ガンダムSEED 〜守るための戦い〜   作:てこの原理こそ最強

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第二十五話

 

 

プラント内にあるとあるコンサートホール。キラとの死闘を生き抜き島で取れているところをオーブ軍によって救助され、以前無人島で出会ったカガリとひと悶着あったもののつい先日プラントへ戻って来たアスラン・ザラが雨降る中その場所を訪れていた

 

しかし帰還早々聞いたのはオペレーションスピットブレイクが失敗した話、そして最新鋭の機体が2機奪取されたことだった。そしてさらに驚愕なことにその奪取に関与したのが自分の許嫁であるラクス・クラインだと疑われていることだった

 

「ラクス...」

 

アスランは自分の婚約者がそんなことするわけないと思いたかった。だから真相をつきとめるべくラクスを探していた。無論家にも立ち寄ったが既に捜索隊が入った後だったためそこには無惨な状態となった家屋のみしかなかった

 

「歌...」

 

建物に入ったアスランの耳にホールの中から聞き慣れた歌声が聴こえてくる。ラクスは中にいる。そう確信できることだった

 

建物の奥、ホールに入ってさらに奥のステージ上に彼女はいた。世界の歌姫には似合わない壊れた天井や壁の瓦礫だらけでできたステージ。そんな瓦礫の1つに腰かけて彼女は歌っていた

 

『ハロ!ラクスー!』

 

「まぁピンクちゃん!やはりあなたが連れてきてくださいましたわね、アスラン」

 

「ラクス!」

 

「はい?」

 

アスランがラクスの家を訪れた際に発見したラクスがいつも肌身離さず傍に置いているピンク色のロボット、ハロがアスランの服から飛び出しラクスの元へ。そんなハロに続くようにアスランもステージに飛び移った

 

「どういうことですか、これは...」

 

「お聞きになったからここへいらしたのではないですか?」

 

「では本当なのですか!?スパイを手引きしたというのは!」

 

「スパイの手引きなどしておりません。わたくしはただお渡ししただけですわ。キラに、そしてレオに。新しい剣を」

 

「キ、ラ...」

 

ラクスの口からキラの名前が出て自分の耳を疑うアスラン

 

「今のお2人には必要なもので、お2人が持つのがふさわしいものだから」

 

「な、なにを言ってるんです!キラは...あいつは...!」

 

「あなたが殺しましたか?」

 

「ッ!?」

 

さらにアスランはラクスがなぜ自分とキラが戦ったことを知っているのかと動揺する

 

「大丈夫です。彼は生きています」

 

「う、嘘だ!!」

 

思いがけないことに驚愕の嵐にあっているアスランはラクスに銃を突きつける。すると突如岩陰から男が1人現れラクスを庇うようにして前に出た

 

「レオ。大丈夫です」

 

「...」

 

飛び出してきたのはレオだった。ラクスにそう言われラクスの横に移動するレオだったが銃を突きつけるアスランを睨み続けている

 

「お前は...」

 

「オーブで一度会った。こっちの方がわかりやすいか。キラと一緒にヘリオポリスからずっとお前達と戦ってきた機体のパイロットだ」

 

「なっ!?」

 

アスランはなぜそんなやつとラクスが一緒にいるのかとラクスを見つめる

 

「い、一体どういう企みなのですか!ラクス・クライン!キラが生きているなどと...!地球軍のやつと行動を共にしているなど...!」

 

「マルキオ様がレオとキラをわたくしのところへお連れになりました。キラもあなたと戦ったと言っていましたわ」

 

「...。そうです、あの時俺が...だから、あいつが生きているはずがない!!」

 

「言葉は信じませんか?では自分でご覧になったものは?」

 

向けられる銃に怯むことなく淡々と話すラクス

 

「戦場で、久しぶりに戻ったプラントで何もご覧になりませんでしたか?」

 

「ラクス...?」

 

「アスランが信じて戦うものはなんですか!頂いた勲章ですか?お父様の命令ですか?」

 

「ッ!?」

 

「そうであるならばまたいずれキラと戦うことになるでしょう。無論レオとも。そして、わたくしとも...」

 

「な、んですって...」

 

ラクスは立ち上がり今だ銃を構えているアスランに無防備にもゆっくり近づく

 

「敵だというのならわたくしを撃ちますか?ザフトのアスラン・ザラ!」

 

「俺は...」

 

「ッ!ラクス...」

 

そこへ突然の訪問者。黒スーツに手には銃を持っている。どう見てもまったくありがたくない方の訪問者なためレオは再びラクスを庇うように前に出た

 

「お前達は...」

 

「ご苦労様ですアスラン・ザラ。さすがは婚約者ですね」

 

