ガンダムSEED 〜守るための戦い〜 作:てこの原理こそ最強
核は、再び放たれた...
しかし結果的に大西洋連邦によるプラントへの核攻撃はザフトの新兵器により失敗。プラントが破壊されることはなかった
ただこれを受けてザフトは積極的自衛権の行使を全最高評議会議員一致で可決された。ただこれは政治上の言葉。現在包囲されている地球上基地のカーペンタリアとジブラルタルから地球軍を追い払うという名目で行使されているものだが、この後どう進むのかは誰にもわからない...
そしてオーブである。大西洋連邦は地球圏の全国々に対し同盟を持ちかけている。ザフトの脅威からの防衛や先の災害で被った被害地への救援と援助など項目は多岐に渡る
しかしカガリは父の教えに則り今までの国と同じように中立を守るものとして断固反対の姿勢を取った。しかし現役議員のほとんどが同盟締結に賛成の意を唱えている
「やれやれ、タイムリミットかな」
家でコーヒーを飲んでいたバルトフェルドがとある情報を手に入れ徐に無線機の周波数を合わせた
「ミネルバ、聞こえるか?もう猶予はない。ザフトはまもなくカーペンタリアへの降下揚陸作戦を開始するだろう。そうなればもうオーブもこのままではいられない」
これは現在オーブにて艦の補給と修理を受けているミネルバへ宛てたものだった
「黒に挟まれた駒ひっくり返って黒くなる。脱出しろ。そうなる前にな」
『ミネルバ艦長、タリア・グラディスよ。この通信はなんなの?あなたは誰なの?』
ここにミネルバからの返答があった
「お〜これはこれは。声が聞けて嬉しいね。初めまして。どうもこうも言った通りだ。のんびりしてるとえらいことになるぞ?」
『匿名の情報など正規軍が信じられるはずないでしょう?あなたは誰?目的はなんなの?』
「ん〜...アンドリュー・バルトフェルドってやつ知ってるか?これはそいつからの伝言だ」
「フフッ!」
「ぷっ!」
自分の正体を明かさないように出てきた言い訳がこれでその場にいて聞き耳を立てていたマリューとレオはつい吹き出してしまった
「ともかく警告はした。降下作戦が始まれば大西洋連邦との同盟締結は押し切られるだろう。アスハ代表も頑張ってはいるがな。留まることを選ぶならそれもいい。あとはキミの判断だ艦長。幸運を祈る」
バルトフェルドはそこで無線の電源を落としマリューとレオを軽く睨む
「笑うことはないんじゃないか?」
「ごめんなさい。つい、ね」
「大丈夫ですよ。砂漠の虎の異名はまだ語り継がれてますって」
「バカにしてるだろう...」
「もう。アンディをいじめるのもほどほどにしてちょうだい」
そこへバルトフェルドの妻であり相棒のアイシャが入室。微笑みつつバルトフェルドを庇う言葉をかけた
「あまり慣れてないんだから。あ、でもアンディから伝言を受けた人だったわね。ごめんなさい」
「フッ!」
「ブハッ!」
「アイシャ...キミも大概だね...」
味方だと思っていたアイシャからの最後の決定打にマリューとレオは再び吹き出してしまった
明朝、ミネルバは出港した。しかし出港後すぐに大西洋連邦の艦隊が待ち構えており戦闘となった。しかもオーブは自国の理念のもとミネルバの領海への侵入を許さなかった
ミネルバとしては絶望的な状況。どんなに頑張ったところで艦隊に対して艦1隻と数機のモビルスーツのみで勝てるほど戦いは甘くない
しかしそんな絶望的状況で、インパルスのパイロットであるシン・アスカの中で何かが弾けた...それはキラやアスランのように...
そこからのインパルスは一騎当千の戦いぶり。悉く敵戦艦を落とし敵艦隊を壊滅状態に陥れた
ミネルバがオーブを発ったその夜、キラ達が住む家に海から招かれざる客人が襲来した
『ザンネン!ザンネン!アカンデー!』
「来たか...」
ハロによる警報。その警報でバルトフェルドやマリューはもちろん、レオとキラも目を覚ました
「今のは...」
「あぁ...どこの連中かね〜」
「マリューさん、バルトフェルドさん」
素早く着替えたマリューとバルトフェルドが拳銃を手に持ち合流したところにレオもやってきた
「みんなと子供達をシェルターへ!アイシャはすまないが手伝ってくれ」
「もちろん」
「えぇ!」
「わかりました」
「何かあったんですか...?」
そこへキラもやってきた
「嫌なお客さんだ。早くみんなとシェルターに行け」
「ッ!わかりました!」
「キラはお母さんとマルキオ様を。マリューさん、子供達のところに急ぎましょう」
「わかった!」
「そうね!」
バルトフェルドとアイシャは襲撃者の迎撃へ。マリューとレオはラクスやフレイ、子供達を起こしに部屋へ急いだ
「ラクス」
「ん...レオ?」
「さ、みんなも起きて」
「フレイ!」
「キラ...?」
ラクスやフレイ、そして一緒に寝ていた子供達を起こす。そこにキラが一緒に住んでいたキラのお母さんとマルキオ導師を連れてきた
「窓から離れて!シェルターへ急いで!」
「みんな急ごう」
マリューがあちこちに銃を向けながら安全を確保しつつ全員をシェルターまで護衛する
「ッ!マリューさん!」
「はっ!」
レオの声と同時にドアが開き襲撃者の1人が現れライフルを射撃。マリューは間一髪で曲がり角に入り回避した
