ガンダムSEED 〜守るための戦い〜 作:てこの原理こそ最強
事態は混沌を極めていた
ラクス達はバルトフェルドが繋げている補給ルートから補給をしていたのだが、その補給と一緒に地球軍がヤキン・ドゥーエと並ぶプラント本土防衛の要塞であるボアズへの侵攻の情報を受けていた
"ボアズが落ちた"という情報が入ったのはそれからすぐのことだった...地球軍の
<核>。それは禁忌なるもの。触れることさえ許されないそれをましてや武器として人に向けるなどあってはならないことなのだ
しかし地球軍はこれを使った。なんの躊躇いもなく。敵がコーディネイターだから?青き清浄なる世界のために?いかなる理由があろうと核を使用する理由にはならないはずである
『核をたとえ一つでもプラントに落としてはなりません。討たれる謂れなき人々の上にその光の刃が突き刺されば、それはまた果てない涙と憎しみを生むでしょう』
プラントへ急行するアークエンジェル、エターナル、クサナギの3隻。その中にいる全員がラクスの言葉を聞いてユニウスセブンの悲劇を思い出す
『わたくし達は間に合わなかったのかもしれません...』
『キラ・ヤマト、フリーダム行きます!』
『アスラン・ザラ、ジャスティス出撃る!』
『ムウ・ラ・フラガ、ストライク出撃るぞ!』
『ディアッカ・エルスマン、バスター発進する!』
『ミーティアリフトオフ』
<ミーティア>。エターナル前面両脇に備え付けられた武装。しかしそれはフリーダムとジャスティス専用武装。核エネルギーの出力はそのままに戦艦並みの武装を有するそれをキラとアスランは核を落とすために使用する
『平和を願い、叫びながら取る銃もまた...悪しき選択なのかもしれません...』
「それは違うぞラクス」
未だ発進していなかったレオがラクスの発言を否定する
「俺達が戦う理由は誰かを討ち滅ぼしたいからじゃない。1人でも多くの人を生き残らせたいからだ。銃を取ることは同じことだが、その掲げる思いはまったく別のものだ。俺達が掲げるものが悪しきものというのなら、俺は真っ向からそれを否定する」
『...。はい。どうか今、この果て無い争いの連鎖を断ち切る力を...!』
「ラクスの想い、必ず実現させる」
レオも想いを胸に出撃した
地球軍はプラントへ進撃を開始した。ザフト側もこれに徹底抗戦。プラントに核を落とさせまいと奮闘する
戦闘が開始してから数分後。主力部隊とは別にプラントに向かう部隊を発見。ただちに迎撃しようとするザフト軍だったが例の3機、フォビドゥン、レイダー、カラミティが接近を許してくれなかった
ザフト軍の誰も近づけないまま地球軍のメビウス数十機が核ミサイルをプラントに向けて発射。真っ直ぐとプラントに迫りプラントを塵に変えると思いきや急接近する反応が2つ。フリーダムとジャスティスだった
『...』
『...』
2人は狙いを定め自身の機体とミーティアに備わる武装を駆使しフルバースト。核はプラントに当たる前にすべて焼失した
『地球軍はただちに戦闘を中止してください。あなた方はなにを撃とうとしているのか本当におわかりですか!』
ここにアークエンジェル、エターナル、クサナギも到着。ラクスが停戦勧告を行うものの地球軍は構わず核ミサイルを放つ
「それを撃つ意味がわかっているのか!」
なおも放たれた核をレオがドラグーンを使用し全て消滅させる
「懸念しなきゃならんのはこれだけじゃないというのに!」
レオがぼやいていると急にザフト軍が撤退していった。そのときとあるザフトの機体から通信が入った
『下がれフリーダム!ジャスティス!ジェネシスが撃たれる!!』
「ッ!地球軍に告げる!」
アスランやディアッカ、ニコルはよく知った声。その警告を聞いたレオはすぐさまチャンネルをオープンにしてその場にいる全員に繋いだ
「今すぐ回避行動を取れ!急げー!!」
レオは叫ぶ。その瞬間禍々しい光の槍がヤキン・ドゥーエ近くから地球軍艦隊に向けて放たれた
「クソがぁぁぁ!!!」
レオは展開していたドラグーンを用いて地球艦隊正面に巨大なバリアを張る。しかし超巨大ビーム砲の威力を全て防ぐことができない。通り抜けた光の槍は地球軍を呑み込んでいった
『我らが勇敢なるザフト軍兵士の諸君。傲慢なるナチュラル共の暴挙をこれ以上許してはならん。プラントに向かって放たれた核...これはもはや戦争ではない。虐殺だ!』
地球軍が壊滅状態な中ザフト最高評議議長であるパトリック・ザラが全域に向けて味方を鼓舞する放送を入れた
『そのような行為を平然とするナチュラルをもはや我らは決して許すことはできない!』
鼓舞されたザフト兵士は揃って撤退する地球軍を追った
『こちらも一度退くしかない。モビルスーツ隊帰還しろ!』
バルトフェルドから撤退の指示が出る
『やめろっ!戦闘の意思のない者を!!』
『クッ!』
しかしキラが叫びながらザフト軍の前に立ちはだかる。アスランもキラを追って参戦した
『新たなる未来、創世の光は我らと主にある!この光と共に今日という日を我ら新たなる人類、コーディネイターの輝かしき歴史の始まりの日とするのだ!』
「創世の光...?破滅への光の間違いだろ...」
悪態をつきながらもレオも1人でも多くの地球軍が離脱できるよう立ち回った
『ジャスティス!フリーダム!ユニティ!後退しろ!』
