ガンダムSEED 〜守るための戦い〜 作:てこの原理こそ最強
カガリの言葉は無惨にも届かず、オーブは撤退せずに驚愕の行動を取った。カガリの乗っているストライクルージュに向かって攻撃を仕掛けたのだ
「なっ!」
『カガリさん!』
『キラ』
『うん』
ラクスが叫ぶ中すぐさまキラとレオが迫るくるミサイルを撃ち落とす
「オーブ軍何をする!私は!あっ!」
オーブ軍が攻撃を再開したのを合図に地球軍側もモビルスーツを発進。ミネルバを落とそうと向かっていく
「オーブ軍!私の声が聞こえないのか!言葉がわからないのか!戦闘を止めるんだ!」
カガリが必死に止めようと声をかけ続けるもオーブ軍モビルスーツ隊も動き始める。さらにはカガリへの攻撃もしてくる。それをレオがシールドで止め撃ってきたモビルスーツのライフルを撃ち抜いた
『時間切れだカガリ。これではもうダメだ』
「そんな!」
『残念だけどレオくんの言う通りだよ。もうどうしようもないみたいだ』
「キラ...」
『下がって。後はできるだけなんとかしてみるから』
「でも!」
『カガリを撃ってきた時点で今のオーブ軍に声が届かないのはわかったはずだ。いいから下がれ』
「レオ...」
キラとレオは向かってきているムラサメやM1の武器や頭部を破壊する
『バルトフェルドさん。カガリとアークエンジェルを頼みます』
『了解』
『キラ、俺はミネルバの方に』
『わかった』
レオとキラは今起こっている戦闘を止めるべくその場を離れた。そしてアークエンジェルからはバルトフェルド搭乗のムラサメが発進した
「ッ!?」
自分に銃を向けるムラサメ。シールドでその攻撃を防ぎ自分も迫りくるムラサメに銃を向けるものの、同胞であり自分の国の兵士に対してカガリは撃つことなどできなかった
『撃てないのなら下がれカガリ!』
「だが!」
『お前が撃たれでもしたら、それこそオーブはどうなる!』
「あぁぁ...あぁぁぁ...!!!」
目の前で次々と墜とされていく同胞達。そして何もできない非力な自分。カガリはいろんなことが混ざり合って大声で泣いた
「モビルスーツ接近!数3!」
「対空!何してるの!」
「は、はい!パルジファル撃てー!」
空中線のできないザクで出撃しているレイ・ザ・バレルとルナマリア・ホークが艦上で対空に加わってくれていると言っても相手の数が多すぎて迎撃が間に合っていないミネルバ
「ッ!さらにアンノウンモビルスーツ接近してきます!」
「それってさっきの!?」
「えぇー!!?」
「はい!速いです!」
「ルナマリアに迎撃を指示!」
「待ってください!」
「マユちゃん!?」
ユニティの接近に伴い艦長であるタリア・グラディスはすぐさま迎撃の指示を出そうとしたのだがマユがそれを止めた
「あれは!あのモビルスーツは!私達を助けてくれたんです!」
「なんですって...?」
艦長の命令を止めるなど本来ならば戦場であってはならないことだったのだが、マユの言葉通り接近してきたユニティはミネルバへ攻撃はせず、逆にミネルバに攻撃を仕掛けてくる地球軍やオーブ軍のモビルスーツを攻撃していた
「艦長!これはいったい!」
「私にだってわからないわよ!最初はこっちの艦主砲を撃っておきながら...」
「敵...じゃないんですか...?」
「ッ!あのモビルスーツより電文です!」
「どういうこと?読み上げて!」
「は、はい!」
ユニティから送られてきた電文をオペレーターであり出撃しているルナマリア・ホークの妹、メイリン・ホークが読み上げる
『こちらに貴艦を攻撃する意思はない。しかし貴艦がこちらを撃つというのであれば艦の半壊ぐらいは覚悟してもらう。我々の目的は即時戦闘の停止である』
「...以上です!」
