ガンダムSEED 〜守るための戦い〜   作:てこの原理こそ最強

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第二十四話

 

 

キラやレオが死闘を繰り広げ、そして最終的にMIAと認定されて結構な日が経った

 

「ダメよピンクちゃん。そちらは」

 

『認メタクナイ!』

 

安らかな風の音。鳥のせせらぎ。とても静かな場所。そこにピンク髪の少女がピンク色の小型ロボットと遊んでいた

 

そして建物からガラス張りの道伝いにつながっている同じく一面ガラス張りの部屋。その中にベッドが2つ。そのベッドに、キラとレオが眠っていた

 

「もう。ダメと言っているでしょう?」

 

『オ前モナ!』

 

「んっ...」

 

「あら?」

 

微かに声が聞こえた少女は部屋に入りベッドに近づく。先に目が覚めたのはキラの方だった

 

「こ、こは...」

 

「目が覚められましたか?」

 

「ラクス、さん...」

 

「はい。おはようございます」

 

完全には開ききらない目で周りを確認しピンク髪の少女、ラクス・クラインのこともぼんやりとした視界で捉えた

 

『ハロ元気!オ前元気カ!?』

 

「目を覚ましましたか?」

 

「マルキオ様。はい、今しがた」

 

ラクスの側にゆっくりと杖をついて歩み寄る男性、マルキオは目を覚ましたキラを見て優しく微笑んだ

 

「驚かれたのではないですか?ラクス様がベッドはどうしてもここにと聞かず」

 

「だってこっちの方が気持ちいじゃないですか」

 

「僕は...」

 

「オーブにいた私の元に現れたのがあなた方でした」

 

「レオ、くんは...」

 

「お隣におりますよ」

 

キラはかろうじて動く首を横に向け隣のベッドでまだ眠っているレオを確認した

 

「気を失ったあなたを私の元まで運ばれたのは彼です。彼は私にあなたのことを頼まれました。そしてそのまま倒れ一緒にここまで連れて来たのです」

 

「ッ!はぁ...はぁ...僕、僕は...!」

 

キラはアスランとの戦闘を思い出し呼吸を荒くする

 

「あなたはSEEDを持つ者ゆえに。そして隣には最高の友がおりますでしょう」

 

「ッ!」

 

キラはマルキオに言われてまたレオの顔を見る。そして涙を流す。感謝からなのか、それとも謝意からなのか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レオがようやく目を覚ましたのはキラが目覚めてからまた数日後のことだった

 

「レオ!」

 

「ん...ク、ライン...嬢...」

 

「むっ」

 

目を覚まして第一声に納得できかったラクスはかわいらしく頬をぷくっとさせる

 

「やぁレオくん」

 

「キ、ラ...」

 

「うん。今はもう少し休んで。また後で話をしよう」

 

「...」

 

キラの無事を安堵しキラの言葉を聞いてレオは軽く頷き再び目を閉じた

 

それから約2時間後、レオは再び目を覚ました

 

「目が覚めましたか?」

 

「あなたは...?」

 

「私はマルキオ。僭越ながらあなた方をこちらまで運んだ者です」

 

「マルキオ様...あっ!」

 

レオはあの島で倒れる前に目にした記憶が蘇った。あの戦闘で運よく生き残った自分は確かに浜辺に倒れていたキラを抱え今目の前にいるマルキオ導師の元を頼ったことを

 

「あの、ありがとうございました。キラのこと」

 

「いいえ。彼を助けたのはあなたです」

 

「そんなことは」

 

「ふっ」

 

自分の努力を否定するレオに対してマルキオは軽く笑ってしまう

 

「おはよう、レオくん」

 

「先に起きてたんだなキラ。こんな格好ですまない」

 

「ううん。仕方ないよ」

 

「おはようございます、レオ」

 

「これはクライ...「むっ」...ラクス嬢」

 

「ラクス、と。敬称は不要と前に言ったはずです。わたくし達はお友達なのですから」

 

「...。ラクス」

 

「はい!」

 

レオの目覚めとラクスとの会話にほのぼのとした気持ちになりつい笑顔がこぼれるキラ

 

「レオくん」

 

「ん?」

 

「改めてありがとう。助けてくれて」

 

「よせ。お互いに五体満足で生きてたんだ。まずはそれを喜ぼう」

 

「でも...」

 

「それに...ンッ!」

 

レオは重い体を起こそうとする。ツラそうな顔をするのでラクスがそっと背中を支える

 

「ありがとうラクス」

 

「いいえ」

 

支えてくれたラクスにお礼を言うレオに笑顔を見せるラクス

 

「なぁキラ。友達を助けるのは当然。お前もそう思わないか?」

 

