ガンダムSEED 〜守るための戦い〜   作:てこの原理こそ最強

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第四十八話

 

 

大変な戦闘が終わりアークエンジェル内では艦長であるマリューが一旦持ち場を離れ救護室にいた。そしてその目の前にはベッドに寝る男。レオが撃ち落としマリューが保護した紫色のウィンダムのパイロットである

 

「まだ目を覚まさないですか?」

 

「えぇ。手当の時に一度目を開けて自分は連合軍第81独立機動軍所属、ネオ・ロアノーク大佐だと名乗ったそうだけど...でも検査で出たフィジカルデータは艦にあるものと完全に一致したわ。この人は、"ムウ・ラ・フラガ"よ...」

 

「今のところ()()()()()、ですね...」

 

「えぇ...」

 

「だからどういうことなんだよ!つまり少佐なんだろ?」

 

ベッドに横たわる男はムウ・ラ・フラガ。間違いなくその人だった。しかしどうやら彼は記憶を失くしているようで今日まで別人格として生きていたのだった

 

その場に集まったのはマリューの他にレオにキラ、マードックの3人。みな素直に彼の生還を喜ぶ雰囲気ではなかった

 

「間違いなく少佐ではあります。ただ...」

 

「おいおい。俺はいつ少佐になったんだ?」

 

「はっ!」

 

急に眠っていたはずのムウが、いや、ネオ・ロアノークが発言したことに驚いたマリューは立ち上がった勢いで座っていたイスを倒してしまう

 

「大佐だと言ってるでしょうが。捕虜だからって勝手に降格するなよ」

 

「あ...」

 

「ん?なんだ一目惚れか?美人さん?」

 

「ッ!」

 

「マリューさん!」

 

想い人であるムウが目の前におり、しかも生きている。その事実に涙するマリューだったが、今の彼の中に自分はいないことを痛感して救護室を飛び出した。レオはそんなマリューを放ってはおけず後を追った

 

「うっ...うぅぅ...」

 

「マリューさん...」

 

廊下の壁にもたれかかり苦しそうに涙を流すマリュー。そんなマリューにレオが静かに寄り添う

 

「艦長!?」

 

「どうかしたんですか!?」

 

たまたま通りかかったミリアリアとフレイがマリューが涙しているのを見て慌てて駆け寄る

 

「ミリィ、フレイ。マリューさんを艦長室へお願いできるか?」

 

「わかった」

 

「ステラは?」

 

「ちょっと調子悪そうだったから、コクーンの中で眠ってる」

 

「わかった。マリューさんのことよろしく頼む」

 

「えぇ」

 

ミリアリアとフレイに連れられるマリューを見送ったレオはステラが眠っているコクーンのある部屋にやってきた。和らげな表情で眠るステラを見て一安心し近くのイスに座る

 

(ステラにフラガ少佐...ネオ・ロアノークのことを伝えるべきか。それともこのまま記憶を...いや、それは地球軍の非道と同じことだ)

 

レオはステラとネオ・ロアノークを会わせるか否かを悩んでいた。同じ艦に乗っている以上いつかステラの耳にも入ることだろう。ならば先に伝えて変に混乱しない方がいいとレオは思っていた。ただ会った衝撃でステラがどうなるか不安なのもまた事実だった

 

(問題はどう会わせるか、か...それに今のステラの中でネオ・ロアノークという存在はどれほどのものなんだろうか)

 

「お兄、ちゃん...?」

 

「ん?おはようステラ。よく眠れたか?」

 

「うん...」

 

レオが頭を悩ましているとステラが目は覚ました。ただ上体は起こさずまだ眠そうに目をこする。レオはステラに近づきその頬を優しく撫でた。ステラは気持ちよさそうに、そしてもっと撫でてと言わんばかりにレオの手を握り自分から頬をスリスリした

 

「もう少し休んでな」

 

「お兄ちゃんは...?」

 

「そうだな。ステラが眠るまでここにいるよ」

 

「ん...」

 

レオの優しい顔を見たステラはより安心したのか笑顔のまま目を閉じた。しかしレオの手も繋いだまま眠ってしまったためレオはステラが起きるまでその場を離れることができなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後。プラントからデュランダル議長による全世界に向けた大々的な緊急メッセージが送られた

