ガンダムSEED 〜守るための戦い〜 作:てこの原理こそ最強
なんとかザフトを撒けたアークエンジェルはそのまま海底を進みオーブを目指していた
「ウッ!」
「ちょっ!レオ!無理しないで!」
「お兄ちゃん...」
ミネルバのタンホイザを受けたレオ、そしてインパルスに撃破されてしまったキラの両名はただでは済まなかった。カガリが発見し連れ帰ってくれたものの2人とも重体の状態で運び込まれた
救護室にはベッドが2つしかなく、内1つはムウが使っている。そのため残りの1つをキラが使い、レオは自室にて休養していた
「痛つつ...」
「もう、大丈夫ー?」
「あぁ。ごめんなミリィ」
「本当よまったく...無茶して...」
「お兄ちゃん痛い...?」
「ステラも心配かけてごめんな」
ベッドの横に座って身を乗り出しているステラの頭を痛みに耐えながら撫でるレオ
「また心配させて...」
「ごめんてミリィ」
「アンタはどれだけ私達を心配させれば気が済むのよまったく...」
「うっ...」
「お兄ちゃん...」
「ん?」
「すぅ...すぅ...」
レオの撫で撫でが気持ちよかったのかステラはいつの間にかベッドを枕に眠っていた
「これからどうなるのかな...」
「ともかくはこのままオーブを目指そう。あとは、見つからないことを祈るだけだな...」
「うん...」
ユニティもフリーダムも修繕不可能なほどボロボロな状態ため今戦闘になるのは絶対に避けたかった
戦闘を終えたシンがミネルバに戻ると、待っていたのは祝福の嵐だった。宿敵、フリーダムを討ち倒したシンはもう英雄とも呼ばれるかもしれない
「すごいなお前!」
「本当にすごいよシン!」
「いや、そんな!」
「本当にあのフリーダムをやったのか!」
「えぇまぁ!」
「シン!」
前回の戦闘で負傷したルナマリアや自身の機体が壊され出撃できないレイもシンの勇姿を讃えるため駆けつけた
「すごかった!あんな戦い方!びっくりしちゃったわよ!」
「よくやったなシン。見事だった」
「いや、レイのおかげだ」
フリーダム撃破のためにいろいろアドバイスをしたレイ。そんなレイが差し出した手をシンはすぐさま取り堅い握手を交わした
「やり遂げたのはお前だ、シン」
「レイ...」
「あぁ!こりゃ絶対勲章もんだろ!」
「もう無敵だな!」
整備班にも囲まれさまざまな賛辞を贈られるシン。その光景を遠目からアスランとマユがシンを囲む者達とはまったく違う雰囲気でその光景をただ見つめていた
「君は行かなくていいのか?」
「私は...正直お兄ちゃんがしたことを、喜ぶことはできません...」
「そうか」
そんな2人を見つけたシンがなにやら誇らしげな顔をしながら近づく
「討ちましたよ。あなたでも勝てなかったフリーダムに」
「...」
「ユニティの方もタンホイザをまともに受けたんです。無事ではないでしょうね」
「ッ!?」
シンの言葉に怒りを覚えたマユはシンの頬を思い切り叩こうとする。しかし直前でシンに止められる
「何するんだマユ!」
「お兄ちゃん!本気で言ってるの!?」
「はぁ!?」
「おいシン!」
「マユ!?」
すぐさまルナマリアや整備班でシン達と同期のヨウランが2人を引き離した
「何だってんだ!」
「ちょっとマユ!」
「あの機体は...ユニティは私達の命の恩人じゃなかったの!?」
「ッ!」
「それにあの人達は誰かを殺そうとした!?なのにお兄ちゃんは...!人を殺したことがそんなに自慢なの!?」
「なにを...!強敵をやっと倒して、それで喜んでなにが悪いってんだよ!」
「ッ!お兄ちゃん!」
「落ち着くんだマユ!」
またシンに襲いかかりそうになるマユをアスランが力づくで止めた
「アスランさん...」
「今のあいつになにを言っても無駄だ」
「あぁ!?」
マユに声をかけるアスランの言葉が気に障ったのかシンはアスランを鋭い目つきで睨みつける
「シンの態度が悪いことは認めます。しかし彼の行動は命令通りのものです。それのなにが悪いのでしょうか」