「なんだと...?」

 

「つけられたな、アスラン・ザラ」

 

「ラクス・クライン。国家反逆罪の疑いで拘束させていただきます」

 

「チッ!」

 

「うぉっ!」

 

今度は黒ずくめの者達から一斉に銃を突きつけられるラクス。しかし撃たれたのは黒スーツの中の1人だった。しかもそれは背後からだった

 

「ッ!」

 

敵が一瞬客席の方を気にした隙にレオはラクスを抱えて瓦礫の陰に入った。敵はすぐさま発砲してきたため間一髪だった

 

「ウッ!」

 

「ガッ!」

 

ステージ上にいる敵もどんどん減っていったのだが銃撃の中で1人レオ達の隠れる岩に接近する者が。しかしレオはその接近してくる敵の前に急に飛び出し下段回し蹴りで転ばせ手放した銃をすかさず蹴り飛ばした

 

「ウッ!」

 

倒れた敵を駆けつけたザフトの軍服を着た者がとどめをさした

 

「レオ、お怪我は...」

 

「大丈夫」

 

「そうですか」

 

銃撃戦が終わりレオが心配で駆け寄ったラクスはレオに怪我がなくて安心する

 

「ラクス様、もうよろしいでしょうか?我々も行かねば...」

 

「わかりました。マルキオ様は?」

 

「無事出発されました」

 

「それはよかった。アスラン、ピンクちゃんをありがとう」

 

「...」

 

「レオ、行きましょうか」

 

「あぁ」

 

レオはラクスに続いてアスランの横を通りすぎる

 

「キラは地球だ」

 

「ッ!」

 

「キラもお前に会いたがってる。戦いの場ではない場所でな」

 

すれ違いざまにキラの向かった場所をアスランに伝えたレオはラクスと共にその場を去った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アラスカを脱出したアークエンジェルと合流したキラは前と同じように地球軍の軍服に着替えてブリッジに入った

 

「キラ...」

 

「キラ!」

 

サイ、トール、カズイがすかさず入室したキラに駆け寄る

 

「みんな。無事でよかった」

 

「それはこっちのセリフだっつーの!」

 

「生きててよかった...」

 

テンションの上がったトールはキラと肩を組みこれでもかと喜びを表現している。サイやカズイもまたキラと無事に再会できて心から嬉しそうにしている

 

「キラくん...」

 

もみくちゃにされているキラの元にマリューが近づきキラを呼んだ

 

「いろいろとお話しないといけないですね」

 

「そうね」

 

「僕も聞きたいことがたくさんあります」

 

「そうでしょうね」

 

「さっきのスーツ。お前ザフトにいたのか?」

 

横からムウが質問する

 

「そうですけど、僕はザフトではありません。それにもう、地球軍でもないです」

 

「え...?」

 

「その辺をお話しする前にまず、僕が乗ってきた機体に関してお話します」

 

トールから解放されたキラが真剣な表情で話し出す

 

「補給や整備は今のところ必要ありません。そしてあれには"ニュートロンジャマーキャンセラー"が搭載されています」

 

「ニュートロンジャマーキャンセラー?」

 

「ってことはあれって核で動いてるってことか...?」

 

「そんなもんどっから...」

 

「データを取りたいと言うのであればお断りして僕はすぐさま艦から降ります。奪おうとするならば敵対してでも守ります」

 

「キラくん...」

 

「お前...」

 

「それが、あれを託された僕の責任です」

 

マリューはムウは今までにない表情をするようになったキラに対してすごく驚いた

 

「わかりました。あれには一切触れないことを約束します。整備班にもすぐに伝えて!」

 

「は、はい!」

 

マリューの指示にオペレーターがすぐさま整備班へ通信を繋いだ。その後今回のアラスカでの件についてキラはマリューやムウから話を聞かされた

 

「それが作戦だったんですか?」

 

「えぇ...私たちは何も聞かされていなかったの」

 

「本部はザフトの攻撃がパナマじゃなくアラスカだとわかってたんだろうな。じゃなきゃこんな大々的な作戦練れるわけがない」

 

「同じでした。プラントでも」

 

「え?」

 

キラのその言葉をよく理解できなかったマリュー。そのことについて聞き返す間もなくキラは話を続けた

 

「それでマリューさん達はこれからどうするつもりなんですか?」

 

「どうって...」

 

「今のところ通信はまったく効きません」

 

「応急処置をして自力でパナマですか?」

 

「すんなり受け入れてくれるかねぇあちらさんは」

 

「現在本艦は命令なく戦列を離れたと捉えられ敵前逃亡艦に認定されるでしょうね...」

 

