ガンダムSEED 〜守るための戦い〜 作:てこの原理こそ最強
宿敵、砂漠の虎ことアンドリュー・バルトフェルドとの死闘に勝利したアークエンジェル部隊と明けの砂漠は基地に戻り宴会が執り行われた
「明けの砂漠に!」
「勝ち取った未来に!」
「じゃあそういうことで」
サイーブ、マリュー、ムウ、ナタルの4名は基地内で酒の入ったコップで盛大に乾杯した。その表情はみなこれでもないほど笑顔だった
「ウッ!ゴホッ!ゴホッ!」
「ぷはーっ!!」
「はっはっは!!」
酒の度数が想像よりも強かったのかナタルは咳き込みマリューはその酒に満足したような笑顔、そしてそんな光景を見たサイーブが酔いもあってか大笑いしている
「でもまだ大変だなあんた達も。虎がいなくなったってザフトがいなくなるわけじゃない。奴らは鉱山が欲しいんだろ?またすぐ次が来るぜ?」
「あん?その時はまた戦うだけさ。戦い続けるさ俺達は!俺達を虐げようとする奴らとな!」
「父さん!」
そこへ1人の少年が急いだ様子でやってきた
「戦士を送る祈りをするって。長老が」
「そうか」
外では死んでいった者達の墓が作られ、その仲間、家族、関わりのあった者全員が祈りを捧げていた
少し離れた場所ではレオも手を合わせ同じように祈っていた
「健やかに。そしてこれからを見守ってほしい」
朝になりアークエンジェルは紅海へ抜けるべく出発の準備を進めていた
「いいから私を乗せていけと言っている!あんた達よりは情勢に詳しいし、補給の問題やらなにやらあった時には力になってやれるしな!」
「でも...」
「無論アラスカまで行くってわけじゃないし地球軍に入るつもりもないが、今は必要だろ?」
「君が?」
「いやその、いろんな助けがだ!」
「そう言われても...」
「勝利の女神様、ねぇ」
「ともかく私はアークエンジェルと一緒に行くぞ!もう決めたからな!」
準備は順調に進んでいたのだがこのようにカガリがアークエンジェルについていくと言い出したのだ。マリューとしては彼女を連れて行くメリットがないと考えていた。自分がいれば道中の補給問題が解決できるような言い方をしていたが無論そんなことはできるわけないとマリュー達もわかっている
「いい加減にしろカガリ」
「ッ!またお前か...!」
マリュー達から離れ1人となったカガリを待っていたのはレオだった
「盗み聞きとはいい趣味とは言えないんじゃないか...?」
「別にお前にどう思われようと知ったこっちゃない。それよりお前、なんでそんな死に急ぐ」
「なんだと!?誰が死にたいもんか!」
「じゃあここに残った方がいい。虎がいなくなった今、まだこっちの方が安全なのはお前にだってわかるだろ」
「どうせ次も誰かが支配に来るんだ!同じだろ!」
「だとしても、なんで自分から死ぬような場所に着いてこようとする」
「それは...」
カガリがアークエンジェルについていく本当の理由は話せないため話の続きに困る
「はぁ...感情で動くなと何度も言ったはずだ」
「なにを!私は自分の意志で!」
「自分の立場をいい加減認識しろって言ってるんだ」
「ッ!な...にを...」
レオはカガリに近づき耳元で誰にも聞こえないぐらいの声で先を話す
「自分が
「ッ!」
カガリはレオの言った言葉に驚き、そして恐怖しすぐさま離れて距離を取った
「お前自身のその体、発言、行動はお前自身が思ってるほど自由ではない。誰よりも重い責任があることをよく覚えておけ」
レオは岩陰からこちらを見張っているカガリとよく行動を共にしていた男に目配せをしてからその場を去った
結局、カガリは着いてきた。レオからの忠告を理解してかしらずかは本人しかわからない
「うーん!気持ちいい!」
「地球の海ー!すんげー久しぶり!」
「でもやっぱなんか変な感じ」
「そっか、カズイは海初めてか」
「うん」
マリューから甲板に出る許可が出されたためトール達は故郷でも見ていた海を楽しんでいた
「ヘリオポリス生まれだもんなカズイ」
「砂漠にも驚いたけどさ、なんかこっちの方が怖いな...深いところはすごい深いんだろ?」
「あぁ」
「怪獣がいるかもよ?」
「うぇっ!?」
「なに言ってんだよミリィ」
海を久しぶりと感じる者。初めてと感じる者。各々甲板で海を楽しんでいる