「レイの言うことはその通りだ。そこは否定しない。ただ、お前達はただ命令通りに動き、自分で敵を見定められない人形なのかと思っただけさ」
「なんだと!?」
「我々はザフトです。軍人です。ならば上からの命令に従うのは当然のことでしょう」
「ならば人を殺して賞賛を受けるのも普通だと?」
「アークエンジェルやフリーダムは本国が定めた敵です。それを討ってなにか間違ってますでしょうか」
「レイさん!」
自分の意見を説くレイに物申そうとするマユをまたアスランが止める
「よせマユ。感情任せではなにも解決などしない」
「アスランさん...」
「彼らは敵を全て滅ぼすまで戦争を続けるつもりらしい」
「なんだと!?誰が見ても悪いのは地球軍だろ!」
「じゃあお前が今日討ったのは、地球軍だったのか?」
「ッ!」
アスランは伝えたいことだけ伝え涙を流すマユを支えながら一緒にドックを出た
「アスランさん...」
「すまなかった。君の兄を止められなくて」
「そんな...」
「命令通りに動く人形、俺に言う資格が果たしてあったのかな」
マユに付き添いながらもアスランは自分の行動を振り返り自分の行動は本当に正しかったのか不安に駆られていた
あの戦闘から数日経ってようやく動けるようになったレオはブリッジにみんなを集めていた
「レオくん、それで話って?」
「はい。まだ捜索はされてると思いますがザフトは今ロゴスを討つためにジブラルタルに集結中と情報があったと思います」
「えぇ。降下作戦も同時に行うとの情報もあるわ」
「その間に、俺はラクスと合流しようと思います」
「そんな!危険だわ!」
レオの提案にいの一番に反対の意を示すマリュー
「大丈夫です。一度プラントに行ってダコスタさんと合流します。そのあと一緒にエターナルに向かいます」
「レオくん。今そうする必要があるってことだよね」
「あぁ」
今どこで誰に狙われているかもわからない状況で離れることを危険と考えるキラ達。しかしそれでもレオは今行動することが必要だと考えていた
「もし仮にロゴスを討ち終わってしまえば、次の標的は間違いなくオーブだ」
「ッ!」
レオの言葉に反応するのはもちろんカガリ。他のメンバーも薄々は気づいているようすだった
「だがフリーダムもユニティも戦える状態にないのはわかるだろ?」
「うん」
「だから、新しい剣を取りに行ってくる」
「ッ!?それって新しい機体ってこと...?」
新しい機体の存在に驚くマリューやキラ。レオは静かに頷いた
「はい。これもハルバートン提督閣下のお力です」
「閣下の...」
デュエイン・ハルバートン。以前は地球軍に所属していた将校だった彼はアラスカのサイクロプスの件を聞き怒り狂い地球軍を除隊。しかし戦争を終わらせたい気持ちは消えることがなく、除隊後マリュー達と連絡を取りカガリとの会談を経てオーブ軍に所属し宇宙での指揮を任されていた
そんなハルバートンにレオは3つの頼み事をしていた。1つ目は情報収集。2つ目はステラを助けた後に必要だったコクーンの製造。そして3つ目が、来たる時に備えて新たな機体を用意してもらうことだった
「機体は既にロールアウトを完了してエターナルに積み込み済みとのことなので今後のためにも取りに行きます」
「なら僕も」
「お前はまだ怪我が治りきってないだろキラ」
「...」
今回重症度合いが酷かったのはキラの方だった。まぁ機体を貫かれて爆発までしたのだから仕方ないのだろう。逆にミネルバのタンホイザを受けて機体がボロボロになったにもかかわらずこの短期間で動けるようになったレオの方が人間離れしているとも言える
「レオ」
「ミリィ?」
「止めたって行くんでしょ?」
「あぁ」
ミリアリアからしてみれば自分の心配など気にもしない勝手な行動だっただろう。レオは反省はしつつも決意は変わらないため真剣な表情でミリアリアに相対する
「もう...ちゃんと帰ってきてよ?」