「ッ!そうだね...でも、君は僕の命の恩人だ」

 

「俺だってマルキオ様がいなかったらどうなってたかわからない。そう言うならマルキオ様が俺達の命の恩人になる」

 

「ふっ。律儀な少年だ」

 

「そうですわね」

 

「そんなんじゃないですよ。痛つつ...当分リハビリが必要だな...」

 

体を動かすたびにあちこちに痛みが走るレオ。その度に表情が歪む

 

「仕方ないよ。僕も動けるまでだいぶかかったし」

 

「ではわたくしが支えて差し上げますわ」

 

「ならお願いしようか」

 

「はい!」

 

ラクスが差し出した手をレオは取りゆっくりと外へ出た。久方ぶりに浴びる太陽の光だった

 

「そういえばなんでラクスがここに?」

 

「どうしてと言われましても、ここはわたくしのお家ですので」

 

「マルキオ様が気絶した僕達をここに連れてきてくれたみたい」

 

「私が知る限り一番安全なのはこちらかと思いまして」

 

「そうでしたか。ありがとうございます」

 

まだ疑問は残るものの、まずは体を動かせるようにするのが先決だと考えたレオは1歩、また1歩とゆっくり足を前に出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからまた数日。レオもだいぶ体が動くようになってきた。今日は雨のため中でお茶をしていた

 

「はぁ」

 

「キラ?どうかしたのか?」

 

「あ、うん。僕、ここにいていいのかなって...」

 

「...。アークエンジェルのみんなのことか」

 

「うん」

 

「失礼するよ」

 

そこへラクスの父、シーゲル・クラインがやってきた

 

「シーゲル様」

 

「そのままでいい。いつもいつもそんなかしこまる必要はないぞ」

 

シーゲルの登場にレオはすぐさま立ち上がりあいさつをしようとするもシーゲルはこれを静止。これにレオは軽く会釈だけして再び席についた

 

「やはりダメですな。導師のシャトルでも地球行きのものはすべて発進できなくなっています」

 

「そうですか」

 

ここ数日で地球へのシャトルが全面的に運航停止となっていた。それはマルキオやシーゲルが所有する個人シャトルにも適応されていた

 

『シーゲル・クライン様へ。アイリーン・カナーバ様より通信が入っております』

 

「なんだ?」

 

そこへシーゲル宛てに通信が入る。送り主はシーゲルと同じくプラント最高評議会議員のアイリーン・カナーバであった

 

「シーゲルだ」

 

『シーゲル・クライン!我々はザラに欺かれた!』

 

「どういうことだ?」

 

『スピットブレイクの目標はパナマではない!()()()()だ!』

 

「「ッ!?」」

 

アラスカ。その地名にレオとキラは心臓が飛び出るほど吃驚した。キラに至っては呼吸が荒くなり持っていたティーカップを落として割ってしまった

 

『彼は一息に地球軍の本部を落とす気だったのだ!そんなこと評議会は承認していない!』

 

「はぁ...!はぁ...!」

 

「キラ!」

 

「しっかりしろキラ!呼吸を整えるんだ!」

 

自分も同じくらい呼吸しづらくなったにもかかわらずレオは自分よりも呼吸が荒く過呼吸気味なキラに必死に声をかけ背中をさすった。そんなキラをラクスも心配そうに見つめる

 

「はぁ...んくっ...はぁ...。もう、大丈夫」

 

「そうか...」

 

本人の言う通り呼吸も安定し顔色もよくなったのでレオは手を離した

 

「行かなきゃ...」

 

「どちらへ?」

 

「地球へ...アラスカへ」

 

「なぜ?あなたが行ったところで、戦争は...」

 

「ラクス」

 

「レオ?」

 

ラクスの言うこともわかっているキラは明確に答えを出せず黙り込む。そんなキラに代わってレオが口を開いた

 

「わかってる。キラもわかってるんだ。たとえキラ1人、俺1人が行ったところで戦争は終わらない」

 

「では...」

 

「だが...何もしないままでは何も変わらいないんだ。何かしなきゃ終わるものも終わらない」

 

「...。ではまたザフトと戦う、と?」

 

レオはキラを一瞥する。するとキラは黙って首を横に振った

 

「戦わない。ザフトとも、地球軍とも」

 

「キラの言う通りだ。俺達は何とどう戦わなければならないのか。そして何のために戦争を終わらせたいのか。その意味が少しわかった」

 

「...。わかりました。お父様」

 

「行くのか?」

 

「はい」

 

「そうか。わかった、私の方も急ぎ準備しよう」

 

「はい」

 

「シーゲル様...」

 

