ガンダムSEED 〜守るための戦い〜   作:てこの原理こそ最強

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第六十話

 

 

宇宙で戦闘があったときオーブは夜。星が光る星空の下でレオとラクスはアークエンジェルの甲板に座りそんな星空を見上げていた。もちろん2人はこれでもかとくっつき、ラクスはレオの肩に自分の頭を乗っけている

 

「静かだな」

 

「そうですわね」

 

「これが普通なのだろうな。戦争なんてない世界なら」

 

「えぇ」

 

レオは自分の肩に乗っているラクスの頭を撫でる

 

「ん?アスラン」

 

「レオ。それにラクスも一緒か」

 

「こんばんわ、アスラン」

 

扉が開く音に反応したレオ。そして甲板に出てきたのはアスランだった

 

「邪魔したか?」

 

「いいえ。アスランはどうされたんですの?」

 

「少し涼みにな」

 

「ほどほどにな。朝には出発だぞ」

 

「お前達もな」

 

「違いない」

 

レオからの指摘を苦笑いしながらそのまま返したアスラン

 

「なぁレオ」

 

「ん?」

 

「ここはこんな静かなのに、なんで俺達はずっとこんな世界にいられないんだろうな...」

 

「そりゃ俺達がそれぞれ夢や希望を持っているからじゃないのか?」

 

「夢や希望、か...」

 

「良く言えばだがな。悪く言えば欲望になるか?俺がラクスと一緒に過ごしたいっていうのも、キラが平和な世界にしたいっていうのも、カガリが未来のオーブのためにっていうのも全部な」

 

「ふふっ。そうなるとレオは欲張りさんかもしれませんわね」

 

「そうかもな」

 

「お前...」

 

「だがそういうことだろ?誰にだってああしたいこうしたいってのはあるんだ。アスランだってあるだろう?自分はこうしたいという何かが」

 

「そうだな。だが議長が言う世界には、それがないというわけか」

 

「あぁ。ある意味変わらない世界にはいられるな。逆にそんな世界から出ることを許されないとも言えるが」

 

「確かにな」

 

「そのような世界なら戦争など起きない、なにも起きない世界なのでしょうね」

 

「ラクスの言う通りだな」

 

「ですが...わたくしはそんな世界はいやですわ」

 

「ラクス...」

 

「確かにレオと平和な世界でのんびりと過ごすのがわたくしの夢です。しかしなにも変わらないのは、つまらないではありませんか」

 

「ふっ。まさかラクスからそんなことを聞くとはな」

 

「レオが一緒なのであれば変わらない日常を送るのはやぶさかではありませんわ。しかしわたくしは、レオといろんなこともしたいのです」

 

「そうか」

 

見つめ合うラクスとレオを見てほっこりとするアスラン

 

「俺も議長の言う世界には賛同できない。これは俺のわがままなのかもしれない。だが、そうして生きてきたのが人だと思う」

 

「難しいことだなこればっかりは。戦ってはいけないのか、戦わないといけないのか」

 

「そうだな。全員が願う夢が同じだったらな...」

 

アスランは悲しげに月を見上げる

 

「多分みんな思うことは一緒なのだろうな」

 

「え?」

 

「おそらくだがな。だがどうしても支配したいという奴が出てくる。支配者が不要とは思わないが、そいつが支配される側の人達と同じ夢を持たないと意味がないんだ」

 

「なるほどな」

 

「支配者とは自分でなるものではないということですわね」

 

なにが正しいかなんて誰にもわからない。正義なんてものはその人によって違う。自分の正義が他の正義とは限らない。だから戦いが起こるのかもしれない...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、アークエンジェルは宇宙へ上がる準備が整い、クルー全員がドックへ集められた

 

「月の地球軍基地がザフトに墜とされたということは皆聞き及んでいることだと思う。こちらも詳しいことまではわかっていない」

 

整列したクルーの前にはカガリを始めマリューやラクスなど主要な人物が並んでいる

 

「時期が時期なのでなんのトラブルもないと保証はできない、アークエンジェルには正式にオーブ軍第2宇宙艦隊所属としてできる限りにサポートを約束する」

 

宇宙へ上がる前の演説を進めるオーブ代表のカガリ。その姿はどこか女傑のような風貌を感じる

 

「先日のプラントの危機。その後に出たデュランダル議長の声明。国民にはもう彼を信じない者はいないだろう。世界最強のリーダーとなった彼の言うこと、なす事はどうしても正しく、全てを知って揺るがなく見える。だが我々と同じくその強大な力を危惧する国もある!」

 

カガリから発せられる言葉が一段階強くなる

 

「オーブがなにより望むのは平和だが、それは自由と自立での中でのことだ。屈服や従属は選べない。アークエンジェルにはどうかその守り手として力を尽くしてほしい」

 

カガリの言葉を聞いたクルー全員が敬礼を贈る。それに返すカガリやマリュー達

 

「本艦はこれより月面都市コペルニクスに向かい情報収集活動の任に就く。発進は30分後。各員部署に就け!」

 

『はいっ!』

 

マリューの号令によりその場は解散。クルーは駆け足で持ち場に戻る

 

「ロアノーク一佐。アカツキを頼むな」

 

「お任せを」

 