「本当に戦闘を止めたいなんてバカげた理由で介入してきたと言うの...?」
まだ信用したわけではないグラディス。しかしこちらが状況的には不利なのも事実。攻撃しないと言ってくれるなら助かることではあった
「...」
そんなブリッジでただ1人。疑いや敵に向けるようではなく、尊敬や憧れに近い目でユニティを見つめているのがマユだった
「あとは...」
ミネルバに迫る地球軍とオーブ軍のモビルスーツ群を一掃したレオは戦場の中で何かを探していた
「あれか!」
見つけた先にはガイアとザフトの最新型モビルスーツ<グフイグナイテッド>が睨み合っていた。そこに向けて急降下していくフリーダムの姿が目に入る
「待ってくれキラ!ガイアに乗ってるのが
『ッ!?』
ビームサーベルで斬りかかろうとしていたところにレオの呼びかけがありキラは急停止する
「すまない。ここは俺に任せてくれ」
『わかった。気を付けてね』
「あぁ」
レオに諭されキラはその場を離れ別の場所に飛んでいき、代わりに介入したレオに向かってグフからビームガンが連射される
「ま、そうなるよなっ!」
しかしレオはそれを軽々と避け続けすれ違いざまに右腕を斬り落とし、さらに振り向きざまグフのフライユニットを撃ち抜いた。空中制御を失ったグフは海に落ちて行ってしまった
「次は!」
レオは武器をしまいガイアに近づこうと試みるがモビルアーマー状態のガイアからは頻りにライフル攻撃が撃たれる
「"ステラ"!」
レオはとある名前を呼びながらなんとかチャンネルを繋げようとダイヤルを回す
「クッ!」
しかしそう簡単には繋がらない。繋がれと心で願いながらダイヤルを回し続けているとガイアが飛びついて来たがレオはこれを回避する
「クソッ!ステラ!」
『ッ!?なんだ...なんなんだお前は!!』
「繋がった!?ステラ!俺だ!」
『なんだ...!知らない!お前なんか知らない!!』
モビルスーツ形態になりビームサーベルで斬りかかってくるガイア。しかしレオはこれをシールドで防ぐ
「わからないのか!俺だ!レオだ!!」
『ッ!レ...オ...』
レオの名前に反応したステラはガイアの動きを止めた。しかしパイロットであるステラ・ルーシェははっきりしないのか頭を抱える
『レ...オ...うぅぅ!』
「思い出せないか...?昔お兄ちゃんって慕ってくれたじゃないか...」
『お兄、ちゃん...レ、オ...お兄......ッ!!?』
そのときステラの頭の中で鎖で繋がれていたものが解き放たれたような感覚に陥り今まで忘れていた昔の記憶が舞い込んできた
『お兄ちゃん!!レオお兄ちゃん!!』
「ッ!ステラ!」
ステラはコックピットを開けその姿を現した。レオは急いでガイアに近づきステラをユニティのコックピットに入れた
「お兄ちゃん!」
「ステラ...」
レオを見るなりステラはヘルメットを取り思い切り抱き着いた。それはもう親に甘える子供のように
「お兄ちゃん...レオお兄ちゃん...!」
「ステラ...ようやく会えた...!」
「あぁ...」
レオが本当に自分の思っている人だと認識したステラは最後には笑顔を見せ安心したのか気を失うように眠った
「今まで、すまなかったステラ...」
「...」
眠ったステラの涙で濡れた頬を撫で謝罪の言葉を出すレオ
「キラ。悪いが先に戻る」
『わかった。気を付けてね』
「キラもな」
レオはガイアを抱えて誰も追いつけないようなスピードでアークエンジェルに帰投した
そしてそのすぐ後、先に撤退の信号弾を上げたのは地球軍側だった。それにより戦闘は終了。飛び回ったキラはカガリとバルトフェルドを収容したアークエンジェルと共にその場から退散した
「レオくん。あの子が...」
「はい。ステラ・ルーシェ。間違いなく前に話していた子です」
