ガンダムSEED 〜守るための戦い〜 作:てこの原理こそ最強
整備はマードック達整備班はもちろんのこと、アスランやニコルがアドバイスをしながら着々と進んでいた
その中でレオとM1隊からマユラが向かい側の港へ偵察に出された
『レオくん。さっきのすごかったね』
「ありがとうございます。みなさん無事でよかったですよ」
『助けられてばかりだね。私達も頑張らなくちゃ!』
「頑張るのはいいですが気を持ちすぎてもダメですよ。程よくリラックスです」
『リラックス?戦場なのに?』
レオのアドバイスがイマイチ理解できないマユラは聞き返してしまう
「肩に力が入りすぎてガチガチの状態じゃ戦えるものも戦えません。落ち着いて冷静に。これが大事なんだと俺は思ってます」
『なるほど〜。レオくんが言うと説得力あるね』
「どうでしょうね。まぁ経験則ではあります」
『確かに踏んできた場数が違いすぎるよね...』
「撃った撃たないなんて自慢にもなりません。どれだけ生き残ったかでしょ?」
『そうだね。頑張るよ私。生き残るために』
「はい。ラクスも言ってます。ここで討たれるわけにはいかないと。それにはラクスやラミアス艦長、カガリもそうですが...マユラさん達も入っているのをお忘れなく」
『レオくん...』
作戦中だというのにレオの言葉に胸がときめいてしまっているマユラ。レオを見る目がもう乙女になってしまっている
「いました」
コロニーの陰に隠れながら静かに移動するレオとマユラ。そして反対側の港に着くとザフト艦を発見した
『本当にいた...』
「偵察成功ですね。戻りましょう」
『う、うん!』
2人は物音を立てないよう慎重に来た道を戻った。そして全員に報告する
『ユニティ、マユラ機帰還!』
「戻りました。ナスカ級が3隻です」
『ッ!ナスカ級が3隻とはまた豪勢なお出迎えだな!』
『ドミニオンは依然動きありません』
『フラガ達が心配だが。クソッ!いったいどこの部隊だ!』
『おそらくクルーゼ隊でしょう...』
『なに...?』
『ラミアス艦長。なぜクルーゼ隊だと?』
艦が特定できただけで誰が指揮を取っている隊なのか見当をつけるマリューに対してキサカが問いかける
『だからムウはわかったのよ。彼にはわかるのよ。なぜだかは本人もわからないようだけど...』
かつてクルーゼ隊に属していたアスランとニコルは機体を降りて整備の補助中だったためまだこのことを知らされていない
『前にはドミニオン..,』
『後ろにはザフトのナスカ級が3隻...』
『どうすりゃいいのよ...』
『...』
前も後ろも敵で囲まれてしまった状況にみんなが動揺してしまっているよう。士気が下がってしまうのはよくないとマリュー達指揮官組も頭を悩ます
「みなさん一旦落ち着きましょう」
『レオくん...』
『でも...』
「アサギさん、ジュリさん。深呼吸です。はい吸ってー、吐いてー、吸ってー、吐いてー」
『う、うん...スーッ、ハァー』
『スーッ、ハァー』
アサギとジュリはレオに言われるまま深呼吸する
「慌てたって、怯えてたってなにも変わりません。ただ疲れていくだけです。なら一旦落ち着いて考えましょう」
『そうだね...気負っててもなにもならないよね!』
『うん...とりあえず今できることをやろう』
「その意気です。整備を続けましょう」
『『はい!』』
レオのおかげでアサギもジュリも、そしてその言葉を聞いていたクルー全員いつもの調子を取り戻し作業に戻った
『ありがとうレオくん』
「大変なのはラミアス艦長達ですよ」
『そうね』
「大丈夫です。なんとかしますよ、アスランが」
『えっ...』
『おいおい。そこは俺が!って言うところじゃないのか?』
まさか自分ではなく人任せにしたレオにツッコミを入れるバルトフェルド
「もちろん俺のできることはやります。でもアスランの方がこういう戦場慣れてるだろうしー」
