ガンダムSEED 〜守るための戦い〜 作:てこの原理こそ最強
明朝早く。霧が立ち込めている道を進む1台の車の後に2機のモビルスーツが続く。行き着いた先は崖に模された大きなゲート
「ここがモルゲンレーテの工場か」
中に入ると荷物運搬用のエレベーターに乗せられ地下深くへ。そしてまた新たなゲートが開くと数人の人間がレオとキラを待っていた
『話は聞いてるかしら?』
その中の1人、中央に立っていた女性が2人に向かって話しかけた
『とりあえず降りてきてもらえる?』
その女性の指示に従いレオとキラは機体から降りて奥へと案内された
「ここって...」
「ここなら機体の完璧な修理ができるわよ。いわばお母さんの実家みたいなもんだから」
「うまい例えをしますね」
「あら、褒めてもらって嬉しいわ」
奥へ案内された先。そこにはストライクやノワールに似た機体があった。しかも複数
「あなた達に見てもらいかったものがこれよ」
「これは...」
「そう驚くこともないでしょ?あなたもヘリオポリスでストライクを見たんだから」
「そうですけど」
「これが中立国オーブという国の本当の姿なんだよ」
「あ、カガリ...」
「どうしたその顔。まぁあらかた想像はできるが」
「うっさい!」
カガリの頬は赤く腫れていた。それはまるで誰かに叩かれたかのように
「これは<M1アストレイ>。モルゲンレーテ社製のオーブ軍の機体よ」
「はぁ」
「これはオーブの守りだ。お前も知ってるだろ?オーブは他国を侵略しない。他国の侵略を許さない。そして他国の争いに介入しない。オーブがその信念を守るだけの力さ」
「力...」
「オーブはそういう国だ。いや、そういう国だった。父上が裏切るまではな!」
「え...」
「あら、まだおっしゃってるんですか?そうではないと何度も説明したでしょう?ヘリオポリスが地球軍のモビルスーツ開発に手を貸していたなんてウズミ様は...」
「黙れ!そんな言い訳が通るか!国の最高責任者がそれを知らなかったで済まされることか!」
「だから責任はお取りになられたではありませんか」
「職を叔父上に譲ったところであーだこーだと口を出していれば結局何も変わらんではないか!」
「それは仕方ありません。ウズミ様は今のオーブに必要な方なんですから」
「あんな卑怯者のどこが!」
「はぁ...あんなに可愛がっていらっしゃったお嬢様がこんなんでは、ウズミ様も報われませんわね...」
「それは俺も思います」
「なんだと!」
カガリが騒ぐ中女性の意見に対してレオも賛同する
「お前は少し考えることをした方がいい。国のためにしていることを娘は理解してくれず、おまけに家出したと思ったら自分の心残りだったものと一緒に帰ってくる。それに昨日のあんな騒ぎを起こされて。同情しても仕方ない」
「あら、まだ子供なのに深いところまで理解してくれるのね」
「まぁ」
「彼の言う通りですよ。だから平手打ちされも文句は言えませんね?」
「えっ...」
「ふん!」
キラはようやくカガリの頬が赤く腫れているのか理解した
「こんな子は放っておいて。2人共来てちょうだい」
さらに奥へ案内されるレオとキラ。そこには管理室のような場所。そしてさらに奥。練習場のような広い場所に先ほど紹介されたM1アストレイが3機立っていた
「アサギ、ジュリ、マユラ」
『『『はーい!』』』
女性がおそらく3機のパイロットであろう名前を呼ぶと、先生からさされたような返事を返す女性の声がする
『あれカガリ様?』
『あら本当』
『帰ってきたの?』
「悪かったな...」
「おしゃべりはいいから。始めて」
『『『はい!』』』
女性の指示で機体はそれぞれ動き出す。しかしそれはレオやキラとは比べ物になるはずもないほど遅かった
「相変わらずだな」
「でも倍近く早くなったんです」
「けどこれじゃあ、あっという間にやられるぞ...なんの役にも立ちやしない、ただの的だな」
『あ、ひっどーい!』
「本当のことだろ!」
『人の気も知らないで!』