キラとレオの意思を聞きラクスも心である覚悟を持った。そしてそんな子供達を見てシーゲルも何か動こうとしている。しかしそんなラクスやシーゲルに対してレオは申し訳なさそうな表情を浮かべた

 

「そんな顔をするなレオ。こんなバカげた戦争に君達のような若者を巻き込んでいるのは我々大人なのだ」

 

「ですが...」

 

「君の言ったとおりだ。動かねば何も変わらない。だから変えるため、終わらせるために動くのだ。私も、もちろん娘もな」

 

「その通りですわレオ」

 

「ラクス...」

 

「確かに君1人、ラクス1人が行動したところでこの戦争は終わらぬ。しかし心同じくするものが手を取り合い、同じ願いを持ち、同じ道を行けば自ずと未来は変えられよう」

 

「ッ!はい!」

 

レオの肩にポンッと手を乗せ自身の想いを伝えるシーゲルに胸を打たれたレオも決意を固めた

 

「では参りましょう。レオ、キラ」

 

「どこへ?」

 

「そうですわね。まずは、お着換えでしょうか」

 

シーゲルとマルキオとはその場でわかれラクスの案内で家の一室に入ったレオとキラ

 

「お2人はこちらに着替えてくださいね。あちらへ連絡を。ラクス・クラインは平和の歌を歌います、と」

 

「かしこまりました」

 

キラはラクスが言ったその言葉の意味がわからなかった。とりあえず用意されたザフトの軍服に着替える。そして車での移動となった

 

「あ、こうですからね?」

 

「ん?」

 

「ザフトのご挨拶です」

 

車の中でラクスは2人にザフトの敬礼作法を教える。確かにここで地球軍のものをやってしまうのはマズい

 

その後連れられたのはザフトの中でもごく一部の者しか立ち入れない立ち入り禁止区域

 

「こちらです」

 

「ッ!ガンダム!」

 

ライトが照らされ明るくなった格納庫の中。そこには2機のモビルスーツがそびえ立っていた

 

「これはZGMF-X10 Aフリーダム。そしてX-14A ユニティです。奪取した地球軍のモビルスーツの性能を取り込みザラ新議長のもと開発されたザフト軍の最新鋭機体だそうですわ」

 

「これを、僕達に...?」

 

「今のあなた方に必要な力と思いましたの」

 

キラはラクスの顔を見るもレオは目の前のユニティから目を逸らせないでいた

 

「思いだけでも、力だけでもダメなのです。だから...」

 

ラクスはレオの手を掴む。レオもそれでやっとラクスの方に目をやる

 

「あなた方の行きたいと望む場所にこれは不要ですか?」

 

「思いだけでも...」

 

「力だけでも...」

 

レオとキラは再び機体を見上げる

 

「キラ。すまないが先に行ってくれるか...」

 

「え...」

 

レオはラクスが握る手とは反対の方の手を強く握りしめる

 

「確かにアークエンジェルのことは心配だ。でも...」

 

「?」

 

レオは再びラクスと目を合わせる

 

「でも、これからのラクスのことも心配なんだ」

 

「...。そうだね。わかったよ」

 

キラはレオが言いたいことを理解しレオの言葉に同意した

 

「ありがとうラクス。これで僕は、行きたいところに行ける」

 

「えぇ。いってらっしゃいませ」

 

キラは容易されたザフトのパイロットスーツを身に着けフリーダムに搭乗した

 

「よろしかったんですの?レオ」

 

「あぁ。キラがいればとりあえずは問題ないと思う。さっきも言ったが、ラクスのことも心配なんだ」

 

「レオ...」

 

「俺達も行こう」

 

「はい」

 

キラの発進のためゲートが閉じる。ラクスはフリーダムに向かって手を振りレオも軽く手を上げ扉は完全に閉まった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地球軍<アラスカ基地>。ザフトによる大規模攻撃作戦の目標がパナマ基地と推測されたため本来ここにあるはずの戦力の大部分がパナマに移動している。しかしザフトの作戦目標はパナマではなくここ、アラスカだった

 

既にザフトによる降下作戦は開始されておりこれにより戦場は大混乱。敵の大部隊に対して地球軍側の応戦がまったく間に合っていない。そしてその中にはオーブを脱出後アラスカに到着していたアークエンジェルの姿もあった

 

「艦の損害率上昇!」

 

「クッ!司令部とのコンタクトは!?」

 

「取れません!どのチャンネルもずっと同じ電文が返ってくるだけですよ!各自防衛線を維持しつつ臨機応変に応戦せよって!」

 

「既に指揮系統が分断されています!艦長!これでは!」

 

「パナマからの救援隊は!?」

 

「んなもんねぇよ!」

 

