ガンダムSEED 〜守るための戦い〜   作:てこの原理こそ最強

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第五十七話

 

『わたくしと同じ顔、同じ声、同じ名の方がデュランダル議長と共にいることは知っています』

 

『え...』

 

『ですがシーゲル・クラインの娘であり、先の大戦ではアークエンジェルと共に戦いましたわたくしは、今も変わらずかの艦とアスハ代表の元におります』

 

本物のラクス登場に動揺している偽物のラクス、ミーア・キャンベルの姿はワイプ状態でそのまま映し出されてしまっている

 

『彼女とわたくしは違うものであり、その思いも違うということをまずはお伝えしたいと思います』

 

『わ、わたくしは!』

 

『わたくしはデュランダル議長の言葉と行動を支持しておりません』

 

「そういうことか」

 

「アスラン?」

 

アークエンジェルの衝動にて放送を見続けていたアスランやキラ達。レオとラクスの行動の真意がわかったアスランは微笑しながら納得した

 

「いつか決着をつけるとは思っていたが、まさかこんな力技に出るとはな」

 

『戦うものは悪くない。戦わないものも悪くない。悪いのは全て戦わせようとするもの、死の商人ロゴス。それは果たして本当なのでしょうか。真実なのでしょうか。ナチュラルでもない、コーディネイターでもない、悪いのは彼ら。あなたは悪くないとい言葉に、どうか陥らないでください』

 

「これだけ聞けば俺達はロゴスの味方だと聞こえるな」

 

「うん。でも」

 

「あのバカがそんなことだけ考えて出ていくわけないわよ」

 

「フレイ。さすがにそれは」

 

「いいのよ。どうせ今だって偽物より本物の方が可愛いだろぐらいしか考えてないんだから。本当にラクスバカなんだから」

 

誰も否定しないあたり周知のことだろう。実際フレイの言うことは間違っていなかった

 

『無論わたくしはロード・ジブリール氏を庇う者ではありません。だからと言ってデュランダル議長を支持する者でもありません。我々はもっとよく知らねばなりません。デュランダル議長の真の目的を』

 

その後ラクスは一度画面外に離れカガリ1人に戻り声明の続きを発表した

 

 

 

 

 

こうして無事に、ではないがオーブからの声明発表は終了した

 

「お疲れ様だなカガリ」

 

「あぁ。助かったよラクス。ありがとう」

 

「かまいませんわ」

 

「ふっ、儂の出番はなかったようだな」

 

「えぇ。わざわざお越しいただいのに申し訳ありません」

 

放送を終えたその場に姿を現したのはシーゲルだった

 

「シーゲル様。どうしてこちらに」

 

「アスハ代表にお願いされただけのことだ。もしザフトから介入があった際は力を貸してほいしと」

 

「そうでしたか」

 

「いつまでもお前に頼り切りなわけにはいかないからな。ただ、ラクスが来てくれたおかげでシーゲル様をわざわざ危険な状況に陥らせないで済んだ」

 

「驚いたな。あのカガリがそんなことまで想定してたなんて」

 

「なっ!どう言う意味だ!」

 

「レオくんの言うこともあながち間違いじゃないわよ」

 

「シモンズ主任。それはどういう?」

 

「君の言ったことを懸念されたのはキサカ様ですもの」

 

「おいエリカ!」

 

「なるほどな。まだまだ精進が必要みたいだなカガリ」

 

「ウッ...」

 

「そう言ってやるなレオ。彼女は君やラクスと同い年。これからの伸び代の方が期待できるではないか」

 

「ですね」

 

焦るカガリを温かく見守りつつ微笑み合うレオとシーゲル

 

「さてカガリ。この放送でデュランダル議長のとこにいるラクスが本当に本物のラクス・クラインなのかっていう疑念が世界で出るはずだ。それにより一時的な混乱になる」

 

「あ、あぁ」

 

「だがジブルールを取り逃していることも事実だ。そして、あの男は必ず引き下がりはしないだろう。何かしらの行動を取ってくるはずだ」

 