「約束する。ごめんな」
頬に一発ぐらいは覚悟していたレオだったがミリアリアはレオの意思を汲み取り自分の気持ちを抑えた
「いいわよ。もう慣れちゃったし」
「苦労してるわね、ミリアリアさん」
「本当ですよ!艦長からもなんとか言ってやってください!」
「ふふっ。でもレオくん。どうやって宇宙へ?」
「ザフトに扮してシャトルでプラントに上がります。バルトフェルドさんが用意してくれるそうなので」
「ステラちゃんはどうするのよ」
「一緒に連れて行くよ。さすがにな」
「そう...」
既にステラのことを妹のように可愛がっているフレイ。そんなステラも行ってしまうことに悲しそうだ
キラとステラはバルトフェルドからの指示通りシャトルに乗車でき無事にプラントに到着した。そして手筈通りダコスタと合流。そしてすぐさまエターナルへ向かった
「レオ!」
「ラクス!」
エターナルに到着したレオ。そこにはラクスがレオの到着を待っていた。そんなラクスと熱い抱擁を交わすレオ
「ラクス...ようやく会えた」
「はい...」
浮遊しながら再会を喜び合う2人。そんな2人に嫉妬の目を向けるステラがレオの背後から抱きついた
「ステラ?」
「むぅ〜」
「あらあら」
振り向くレオに「私も!」とでも言いたげに目で訴えかけるステラ。そんな可愛らしいステラをラクスは微笑ましく見ていた
「ともかくブリッジに行きましょうか」
「そうだな。行こうステラ」
「ん...」
なんとなくステラの言いたいことを察したレオはステラと手を繋ぐ。そしてラクスに続いてブリッジへ向かった
「よぉ。元気だったか少年?」
「はい。いろいろありがとうございましたバルトフェルドさん」
ブリッジではいつも通りバルトフェルドがコーヒーを嗜んでいた
「これぐらいお安い御用さ」
「お熱いわね坊や」
ブリッジに戻ってからといものレオの腕に絡みついてまったく離れようとしないラクス。そして手を繋いだままのステラ。そんな両手に華状態のレオを茶化すアイシャ
「久しぶりのレオですもの。一瞬でも離れたくありませんわ」
「お兄ちゃん、あったかい...」
アイシャの茶化しなどなんのその。レオからまったく離れようとしない2人
「これは...隊長!」
「ん?」
ダコスタが急に大きな声を上げた。呼ばれたバルトフェルドが見せてきた画面に目をやると顔を強張らせた
「こいつは...」
「バルトフェルドさん?」
「ダコスタ、メインモニターに出せ」
「はい!」
モニターに映し出されたのは長々と書かれた匿名の電文だった
「どう思う...?」
「なぜエターナルへの秘匿通信を知ってるか、ですよね。アークエンジェルであれば匿名にする必要はないし」
「だが文面的に敵対しているとも思えんぞ。むしろこれは...」
「...。なるほど」
「わかったのか?」
匿名の電文の差出人を模索していたバルトフェルドだったがレオにどうやら見当がついたらしかった
「もし俺の想像通りだったら、ちょっと行ってきます」
「おい待て。想像通りじゃなかったらどうするつもりだ」
「それならすぐ戻ってくるだけです」
「行かせてあげてくださいな。バルトフェルド隊長」
「ラクス...キミもわかったのか?」
「いえ。でも、これまでレオの行動に意味のないことなどありましたか?」
「...」
「ふふっ。あなたの負けねアンディ」
「アイシャ...」
「行きなさい坊や。すぐ戻るのでしょ?」
「はい。すぐ戻ってきます」
「レオ。行ってらっしゃいませ」
「行ってくるよ、ラクス。ステラもな」
「うん」
レオはすぐさまドックに行き、新たな機体に搭乗した
「次はお前か。いや、完全に同じではないか」
レオは機体のスイッチを入れ起動させる
「おいおい。さすがにハイスペックすぎる...ハルバートン提督頑張りすぎだ」
機体のスペックを確認していい意味で頭を抱えるレオ
「でも助かる。これでまた守ることができる」
レオは出撃した。その白い翼のようなものを羽ばたかせ大気圏に突入した