ガンダムSEED 〜守るための戦い〜 作:てこの原理こそ最強
マリューは新たに表れた6機目のGに言葉が出ないでいた。なぜなら自分が知っているかぎり新型は5機だけで6機目がいることなどまったく知らなかったからである
「もう1機...?」
「なんだかキラが乗ってた機体にすごく似てる気がする...」
キラもミリアリアも、もちろん他の3人も上空で繰り広げられる攻防戦にあっけにとられていた
一方シグーを操るクルーゼも報告にない6機目の出現に加え一瞬にして自分の手にあったはずの武装を撃ち抜かれたことに困惑していた
「一体何だというのだまったく...」
シグーと新型モビルスーツ。性能的に劣るところもあるが相手は今までモビルスーツなど操ったことのないであろうナチュラル。パイロットとしての技量はこちらが上、そう思っていた
「これが本当にナチュラルだというのか...!?」
しかし敵はクルーゼの予想をはるかに上回る…いや、そんな言葉では片付かないほどの動きを見せた。実際にクルーゼは武装を1つ失っているとは言え確実に圧されていた
「あわよくば奪取とも思ったが...このままではこちらが危ういな...クッ!」
悠長にそろそろ退き時と考えていると敵の接近を許してしまい片腕を切り落とされてしまった
「さて。そろそろ退き時じゃないか?ラウ・ル・クルーゼ」
ザフトのエリートであるクルーゼを驚愕の淵に追いやっている張本人のレオは彼が退てくれるのを待っていた
「ん?やっとお出ましか」
レオが戦闘を継続している中港へ通ずるゲートが爆発。中からは連合、ザフトの両軍でも従来見たことのない戦艦が現れた
「いつ見てもカッコいい戦艦だよな。まぁこの後のことを考えるとめっちゃ同情してしまうが...」
レオの言葉は他の誰1人理解できないであろう
「大天使様もご登場だ。そろそろお暇願いましょうかねっ!」
レオはまだまだ余裕な話口調のまま敵の右腕を斬り落とした。それを受けてかラウ・ル・クルーゼはようやくこの場から離脱した
「この機体差ならあのラウ・ル・クルーゼにも相手取れることは確認できた。いい収穫だな。これなら戦力として考えられる」
レオは自分の分析を終えふぅっと一息吐いてキラ達のいる広場に降りた。そして機体のバッテリーを落とし広場に降り立ったレオはすぐさまマリューから銃を向けられた
「あなた...軍の人間ではないですね...?」
「えぇ。今日までごく普通に過ごしていたただの学生です」
「あれ?あの人どっかで...」
「確かに見たことあるような」
「お前らなんで覚えてないんだよ。ほら、去年の」
「あー!思い出した!新入生なのにいきなりロボット研究の分野で賞獲ってたヤツ!」
「ちょっとトール!指差したら失礼でしょ!」
ノワールから降りてきたのが自分達の知っている者で驚くトール達
「レオくんだったんだね...」
「こんなところで奇遇だなキラ」
「なんだ?お前ら知り合いかよ」
「静かに!!」
さも通っているカレッジの中で偶然出くわしたようなテンションで話す学生達を黙らすためマリューは空へ向かって発砲した
「あなた、名前を」
「レオ・シュヴァルグラン」
「ではレオ・シュヴァルグランくんに聞きます。あの機体は一体なんなの...?」
「それよりも早急にあれと合流したほうがいいんじゃないですか?軍人さん?」
レオは先ほど現れ、今だ空を浮遊している戦艦を指さす
「...あなた達にも付いてきてもらいます。いいわね?」
「いいわねもなにもないでしょう。そんな銃突きつけられてたら」
「...この中でトレーラーを運転できる人はいる?」
「え...まぁできますけど」
「ならあそこから6番のトレーラーをここまで運んできてほしいの」
「それに何か意味があるんですか?」
「そこにはあのモビルスーツのバッテリーが入っているのよ」
「そういうことなら...」
「俺も行くよ」
マリューの指示でサイとトールがトレーラーのある方向へ駆け出した
「あなたの機体は?」
「節約しながら戦ったのでエネルギー的にはまだ大丈夫です」
「あの戦闘で節約、ですって...本当にあなたは一体...」
「その話も含めて後ほど。自分の分も取ってきます」
「え、えぇ...」
「あ、私も手伝います」
サイ達とは違いゆっくり歩いてノワールの予備パーツなどがある倉庫まで進むレオとそれを追うミリアリア
「あの」
「はい?」
「ありがとうございました。助けてくれて」
「いいですよお礼なんて。自分の身を守ろうとしたら偶然、ってことなだけから。それを言うなら俺よりもキラに言うべきなのではないですか?」
「え、なんで...」
「よく見てましたから。あなた達が一緒にいるのは。大切な友達を守るためにキラは...」
「ッ!?そう、ですね...(疑問に思ったのはそこじゃないんだけど...)」
なぜキラがあの機体に乗っていたこと知っているのか聞きたかったミリアリアだったが、レオの言うことも間違っていないので聞き返すことはしなかった
「さて、どんどん積み込んじゃいましょう。フォークリフトお願いできますか?」
「うん。わかった」
レオが荷物運びにトレーラーを3往復終える頃には戦艦が可能な限り地面スレスレまで高度を落として停滞していた
「こりゃ俺達が運ぶパターンだな、キラ」
「そうみたい。さっき軍人の人からお願いされたし」
「だろうな」
「ねぇ、レオくん」
「話したいことがたくさんあるな。でもそれも後だ。とりあえずお前の大切な友達を安全なところに送ってからにしよう」
「そうだね」