真剣な表情のレオとシーゲル。それに同調するかのようにカガリの表情も険しくなる。そして唯一悲しそうなラクス

 

「すぐに宇宙艦隊に連絡を出す」

 

「頼む。それからアークエンジェルが宇宙へ上がれる用意も同時に」

 

「わかっている。キサカ!」

 

「あぁ。すぐ準備に取りかからせよう」

 

「儂らはザフトの動きを見てからにしよう。特にミネルバが宇宙へ上がるとなれば儂らも動こう」

 

「お願いします。俺達もアークエンジェルに戻ってすぐ話し合いをします」

 

「うむ」

 

「カガリさん」

 

全員が行動に移そうとしたところでラクスがカガリを呼び止めた

 

「なんだラクス?」

 

「わたくし達の目指す場所は同じです。どうかこれで、今度こそ成し遂げましょう」

 

「あぁ。私は私のできることをする」

 

「はい」

 

「随分と代表っぽくなったな」

 

「茶化すな!さっさと行け!」

 

「はっはっは!進むのだ若人達よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん」

 

「ただいまステラ」

 

レオとラクスの帰りをドックで待っていたのはステラだった。勢いよく抱きついたステラを優しく撫でる。そしてそのままドックからブリッジに通信を繋げた

 

「マリューさん」

 

『おかえりなさいレオくん。どうかした?』

 

「ムウさんはそこにいますか?」

 

『え?えぇ』

 

「今からブリッジに向かいます。ステラを、ムウさんに会わせます」

 

『ッ!大丈夫なの?』

 

「最近は数値も安定してきました。それにこれからも一緒に行くなら避けては通れません」

 

『...。わかったわ。念のためすぐ入れるようにコクーンの準備もしておくわね』

 

「助かります。あとキラやアスラン達もブリッジへ呼んでおいてください」

 

『了解よ』

 

通信が切られレオは心配そうにステラを見た

 

「お兄ちゃん?」

 

「ステラ。実は会ってほしい人がいるんだ」

 

「ん?」

 

ステラはなにがなんだかわからないままレオに連れられてブリッジへ。ラクスは心配そうな顔のままその2人の後に続いた

 

「お、戻ってきた...なっ!?」

 

「...」

 

ブリッジに入ると艦長席に座るマリューの隣に立っていたムウが気づいた

 

「ステラ...」

 

「ッ!?これ...ネオ...?」

 

「...」

 

目の前に現れたステラの姿に驚くムウ。そしてその声にステラも反応している

 

「どう、して...」

 

「あ...あぁぁ...」

 

「ステラ」

 

「ッ!お兄ちゃん...」

 

ネオ・ロアノークの声を聞いて自分が軍人だったときのことを思い出し発作が出かかっているステラをレオは優しく抱きしめた

 

「大丈夫だ。なにがあっても俺がステラを守る」

 

「お兄ちゃん...」

 

レオを感じられたことでステラは落ち着きを取り戻し涙も体の震えも止まった。いや、実際はまだ少し震えていた

 

「ムウさん。いえ、ネオ・ロアノークさん」

 

「ステラを、どうするつもりだ...」

 

ステラがいたことにまず驚いたムウだったがすぐさまレオを睨みつけた

 

「あなたが危惧しているようなことをさせるつもりは決してありません」

 

「なに...?」

 

「ステラはあなたが知っているような状態からは脱しつつあります。詳細はマリューさんにでも教えてもらってください」

 

「そんな...そんなことできるわけが...」

 

「ネオ...」

 

ステラがレオと手を繋いだまま恐る恐るだが一歩前に、ムウがいる方に足を踏み出した

 

「ステラ、お兄ちゃんと会えたの...」

 

「ッ!ステラ...俺は、お前のことを...」

 

「それは軍の命令であってあなた自身が望んだことではないはず。逆にステラのことを守ってくれていたのではないですか?」

 

「それは...」

 

「うん。ネオ、ステラのこと守ってくれた...だから」

 