 

『私は、今度こそみなさんに知っていただきたい!こうして未だ戦火が収まらない訳を!』

 

「なに?どういうことなの?」

 

「デュランダル議長...」

 

「...」

 

「レオ...」

 

画面越しにデュランダル議長を睨みつけるレオ。そんなレオを少しでも和らげようとミリアリアが手を繋いだ

 

『各国の政策に基づく情報の有無により未だご存じない方も多くいるでしょう』

 

映像が切り替わり流れてきたのは先の戦闘。デストロイが街を焼いていく映像だった

 

『これは過日、ユーラシア中央から西側地域の都市へ向け連合の新型巨大兵器が侵攻したときの様子です。この巨大破壊兵器は何の勧告もなしに突如攻撃を始め、逃げる間もなく住民ごと薙ぎ払っていったのです』

 

「あの状況でよくもこんな映像を残してたことだな」

 

「レオ...」

 

『我々はすぐさまこれの阻止と防衛線を行いましたが、残念ながら多くの犠牲を出す結果となりました...』

 

「上手い編集だ。ユニティやフリーダム、アークエンジェルの姿は絶対に映したくないことが丸わかりだな」

 

「...」

 

デストロイとの戦闘シーンには後から駆けつけたミネルバやインパルスが戦闘を行っている場面しか映し出されずレオ達の戦闘は一切放送されなかった

 

『侵攻したのは地球軍。そして侵攻されたのは地球の都市です。なぜこんなことになったのか...連合側の目的は"ザフトの支配からの地域の解放"ということですが、これが解放なのでしょうか?こうして住民を都市ごと焼き払うことが』

 

映像が切り替わりミネルバの隊が赴いたであろう戦場。そして地球軍から救ってくれたことに対する民間人の喜びの顔が大きく映し出される

 

『確かに我々の軍は連合のやり方に異を唱え、その同盟国であるユーラシアからの分離・独立を果たそうとする人々を人道的な立場からも支援してきました!』

 

そして各地を飛び回る偽物のラクス・クラインの映像。レオの目つきはさらに鋭くなった

 

『こんな得るもののない...ただ戦うばかりの日々に終わりを告げ、自分達の平和な暮らしを取り戻したいと...戦場に行かずただ愛する者達と共にありたいと...そう願う人々を我々が支援しました』

 

「ッ!」

 

『ママ...ママどこ...!?』

 

『あのバケモノが何もかも壊していったのよ!』

 

『ザフトの人達は私達を助けてくれた!敵は連合だ!まだそう思えないやつはこの場に来てほしい!私達の言っていることがわかるはずだ!』

 

デストロイに焼かれた街の生き残りの人々。彼らの中にカガリやムラサメ隊が守った人は、誰1人いなかった...

 

『なのに平和を望む我々の手をはねのけ、我々と手を取り合い、憎しみで撃ち合う世界よりも対話による平和への道を選ぼうとしたユーラシア西側の人々を、連合は裏切りとして有無を言わさず薙ぎ払ったのです!子供まで!』

 

「...」

 

議長の話の続きをアークエンジェルクルーは全員黙って傍聴していた

 

『なぜですか...なぜこんなことをするのです!平和など許さぬと、戦わねばならないと、誰がなぜ言うのです!なぜ我々は手を取り合ってはいけないのですか!』

 

「はっ!」

 

「あれって...」

 

「...」

 

気性を荒立てるデュランダル議長に近づくのは、偽物のラクス・クライン

 

『この度の戦争は、確かにわたくしどもコーディネイターの一部の者達が起こした大きな悲劇から始まりました。それを止められなかったこと...そしてそれによって生まれてしまった数多の悲劇...わたくしどもは忘れることは許されません。被災された方々の悲しみや苦しみは、今もなお深く果てないことでしょう。それがまた新たなる戦いへの引き金を引いてしまったのも、仕方のないことだったのかもしれません...』

 

「...」

 

レオは静かに見ている。ただミリアリアと繋いでいるのとは別の拳は強く握りしめられていた

 