「原隊に復帰しても軍法会議か...」

 

「また罪状が追加されるわけね...」

 

「こうなってくるとなんのために戦っているのかわからなくなるわね...」

 

もしパナマに行ったときのことを想像すると元から軍人であるマリューやノイマンは頭を垂れてしまう

 

「こんなこと終わらせるためにはマリューさんは何と戦わくちゃいけないと思いますか?」

 

「なにと...」

 

「僕達は、僕はそれと戦わなくちゃいけないんだと思います...」

 

キラの言うことに全員がそれぞれ考える。特に指揮を取っているマリューや地球軍の軍人としてずっと戦ってきたムウは

 

「ねぇキラ...」

 

「ん?どうしたのミリアリア?」

 

「今こんなこと聞いちゃダメなのかもしれないんだけど...」

 

キラのことを呼んだミリアリアはスカートをぎゅっと掴み苦し気な声色でなんとか声を絞り出す

 

「レ、オは...?」

 

「...。生きてるよ」

 

「ッ!!」

 

キラの言葉にミリアリアは目を見開く。そしてゆっくりと地面にへたり込み口を押えて涙を流した

 

「レオが...生きて...!」

 

「ミリィ...」

 

「レオも生きてるのか!」

 

「うん」

 

「そうか...そうかっ!」

 

ミリアリアに続いてサイもメガネの奥の瞳をうるうるとさせる

 

「よかったわ...」

 

「お前とは一緒じゃないのか?」

 

「レオくんはプラントで僕達を助けてくれた人達に危険が及びそうだと言って残りました」

 

「なるほどね。とりあえずまぁ」

 

ムウはキラに近づきキラの肩に両手を乗っけた。そしてキラの肩を強く握った

 

「よく...生きててくれた...」

 

「はい」

 

ムウのキラを見る表情はまるで家族と再会したかのような、そんな感じだった

 

「僕からも聞いていい?」

 

「あ、あぁ」

 

「フレイは?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ラクス嬢は無事だったのかな?」

 

「はっ!やはり追手がいましたが撃退に成功しています!」

 

「はい、ご苦労さん。シーゲル様も無事に保護できたし」

 

「あの坊や様様ね」

 

「まったくだ。未来のことがわかっているみたいで少し怖いがね...」

 

プラント内のとある家。コーヒーをすすりながら部下であろう男の報告を受ける男女

 

「ん~、いいね。日に日に美味くなってる気がするよ。キミもそう思うだろ?」

 

「どうかしらね。坊やにはその都度ダメ出しを食らってるようだけど?」

 

「あいつが細かすぎるんだよ」

 

「そんなこと言ってて、だいぶ参考にしているようだけど?」

 

「ふっ、否定できんのが悔しいところだね」

 

男は女の指摘に苦笑いしながら頬をかく

 

「それで?そろそろ行くって?」

 

「はっ!シーゲル様を保護できたので自分も行く、と」

 

「了解。俺達が動くのも近いはずだ。気を抜くなよ?」

 

「はっ!隊長!」

 

「ん」

 

これは一体だれが話をしていて、誰のことを言っているのか...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、俺も行くよ」

 

「はい...」

 

「そんな悲しい顔しないでくれ。キミが動くときは必ず駆けつける」

 

「わかっています。それでも...」

 

先日フリーダムと共に奪取された機体。その前に少年と少女の姿。少年はパイロットスーツを着て機体を見上げている。そんな彼を少女は胸の前で手を組みながら寂しげな表情で見つめていた

 

「みなさんがついてくれているから大丈夫だと思うけど、気をつけて」

 

「それはあなたもです」

 

「もちろん。それに...」

 

少年はまだ寂しげな少女の頬にそっとキスをした

 

「キミが祈っててくれれば俺は絶対に死なない」

 

「では祈りましょう。平和と、あなたの無事を...」

 

少女はお返しとして同じように少年の頬にキスをした

 

「行ってらっしゃいませ」

 

「行ってきます」

 

2人最後にハグをして少年は機体に乗り込んだ

 

「まさか彼女とこんな関係になれるとは、嬉しい限りだな」

 

少年が機体を起動させると正面のモニターのその景色が広がった

 

「まさか次に乗る機体がこの世界とはまったく関係ない"Hi-νガンダム"とは。しかし、これでみんなを守れる」

 

モニターにはこちらに向かって手を振る少女の姿が映る。それを見た少年は自然と笑みが溢れてしまう

 

「キラ、みんな。今行く。レオ・シュヴァルグラン、ユニティ出撃る!」

 

その少年、レオ・シュヴァルグランはラクス・クラインに見送られ新たな力と共に翔び出した

 

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