ステラはレオから手を離しゆっくりとムウに近づく。そしてムウの一歩手前で立ち止まりこわばった表情のままムウを見上げた

 

「だから、ありがとう」

 

「ステラ...!」

 

目の前のステラの姿に泣きそうになるムウ。そんなステラが力が抜けたように倒れそうになる

 

「ステラ!」

 

「大丈夫です」

 

倒れるステラを優しく受け止めるレオ

 

「お兄ちゃん...」

 

「よく頑張ったなステラ。少しおやすみ」

 

「うん...」

 

レオを感じとったステラは目を瞑り眠りについた

 

「おい...」

 

「安心してください。眠っただけです。ちょっと寝かせてきますね」

 

「えぇ」

 

マリューに許可を取ったレオはステラを抱き抱えてブリッジを出た

 

「...」

 

「本当に心配しなくていいわよ。なんなら後で様子を見に行くといいわ」

 

「...。あいつとステラの関係は一体なんなんだ」

 

「それは本人から聞いた方がいいですよ」

 

疑問を投げかけるムウに対してミリアリアが答える

 

「確かにアークエンジェルに乗ってはいますけど戦いには決して出してないです、レオは」

 

「...。そうか」

 

ミリアリアに言われたムウは眉間に皺を寄せるのをやめ一旦落ち着いた

 

「さて、みんなカガリさんの声明は聞いたと思うけど」

 

「はい」

 

「レオは宇宙でジブリールが何かをすることを予感しているようですわ」

 

マリューを皮切りに全員がこれからのことに話を切り替えた

 

「現在カガリさんが宇宙へ上がれる準備を進めてくれているようよ」

 

「まだ何かあるというのか」

 

「何かある。ないのが一番だけど、レオくんが言うなら多分」

 

「そうだな。核やジェネシスにようなものじゃないことを祈りたいが...」

 

2年前のあの惨劇の光。キラもアスランも、マリューやラクスだって忘れるわけがない

 

「そんなこと、きっとみんな嫌だよ」

 

「しかしまた撃たれてしまえば撃ち返す。悲しみの連鎖。わたくし達はそんな連鎖を断ち切りたいがために戦ってきました。しかしこの戦うという行為は、誰が正しいのかなどわかりません。デュランダル議長はおそらくこんな世界にまったく新しい答えを示すつもりなのでしょう。議長の言う戦いのない世界、人が決して争うことのない世界、それは生まれながらにして遺伝子によってそれを決めてしまう世界でしょう」

 

「遺伝子で!?」

 

「これが議長の考える"デスティニープラン"でしょう」

 

「なるほど。生まれついての遺伝子によって人の役割を決め、そぐわないものは淘汰、調整し管理する世界。そんな世界なら確かに誰もが本当は知らない未来から解放され悩み苦しみがなく生きられるのかもしれない」

 

「自分の決められた定めの分だけね」

 

アスランやキラはラクスの説明だけで議長の考える理想の世界の一端を理解してしまった

 

「望む力を全て得ようと人の根幹、遺伝子にまで手を伸ばしてきた僕達コーディネイターの究極形だ」

 

キラのその言葉にコーディネイターであるマユやメイリンは目を見開いて驚く

 

「おそらくその世界に争いはありません。争ったところで無駄だとあなたの定めがわかりきっているのですから」

 

「...。そんな世界であいつは王かなにかか?」

 

「運命が王なのよ。遺伝子の王。言うなれば彼は神官かしらね」

 

「無駄か...」

 

「本当に無駄なのかな?」

 

「無駄なことはしないのか?」

 

「...」

 

アスランは議長やシン達のことを思い出す

 

「俺は、そんなに諦めがよくない!」

 

「だよね」

 

「俺もかな」

 

「そうね。私も」

 

アスラン、ムウ、マリューは諦めることはしない。それはこの場にいる全員が

 

「俺達がやることが無駄だと、そんなこと誰に言われるものでもない」

 

「レオ」

 

いつの間にか戻っていたレオはCIC席に座るミリアリアの肩に手を添えて話に加わる

 

