ガンダムSEED 〜守るための戦い〜 作:てこの原理こそ最強
次の日、レオとキラは再びモルゲンレーテの工場を訪れた。そして2人で作ったOSをM1アストレイに組み込み実際に動かしてもらうようエリカに伝える
「じゃあアサギ。始めてちょうだい」
『わかりました!』
今回の実験を行うのはアサギ。管制室にはエリカの他にジュリとマユラ、それと今回はムウも見学に来ていた
訓練が開始されて動き出すM1アストレイ。しかしその動きは先日とはまるで違う。機体が変わったと言われてもおかしくないほどの動きを見せていた
『なにこれっ!』
「え...」
「マジ...?」
実際に動かしているアサギ、管制室で見ているジュリとマユラまでもその動きに驚きを隠せない
「新しい量子サブルーチンをシナプス融合の代謝速度を40%向上させ一般的なナチュラルの神経接合に適合するようイオンポンプの分子構造を書き換えました」
「この短時間でそんなことを...すごいわね」
「ありがとうございます」
「俺が乗ってもあれぐらい動かせるってこと?」
「えぇ。その通りですわ少佐。お試しになります?」
「相手役なら俺がやりますよ」
「おいおい勘弁してくれ。そんなこと言ってこれを口実に今までの鬱憤晴らすつもりじゃないだろうな...?」
「あ、バレました?」
「冗談のつもりだったんだが...」
ムウの相手をレオが買って出たがムウの言った冗談がその理由をたまたま言い当ててしまったらしい
「まぁ冗談はさておき。フラガ少佐でもあれぐらい使いこなせると思います」
レオはチラッと横目でジュリとマユラが「少佐だから仕方ないよね...」とでも言いたげな顔をしているのが見えた
「それでも、今のところは操縦の慣れている彼女達にコテンパンにされるでしょうがね」
「「ッ!?」」
「言ってくれるねぇこいつぅ...」
彼女達の士気のためにもフォローを入れておいたレオ。彼女達もその言葉にお互いに顔を見合わせ笑顔が戻った
「アサギ、上がっていいわよ」
『はーい!』
「とりあえずはこれでいいですかね?」
「いいもなにも想像以上よ。ありがとう」
「よかったです。じゃあ僕はストライクの方に行きますね」
「じゃあ俺も」
「えー!」
「ぐぇっ!」
キラと一緒に退散しようとするレオの腕を掴んで止めるジュリ
「私達も乗るから見ててほしいな〜」
「いやでも...」
「アドバイス、してくれるって言ったよね?」
「確かに言いましたけど...」
「ちょっと2人とも。彼にだって自分の機体の方があるんだから」
両腕をジュリとマユラに拘束されたレオ。しかしエリカがそんな2人に注意する
「また今度見ますので...」
「ちぇ〜。しょうがないな〜」
「約束だよ?」
(なんで俺が妥協した感じになってるのか...)
「まったくあなた達は...ごめんねレオくん」
「いえ。早くシモンズ主任の期待に応えたくて必死なのでしょう」
「そうじゃないと思うけどね...」
「はい?」
「いいわ。あなたも早く行きなさい。少佐達が待ってるわよ?」
「あ、はい」
レオは待っていたムウとキラと共に管理室を出た。閉じた扉の向こうから『レオくんはー?』とアサギの声が聞こえてくるが気にしないことにした
「モテる男は羨ましいね〜」
「はい?」
「いいやなんでも。そういやキラ、家族との面会断ったんだって?」
「えぇ、まぁ...」
「そりゃまたなんで」
「今の僕は軍人なので」
「軍人でもお前はお前だろ。会いたがってるぞ、きっと」
「...。今会っちゃったら聞いちゃいそうなんです」
「...」
「なにを?」
「なんで僕を...コーディネイターにしたの、って...」
「ッ!」
『トリィ』
「あ、こらトリィ!」
キラが家族との面会を断ったと心配したムウだったが今までの境遇でナチュラルである家族との間に知らずのうちに溝ができてしまっていたキラにそれ以上言葉をかけることができなかった
「キラだって家族が嫌いになったわけじゃないと思います」
「レオ...」
「ですがこんな状況です。もし自分がナチュラルで普通の子供だったら...そう考えてしまうのでしょう」
飛び出してしまったトリィを追いかけて出ていったキラ。そしてそのキラもレオは追った
「どこ行っちゃったんだ?トリィ!」
「あっちはどうだ?」
トリィを追って外へ出たキラとレオ。しかしトリィを完全に見失ってしまった。ただ
「あっ...」
柵の外でこちらに近づいてくる1人の少年。手にはトリィもいた。キラもそれに気付きゆっくりと近づく
(え...は?ちょっと待て...)