また別のところではキラとレオが潮の香りを嗅ぎながら太陽の光をこれでもかというほど浴びていた
「ねぇレオくん」
「ん?」
「なんであんなことを?」
「あれね」
レオはキラの言っていることが先日の戦闘後の行動を言っているのだと察する
「言葉にするのは難しいな。ただ、死んでほしくなかったんだよ。あの人には」
「でも」
「敵対してるからって?じゃあキラはさ、あの人本当に敵って思ったか?」
「それは...」
「立場関係なく会ってたらもっと仲良くなれていたと俺は思う。キラは違うか?」
「...。僕も、そう思うかも」
「だよな」
レオとキラが話しているのは敵対していたにも関わらず実際に死戦を繰り広げた相手だというのに、
「それにこれからの時代にああいう人は絶対に必要なんだ」
「これからって?」
「いずれわかるよ」
「あー!ここにいた!」
「あ、フレイ」
レオとキラが話しているとその場にフレイがやってきた
「外に出るなら誘ってくれてもいいじゃない」
「ご、ごめん...」
「あのさフレイよ」
「なによ?」
「キラだけならともかく、他に男がいるところにその格好ってどうなんだ?」
「えっ?なにかおかしい?キラどう?」
「えっ!」
レオが指摘するフレイの今の姿は軍服のスカートに上はシャツのみ。それに裾の部分を結んでいてお腹が見える状態になっている
「ねぇ〜?どうなの〜?」
「ちょっ!フレイ!」
(あれはキラの反応楽しんでるな)
キラは薄着のフレイの体を見て顔を赤くする。フレイはそんなキラに小悪魔っぽく笑いながら迫り続ける
「はぁ、見てられん。じゃああとは仲の良いお2人でごゆっくり〜」
「えっ!?ちょっ!レオくん!」
「ちょっとキラ〜。ちゃんと見てくれなきゃわからないでしょ〜?」
(やれやれ。これが若さか...)
『総員第二戦闘配備!繰り返す!総員第二戦闘配備!』
海へ出てまだ間もないというのに敵である。レオは急いで着替えもせずそのままの服装でノワールに搭乗した
『総員第一戦闘配備!』
「だろうな。先に出るよミリアリア」
『え、あ、うん!』
レオは第二戦闘配備の時から既に搭乗していたためすぐさま発進した
「空中戦はいいけど、ノワールで水中戦は果たしてできるのか?」
発進直後に前方から向かってくる2機のモビルスーツに向けてビームライフルを放った。今のところ敵は大気圏内を単独飛行可能な制空戦闘用ザフト軍モビルスーツの<ディン>だ
「だったらグーンが出てくる前にお引き取り願いましょうか」
レオからの1射目を避けてさらに接近してくるディン2機。レオは怯むことなく射撃を続ける。すると敵は左右に分かれた
「読み通り!」
敵の動きを予測していたレオは向かって右方向に動いたディンに向けて2連装レールガンを放ち両足を破壊した。そしてすぐさまもう一方にディンにもビームライフルを連射。そこへ接近したきたアークエンジェルの対空砲も相まって右部分の翼を破壊。それを受けてディン2機は目標だったであろうアークエンジェルに攻撃することさえできず撤退していった
『おいおい!出番なかったぜ!』
『すごいねレオくん』
「まぁ空中戦ならほぼ
『周囲に他の熱源なし。レオ、帰投して』
「了解」
今回はレオがすべて終わらせてしまったためムウとキラの出番なく戦闘が終わってしまった
戦いが終わりアークエンジェルに戻ったレオは軽い整備で終わらせまた甲板に出て休んでいた
「レーオ」
「ミリアリア。交代か?」
「うん」
甲板に寝っ転がり太陽の日差しを満喫しているとミリアリアがやってきてレオの隣に座った
「彼氏はほっといていいのか?」
「あ、あー...今交代でブリッジに入ってるから」
「そうか。事情話して休憩一緒にもらえるようにしたらどうだ?」
「いや、さすがにそこまでしてもらうのもねー...」
「ミリアリアがそう言うならいいんだが」
目をつむりながら話しているレオには見えていないがミリアリアはなんとも申し訳なさそうな顔をしている。それはどういう意味なのか、本人にしかわからない
「レオは海初めて?」
「初めてだと思う。もしかしたら小さいころに見たことあるかもしれないが覚えてない」
「そっか。じゃあ地球自体初めてかもしれないってこと?」