『人がいないところで勝手に名前を挙げるな...』
「お、戻ってきたか」
マリュー、バルトフェルドと通信をしているとアスランが整備を終えたのか戻ってきた
『キラも遅すぎる。様子を見てくる』
『認めません』
『ラクス!』
ムウとディアッカの状況を確認するためコロニー内部に向かったキラも戻りが遅いのを感じ、アスランがさらに捜索に向かおうとするのをラクスが止める
『アスランは指示があるまで待機です』
『しかし3人とも戻ってこないというのは...』
「アスラン。お前が行って戻って来たときにここにいる全員帰らぬ人にする気か?」
『ッ!』
「アスランは今や俺達の最大戦力の1人なんだ。これ以上こっちから戦力が割かれるのはマズい。違うか?」
『レオの言う通りです。これ以上うかつに戦力は割けません。ドミニオンの攻撃もいつ再開されるかわからないのですから』
レオとラクスの言うことは的を得ている。アスランはそれがわかってしまうため顔をしかめるしかなかった
「キラ達が心配なのはわかる。だがこらえてほしい」
『...』
「万が一キラ達が戻らなくても俺達は進まなきゃならないんだ」
『そうだな...すまない』
「アスランが心配する気持ちはわかる。俺もああ言ってはいたが大丈夫だ、キラ達は帰ってくる。俺達はもう仲間だ。仲間を信じてやれ」
『あぁ...そうだな』
画面越しに笑顔なレオを見てアスランも表情が和らぐ。レオは目線を移しラクスともお互いに笑い合う
しかしレオやアスランの想い届かず、キラ達が戻らないまま警報が鳴った
『ドミニオン動きました!』
『クッ!』
『接近する熱源あり!あの3機です!』
『第一戦闘配備!』
今回はエターナルも万全のため3隻一緒に港を出た
『君達は艦の守りを!』
『了解!』
「ニコル、フォロー頼んだ」
『わかりました!』
『ナスカ級の動きにも注意して!』
例の3機にはアスランとレオが対応。他は艦の守りとなった
「アスラン」
『なんだ?』
「行け。後ろは任せろ」
『ッ!あぁ!』
アスランの中で何かが弾ける。そして敵に向かって突っ込んでいった。それをレオがドラグーンで援護する
今までリーダーだったり隊長になったりと何かと周りを気にしながら戦うことが多かったアスラン。そのため自身の自由よりも他の隊のメンバーだったりチームワーク、連携のことを最優先にしていたアスラン。しかしそんなアスランにレオからの一言。今のアスランは他を心配することなくただ向かってくる敵を撃退することだけを考えていた
『ミサイル接近!』
『迎撃!』
「お任せあれ!」
アスランの援護をしながらもレオはドミニオンが放ったミサイルをドラグーンを駆使して撃ち落とす
『クッ!!』
「任せろ」
レイダーに向かってライフルを放つアスラン。しかしそれはフォビドゥンのシールドで防がれる。そしてアスランを背後からカラミティが狙う。レオがそれを許すわけもなくライフルを放ち阻止した
『艦長!フリーダムです!』
『ムウさんが負傷しています!』
ここにコロニー内に侵入していた3人が戻って来た。しかしストライクは大きく損傷しており、ムウも傷を負っている様子だった
『レオ!』
「わかってる」
標的をユニティに変えた3機。3方向から接近しつつ攻撃を仕掛けるがどれも回避され、さらにフォビドゥンの曲がるビーム砲を上手く利用し他2機の接近を牽制していた
『レオくん!アスラン!』
『キラ!』
「戻ったか」
『俺もいるぞ!』
「わかってる。牽制頼むディアッカ。ッ!」
『おいレオ!』
キラに続いてディアッカも合流。しかしすぐにレオは何かを感じ取りエターナルの方へ引き返した
『ナスカ級動きました!距離80 ブルー デルタ!』
『えっ!』
サイからの連絡でザフトも動いたのこと。しかしその報告よりも先にレオは動いていた
