ガンダムSEED 〜守るための戦い〜   作:てこの原理こそ最強

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第四十二話

 

 

「毎日毎日、気の滅入るようなニュースばかりだね〜」

 

未だ海底から動かないアークエンジェルは各国のニュースを見て情報を集めていた

 

「なんかこう、気分の明るくなるようなニュースはないもんかね」

 

「今日バルトフェルドさんが入れたコーヒー。実は俺が3ヶ月ぐらい前に既に試作していた件とかどうです?」

 

「え...」

 

「フフッ!」

 

「それ、内緒にするんじゃなかったの坊や?」

 

「あ、そうでしたね」

 

コーヒー作りを趣味としているバルトフェルドにとってある意味衝撃的なニュースがレオから発せられた。それを既に知っていて知らんぷりをしながら飲んでいたマリューとアイシャは思わず笑ってしまった

 

「しかし何か変な感じだな。プラントとの戦闘はどうなってるんだ?入ってくるニュースは連合の混乱のニュースばかりじゃないか...」

 

「プラントはプラントでずっとこんな感じですしね」

 

ラクスが画面を切り替える。すると突然音楽が流れ始める。そして映るのは、ステージで踊り歌う()()()の姿

 

『勇敢なる兵士のみなさ〜ん!平和のためわたくし達も頑張りま〜す!みなさんもお気をつけて〜!』

 

ステージから兵士、というかいっそただのファンと化しているザフト軍の兵士達に声をかけ手を降る画面内のラクス

 

「みなさん、元気で楽しそうですわ」

 

「これも...いいのか?このままにしておいて」

 

「そりゃなんとかできるもんならしたいけどね。だが、ヘタに動けばこちらの居場所が知られるだけだ。それは現状うまくはないだろ?匿ってくれているスカンジナビア王国に対しても」

 

「そうね...」

 

オーブを出たアークエンジェルはオーブと同じように昔から中立国を貫いている<スカンジナビア王国>に身を寄せていた。ちなみにこの国はラクスの父、シーゲルの故郷でもあったりする

 

画面越しに見る"偽物のラクス"。本物のラクスを暗殺しようとしておいて代わりのラクスを用意しているプラントは何が目的なのかまだはっきりとわからないバルトフェルドやマリューは揃ってため息をつく

 

「だが、いつまでもこうして潜ってばかりはいられないだろ?オーブのことだって私は...」

 

「でも、今はまだ動けない。まだ何もわからないから...」

 

「ユニウスセブンの落下は確かに地球に強烈な被害を与えたけど、その後のプラントの姿勢は真摯だったわ。難癖のように開戦した連合軍の方がバカよ...」

 

「あぁ...」

 

ユニウスセブンの落下後デュランダル議長は先の大戦によるザフト残党兵のテロ行為と隠すことなく認めている。しかしそれを連合が勝手に現ザフト勢力による地球破壊計画などと開戦の口実作りをしたことに対して怒りを感じているマリュー

 

「ブルーコスモスだろ?」

 

「まぁね。でもデュランダル議長はあの信じられない第一波攻撃の後もバカな応酬はせず市民から議会からみんな宥めて最小限の防衛線を行っただけ。どう見ても悪い人じゃないわ。そこだけ聞けば...」

 

「実際良い指導者だと思う。というか、思っていた...が正しいな」

 

「そっか、カガリは直接会っているものね」

 

直接会ったことのないマリューやバルトフェルドに対してカガリは実際に彼を見ていることを指摘するフレイ

 

「あの時は彼を本当に素晴らしい人物だと思っていたよ。ラクスの暗殺とこの件を知るまではな...アスランだってそう思ったからこそプラントに行くと言い出したんだし」

 

「じゃあ誰がラクスを殺そうとした?」

 

プラントの話題になってから一切口を挟まず画面内のラクスを睨みつけていたレオがここで口を開いた

 

「誰がラクスを殺せと命令を出したんだ?」

 

「それは...」

 

「そしてこれだ。こんなもの、自分の意のままに操るための道具と同じだろ。そんなことでラクスを殺そうとしてる奴を信じられるか...」

 

「レオ...」

 

「ま、それが政治と言えなくもないがね」

 

画面を睨みつけたままいつもより少し低いトーンで話すレオにバルトフェルドが口をはさむ

 

「議長って立場なら知らないはずもないでしょ。彼女が本物のラクス・クラインでないことも」

 

「そりゃあな。いったい何を考えているんだかね、議長は」

 