『ですがこのままではいけません。こんな撃ち合うばかりの世界に安らぎはないのです。果てしなく続く憎しみの連鎖の苦しさを、わたくし達はもう十分に知ったはずではありませんか。どうか目を覆う涙を拭ったら前を見てください。その悲しみを叫んだら、今度は相手の言葉を聞いてください。そうしてわたくし達は、優しさと光のあふれる世界へ帰ろうではありませんか!それがわたくし達全ての人の、真の願いでもあるはずです!』

 

『しかしそれを邪魔しようとする者がいるのです。それも古の昔から。自分達の利益のために戦え!戦えと!戦わない者は臆病だ。従わないのなら裏切り者だ。そう叫んで常に我らに武器を持たせ敵を作り上げて撃てと指し示してきた者達。平和な世界にだけはさせまいとする者達。このユーラシア西側の惨劇も彼らの仕業であることは明らかです。間違った危険な存在と、コーディネイターを忌み嫌うあのブルーコスモスも、彼らの作り上げたものにすぎないことをみなさんはご存じでしょうか?』

 

「ここまで...」

 

『その背後にいる彼ら。そうして常に敵を作り上げ、常に世界に戦争をもたらそうとする軍需産業複合体。死の商人<ロゴス>』

 

デュランダルはこれを機にロゴス所属のメンバー写真を表に出してきた

 

『彼らこそが平和を望む私達全ての真の敵です!私が心から願うのは、もう二度と戦争など起きない平和な世界です。とってそれを阻害せんとするもの、世界の真の敵ロゴスこそを滅ぼさんと戦うことを、私はここに宣言します!』

 

「これは、大変なことになる...」

 

「あぁ。とんだパフォーマンスだな。この演説で世界のあちこちで暴動が起きるだろうさ」

 

「そんな...」

 

「そして、ロゴスが片付いた後の標的は...」

 

「僕達、ってことだね...」

 

「だろうな」

 

「オーブも視野に入っているだろう。ロゴスの中にはセイラン...いや、オーブ自体と関わりの深い者もいた。しかもオーブだけではない。彼らのグローバルカンパニーと関わりのない国などあるものか!」

 

国の元首であるカガリにはレオ達でも知らないことも知っている。なまじ知ってしまっているため困惑している

 

「いったいなにをしようと言うんだ!デュランダル議長は!クソッ!オーブが心配だ!」

 

「戻りましょう。オーブへ」

 

「キラ...」

 

「今までとは違う、とてつもない何かが動き出そうとしてます」

 

「行くしかないだろうな。しかしおそらくだが、かなり大変なことだぞ」

 

「どうして?」

 

「議長は言ってたじゃないか。平和な世界を創ることを阻止せんとするものと戦うって。その中には、俺達も含まれてる」

 

「なっ!」

 

「待てレオ!私達は!」

 

「カガリの言いたいことはわかる。俺達は別に戦争を長引かせたいがために戦っているわけではない。でもザフトが地球軍、ましてやオーブを狙うと言うなら戦わないわけにはいかない。となると議長の創ろうしている平和な世界を否定する行為だって寸法だろうよ」

 

「そんな...」

 

「ま、議長が言っていた手を取り合うってことを俺達とはしなかったのか?とは聞きたいけどな」

 

議長の言葉を真に受け全員が議長の標的は連合のロゴスだけと思っていたため、レオの言葉でまた混乱が広がる

 

「でも、やっぱりオーブを放っとくなんてできない」

 

「キラ...」

 

不安そうなキラをこっちもまた不安そうなフレイが見つめる

 

「発進しましょう。マリューさん」

 

「レオくん...でも...」

 

「危険なのはわかっています。ですがキラの言う通りカガリやアマギ一尉達が守りたいとしているオーブを見過ごすわけにはいかないですよね」

 

「...。わかったわ。全員持ち場について!アークエンジェル発進します!」

 

心を決めたマリューの号令に全員がそれぞれの持ち場につく

 

「キラ...レオ...」

 

「大変な道になると思うが絶対に諦めるなカガリ」

 

「うん。僕達も頑張るから」

 

「キラ。お前も気をつけろ」

 

「ん?」

 

「多分だが、あいつがくるぞ」

 

「...」

 

議長による宣戦布告。これによるオーブの危機。自分達も危ない状況だと認識したのだが、それでもオーブの救援に向かうアークエンジェル。この先彼らを待ち受けるのはいったい...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フリーダム...ユニティ...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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