柵の内と外。手を伸ばせば触れれらる距離。2人はお互いにその姿をしっかりと目に焼き付ける
「君、の...?」
「う、ん...ありが、とう...」
「おい!行くぞ!」
少年はトリィをキラに手渡す。そして仲間の1人から呼ばれた少年は踵を返しゆっくりと仲間の元に戻ろうとする
「昔友達に!」
「ッ!」
「大切な友達にもらった...大切なものなんだ......」
「そうか...」
キラが伝えた言葉。それは今言う必要のあったことなのか。そしてその言葉の真意は...
一方レオはキラの方などまったく気にしておらず、むしろキラと対面した少年の仲間の1人、3人いる仲間の中で唯一
(なんで...なんでニコルが女ー!!!!?)
2日後。ようやくアークエンジェル出航の日となった
「大丈夫ですってば!」
「...」
出航できることには嬉しい限りだ。しかしここでトール・ケーニヒがスカイグラスパー2号機で出撃すると言い出した。そのことに関してキラはもちろん、ムウやレオまでも心配する
「シミュレーションだってもうバッチリですし。やれますよ!」
「確かにこいつが2機出られるなら助かりますがね。でも前の嬢ちゃんみたいなこともありますし...」
「トール!」
「ストライクとノワールの支援と上空監視だけだよ」
「それはバジルール中尉の命令?」
「いえ、志願したんです!俺だって頑張んなきゃ!」
「それはミリアリアとは話したのか?」
「いや?だってミリィには関係ないだろ?」
「このバカが...」
「は?なんでだよ!」
レオの小声で言ったと思った嘆きはトールにしっかり聞こえていた。しかし理由は説明しなかった
『ヤマト少尉。上部デッキへ。繰り返す。ヤマト少尉は上部デッキへ』
「なんだ?」
「どういう...」
「行ってこいキラ」
「レオくん。何か知って?」
「いや何も知らない。だが艦内放送されてるってことはそれだけ重要ってことだろ?」
「うん。わかった」
レオに言われてキラは急いで上部デッキに向かった
アークエンジェルはオーブ軍艦隊と共に出航した。オーブ領海付近まで接近の後、オーブ軍艦隊は反転しアークエンジェルから離脱した
「レオくん...」
「いるんだろ?ザフトが」
「うん」
キラがパイロットスーツを着て更衣室から出るとレオが立っていた
「さっき、どうしたんだ?」
「両親が来てるって。カガリが伝えに来てくれてて」
「そうか。会わなくて後悔したか?」
「ちょっとだけ...でも今はまだ会えないってカガリに伝えてもらったから」
「まだ、ね。じゃあ次会えるようにちゃんと生き延びないとな」
「うん」
キラは今回もパイロットスーツを着ずにそのままの状態で出撃しようとしているレオと一緒に自分の機体へ向かった
オーブ軍と別れたアークエンジェルは最大船速で北上した。しかし...
『データに反応!3、いや4!』
『機種特定。イージス、バスター、ブリッツ、デュエル!』
『待ち伏せ!?網を張られたのか!』
『対潜、対モビルスーツ戦闘用意!逃げ切れればいい!厳しいと思うが各員健闘を!』
『ECM最大強度!スモークディスチャージャー投射!両舷煙幕放出!』
『コンジット接続。補助パワーオンライン。スタンバイ完了!』
オーブを出発して早々例のザフト部隊を確認したアークエンジェル。すかさず煙幕で身を隠す
『レオ...』
「わかってる。トールのことだろ?」
『うん。私何も知らなくて...』
「ミリアリアに相談もせずに勝手に決めたことなんだって?帰ってきたらみっちりお説教してやれ」
『うん...』
「大丈夫だ。トールは絶対無事に戻す。」
『よろしくね。帰ってきたら絶対泣かしてやるんだから!』
「それは怖いな...じゃあ行ってくる」
レオに続いてスカイグラスパー2機も出撃。出撃直後煙幕を抜けるとそこにはバスターとデュエル。レオ達の姿も確認したのかビームライフルを放ってきたが全員がこれを回避
『うわっ!』
『上出来だ!』
「トール。早く上空へ」
『お、おう!』
『ストライクの支援任せたぞ!』
レオとムウが牽制を入れトールの乗るスカイグラスパー2号機は上空へと飛行した
『こちらケーニヒ!ストライクへ敵の座標データを送る!』
『トール...了解!』
ランチャーストライクを装備しアークエンジェルの甲板に乗ったキラはトールから送られてきた敵データを元に砲撃。煙幕で姿は見えないながらも正確な射撃を敵にお見舞いしていた
「お前らの相手は俺だ」
『俺もいることを忘れるな!』
キラがイージスとブリッツへ射撃を行なっている際にその攻撃元を狙われないようデュエルとバスターを牽制するムウとレオ
