ガンダムSEED 〜守るための戦い〜 作:てこの原理こそ最強
「アッシュ?」
「データでしか知らんがね。だがあれは最近ロールアウトしたばかりの機種だ」
襲撃者による攻撃で住んでいた家は半壊。またも住む場所をなくしてしまった彼ら。その戦闘後を調べたバルトフェルドが残骸から襲撃者が使用していたモビルスーツがザフト軍のものであることを特定した
「まだ正規軍にしかないはずだが...」
「それがラクスさんを、ということは...」
「なんだかよくわからんがね。こりゃプラントへのお引越しも白紙かな」
「でも、なぜわたくしが...」
「ラクス...」
不安がるラクスをレオはそっと抱き寄せる
「まぁまぁ!」
「うん?」
「マーナさん」
「あらキラ様!それにレオ様も!」
そこへ子供達と手を繋ぎやってきたのはカガリの身の回りのお世話をしていたマーナだった
「これを」
「手紙?」
「カガリお嬢様からキラ様にと」
「え?」
「お嬢様はもうご自分でこちらに出かけることすら叶わなくなりましたので...マーナがこっそりと預かってまいりました」
「なに?カガリさんどうかしたの?」
「お怪我でもされたんですか?」
「いえ、お元気ではあるのです。ただ...」
「決まってしまったんですね。セイラン家への嫁ぎが」
「はい...」
「「えっ!?」」
レオの発言を肯定したマーナにその場にいた全員が声を上げて驚く
「お式まであちらのお宅にお預かり...その後もどうなるかこのマーナにもわからない状態なのでございます!」
「なるほど。勝手なことをしないように監禁か」
「どういうことレオくん!」
マリューはレオの言葉を聞き慌てるように問いかける
「政略結婚みたいなものでしょう。セイラン家はウズミ様のいない今オーブを手中に収めようとしているんだと思います」
「そんな!」
「でも、カガリがそんな...」
「カガリだって本心からじゃないだろう。ただ偉大な父のような後ろ盾がない状態じゃ...カガリだって元首となっている身だがまだ18歳の女の子なんだ」
「...」
キラはレオの話を聞きながら手紙を開け中身に目を通した
『キラ、すまない。本当はちゃんと一度自分で行って話をしようと思っていたんだ。けどもう動けなくなってしまった。オーブが世界安全保障条約機構に加盟することはもう無論知っているだろう。そして私は今、ユウナ・ロマ・セイランとの結婚式を控えてセイラン家にいる。ちょっと急な話だが今は情勢が情勢だから仕方がない。今国にはしっかりした、皆が安心できる指導者と体制が確かに必要なのだ。この先世界と、その中でオーブがどう動いて行くことになるかはわからないが、たとえどんなに非力でも、私はオーブ代表としてすべきことをせねばならない。私はユウナ・ロマと結婚する』
キラは手紙と一緒に入っていた袋から指輪を取り出した
『同封した指輪はアスランがくれたものだが、もう持っていることはできないし取り上げられるのはいやだ。でも、私には捨てることもできない...本当にすまないんだが、あいつが帰ってきたらお前から返してやってくれないか?ちゃんと話もせずにこんなこと本当はいやなんだけど、頼む。ごめん』
アスランからカガリへ送った指輪をキラから受け取ったレオはラクスと一緒に哀しげに見つめた
『皆が平和に、幸福に暮らせるような国にするために、私も頑張るから』
「キラ...」
手紙を見終えたキラと隣にいたフレイ。手紙の隅々には何か水滴のようなものが落ちた跡がいくつもあった
キラやマリュー達は再び心を決めた。そして今、再び飛び立とうとしている
「ごめん母さん」
軍服に身を包んだキラとレオの前にはキラの母であるカリダ・ヤマト。そしてマルキオ導師にずっと一緒に住んでいた子供達もいる
「いいのよ。でも1つだけ忘れないで。あなたの家はここよ。私はいつでもここにいて、そしてあなたを愛しているわ」
「母さん...」
「だから、必ず帰ってきなさい。みんなで...」
「...。うん!」
本当なら息子を再び戦場へ送るなんてことは決して認めることはできないだろう。しかしカリダは本音と涙を堪え息子を送り出す
「レオ...」
「いっちゃうの...?」
「ごめんなみんな。少しだけ行ってくるよ」
「かえってくる?」
「あぁ。絶対に帰ってくる。だから、それまでお留守番しててくれ」
「うん...」
「きをつけてね...」
「ありがとな」
レオはその大きな体で子供達全員を抱きしめる
「マルキオ様...」
「お気をつけて。ご武運を」
「はい」
マルキオにも挨拶を済ませキラとレオはアークエンジェルに搭乗した。ブリッジでは既に発進シークエンスが開始されており、そこにはノイマンやチャンドラなどのかつての仲間達が。そして艦長席に座るのは、もちろんマリュー・ラミアス
「メインゲート解放」
「メインゲート解放よろし」
「拘束アーム解除」
「解除確認」
「機関20%。前進微速」
「機関20%。前進微速」
「水路離脱後、上昇角30。機関最大!」
「各部チェック完了!全ステーション正常!」
「海面まで10秒。現在推力最大」
島の海底部より海面を目指すアークエンジェル
「離水!アークエンジェル、発進!」
海面より現れた大天使。そしてそれは空へとさらに上昇した
新郎ユウナ・ロマ・セイランと新婦カガリ・ユラ・アスハの結婚披露宴は大々的に行われた。それもそのはず。国を担う家系同士の結婚なのだから
新郎新婦はそれぞれ真っ白なタキシードとドレスに身を包み盛大に祝ってくれる国民の中を車で移動し海岸沿いにある式場に到着した
「今日、ここに婚儀を報告し、またハウメアの許しを得んとこの祭壇の前に進みたる者の名は...ユウナ・ロマ・セイラン、そしてカガリ・ユラ・アスハか?」
「「はい」」
「この婚儀を心より願い、また永遠の愛と忠誠を誓うのならば、ハウメアはそなた達の願いを聞き届けるであろう。今改めて問う...互いに誓いし心に偽りはないか?」
「はい」
「...」
神父からの問いかけにユウナは即答。しかしカガリは...