先に自室のベッドにステラを寝かせてからブリッジに戻ったレオはマリューやバルトフェルドに事情を説明した
レオとステラの出会いは2人が物心つくぐらいの年齢に遡る。親を知らない2人は同じ施設に預けられ幾何かのときを一緒に過ごした。しかし途中で離れ離れになりレオはずっとステラのことを気にかけていた。そしてそんなステラのことは既に前の戦いを一緒に戦ってきたキラやマリュー達には話しており、彼女がどんな子なのかも大体把握している
「そう。ともかく目を覚ましたときにあなたがいないと困惑するでしょう。側についていてあげて」
「ありがとうございます。念のためあれの用意もお願いでしますか?」
「わかったわ。準備しておくわね」
「助かります。ラクス、カガリのこと頼めるか?」
「はい?」
レオはステラの元に戻る前に戦場から戻ったカガリのことをラクスに託した
「相当落ち込んでると思う。今は浴場にいるらしい。さすがにそこにキラを入れるわけにはいかないからな」
「なんで僕?」
「こんなとき側にいるのは家族の役目だろ?」
「...。そうだね。でも僕じゃ。だから頼むよラクス。できればフレイも」
「え、私も?」
レオがラクスにお願いしたようにキラもカガリのことを自分に代わってフレイに託そうとしている
「1人でいたいのかもしれないけど、1人で抱えるには大きすぎると思うから」
「わかりましたわ」
「わかったわよ」
「助かる」
「そうですわ。マリューさんに頼んで混浴のお風呂も作っていただきましょう。そうすれば一緒に入れますわよね?レオ」
「え...あぁ、そうだな...」
「あら?照れていらっしゃるのですか?」
「そりゃいきなりそんなこと言われたら...」
そんな提案をしながらラクスはレオの腕に抱きつく。その手があったかとでも言いたそうなフレイはそっとキラを見つめた。その視線に気づいたキラは少し困り顔だった
「ん?」
「よかった、まだいたわね」
「お邪魔しますわ」
風呂に浸かりながら先ほどの戦闘を思い出していたカガリ。そこへラクスとフレイがやってきた
「難しい顔をされて、どうかされましたか?」
「これでよかったのかな、って思って...」
「まず決める。そしてやり通す。それが何かを成すときの唯一の方法ですわ。きっと」
「ラクス...」
「私みたいな一般人にしてみれば責任の重い決断だと思う。でもそれができるのもあなたじゃないの?」
「フレイ...」
まだ自分が選んだ道が正しかったかどうかわからないカガリ。しかし自分がどうしたいか、そんな心からの行動であったのは事実。だからそれをやり通す覚悟を持つのも自分次第。カガリはそう考えた
「そうだな、ありがとう」
「ちょっと待ちなさい!」
「うわっ!」
上ろうとするカガリの腕を引き寄せ湯船にドボンさせるフレイ
「ぷはっ!何をする!」
「ずっと考えすぎ。お風呂ぐらい何も考えないで入らないと疲れも取れないわよ」
「そうですわね。少しお話しませんか?カガリさん」
「あ、あぁ...」
最初は今ゆっくりしている時間はないと思ったカガリだったがこんな自分を気にかけてくれている2人を感じて再び湯船に浸かった
「では、まずはわたくしからレオの...」
「あーお前は最近キラとどうなんだ!?フレイ!」
「えっ!?きゅ、急に何よ!」
「あらあら」
ラクスからまたレオの自慢話が始まりそうな気配を感じ取ったカガリは即座にフレイに話を振った
一方、レオはまだ眠ったままのステラの傍で考え事をしていた
(まずはステラを救えたのを喜ぶべきか。事前に準備していた"リザベーションワード"も機能したのは僥倖だったな。でも多分"コクーン"は必要になる。提督閣下には今後頭が上がらないな...)