「敵だって知っちゃくれないさ」
『自分は乗れもしないくせに!』
「言ったな!じゃあ代わってみろ!」
「はいはい、じゃれあいはそこまで!」
3機のパイロット1人1人にツッコミを入れるカガリ。しかしカガリは本当にお嬢様なのだろうか、とレオは考えてしまう
「ただカガリ様の言うことも尤もで...私達はあれをもっと強くしたいの」
「なるほど。そのための俺達ですか」
「話が早くて助かるわ」
「なるほど...」
「さすがのキラでも俺らの呼ばれた理由がわかるか」
「うん。あれのOS開発...ですよね?」
「その通り。コーディネイターって人の考えてることまでわかっちゃうの?」
「そんなまさか。これだけお膳立てされれば誰でもわかりますよ」
「そう。でもその通りよ。自己紹介がまだだったわね。私は技術主任のエリカ・シモンズよ。よろしく」
「あ、はい」
「お手柔らかに頼みますよ?俺らだってできないこともありますから」
「大丈夫よ。無理させるつもりはないから」
エリカが握手を求めてきたので1人ずつその手を取った
「じゃあとりあえず俺もあれに乗せてもらっていいですかね?」
「え?」
「乗ってみないとわからないこともあります」
「そう、わかったわ。アサギ、ちょっと彼と変わってもらえる?」
『えー!』
「えーじゃないの。早くなさい」
『はーい...』
「キラはどうする?せっかくだから俺と模擬戦でもするか?」
「えっ!」
「「ッ!?」」
いきなりのレオからの提案にキラも驚くがその場にいたエリカとカガリの方が興味津々と言いたげにその提案の先をドキドキしながら聞いている
「やめとくよ。できれば模擬戦だとしてもレオくんとは戦いたくない」
「そうか。すまない、軽はずみなことを言った」
「ううん、大丈夫だよ」
キラが断ったため地球軍に味方するコーディネイター2人による模擬戦は行われなかった。エリカとカガリはすごく残念そうにしている
アサギに変わってM1アストレイに乗ったレオはOSを確認して操縦桿を握りノワールを操作するように動かしてみた
『えっ!?』
『うそっ!』
その動きを見てキラ以外の全員が目を見開く。レオの動かすM1アストレイは先ほどよりもさらに倍以上早かった
「うそでしょ...」
「これは驚いたわね...」
「なんなんだよあいつ...」
その光景を見ていたアサギ、エリカ、カガリも口を閉じるのも忘れるほど驚いていた
『思ったよりOS酷くないですよ。作った人が優秀なんでしょうね』
「そ、そんな...褒めてもなんも出ないわよ...?」
「そう言うわりには嬉しそうじゃないか」
『シモンズ主任でしたか。それは失礼しました。ただ動かした感じ、重く感じます。キラ、見ててどうだ?』
「うん。なんだか機械が動いてるって感じがする」
「ッ!」
レオの操縦感覚に加えてキラの指摘にも驚かされるエリカ
『了解。多分一番修正しなきゃいけないのはそこだな』
「そうだと思う」
『あとですり合わせといこう。シモンズ主任ありがとうございました。降りますね』
「え、えぇ...ジュリ、マユラ。あなた達もいいわよ」
『あ、はーい...』
『わかりました...』
レオと同時に訓練を終了した他の2人。機体から降りた2人を見たレオはその落ち込んだ様子の2人に声をかけた
「あの」
「はい?」
「そんな気を落とさないでください。普通なら動かすだけでもすごいことなんですから」
「もしかして、慰めてくれてる?」
「まぁ」
「ありがとね...」
人によっては自分よりも上手に扱える人からの嫌味とも思える慰めを受けた女性1人はふっと笑って感謝を伝える
「そもそも俺が特殊なんです。聞いてるかわかりませんが俺はコーディネイターですので」
「えっ!」
「そうなの!?」
「はい。これからあの機体をもっと扱いやすようにするよう依頼を受けました。全力で取り組みます。あなた達がカガリの言うただの的にならないために」
「「ッ!」」
レオの言葉は2人の胸に深く突き刺さった
(え、うそ...よく見たらすごいイケメン...)