「失礼します!即刻避難を!」
「なんだ?何があった?」
「早く!カガリ様を!」
「迎撃!」
その場を警護していたM1アストレイ4機が空へ向かって発砲。しかし全機瞬く間にライフルを撃ち抜かれてしまった
「あぁっ!」
「キラ!?」
そこへ現れたのはフリーダム。ゆっくりと祭壇の前に降下した。そして逃げ行く来賓には目もくれず花嫁姿のカガリを優しく掴み取った
「カガリっ!」
「何をするっ!キラ!」
自分の妻となるはずのカガリを呼ぶユウナと掴まれたカガリの怒号にもキラはまったく答えずそのまま浮上した
「な、何をしている!早く撃て!」
「何をおっしゃいますか!」
「カガリが!カガリが!!」
「ヘタに攻撃すればカガリ様に当たります!」
「はっ!うぅぅ!!」
連れ去られたカガリになす術なく泣き崩れるユウナを背にフリーダムは式の最後に飛び立つ予定だった白い鳩と共に空へ飛翔した
「おい!降ろせバカ!キラ!」
『カガリ、ちょっとごめん』
カガリを奪還しようと接近する機影を確認したキラはすぐさまカガリをコックピットに入れた
「うわ、すごいねこのドレス」
「お前!」
「ちょっと黙ってて。捕まっててね」
「ウッ!」
『こちらオーブ軍本部!フリーダム!直ちに着陸せよ!』
「ごめんね...」
目の前から迫り来るオーブ軍モビルスーツ<ムラサメ>。現在はモビルアーマー形態に変形し接近してくる。キラはこれをビームサーベルを抜きエンジン部分を斬りつけた
「あれは、アークエンジェル!?」
海の真ん中でオーブ軍艦隊に半包囲されているアークエンジェル。キラはそこに向かって降下し開けられたハッチに着艦した
『フリーダム着艦。カガリさんも無事です』
『よ〜し上出来だ。では、いきましょうか艦長』
『はい。ベント開け。アークエンジェル急速潜航』
フリーダムを収容したアークエンジェルは即座に海に潜り始めるもオーブ軍から発砲などは一切なかった
本来であればカガリ救出のため動かなければならないオーブ艦隊。しかし彼らは要請通り
「いったいどういうことだこれは!」
一旦海底にその巨体を潜めたアークエンジェル。その中では予想通りカガリの怒声が響き渡る
「あなた方までいてなぜ!こんなバカな真似を!結婚式場から国家元首を攫うなど国際手配の犯罪者だぞ!正気の沙汰か!?こんなことをしてくれといったい誰が頼んだ!」
「カガリさん...」
「それは全員わかってるさカガリ」
「レオ!お前がいながら!」
「世界が大変だってときにカガリにまでバカなことをされてはたまったもんじゃないんだ」
「バカなこと...だとっ...?」
「レオ...」
「大丈夫さラクス。カガリだって前の子供だったカガリじゃない。だろ?」
「ッ!」
カガリはレオの言いたいことを理解していた。しかし自分の力ではどうすることもできないことも理解していた。その葛藤で拳を握り締める
「バカな、こと...わかっているさ私にだって!だが私だって考えて!悩んで!それで!」
「それで決断したのが大西洋連邦との同盟やセイラン家との結婚だと言うのか?それがオーブのためだと、お前は本気で思っているのか?」
「あ、当たり前だ!でなければ誰が結婚なんて...!」
カガリはこれまで以上に大声を上げる。ただそれは本心からというよりもむしろ虚勢のようにレオは感じられた
「仕方ないんだ!ユウナやウナト、首長達の言う通りオーブは再び国を焼くわけにはいかない!そのためには...今はこの道しかないじゃないか!」
「カガリはオーブさえ焼かれなければ他の国はいいって、そう言いたいのか?」
「ッ!それは...」
「ウズミ様がおっしゃられたこと、忘れたわけじゃないだろ」
「でも!」
段々とカガリの目に涙が浮かぶ。ただだからといってレオは発言を止めることはできなかった。言わなければならない、カガリに思い出させなければいけないから
「カガリを責めるわけじゃない。カガリはカガリなりに頑張ってきたのはよくわかってる。でも、今カガリが道を踏みはずすことが見ていられなかった。俺も、ここにいる全員がな」
「ッ!?」
カガリはブリッジ内にいる全員を見渡した。全員笑って目を合わせてくれる
「ラクス」
「はい」
ラクスがゆっくりとカガリに近づき手に持っていたものをカガリに渡した
「これ...」
「大切なもの、なのでしょ?」
「ラクス...」
ラクスがカガリに渡したのは処分を頼んだはずのカガリがアスランからもらった指輪だった
「レオくんと話してカガリには時間が必要だと思ったんだ。今のオーブじゃ多分いろんな圧力があるだろうし。だからカガリも俺達と一緒に行こう」
「キラ...」
「そして今度こそ見つければいいよ。なにが正しいのか、どうしなきゃいけないのか」
「う、うぅぅ...うあぁぁぁ!!!」
最後にキラの言葉を受けて大声で泣き出すカガリをラクスがそっと抱きしめ頭を撫でた