「なんだかユーラシア西側のような状況を見てるとどうしてもザフトに味方して地球軍を討ちたくなっちゃうけど...」

 

「お前は未だに反対なんだろ?レオ」

 

「はい。そもそもラクスを殺そうとしたやつらの味方になれるはずもありません」

 

「なら、地球軍側についてプラントをやるか?」

 

「地球軍は核を使ったんです。あんな簡単に。なら、わかるでしょう?」

 

レオはどんなに話しかけられても画面から目を離すことはなかった

 

「アスランが戻ればプラントのことももう少し何か情報が入るとは思うんだが...」

 

「アスラン...」

 

「レオくん?」

 

「あぁ。なんでもない」

 

レオは察していた。アスランがどういう目的でプラントに向かい、どのような結果になったかも...

 

「うーん。やっぱり普通にラクスの方が上手いよな」

 

「なんだ?急に惚気か?」

 

「まぁそれもありますけど。ラクスはしっとりと歌う姿が魅力的だと思うんですよ。あとあの格好は...お淑やかさとか上品さが完全に欠けていると思いません?」

 

「お前...言ってて恥ずかしくないのか...?」

 

「いえ?ラクスのことだったら1日中話せますが?なぁキラ」

 

「ぼ、僕はもう十分聞いたから...」

 

レオから急に話しかけられたキラは前にレオから延々とラクスのいいところを聞かされた時のことを思い出し目を背けた

 

「そんなあからさまに嫌がるなよ。あの後フレイとの惚気話も聞いてやっただろ?」

 

「は、はぁ!?ちょっとどういうことよキラ!」

 

「いや、それはレオくんが根掘り葉掘り聞いてきたからで...」

 

「途中からノリノリだったくせによ。よし、今日は風呂でラクスの魅力第三章第四節から聞かせてやろう」

 

「えっ...」

 

まさか続きがあったとは思いもしなかったキラは驚愕の声がこぼれる

 

「あらあら、なんだか恥ずかしいですわね」

 

「そう言いながら嬉しそうじゃない、ラクス」

 

「フレイさんはお嫌ですか?好きな男性が自分のお話をしてくださるのは」

 

「ッ!?い、嫌ってわけじゃないけど...」

 

「あらあら。お可愛いですわね」

 

「ちょっ!ラクス!」

 

「若いっていいわね。ね?アンディ」

 

「ウッ...」

 

ラクスやフレイの惚気を聞いていたアイシャはそろーりとバルトフェルドに近づき意味深に背中をなぞった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日後。アークエンジェルに1つの情報が入った。その内容は、"オーブがザフトを討つために黒海へ軍を派遣する"、というものだった

 

「そんな...」

 

この情報を受けたとき、カガリは酷く悲嘆した。あのオーブが国の理念を無視するような行動をしたからだ

 

「オーブが...スエズに軍を派遣だと...?」

 

「そうみたいだな」

 

「ウナトは...首長会はいったい何を考えて...」

 

「断れないだろ?大西洋連邦と同盟を交わしちゃった以上は」

 

「ッ!」

 

レオに痛いところをつかれるカガリ

 

「それに、それを認めたのはカガリだろ?」

 

「レオ...」

 

「ちょっとレオ」

 

心を痛めているカガリに対してさらに追い打ちをかけるレオを止めようとするフレイ

 

「事実だろ?大西洋連邦と同盟を結ぶってことはザフトとは敵対する。まさかこうなるとは思ってなかったか?」

 

「わ、私は...!」

 

「言いすぎだよレオくん。カガリだって考えてたと思うし」

 

「そうね。それに私達だって強引にカガリさんを連れてきちゃったわけだし。今彼女がオーブにいたらこうはなってなかったかもしれないのよ?」

 

「無理ですよ」

 

「ちょっとレオ!」

 

キラやマリューがカガリをフォローする中カガリには無理だと断言するレオをフレイが強い口調で注意する

 

「大西洋連邦との同盟もそうだが、セイラン家との結婚すら拒めなかったカガリができるとも思えん」

 

「それは...」

 

「ッ!」

 

レオの指摘にフレイはもちろん、当の本人でもあるカガリすら反論できない

 

「でも、今は違いますでしょう?」

 

「ラクス...」

 

「今のカガリさんになら、あのとき見えなくなっていたもの、お見えになってらっしゃると思いますわ。それに、そのための時間だったのでしょ?レオ」

 

「ははっ。適わないなラクスには...さて、どうするカガリ?」

 

「レオ...」

 