(同い年?いや見た目は年上っぽい...?)
「どうかしましたか?」
2人は自分達がトロンとした目で見ていることをレオに気づかれてしまった
「あ、ごめんね!」
「いえ別に」
「あ、あの!」
「はい」
「またアドバイス、もらっていいですか...?」
「もちろんです。なんでも聞いてください」
「本当ですか!?じゃあ…れ、連絡先を...!」
「あ、私も私も!」
「あー!!!」
レオに連絡先を交換しようと迫るジュリとマユラ。するとそこにアサギが駆けつけた
「なんか2人仲良くなってる!」
「げっ...アサギ...」
「私も混ぜろー!!!」
「ちょっ!なに!」
「やっ!変なとこ触んないでよ!」
「...(やっぱ死なせられんよな、この3人も...)」
アサギが突進してきて目の前で戯れ合う3人。そしてそんな3人を心配そうな表情で見つめるレオ。しかしそんなレオ、薄着でいる3人の胸元をチラチラと視線に捉えているのは内緒の話
レオとキラはM1アストレイのデータを持って一旦アークエンジェルに戻った。そして2人でそのデータを解析しているとフレイが現れる
「やぁフレイ」
「一緒にいたのね」
「まぁな。他のやつらは?」
「なんか家族と会えるんだって」
「そうか。そりゃいい話だな」
「...。キラは?」
「僕?」
「両親。来てるんでしょ?」
「うん。でも、僕はいいんだ...」
「そう...」
両親の話をした途端キラの表情が曇った。だからなのかフレイはそれ以上聞くのをやめた
「アンタは?」
「俺か?」
「他に誰がいるって言うのよ」
「なんでそんなケンカ腰なんだ」
フレイから聞かれて少し考える素振りを見せるレオ
「2人には話しておいていいか」
「「?」」
「実はな…俺、親の顔を知らないんだ」
「「ッ!」」
キラとフレイはレオの言葉に衝撃を受け目を見開く
「親がどこの誰で、ナチュラルなのかコーディネイターなのかも俺は知らない。なんで俺が生まれてきたのかも」
「じゃあ、今まで...」
「小さいころは孤児として施設に預けられてた。でもその施設も大変なところでな。仲間と協力して脱走した」
「そう、なんだ...」
「他のやつらには内緒にしておいてほしい。秘密ってわけじゃないが聞かされていいもんではないから」
「うん...」
「わかったわ。約束する」
「助かる」
レオにそんな過去があったなんて知らなかった2人。だた内容が内容なだけにレオに言われずとも口外は絶対にしないと心に決めたのだった
「ところでフレイはキラに用があったのか?」
「え?まぁそんなとこ」
「なら少し休憩にするかキラ」
「え、でも...」
「おいおい。せっかく気を遣ってんだから察してくれ」
「...」
「あっ...」
レオはニヤリと笑いながらフレイの顔を一瞥する。そしてキラとフレイの目が合うとフレイは頬を赤くしてキラの目を睨みつける
「2人の時間も大切だぞキラ?俺は自分の部屋で仕事してるから。そうだな、2時間後にまた集合しよう」
「わかった。ありがとレオくん」
「避妊はしろよ?」
「なっ!?」
「変なこと言うんじゃないわよ!!」
「2人とも初心だね〜」
「うっさい!さっさと行け!!」
レオはフレイから追い出されるように廊下へ出た
「叶うことならずっと続いてほしいものだな」
レオはキラとフレイの幸せが今後も続くよう願いながら廊下を歩いていった