ガンダムSEED 〜守るための戦い〜 作:てこの原理こそ最強
『この未曾有の出来事を我々プラントもまた沈痛な思いで受け止めております。信じがたいこの各地の惨状に私もまた言葉もありません。受けた傷は深く、また悲しみは果てないと思いますがでもどうか地球の友人達よ、この絶望の今日から立ち上がってください。みなさんの想像を絶する苦難を前に我らもまた援助の手を惜しみません』
デュランダルはユニウスセブン落下による被害地にすぐさま救援物資と人員を送った。ただその数も量も膨大。どれだけの時間を費やすかは見通しが立てないほどだった
地球に降りたミネルバの艦橋に出たアスランとカガリが目にしたのは濁った海とどんよりとした雲が立ち込める空だった
「大丈夫なのか?アスラン」
「あぁ、大丈夫だ」
「だが驚いたぞ。心配もした。モビルスーツで出るなんて聞いてなかったから」
「勝手に出てすまなかった」
「いや別に怒ってるわけじゃない。お前の腕は知ってる。ただ...」
「わかってる。帰ったらちゃんとあいつらにも話すよ」
「そうか。本当にとんでもないことになった。ミネルバやイザーク達のおかげで被害の規模は格段に小さくなった」
「カガリ...」
「やめろよこのバカ!」
地球が滅亡しないで安心したのだろうカガリとくらい表情が晴れないアスラン。そんな2人の元にシンが割り込んだ
「あんただってブリッジにいたんだろ!ならこれがどういうことだったかわかってるはずだろ!」
「あ...」
「やめろシン」
「ユニウスセブンの落下は自然現象じゃなかった。犯人がいたんだ!落としたのはコーディネイターさ!」
「なっ!」
衝撃の事実にカガリは目を見開いた
「あそこで家族を殺されそのことを恨んでる連中がナチュラルなんか滅びろって落としたんだぞ!」
「あぁ...だが!」
「なんだよ」
「だが、お前達は必死に止めようとしてくれたじゃないか!」
「当たり前だ!」
「だが、それでも破片は落ちた。俺達は止めきれなかった...」
「アスラン...」
「一部のやつがやったことだと言っても俺達コーディネイターがやったことに変わりはない。これで被害に遭った、悲しんだ人達は俺達を許してくれるのかな...」
ナチュラルとコーディネイター。先の戦争が終わっても生まれながらに持つこの人種的軋轢は無くなっていない。今回の騒動、世界がどう動くかなんて誰にもわからない。アスランは静かにその場を去った
「あ、アスラン...」
「自爆したやつらのリーダーが最後に言ったんだ。俺達コーディネイターにとってパトリック・ザラの取った道こそが唯一正しいものだってさ!」
「なっ...」
「あんたは本当に何もわかってない。あの人がかわいそうだ...」
まさか戦闘中にそんな話をされていたなんてカガリにわかるわけもない。しかしまた自分の父のしがらみが襲ったアスランに自分はなんてことをとカガリは落ち込んでしまった
ミネルバはまずオーブ代表であるカガリを送り届けるべくオーブに入港した。その後カガリは休む暇もなく行政府へ。そしてアスランは一日休んだ後車で出かけた
「ん?キラ?」
目的地に向かう海沿いの道を進んでいると浜辺に子供達と遊んでいるキラやフレイ、レオとラクスの姿を見かけ車を停めて呼びかけるようにクラクションを鳴らした
「あ!アスランだ!」
「違うよ!アレックス!」
「アスラーン!」
「アレックスだって!」
アスランに気づいたのか子供達が一斉にアスランの元へ階段を駆け上った。ちなみにアスランは本名を伏せカガリの付き人アレックス・ディノを名乗っていた
「どっかいってたんだよね!」
「カガリはー?」
「やぁ、アスラン」
「お疲れだな、アスラン」
「お帰りなさい。大変でしたわね」
「君達こそ。家流されてこっちに来てるって聞いて。大丈夫だったか?」
今までカガリを守るとは言え久しぶりの戦場で気の張っていたアスランも友人と再会できたことにホッとしているのか表情が和らいだ
「おうちなくなっちゃたの!」
「あのね!みてないんだけどたかなみってのがきてこわしてっちゃったんだって!」
「おもちゃもみんななくなっちゃった...」
「あたらしいのできるまでおひっこしだって〜」
アスランの両腕を引っ張ったり背中や腰を押されたりとやられ放題なアスラン。少し戸惑っているところに助け船が入る