アークエンジェル内も味方の呼応するように混乱していた。本部への通信途絶、状況不利、指揮系統分断、救援なし。艦長であるマリューを含めたクルー全員に焦りや不安が隠せないでいた

 

「ッ!友軍機接近!被弾しているもよう!」

 

「えっ!?」

 

モニターに移されたのは被弾して煙を上げている地球軍戦闘機。みるみるとアークエンジェルに近づいてくる

 

「まさか...着艦する気!?」

 

「そんな無茶な!」

 

「整備班!どっかのバカが1機突っ込んで来ようとしてるわ!退避!!」

 

すでに被弾して空きっぱなしになっている右舷ハッチにその戦闘機はむりやり着艦した

 

「艦長!」

 

「し、少佐!?なんでここに!」

 

緊急着艦した戦闘機からに乗っていたのはアラスカで転属を言い渡されアークエンジェルを降りていたはずのムウだった。ムウはブリッジに入ってくるなり慌ててマリューの傍に駆け寄った

 

「そんなことはどうだっていい!それよりすぐに撤退だ!」

 

「はい!?」

 

「聞いて驚け!この基地の地下にサイクロプスが仕掛けられている!作動したら半径10kmは溶鉱炉になるってサイズの代物がな!」

 

「えっ!?」

 

「どのみちこの戦力ではパナマからの救援は間に合わない!守備軍は全滅しゲートは突破される!そしたら本部は施設の破棄を兼ねてサイクロプスを作動させる!ザフトも守備隊も道づれにな!」

 

「そんなっ!」

 

「俺はこの目で見てきたんだ...これが、お偉いさん方が描いたシナリオさ...司令部は既にもぬけの殻。残ってるのはユーラシアの部隊とアークエンジェルのようにあっちの都合で切り捨てられたやつらばかりさ!」

 

「なっ!クッ...!」

 

ムウからの報告に絶句するマリュー。自分達は見捨てられた...そう思えても仕方ない作戦内容だった

 

「俺達はここで死ねと...そういうことですか!」

 

「撤退したと悟られないよう奮闘して、な...」

 

「そんなっ!」

 

マリューだけではない。その場にいる全員が悲劇的な声を上げる

 

「これが作戦だって言うんですか...?軍人だから...戦争だからって...命令通りに死ななきゃいけないんですか...?」

 

CICに座るミリアリアは残酷な現実を受け止めきれなかった。なぜ自分が...どうして私達が...そう思ってるのは全員かもしれない

 

「...。ザフトをおびき寄せるのがこの戦闘の目的だと言うのなら、本艦は既にその任を果たしたものと判断致します!なお、これはアークエンジェル艦長である私、マリュー・ラミアスの独断であり、乗員に一切の責任はありません!」

 

絶望を感じているクルーに対しマリューは立ち上がり宣言する

 

「本艦はこれより現戦闘海域を放棄!離脱します!僚艦に打電!我に続け!機関最大!左翼の湾部を抜けます!」

 

「脱出もかなり厳しいが諦めるな!俺も出撃る!」

 

「少佐...」

 

「心配しなさんな。忘れた?俺は不可能を可能にする男だってこと」

 

ムウは再びドックまで走り出した。そしてスカイグラスパー1号機に搭乗し発進

 

「ッ!後方よりデュエル!」

 

『こんなときに!』

 

「ウッ!取り舵20!回り込んで!」

 

「10時の方角よりモビルスーツ群!」

 

「きゃー!!」

 

「64から72ブロック閉鎖!艦稼働率43%に低下!」

 

アークエンジェルを狙うようにジンやディンといったザフトモビルスーツが多数攻め寄せてくる

 

「うわぁーもうダメだー!」

 

「落ち着けバカヤロー!」

 

「ウォンバット撃てー!機関最大!振り切れー!!」

 

しかしウォンバット発射口も破壊されアークエンジェル全体から煙が上がっている

 

「推力低下...艦の姿勢維持できません!」

 

アークエンジェルが残っている全武装で迎撃するもモビルスーツが減らない。そして1機のジンに弾幕を抜けられブリッジ正面を取られてしまう

 

「はっ!」

 

ジンはブリッジに向かってライフルを向けた

 

「うっ!」

 

「きゃー!」

 

「うわぁぁ!!」

 

銃口が光る。回避不可能。全クルーはここまで、そう思った次の瞬間...

 

 

 

 

 

ジンのライフルが上空から撃ち抜かれた

 

 

 

 

 

 

目を開けたマリューが見たのは見たこともないモビルスーツの背。翼のように背部についているそれを大きく広げアークエンジェルのブリッジ前で制空しているそのモビルスーツ。そしてアークエンジェルに通信が入った

 

「こちら、キラ・ヤマト」

 

 

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