「俺が、俺達がやることは変わらない。守りたいものを守る。友達も」

 

レオはキラやアスランと目を合わせる

 

「家族も」

 

そしてマリューやミリアリアとも

 

「オーブも」

 

今度はブリッジから見えるオーブの島を

 

「そして、世界も」

 

レオは最後にラクスと顔を合わせて微笑み合う

 

「アークエンジェルは準備ができ次第宇宙へ」

 

「その言い方。また先に行く気?」

 

「はい。個人的に連絡がありました。月基地の地球軍に動きがあると。それに何か巨大建造物が移動しているとも」

 

「それって...」

 

「あぁ。ディアッカからの情報だ」

 

「アイツが...」

 

「だから」

 

「レオくん」

 

「ん?」

 

レオの話を中断したキラがレオに近づきその腕を引きラクスに押しつけた

 

「あら?」

 

「なんだよキラ」

 

「前も言ったよね。レオくんだけ頑張りすぎ」

 

「いやそんなことは」

 

「今回は僕が行くよ」

 

「...」

 

キラのその決意に満ちた眼にレオは珍しく言葉を紡いだ

 

「ディアッカということはイザークの隊が動いているんだろ。俺も行こう」

 

「ううん。アスランは時間いっぱいカガリのサポートをしてあげて」

 

「しかし」

 

「多分カガリも一緒に行きたがってる。でも立場上もうそんなわがまま言ってられない。だからアスランはできるだけカガリといてあげて」

 

「キラ...」

 

「わかった」

 

「レオ。いいんですの?」

 

「キラは意外と頑固者だったの思い出した。バルトフェルドさんにはキラが向かうことを伝えておく」

 

「うん。ありがと」

 

「私は一緒に行くわよキラ」

 

「フレイ。でも...」

 

「異論は認めないわ。いい?」

 

「ここにも頑固者がいたわ」

 

「なんですって?」

 

キラの腕に絡みつくフレイ。レオの呟きが聞こえすごい笑顔でレオに顔を向けた

 

「いいえなんでも」

 

「決まったみたいね。レオくん。キラくんの言うことに賛成するわけじゃないけど、あなたは少し休みなさい」

 

「マリューさん...」

 

「そうですわね。あなたがいなくて寂しい人もいますわ。ね、ミリアリアさん」

 

「ちょっとラクス!」

 

「フフッ、そうみたいね」

 

「艦長まで...」

 

自分が濡れ衣を着させられて慌てるミリアリア。しかしその慌てようがラクスの言うことを肯定してしまっている

 

「じゃあ僕は準備するよ」

 

「気をつけてな」

 

「うん」

 

キラは出発を急ぐべくフレイと共にブリッジを出た

 

「いつの間にか頼もしくなったな」

 

「キラはお前の弟か?」

 

「いや、そんなつもりは」

 

「でもわからなくはないわ。キラくんは間違いなく末っ子気質だから」

 

「あーわかる!なんかつい甘やかしちゃう末っ子ですよね!」

 

「となると長女はミリアリアか。面倒見がいいお姉ちゃんっぽい」

 

「そうですわね。オーブの子供達もすごく懐いてましたし」

 

「レオみたいな手のかかる弟いなくてよかったわよ」

 

「どういう意味だよ」

 

「すぐどっか行く。全然帰ってこない。なんでも自分で解決しようとする」

 

「ぷふっ!」

 

「笑うとこじゃないですよマリューさん」

 

「ふふっ、ごめんなさいね。あまりにもミリアリアさんが言うことが的を得ていたから」

 

「否定できないんじゃないかレオ?」

 

「アスランにだけは言われたくねぇぞ。この空回り次男坊が」

 

「「ぷふっ!」」

 

「なっ!」

 

「いいぞマユ、メイリン。もっと笑ってやれ」

 

今度はミネルバの頃からアスランを知っているマユやメイリンが笑ってしまう

 

「なんとも平和なことだね〜」

 

そんなほのぼのとしたブリッジを親戚のおじさんっぽく見守るムウであった

 

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