「オーブが連合陣営についたとなるとまたいろいろと変わってくるだろうな」

 

「えぇ。そうね...」

 

バルトフェルドとマリューの会話を聞いてもカガリはなかなか発言ができない

 

「カガリ。ここはお前を否定するオーブの行政府じゃない」

 

「ッ!!」

 

「レオくんの言う通りだよ。ここにいるのは全員もれなくカガリの味方だよ。道を踏み外しそうなときは止めるし、正しいと思える道を行こうと言うなら喜んで背中を押すよ。そんな人達が集まってることはカガリもよくわかってるでしょ?」

 

レオとキラの言葉に今まで地面ばかり見ていたカガリはそこではっきりと顔を上げた。そこには優しい笑顔を向けてくれるかつての仲間達。自分の気持ちを押し殺さずフランクでいられる空間が広がっている

 

「...。キラ、レオ、発進してくれ」

 

「いいんだな?」

 

「あぁ。今更バカげた感傷かもしれないが、できることなら私はこの戦闘を止めたい。オーブはこんな戦闘には参加してはいけない。オーブだけではない。本当ならもうどこの誰も、こうして戦うばかりの世界ではいけないんだ。だから頼む!」

 

カガリは力強い眼差しでキラとレオに訴える

 

「そして少しでも間違えてしまった道を今からでも戻らねば、オーブも!」

 

「わかったよカガリ。レオくんもいいよね?」

 

「あぁ。カガリがそう決めたのなら俺達は全力で力を貸す。それに俺もあの戦場には用があるんだ。おそらくだが、アスランがいる」

 

「え...」

 

「アスランが!?」

 

レオの発言にカガリやキラ、そしてその場の全員が驚く

 

「なぜ...」

 

「本当にいるかはわからん。それにいたとしても、なぜまた戦場にアスランがいるかなんて本人しかわからんさ。ともかく行きましょう」

 

「わかったわ」

 

「了解。システムチェック急げ!」

 

オーブを出て後ずっと身を潜めていたアークエンジェルが、今動き出す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スエズ近海。既にオーブ軍含めた大西洋連邦艦隊がザフト軍を待ち構える体制を取っていた。そしてザフト軍艦隊の中にはミネルバの姿があった

 

斯くして戦闘は始まってしまった。両軍モビルスーツを発進させるもミネルバ所属のインパルスが次々とオーブ軍モビルスーツのムラサメや大気圏内飛行用オプション<シュライク>を装備したM1アストレイを破壊していった

 

ただ数が違いすぎる。ミネルバ艦長のグラディスはタンホイザによる攻撃命令を下した。しかし...

 

 

 

タンホイザーが撃たれる前に何者かによる攻撃でタンホイザ自体破壊されてしまった

 

 

 

『あれって...』

 

「な、なんで...」

 

インパルスのパイロットであるシンはミネルバがやられたことよりも目の前に現れたモビルスーツ2機の方に驚愕していた。それはミネルバでCICを担当している妹のマユも同じであった

 

『フリーダム!?ユニティ!?』

 

「ッ!」

 

つい先日ザフトへ復隊しデュランダル議長より戦績・人格ともに優れていると認められた者が任命される<フェイス>の称号を受け取り、現在ミネルバのモビルスーツ隊隊長となったアスランの無線でシンとマユは確信した。あれが故郷であるオーブを火の海に変えたフリーダムと、そんな中自分達家族を助けてくれたユニティ。その2機が一緒にいるというということを...

 

そしてさらに2機の後方よりアークエンジェル。そのアークエンジェルよりまた新たにモビルスーツが発進した

 

 

 

『私はオーブ連合首長国代表、カガリ・ユラ・アスハ!』

 

 

 

「はっ...?」

 

『カガリ...!』

 

 

 

『オーブ軍!直ちに戦闘を停止せよ!軍を退け!』

 

オーブ代表がいきなり現れて確かに戦闘は一時ストップしている

 

『現在訳あって国元を離れてはいるがこのウズミ・ナラ・アスハの子、カガリ・ユラ・アスハがオーブ連合首長国代表首長であることに変わりはない!この名において命ずる!オーブ軍はその理念にそぐわぬこの戦闘を直ちに停止し軍を退け!』

 

 

 

『カガリ...』

 

「クッ...」

 

オーブ代表を名乗る機体は確かにストライクルージュ。さらにその肩部にはカガリのものと思われるエンブレムも見て取れる

 

 

 

 

カガリの出現。これでオーブが退き戦闘は終わる。そんな甘いことは決してなかった...

 

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