ステラは<エクステンデッド>と呼ばれる地球軍の強化人間の1人。以前より薬物や外科手術による強化は緩くなったものの完全に無くなったわけではないため精神や肉体を通常に戻すには並大抵ではない。しかし彼女たちは<ゆりかご>と呼ばれる催眠装置によって記憶を改竄する事で特定の行動に適した人間を形成するメンテナンスが行われるという情報をとあるルートで掴んだレオは急いでゆりかごの改良型である<コクーン>開発を事前にとある提督閣下に頼んでいた
「うっ...んぅ...」
「ステラ?」
考え事をしていてどれくらい時間が経ったかわからないレオだが、ようやくステラが目を覚ました
「お兄ちゃん...」
「よかった。今度は覚えててくれたな」
「お兄ちゃん...」
「ん?」
ゆっくりと上体を起こしたステラはベッドから降りて椅子に座るレオに抱き着きその膝に座った
「すぅ...すぅ...」
「ステラ?」
「ステラね、お兄ちゃんとお話したいことたくさんある」
「いいよ。いっぱい話そう」
「うん」
ステラは気分が良くなったのかレオの上で小さく左右に揺れる
「なぁ、ステラ」
「ん?」
「お兄ちゃん、ここにいる人にすごくお世話になってるんだ。ステラのことを紹介したいんだけど、いいか?」
「怖くない...?」
まだレオ以外の人間と会うのが怖いのか体を震わせるステラをレオは安心させるように頭を撫でる
「怖くないよ。みんないい人達だから」
「...。わかった」
「ありがと」
レオの上から降りたステラはレオと手を繋いでブリッジへ向かった
「あら?」
「みなさん、ステラが起きましたので紹介させてください」
ブリッジに入ると各々作業をしており、ラクスやカガリ、キラやフレイもそろっていた
「うぅぅ...」
「大丈夫だよステラ」
急にたくさんの視線に見舞われたステラはレオの背中に隠れてしまった
「ステラ・ルーシェです。人見知りですがよろしくお願いします」
「この子がレオの言っていた妹さんですわね。わたくしはラクス・クラインと申しますわ」
「へぇ~。レオに似ずに可愛い子じゃない。フレイ・アルスターよ。よろしくね、ステラちゃん」
「余計な一言があったな...」
ラクスとフレイが近づいて自己紹介する。レオ的には歳の近い2人とはぜひ仲良しになってほしいところではあったがいきなり近くに寄られてびっくりしたステラはさらにレオに隠れてしまう
「知らない場所で怖いわよね。マリュー・ラミアスです。少しずつ慣れていってね」
「...」
「どうかした?」
レオの後ろから顔だけ出してマリューを見つめるステラ。すると突然マリューの元に小走りで近寄りそのまま抱き着いてその豊満な胸に顔を埋めた
「ちょっ!ステラさん!?」
「...」
「ほぉ~...痛っ!」
「鼻の下伸びてるわよアンディ...」
その光景を顎に手を当てながら眺めるバルトフェルドの耳を思いっきり引っ張るアイシャ
「キラ...?」
「ぼ、僕はなにも見てないよフレイ...」
「レオくん...これはいったい...?」
「なんだか、懐かしい...」
マリューに抱き着きながらステラがボソッとこぼす
「あーなるほど」
「どういうことですの?」
「思い出した。小さいころいたとこにマリューさんに似た女性が俺達のこと見てくれてて。その人に抱き着くのがステラの習慣だったんだ」
「そうなんですの。ふふっ、確かにマリューさんは母性溢れる女性ですものね」
「いや、私はまだそんな...」
「...」
「ウッ...!」
ステラはそのままの状態で顔だけマリューの顔を見上げる。その表情にマリューはラクスの言葉を否定はしつつも母性本能はこれでもかとくすぐられた
それから数日後、アークエンジェルに暗号伝聞が届いた
「艦長!」
「なに?」
『ダーダネルスで天使を見ました。また会いたい。赤のナイトも姫を探しています。どうか連絡を。 ミリアリア』
「ミリアリアさん?」
「赤のナイト、ですの?」
「アスランか」
「ッ!」
「う〜ん」
「ターミナルから回されてきたものなんでしょ?」
「はい」
「ダーダネルスで天使を見た...じゃあミリアリアさんもあの場所に?」
「ミリィは今世界中を飛び回っています。いたとしてもおかしくはありません」
「アスランが!アスランが戻ってきてるんだ!」
「プラントからか?どうするよ」
「え...」
「誰かに仕掛けられたにしちゃなかなかシャレた電文だがな」
「とりあえず俺だけ上がってミリィと連絡を取ってみます。それが早いでしょう」
「そうね。そうしてもらいましょうか」
「はい。じゃあちょっと行ってきます」
電文はミリアリアからのものだった。しかしそれが本当にミリアリアからのものなのかは判断ができない。ということで唯一ミリアリアの連絡先を知っているレオが先に地上に上がり連絡を取ることとなった