レオは不安げな表情で何か言いたげだったキラの肩をポンっと叩いて自分の機体に乗った。そしてレオとキラの手によって運ばれた艦の中で待っていたのは地球連合軍の軍服を着た者達だった
「ラミアス大尉!」
「バジルール少尉!」
マリューの帰還を一番に敬礼で迎えたナタル・バジルール。地球軍所属の少尉だ
「ご無事で何よりでありました」
「あなた達こそ」
「ん?おいおいなんだありゃ。子供じゃねぇか」
ナタルと共におり他の軍服を着た者とは別の、作業着のようなものを身に纏った中年オヤジ感のある者、整備士のコジロー・マードックはモビルスーツから降りてきたキラを見て驚きの声をあげる
「ラミアス大尉、これは一体...それに、もう1機...」
「...」
「へぇ〜。まさかあんな子供が操縦をしてるなんてな」
またも合流者。今度は先ほどまで宿敵ラウ・ル・クルーゼと戦闘をしていたムウ・ラ・フラガだった
「地球軍、第七機動艦隊所属のムウ・ラ・フラガ大尉だ。よろしく」
「第二宙域第五特務機関所属、マリュー・ラミアス大尉です」
「同じくナタル・バジルール少尉であります」
軍の人間らしく全員敬礼で挨拶をとった
「乗艦許可を貰いたんだが、この艦の責任者は?」
「...この艦の責任者他主たる関係者は戦死されました。よって今はラミアス大尉がその任にあると思われます」
「艦長が!?そんな...」
「やれやれなんてこったい。ともかく乗艦許可をくれよラミアス大尉。俺の乗ってきた艦も落とされちまってね」
「え...あ、はい。許可致します」
「で、あれは?」
「ご覧のとおり民間人の少年です。戦闘中に逃げ遅れていた彼を発見、やむなくGに乗せました。名はキラ・ヤマト」
「ふ〜ん」
マリューから紹介があったキラのことを興味深げに見るムウ
「彼のおかげで先にジン1機を撃退し、あの機体だけは守ることができました」
「ジンを撃退!?あんな子供が...」
マリューの発言がどれほど衝撃的だったのか、軍人である全員がざわめく
「俺はあれに乗る予定だったひよっ子共の警護で来たんだがね。そいつらは?」
「タイミング的に長官挨拶に赴かれていたときだった時に攻撃を受けたので。おそらく共に...」
「そうか...」
ムウは不意にキラに近づく
「な、なんですか...」
「キミ...コーディネイターだろ?」
「...はい」
『ッ!?』
「おい!」
キラが偽ることなく答えるとすぐさま周りから銃を向けられた。するとトールがキラを庇うように前に出た。サイやカズイも銃を持ってる奴らを睨みつけている
「なんなんだよ!キラは敵じゃねーよ!」
「トール...」
「さっきの見てなかったのかよ!どういう頭してんだよお前ら!」
『速やかに銃を下ろせ』
「っ!?」
声がしたのは未だ降りてきていなかったレオの乗るノワールからだった。そして手に持っている小型ビームライフルの銃口は軍の方に向いていた
『彼らに危害を加えるのであれば今すぐにこの艦を内部から破壊する』
「銃を下ろしなさい」
マリューはすぐさまキラに向けられている銃を下ろさせるよう命令を出した
「ラミアス大尉!あれは一体なんですか!」
「レオくん。降りてきてもらえないかしら」
『応じることはできない。キラやキラの友人達があのように銃を向けられるならなおさらな』
「貴様!上官の命令に!」
「バジルール少尉!」
マリューの指示に従わないどころか反抗的な態度を取るレオに対してナタルが声を上げるもすぐさまマリューが注意する
「なっ!なぜですラミアス大尉!」
「あれに乗っているのも、ただの民間人なの。よって私の命令に従う権限はないわ」
「そんな!」
「いやすまん。こんな騒ぎにするつもりはなかったんだ。俺はただ聞きたかっただけなんだ」
「フラガ大尉」
「俺は道中これのパイロットになる奴らのシミュレーションを見てきたけどさ、あいつら動かすだけでも四苦八苦しててさ。やれやれだな」
「大尉どちらへ?」
「どちらって…俺は被弾して乗艦したんだし。それに外にいるのはクルーゼ隊だぜ?」
「「ッ!?」」
「あいつはしつこいぞ〜?」
クルーゼの名前を聞いて全員が目を見開く。それほどクルーゼ隊は恐れられているようだ
それから補給や整備が急ピッチで行われた
「まったくいいように使ってくれる。キラ達の安全を保証するなんて言われちゃ手伝わなわけにはいかないが...」
キラ達はあの後中へ案内されたのだがノワールから降りる意思のないレオは物資の搬入など手伝わされていた
「こちとらフリーダムとかみたいにエネルギー無尽蔵ってわけじゃないってのに。ん?」
ぶつくさと文句たれていたレオは正面モニターでミリアリアがこちらに近づいてくるのを見てコックピットを開けた
「どうかしました?」
「これ。持ってけって軍人さんが」
「ん?」
手渡されたのは紙パックと飲み物のボトル。中にはサンドイッチが入っていた
「腹ごしらえしてこの後も仕事しろ、ってことなんですかね」
「ふふっ。頑張ってね」
「他人事だと思って。でもなんでハウさんが?」
「ミリアリアでいいよ。それに敬語も。キラと話すときみたくフランクでいいから。同い歳なんだし」
「そう言うなら。でもいいのか?」
「何が?」
「トール・ケーニヒ。彼氏なんだろ?彼氏ほったらかして他の男のところになんて」
「なによその言い方。せっかく持ってきてあげたのに」
「感謝の極み。この御恩は幾年かかろうとお返しする所存」
「なんか腹立つ~...やっぱりさっきまでの方がよかったかも〜」
「クーリング・オフは適応外になります」
「訴えてやる」
しかしここで警報が鳴る。敵だ...