「いや生まれは地球だ。だがあまりいい思い出はないんだ」
「そうなの?」
「いろいろあったんだ。思い出したいことよりも忘れたいことの方が多いぐらいにな」
「そうなんだね...」
ミリアリアはあまり聞いてはいけないことなのかと思い詮索するのを止めた
「ミリアリアは?話的には地球出身?」
「う、うん。故郷は地球にあるよ」
「そっか。ならあれ知ってるか?かいせんどん?ってものなんだが」
「あー。魚の切り身とかどんぶりに乗せて食べるやつ?」
「それだ。写真で見た事あったんだがすごく美味そうだった」
「私も食べたことないなー」
「そうなのか。魚釣って食堂の人に頼んでみるか」
「アークエンジェルの速度で釣りなんてできるの?」
「確かに...」
レオは体を起こしミリアリアと同じように壁にもたれかかる
「あ、あのさ...」
「ん?」
「レオって、彼女いたことあったりする...?」
「...」
ミリアリアは指先をもじもじしながら質問する。しかしレオからの返答がない
「ね、ねぇ...ってレオ!?」
「ん?なんだいミリアリアさん」
「さん!?どうしたの!そんな爽やかな笑顔見たことないよ!?」
「ははは...何を言っているんだい。いつも通りだろ。それより何か聞いたかな?」
「え...その、彼女って」
「...」
「レオ!?」
同じ質問を2度聞いたレオはその体制のままパタリと横に倒れた
「レオくんはいい人...だけどいい人止まり...あははははは...」
「こりゃダメね...」
学生時代たまたま女生徒が話をしていたところを聞いてしまった記憶を思い出して壊れたレオ。そんなレオを心配しているかと思いきや顔は笑っているミリアリア。本当に心配しているのかバカにしているのか。はたまた...
アークエンジェルが紅海を進んでいるときザフト軍基地のジブラルタルにはクルーゼ隊が集結していた
「お願いします隊長!」
「感情的になりすぎだぞイザーク」
「ですが...」
『失礼します』
アークエンジェルが大気圏突入をした際に同じように地球に降りていたデュエルのパイロットであるイザーク・ジュールとバスターのパイロットであるディアッカ・エルスマン。つい先日アンドリュー・バルトフェルドの部隊にてアークエンジェルと戦闘に参加。ただ不慣れな重力下、更には砂漠という戦場に特に功績を上げられなかった。先にその2人と隊長であるラウ・ル・クルーゼが合流、そしてそこへアスラン・ザラとブリッツのパイロットであるニコル・アマルフィが合流した
「イザーク、その傷...」
「ふんっ!」
「ようお2人さん。お久しぶり」
「傷はもういいそうだ。彼はストライクを討つまでは痕を消すつもりはないらしい」
イザークの顔には眉間から右頬に及ぶまでの大きな傷があった。それは宇宙でストライクとの戦闘で受けたものだった
「さて今後だが、足つきがデータを持ったままアラスカに入るのはなんとしても阻止せねばならん。だがそれは既にカーペンタリアの任務となっている」
「元々は我々の獲物です!あいつは最期まで我々の手で!」
「私も同じ気持ちです隊長」
「イザーク...ディアッカ...」
「俺だってあの新型にはさんざん屈辱を味わわされたんだよ...ここまで来て諦められっかよ!」
「無論私とて同じ気持ちだよ。しかしスピットブレイクの準備もあるため私は動けん」
「しかし!」
「お願いです隊長!」
「ふむ」
ニコルが心配する目の前で熱く懇願するイザークとディアッカ。そしてその熱を受けクルーゼは考える
「そうまで言うならやってみるかね?君達だけで」
「ッ!やらせてください!」
「そうか。ではイザーク、ディアッカ、ニコル、アスランで隊を結成し、指揮はそうだな...アスランに任せよう」
「え...?」
「カーペンタリアで母艦を受領できるよう手配する」
「隊長...私は...」
「いろいろと因縁のある艦だ。難しいと思うが君に期待するよ、アスラン」
不安げなアスランにクルーゼは期待していると伝え部屋を出た
「ザラ隊、ね...」
「ふん...お手並み拝見といこうじゃないか」
ここに新たな小隊が結成された。狙うはアークエンジェル。アスランは言った。次会ったときはお前を討つと...それが本当に現実になるのかもしれない...