「ほらほらみんな。これじゃアスラン困っちゃうでしょ?」
「みなさん、もう少し待ってあげてくださいね。お話があるんですって」
「よーっしみんな!俺と競争だ!勝ったやつには今日の俺のデザートあげちゃうぞ!」
「ほんとー!?」
「よっしゃー!」
もみくちゃにされていたアスランを見かねてレオが先陣を切り浜辺へ戻っていき子供達もそれに続いた。ラクスとフレイもそんな子供みたいな約束をしたレオをおかしく笑いながら後を追った
「カガリは?」
「行政府だ。仕事が山積みだろ」
「そっか」
『トリィ!』
「キラは先に行ってー!私達はみんなで歩いて戻るからー!」
「レオはやーい!」
「追いつけるもんなら追いついてみろー」
「とまってくれたらちゅーしてあげるー!」
「そんな手に乗るものかー」
「じゃあラクスがしてくれるって!」
「ッ...」
「まぁ」
子供達に言われて一瞬動きを止めたレオを見てキラもアスランも笑ってしまう
「僕達は先に行こうか」
「そうだな」
アスランとキラは車に乗り込み家までの道を走らせた
「あの落下の真相はもうみんな知ってるんだろ?」
「うん」
「連中の1人が言ったよ...」
「え?」
「"撃たれた嘆きを忘れてなぜ撃った者達と偽りの世界で笑うんだ、お前達は"って...」
「そう...戦ったの?」
「最初はユニウスセブンの破砕作業だけ手伝うつもりだった。だが彼らがそこにいたんだ...」
車はレオ達が今住んでいる家に到着したがそのままアスランは話を続ける
「キラ。あのとき、俺聞いたよな...やっぱりこのオーブで...」
「...」
「俺達は本当は何とどう戦わなきゃならなかったんだって」
「うん」
「そしたらお前言ったよな。それもみんなで一緒に探せばいいって」
「うん」
「レオには守りたいものを守るという理由が、信念があった。だが俺は...まだわからないんだ」
アスランの苦悩にキラは彼の肩を叩くだけでそれ以上は何もしなかった
次の日の夕方。レオはとある場所で慰霊碑に向かって手を合わせていた
「慰霊碑、ですか...?」
「ん?」
すると背後から声をかけられた。振り向くとそこにはとてもよく似た少年と少女が立っていた
「あぁ。誰のかはわからないが」
「え?」
「俺もここには初めて来た。君達もか?」
「あ、はい」
「そうか」
お互いに初対面なはずだがレオは目の前にいる
「キレイに咲いているな。だけどこれじゃあ潮を被って枯れちゃうか」
「...。誤魔化せないってことかも」
「ん?」
「いくらキレイに咲いても...人はまた吹き飛ばす...」
「お兄ちゃん...」
「あら?」
そこに花束を持ったラクスが歌いながらやって来た
「すいません、変なこと言って。それじゃ」
「す、すみません!失礼します!」
その兄妹は特に何かするわけでもなく去ってしまった
「いくらキレイに咲いてもまた吹き飛ばす、か...」
「レオ?」
「彼がそう言ってたんだ。平和になっても、また誰かがそれを壊すってことなのかな...」
「...」
「ははっ。俺の考えすぎかな」
「わたくしは、今のようなこの時間がずっと続けばいいと思っていますわ...」
「それは俺もさ」
ラクスはレオの腕に自分の腕を絡ませレオの肩に自分の頭を乗せる。しかしその表情は少し悲しそうだった
世界は...レオの言うような破壊が再び始まろうとしていた...
ユニウスセブンの落下をザフトによる地球破壊活動と受け止めた大西洋連邦がザフトへ戦線を布告。月基地プラントへ進軍したのだった
「...」
「レオくん」
「キラか」
大西洋連邦の宣戦布告のニュースを見たレオはその夜家のバルコニーに出て空を見上げていた。そこへキラもやってきて一緒にプラントのある方を見上げる
「また、始まってしまったな」
「うん...」
「どうしてこうなっちゃたんだろうな」
「...。こんな一瞬で壊れてしまうんだね」
「レオ」
「キラ?」
2人が名前を呼ばれて振り向くとラクスとフレイが寝巻きに上着を羽織ってバルコニーへ出てきた
「ッ!あの光は...」
「あれは...!」
「核の、光...!」
見上げる4人の目に映る光っては消える列。その存在を身をもって知っている4人。レオは無意識に柵を握る力が強くなった