「今までにない戦い方で浮ついてる?なら!」
バスターは目の前を通るスカイグラスパー1号機を迎撃中。レオはその隙にバスターの乗るグゥルを撃破した
「フラガ少佐!ストライクの換装を!」
『おっしゃ!行くぞキラ!届け物落とすなよ!?』
『少佐!どうぞ!』
一旦その場を離脱するムウ。そのムウが追われないよう立ち回るレオ。目の前のデュエルはもちろん、イージスとブリッツにも牽制射撃を忘れない
ムウが煙幕に近づくとその煙幕の中からフェイズシフトを展開していないストライクが飛び出す。そしてスカイグラスパー1号機が装備していたエールストライクを切り離しそのままストライクは空中でエールストライカーへと換装したのだ
「ストライクが出てきて注意を向けるのはいいが、こっちに注意を向けなさすぎだ」
ストライクの出現に気を取られたデュエルを見逃さなかったレオ。イージスの射撃を右回転しつつ避けながらデュエルにビームライフルショーティを連射。攻撃に気づいたデュエルはすぐさま回避行動を取ったが最後の一撃を回避できずグゥルが被弾。高度を維持できず落ちていった
『レオくん!』
「あと2機だ」
『うん!』
エールストライカーに換装したキラはレオと共にイージス、ブリッツと対峙。するとどこからかブリッツに対してミサイル攻撃が飛んできた
『キラ!』
『トール!?』
それは急降下してきたトールの乗るスカイグラスパー2号機。その攻撃をシールドで防ぐブリッツにキラは急接近しビームサーベルでブリッツの右腕を斬り落とした
「...」
キラがブリッツを撃退したのを確認したレオはイージスに向き直る。接近してくるイージスに2連装リニアガンを放ちアンカーランチャーを海上にある岩場に突き刺した
「ウッ...!」
イージスが体制を立て直して再び射撃してくる。レオはアンカーランチャーを引っ張り強制的にイージスの底部へ機体を移動させそこからグゥルを撃ち抜いた
『キラ!ソードを射出するぞ!』
『トール!』
岩場に降りたイージスをアークエンジェルが底部イーゲルシュテルンにて射撃。その量にイージスはシールドで防ぐものの身動きが取れなくなってしまう
『うぉー!』
そこへソードストライカーに換装したキラが追い討ちをかけイージスのビームライフルを斬り落とした
『撃ち方止め!ヤマト少尉!深追いするな!』
ナタルが注意を呼びかけつつも岩盤上でキラとアスランが正面に向かい合った
『下がれアスラン!君達の負けだ!』
『何を!』
キラとアスランの通信。キラの忠告もアスランは当然聞き入れることなくビームサーベルを展開し斬りかかる
『やめろ!君と戦いたくない!』
『何を今更!撃てばいいだろ!お前もそう言ったはずだ!お前も俺を撃つと、そう言ったはずだ!』
『クッ!!』
キラはアスランの聞き分けのなさに怒りイージスの攻撃をいなして殴り飛ばす。そこでイージスのエネルギーが尽きたのかフェイズシフトが解除された
『アスラン!』
『クーッ!!』
『アスラン下がって!』
イージスに向けてシュベルトゲベールを振りかざすキラ。しかしそこへミラージュコロイドを展開していたブリッツが特攻を仕掛けてきた
『なっ!?』
ブリッツは貫徹弾の内一本を手に持ちキラに突き刺そうとする。それに対応しようとキラは咄嗟に振りかざしていたシュベルトゲベールを横にして突っ込んできたブリッツのコックピットに当たるような軌道になってしまった
しかしここに上空からレオが急降下しストライクの手元を少し下に押し自分もビームブレイドでブリッツの上部を斬り裂いた。斬り裂いたのがエンジン部分だったためレオとキラが離れると同時にブリッツは爆発した
「キラ!先に戻れ!」
『ッ!?』
そこへ海に落ちたバスターとデュエルが合流。ブリッツの爆発を見て敵討ちとでも言いたげにレオやキラにこれでもかと発砲を繰り出す
『ヤマト少尉!シュヴァルグラン少尉!戻れ!深追いする必要はない!』
アークエンジェルがストライク、ノワールの帰還を援護すべく底部イーゲルシュテルンでの攻撃を再開。レオもそれに混ざるように
「キラ!早く!」
『う、うん!』
レオの呼びかけにキラは先にアークエンジェルに向かって大きくジャンプした。レオはそんなキラがアークエンジェルへ移る援護をすべく一緒に飛び上がり、なおもデュエルやバスターへの足止め射撃を行った
「...」
あまりの弾幕の厳しさにこれ以上その場に留まることの危険を感じた敵はようやく撤退。それを確認したレオは片手に持つ物体に衝撃を与えないよう慎重に扱いつつキラの後を追うように帰還した