「早く!」
「さっ!行こう!」
レオやキラは銃声に怖がる子供達を抱えてして先へ急ぐ
「バルトフェルドさん!アイシャさん!」
なんとかシェルター前に到着。そこにバルトフェルドとアイシャも合流し全員がシェルターに入るまで敵を近づけないよう銃を打ち続ける
「ッ!ラクス!」
全員の死角。通気口に潜んでいた襲撃者がラクスに狙いをつけているところを常時周囲を警戒していたレオが発見。咄嗟にラクスに飛び付き地面に倒れながら守った
「ウッ...!」
「レオ!」
「レオくん!」
「クッ!」
すぐさまマリューとバルトフェルドが通気口へ発砲。襲撃者を撃ち殺した
「大丈夫、掠っただけだ。ラクスは?怪我はないか?」
「はい...」
「ならよかった。早くシェルターの中に」
レオはラクスを抱き抱えシェルターの中に入った。それに続くようにマリューにバルトフェルド、アイシャが中に入りシェルターの扉は完全に閉まった
「はぁ...はぁ...」
「大丈夫かレオ!」
「えぇ。これくらいならまだ」
「手当てするから見せて」
「あぁ。悪いなフレイ」
レオはジャケットを脱いで傷口を救急箱を持つフレイに見せる
「コーディネイターだわ...」
「あぁ。それも素人じゃない。ちゃんと戦闘訓練を受けている連中だ」
「ならザフト軍、ってことですか...?」
「そう考えるのが妥当だな」
キラの信じられないとでも言いたげな質問にバルトフェルドが答える
「コーディネイターの特殊部隊なんて...最低...」
「わからんがね...それが彼女を狙ってくるとはな...」
「でも、なんでラクスが...」
「理由はわからんがね。なぜ今彼女が狙われるのか...」
「バルトフェルド隊長...マリューさん...」
2人とキラの前に悲し気な表情でラクスが歩み寄る
「狙われたのは...わたくしなのですね...?」
「...」
「きゃっ!」
「うわーっ!!」
そこに大きな揺れ。全員はシェルターのさらに奥に繋がるシェルターに避難した
「狙われたというか、まだ狙われてるな」
「モビルスーツ?」
「おそらくな。何が何機いるかわからないが火力ありったけで狙われたらここも長くは保たんぞ...」
「こわいよ...!」
「うぇーん!」
先ほどの銃声。ガラスが割れる音。そしてこの揺れ。子供達に対しては恐怖そのものだろう
「ラクス。フレイ。鍵は持っているな?」
「それは...」
「扉を開ける。仕方なかろう...」
「ですが...」
「ラクス」
「レオ...」
<鍵>。バルトフェルドの言うそれが何を意味するのかラクスやレオはわかっていた。しかしこれを開けてしまえばその後に待つのはなんなのか...それもラクスは理解している
「貸してくれ。俺が開ける」
「ですが...これは...!」
「大丈夫だ。このままラクスや子供達を死なせるわけにはいかない」
「レオ...」
「だから、また俺に守らせて欲しいんだ」
「...」
レオをまた戦火の中に飛び込ませてしまうと心を痛め涙するラクスを優しく抱きしめる
「フレイ」
「ダメ。これは...またキラが...」
「大丈夫。僕は大丈夫だから」
「キラ...」
「このまま君達のことすら守れなかったら、その方がずっとツラいんだ...だから、鍵を貸して...」
「キラ...うぅぅ...!」
ラクスと同じように涙を流すフレイ。そんなフレイをキラも優しく抱きしめた
鍵を受け取ったレオとキラ。シェルターの奥にある扉の両端にある差し入れ口に鍵を刺した
「いいか?」
「うん」
「3、2、1...」
2人タイミングを合わせて鍵を回す。そして扉が開き中に光が灯される。そこに立つのは、もう乗ることはないと思っていたかつての機体だった
「キラ」
「ん?」
「扉は開けたが、お前は乗らなくていい」
「え...」
「また銃を取るのは俺だけでいい。キラはみんなと一緒にほとぼりが冷めるまでひっそり暮らせ」
「...」
レオに向けた顔を再び機体向けるキラ。その顔はレオの発言を受け入れているものではまったくなかった
「ううん。僕も行くよ。僕が守りたいのは、レオくんもだから」
「はぁ...まったく、ここにきて反抗期か」
「いつまでも守られてばかりじゃないよ」
「言うようになったな、キラ」
結局2人は揃って機体に向かって歩む。そして扉は閉まる。閉まってもなおラクスとフレイの表情は暗いままだった
山を撃ち抜き飛翔して出現したのは、かの大戦にて平和の歌を歌う少女の矛として戦った機体。フリーダム、そしてユニティだった
2機は襲撃してきたザフト軍のモビルスーツ<アッシュ>を確認。敵もすぐさま攻撃を実行するもどれも当たりはしない。反対にフリーダムとユニティの攻撃は全てアッシュの武装や手足に命中した
全機を戦闘不能にしたがその全てが自爆。木っ端微塵となった
『な、んで...』
「作戦が失敗して証拠を残さないため、じゃないか...?」
『そんな...』
「それが軍というものなのかもしれない」
こうしてレオとキラは本当なら二度としたくはなかった戦闘を終えた。2人はもう取りたくない銃を再び手に取った。いや、取らざるを得なかった...