「キラ!アスラン!潮時だ!」
『でも!』
「距離は十分に稼いだ。俺達がやられてしまってはなんの意味もないんだ」
『レオの言う通りだ。退くぞキラ!』
『クッ!』
ようやくレオ達も戦線を離脱。エターナルに帰還した
撤退したラクス達はザフトが放ったあの超巨大ビーム砲について議論していた
『放たれたのはガンマ線です。線源には核爆発を用い発生したエネルギーを直接コヒーレント化したもので、つまりあれは巨大なガンマ線レーザー砲なんです』
ビームの解析をエリカ・シモンズが行いエターナルに集まったマリューやカガリ達に説明している
『あれが地球に向けられれば強烈なエネルギー輻射は地球全土を焼き払いあらゆる生物を一掃してしまうでしょう』
「撃ってくると思いますか...?あれを、地球に...」
「...」
あれの目標が地球に...誰もが考えたくないものだった
「強力な遠距離大量破壊兵器保持の本来の目的は抑止だろう。だがもう撃たれちまったからな。核も...あれも...もうどちらも躊躇わんさ」
そう。バルトフェルドの言う通りどちらも既に放たれてしまった。一度使ったものを今度は使わない手はない
「戦場で初めて人を撃ったとき、震えたよ...だがすぐ慣れるだろうと言われた。確かにすぐ慣れたな」
「人はすぐに慣れる。慣れてしまえば抵抗もない。そう言いたいんですか?バルトフェルドさん」
「ま、そういうことさ。あれだって一緒だろ?銃の引き金とあれのボタン、核のボタン。違うか?」
レオの問いかけに目を瞑って自分の経験と比べて話すバルトフェルド。その言葉に元から軍人であるマリューやアスランは、自分の過去を振り返りながら言葉に詰まった
「兵器が争いを生むのでしょうか...それとも人の心でしょうか...」
ラクスのつぶやき。そしてレオと顔を見合わせる
「人の心、だろうな。人が憎しみを生み出し、兵器を作り、争いが生まれる。この負の連鎖をどこかで断ち切らないといけない。その役目が俺達だ」
「ふっ。いいね~少年。その曲がらない信念」
「あの光も核も、もう絶対に撃たせちゃダメだ!そうなってからじゃもうすべてが遅い...」
「あぁ」
キラとアスランがお互いに目を合わせる。そして決意する
「シモンズ主任。ジェネシスの次の発射までの時間はどう推測されますか?」
『正確な時間はわからないわ。でもおそらく1射ごとにミラー部分を交換しなければならないと思います』
「だが本体はフェイズシフト装甲。その前にはヤキン・ドゥーエときた。そうそう突破は容易くないぞ...」
「地球軍も総戦力で来るでしょうから...」
「2射目の目標は月か...それとも...」
「地球軍もまた核を撃ってきますよね...」
「だろうな」
『地球軍艦隊進撃を開始!』
『全艦発進準備!』
アークエンジェルオペレーターのミリアリアからの通信。地球軍が動いたためラミアスやカガリはそれぞれアークエンジェル、クサナギへ。キラやアスラン、レオも機体へ搭乗しようと動いた
「レオ!」
「ん?」
最後にブリッジを出ようとしたレオにラクスが近づく
「...。先に」
「わかった」
レオはラクスを抱き止めキラ達を先に行かせる
「これを...」
「これは?」
「お守りです。無事に帰ってくるように祈りを込めました」
「そっか、ありがとう。じゃあ俺からも」
レオはラクスからお守りとして指輪を受け取る。そして徐にポケットから何かを取り出してラクスの左手薬指にはめた
「これは...」
「俺のラクスへの想いとラクスの願いが叶うように」
「レオ...」
レオはブリッジを出る。しかしラクスも付いてきた
「ラクス...」
「不安なのです...」
「大丈夫」
不安そうなラクスをレオは優しく抱きしめる
「ラクスは絶対に俺が守る。そしてラクスの願いは俺が実現させる」
「...。必ず、帰ってきてくださいね。わたくしの元へ...」
「...」
レオは悲し気な表情のラクスの額にキスをする
「約束する。絶対に戻る。ラクスの元に」
「レオ!」
ラクスの再三の呼びかけにレオは振り向かず廊下を進んだ。そんな背中をラクスは左手の薬指にはめた指輪を強く握りながら見送った
ユニティに乗り込んだレオ。するとミリアリアから呼びかけがあった
『レオ』
「どうした?」
『本当は直接会って話したかったけど、時間もないから。気を付けてね』
「あぁ」
『絶対に帰ってきてよ...?』
「約束する。絶対に帰ってくる」
『約束だからね!破ったら許さないんだからね!』
「あぁ。もし帰ってこなかったときはボコボコにしてくれ」
『わかった...そのときは覚悟してなさいよ!』
レオとミリアリアが話しているともう戦場が近づいてきていた
『モビルスーツ全機、発進してください』
『全艦モビルスーツ発進!』
『ムウ・ラ・フラガ、ストライク出撃るぞ!』
『ディアッカ・エルスマン、バスター発進する!』
『ストライクルージュ、行くぞ!』
ストライクルージュ。カガリが乗るそれがここに来て初出撃となった
『アスラン・ザラ、ジャスティス出撃る!』
『キラ・ヤマト、フリーダム行きます!』
「みんなを守る。そして、必ず生き残る!」
この滅ぼし合うだけの戦争を終わらせるために、モビルスーツ全機発進した。レオも出撃となり、その左手首にはブレスレット、左薬指には指輪が光っていた