「キラ、アスラン。そっちは頼む。ザフトの方は俺とM1隊がやる」
『わかった!』
「ニコル...」
『大丈夫です』
同胞達と戦わせてしまうことを言おうとしたレオだったがその言葉を出す前にニコルが遮る
『その覚悟はできてます!それにこれは討つための戦いじゃない。守るための戦いなんです!』
「ニコル...わかった、頼む」
『はい!』
『ゴッドフリート照準!』
『主砲照準!』
『『撃てー!!』』
ザフトからの攻撃が開始されクサナギとエターナルも反撃を開始する
『私達だって!』
『レオくんばかりに!』
『頼ってられないんだから!』
ナスカ級から複数機のジンが発進。レオと共にM1部隊がこれを迎撃する。アサギ、マユラ、ジュリの3人娘も気合を入れて操縦桿を握る
『ウッ!こんのぉっ!』
「無茶するなニコル」
ジンからの攻撃をシールドで防ぐニコル。負けじとビームライフルを連射し次なる目標に向かおうとするところをレオが止める
『レオ』
「どうしたラクス?」
『エターナルとクサナギの砲撃をヴェサリウスに集中させ、あれを突破します』
「なるほど。無茶な作戦を考えるな」
『無茶をするわたくしは、お嫌いですか?』
「何を今更。どんなラクスでも大好きだ。援護する!」
戦場なのにもかかわらず惚気を発動するレオとラクスに苦笑いをしているバルトフェルドがいたりする
『アークエンジェル!!』
『ッ!!』
戦闘の最中突然戦場の全チャンネルに女の声が響いた。この声が誰ものか。いち早く気づいたのはキラだった
『アークエンジェル!私です!フレイ・アルスター!』
『フレ、イ...』
フレイが、アラスカで人事異動ということでもう会えないものだと思っていたフレイがこの戦場にいる。その事実がキラの思考を停止させてしまった
『キラ!?』
思考と共にフリーダムの制御も止めてしまったキラはレイダーからのビーム砲をもろにくらってしまった
『キラ!クソッ!』
急に動かなくなったキラを心配するアスランだが自分も同時にカラミティから攻撃を受けシールドで防いだ。そしてその直後カラミティが移動を開始。それに合わせるようにキラもカラミティを追った
『おいキラ!』
『フレイ!クッ!』
夢中で追いかけるキラにフォビドゥン、レイダーからの攻撃でフリーダムの頭部を破壊されてしまう
『フレイ!フレーイ!!』
何度も...チャンネルを合わせながら何度もフレイを呼びかけるキラ。大切な者の名前を...
「キラ...」
レオもどうにかしたかった。しかし自分もすべきことがあるためキラの叫びをただ聞くことしかできなかった
『レオ!クサナギとエターナル全砲一斉射を行う!』
「...。了解です」
ザフト艦に近づきつつ2隻を守りながら準備を待ったレオ。バルトフェルドから通信が入りドラグーンを回収する
『撃てー!!』
クサナギとエターナルは上下に並びビーム砲をヴェサリウスに向けて一斉射。破壊まではいかないものの陣形を見出すことはできた
『突破する!ラミアス艦長!』
『はっ...』
『彼女はドミニオンが保護した』
『...。信号弾!』
これを機と見たバルトフェルドから呼ばれたマリューへ呼びかける。フレイのことを気にしつつもマリューは撤退の信号弾を上げさせる。キラはそのままドミニオンに突っ込む勢いだったがアスランがそれを止めバスターと共にアークエンジェルのデッキに帰還した
クサナギ、エターナルはその後もヴェサリウスへの攻撃を続行。エンジン部分など数箇所を破壊し艦姿勢を崩すことに成功した。その隙に残りのザフト艦の間を通り抜ける
アークエンジェルが後を通るとヴェサリウスは爆発。アスランやディアッカ、ニコルの3人はクルーゼ隊にて母艦だったヴェサリウスに対して敬礼を送った
エターナルに戻ったキラとアスランを迎えたのは先に着艦していたレオだった
「おつかれ2人とも」
「あ、あぁ...」
