄介な話だよね~これも」

 

「厄介、ですか?」

 

「だってそうだろ?こんなもの見つけちゃったから希望っていうか可能性が出てきちゃったわけだし」

 

「はい?」

 

「人はまだ先に行ける、ってことさ。この戦争の一番の根っこさ」

 

「...」

 

「根っこ...」

 

『アンディ?入るわよ?』

 

「ん?おぉ~!」

 

「え...」

 

「ほう」

 

カガリの身支度が終わったのか部屋のドアがノックされ先ほどの女性の声がした。そして入ってきたドレス衣装のカガリに3人はそれぞれ見入ってしまった

 

「あーほら」

 

「おんな...の子...?」

 

「て、てめぇ!」

 

「あ!いや!だったんだよねって言おうとしただけで...!」

 

「同じだろうがそれじゃあ!!」

 

「くっ!はっはっは!」

 

「アハハハ!!」

 

「キラ...お前ってやつは...」

 

キラとカガリのやり取りを聞いて大声を上げて笑うバルトフェルドと女性。またレオは恥ずかしくなって頭を抱えた

 

「はー。やっぱり面白いねキミ達。ありがとうアイシャ。戻っていいよ」

 

「はーい」

 

「さ、キミもこちらにかけたまえ」

 

大いに笑ったバルトフェルドはカガリもソファに座るよう案内した

 

「ドレスもよく似合うねぇ。というか、そういう姿も実に板に付いている感じだ」

 

「勝手に言ってろ」

 

「話さなきゃ完璧」

 

「おい、なんか言ったか...?」

 

「いいえ別に」

 

カガリが聞き逃せない発言をしてしまったレオはコーヒーをすすって誤魔化す

 

「そういうお前こそ本当に砂漠の虎か?なんで人にこんなドレスを着させたりする。これもいつものお遊びの一環か!」

 

「ドレスを選んだのはアイシャだし。いつものお遊びとは?」

 

「変装して街でヘラヘラ遊んでみたり、住民は逃がして街だけ焼いてみたり、ってことさ...」

 

「はぁ...」

 

「うん。いい目だね~。真っ直ぐで...実にいい目だ」

 

「ふざけるな!」

 

「カガリ...!」

 

「キミも、死んだ方がマシな口かね...?」

 

「「ッ!」」

 

「...」

 

「キミらはどう思う?」

 

「え...」

 

「はい?」

 

バルトフェルドは一瞬怖い表情をするがすぐに戻ってレオに質問を投げかける

 

「どうなったらこの戦争は終わると思う?モビルスーツのパイロットとして」

 

「ッ!」

 

「お前!」

 

「はぁ...」

 

「はっはっは!真っ直ぐすぎるのもいかがなもんだぞ?」

 

バルトフェルドは席を立ち移動する。キラは自分の正体がばれているためかカガリを守りつつ遠ざかる

 

「戦争には制限時間も得点もない。スポーツの試合のようにね。ならどうやって勝敗を決める?どこが終了なんだ?」

 

「どこ...?」

 

「あー。敵であるものを全て滅ぼして、かね?」

 

「「なっ!」」

 

「...」

 

バルトフェルドはキラとカガリに向けて銃を向ける。キラはなんとかこの状況を打破すべく部屋を見渡す

 

「やめた方がいいぞキラ」

 

「ッ!レオくん...」

 

「お前!なんでっ!」

 

「ほぉ。キミはやけに落ち着いているんだな」

 

「えぇ、まぁ」

 

銃を向けるバルトフェルドに対しおびえるキラやカガリに対してレオはソファから立ち上がることもせずにコーヒーをすすっている

 

「どうにかしようと動いたところでここはあなたの根城。それにここにいるのはコーディネイターでれっきとした軍人。なにかできるわけない」

 

「だからってな!」

 

「そもそも本当に俺達を殺すつもりなら、部屋に入った時点で撃たれてる。違いますか?」

 

「ふむ。見た目にそぐわない賢明な判断の持ち主だなキミは。あわよくばそっちの子のバーサーカー状態を生で見れるかと思ったが」

 

「バー、サーカー...」

 

「キミの戦闘は2度見させてもらった。砂漠の設置圧。熱対流のパラメーター。キミはかなり優秀なようだ。我々と同じコーディネイターとしても」

 

「え...お前...?」

 

「あんな戦いを見せられてナチュラルだと素直に信じるほど目は腐っていないさ。しかしそれはキミも、だろう?」

 

「...」

 

「な...んだと...」

 

キラとレオがコーディネイターだと初めて知ったカガリ。驚きと困惑で整理がつかない

 

「キミの戦闘も見たよ。バクゥとの高速戦闘の中、わざわざ武装や頭部のみの破壊など、ナチュラルだと言われる方が信じ難い」

 

「...」

 

「しかしなぜキミらが同胞と敵対する道を選んだのかは知らんがね。あのモビルスーツ2機のパイロットである以上、私とキミ達は敵同士ということだな?」

 

「クッ!」

 

バルトフェルドは銃の引き金に指をかける

 

「そういうのはマガジンを入れてから言ってください」

 

「え...?」

 

「は...?」

 

「ぷっ!ふはははは!!!全てお見通しってわけか」

 

「おい...どういう...」

 

状況が呑み込めないキラとカガリにわざと銃にマガジンが入っていないことを見せるバルトフェルド

 

「一応今日のところは僕の命の恩人だ。そんな人をその日のうちに殺すなど罰が当たるだろう?」

 

「でも...」

 

「敵同士だからって?ふっ。ここは戦場ではないさ」

 

バルトフェルドは銃を棚にしまいアイシャを呼んだ

 

「帰りたまえ。話せて楽しかったよ。よかったかどうかはわからんがね」

 

「じゃあ帰ろう2人とも。コーヒーごちそうさまでした」

 

「...」

 

3人はアイシャに連れられ外へ

 

「やはりどちらかが滅びないといかんのかねぇ」

 

誰もいなくなった部屋でバルトフェルドは1人つぶやいた

 

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