「...」
魂の抜けたようなキラを支えていたアスラン。とりあえずキラをソファに座らせた
「キラ...」
「レオくん...フレイが...」
「あぁ。俺も聞こえた」
「僕が...!」
「キラ!」
キラは何を言いたかったのか。いや、何を吐き出したかったのか。しかしその言葉を出せないまま気絶するように眠ってしまった
「レオ」
「ラクス」
「キラは...?」
「まさかフレイがあそこで出てくるなんて思ってもいなかったから」
眠ったキラを心配そうに見つめる事情を知るレオとラクス
「話を聞かせてもらえるか?」
「もちろんだアスラン。でも先にキラを運ぼう」
「そうだな」
レオとアスランでキラを寝かせるために部屋に運ぶ。ラクスもキラを支える2人についていく
「フレイ・アルスター。ヘリオポリスでキラ達と一緒に民間人だった子なんだ」
キラを部屋のベッドに寝かせたレオは悲しい顔をするラクスに寄り添いながらアスランに話し始めた
「偶然拾ったポットに彼女が乗ってて行動を共にすることになった。途中いろいろあったけど、キラに寄り添い続けてくれた。今ではキラにとってかけがえのない存在だろうな」
「そうか...」
「アスランと戦ったあの日。俺とキラはアークエンジェルから降りることになっちゃったからそれ以来会えてなかった。アラスカで人事異動でミリアリア達とも別れたと聞いてたしな」
「まさか、こんなことになるなんて...」
「チラッと救命ポッドを見たが、ザフト製のものだった」
「ということは今までザフトに...」
「スピットブレイクの際に捕らえられてしまったのかもしれない」
全員が俯きながら話をしていると部屋のドアが開きカガリが入ってきた
「カガリ...」
「キラは...」
「まだ眠ってる」
「そうか。ッ!?」
キラが倒れたと聞いたカガリだったがとりあえず規則正しい寝息を立てているキラを見て安心した。だが机に置いていある写真を手に取った
「どうして...」
「どうした?」
その写真はカガリがオーブを飛び立つ直前に父から受け取った写真とまったく同じものだった
「ウッ...!」
「キラ!」
「んっ!はぁ...はぁ...」
キラは目覚めりも少し息が荒そうだった
「大丈夫か?」
「ごめん...ありがと...」
「キラ...」
「あ...」
キラはカガリが持っている2枚の写真を見てさらに呼吸を荒くする
「...」
「カガリ」
「えっ...おい...」
レオはキラの様子を見てアスランと目を合わせる。アスランもレオが何を言いたいのか理解しカガリを部屋から連れ出した。おそらくカガリはなんで同じ写真を持っているのかキラに聞きたかったのだろうが今はその時じゃないとアスランも考えていたのだろう
「キラ。大丈夫だ」
「レオ、くん...」
「いろいろあったんだろ?あのコロニーで」
「ッ!なん、で...」
コロニーメンデル内でラウ・ル・クルーゼと会敵したキラだったがなぜそのことにレオが指摘して目を見開いた
「お前はお前だよキラ。キラ・ヤマト。他の誰でもない。誰もお前を決められやしない。キラ・ヤマトという人はな」
「あ、あぁ...」
「お前のことを否定するやつがいるなら、その倍以上お前のことを肯定してやる。キラ・ヤマトという存在を肯定してやる。俺も、アスランも、ラクスもカガリも。みんなな」
「あ...あぁぁぁぁ!!!!!」
キラはレオの言葉が何よりも嬉しかった。メンデルでラウ・ル・クルーゼと直接対峙し自分がそんな存在で、どうして生まれてきたのかわからなくなった。自分は生まれてこない方がよかったんじゃないか。でも違った。自分の存在を認めてくれる者、大切な友達がここにいたのだ
「フレイも必ず助ける。いや、助けよう」
「うん...うん...!!」
レオはキラが泣き止むまで背中をさすり、そんなレオにラクスはいつまでも寄り添った