「見違えたな、カガリ」

 

「お前はいつまで私を子供扱いするつもりだレオ」

 

「ついこの間まではな。だが、いい顔をするようになった」

 

「私もいつまでも子供のままではいられない。もう、この国の代表なのだからな」

 

「そうか」

 

レオはなんとも頼もしくなったカガリに成長を感じつつ少し名残惜しさも感じるレオだった

 

「カガリ様」

 

「あぁ」

 

オーブの役人から呼ばれたカガリはアークエンジェルから出るため歩き出す。マリューやラクスも見送るためにその後を追いアークエンジェルを出た

 

「艦長。無事と健闘を祈る」

 

「ありがとう。カガリさんも頑張って」

 

カガリは最後の見送りとして見送りに来た面々と顔を合わせ最初にマリューに抱きつくとマリューもカガリを抱きしめた

 

「ラクス」

 

「お言葉はいりませんわカガリさん。またすぐお会いできることを祈りましょう」

 

「あぁ。そうだな」

 

今度はマリューとは反対にラクスがカガリのことを抱きしめる

 

「レオ、みんなを頼む」

 

「任された。誰1人欠けることなく戻る。守り切ってみせるさ」

 

「ふっ、変わらないなお前は」

 

「当然。だからカガリは信じて待ってろ」

 

「お、おい!」

 

「ははっ。俺とのハグの時間は次のやつに譲ってやる」

 

レオは前の3人のように抱き締めることはせず、カガリの頭を少し強めに撫で回すだけだった

 

「...」

 

「...」

 

最後にアスラン。しかし2人に言葉は一切なかった。アスランは目の前にきたカガリをただ抱きしめた。そしてカガリもアスランの背中に手を回す。それはそれは誰よりも力強く...

 

最後の顔合わせを終えた面々はアークエンジェルへ戻り発進シークエンスを開始した

 

いよいよアークエンジェルが宇宙へ上がるとき。ドックを出るアークエンジェルに向かってカガリやキサカ達は艦の姿が見えなくなるまで敬礼をし続けた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宇宙へ上がったアークエンジェルはすぐに月への進路を取った。途中特に問題もなく月面都市コペルニクスに入港することができた

 

入港後すぐにマリューとレオは基地内のとある部屋を訪れていた。その部屋をノックするとすぐに中から声がする

 

『入れ』

 

「失礼します!」

 

「おー!ようやく会えたなラミアス艦長!」

 

「はい!お久しぶりです閣下!」

 

そこにいたのはマリューの恩師であるデュエイン・ハルバートンであった

 

「シュヴァルグラン君も元気そうでなによりだ」

 

「えぇ。おかげさまでここまで生き残れております、ハルバートン提督」

 

「なに、あれもこれもほとんどが君の提案があってのことだ」

 

「いえ、どれもこんな若造の言葉を真摯に聞いてくださり開発に繋げて下さった提督閣下のお力によるものです」

 

「相変わらず頑固者だな君は」

 

「提督閣下の愛弟子殿に鍛えられましたので」

 

「そうか、ならば致し方なしだな。はっはっは!」

 

「閣下...」

 

ハルバートンはレオの皮肉とも取れなくもない言葉に嬉しくなり高らかに笑った。それにマリューは少し恥ずかしそうで困惑顔だった

 

「いやいやすまないな。君達と久しぶりに会って年寄りながら気分が上がっているようだ」

 

「それは我々もです閣下」

 

「そうか。積もる話がたくさんあるのだが...先に君達に会わせたい者がおるのだがいいかね?」

 

「え、えぇ。私共は構いませんが...」

 

「自分も特に問題はありません」

 

「ならばすぐに呼ぶ。少し待っていてくれ」

 

「「はっ!」」

 

ハルバートンはすぐさまどこかに連絡をかけた。そして数分もしないうちに部屋のドアがノックされた

 

「来たか。入りたまえ」

 

『失礼致します』

 

「「ッ!」」

 

部屋の外からする女性の声。その声にマリューもレオも聞き覚えがあった。そしてドアが開きその女性の姿が露わになる

 

「招集により参上いたしました!」

 

「そんな...」

 

きれいな立ち姿とお手本のような敬礼。その女性はかつて仲間として戦場を共にしていた者。途中で離れてしまい、その後敵対者ともなってしまった女性だった

 

「ナ、タル...」

 

「お久しぶりです。ラミアス艦長、シュヴァルグラン少尉」

 

ナタル・バジルール。彼女が目の前にいたのだ

 

「2年前の戦争後に意識不明の重体となって発見された彼女を我々が保護してな。治療を施し意識が戻るまで1年ほど経ってしまい、そこからのリハビリも経て今に至る」

 

「そう、でしたか...」

 

マリューはもちろんレオもまさかナタルが生き残っていたとは思いもよらず驚愕していた

 

「...」

 

「「ッ!?」」

 

困惑しているマリューとレオに対してナタルはなにも言葉を発することなく静かに頭を下げた

 

「申し訳ございませんでした」

 

「ナタル...」

 

「幸い記憶を失くすことなく生き延びてしまったこの身、生き残った喜びより自分が犯した過ちに対しての後悔と嫌悪感の方が強く感じています」

 

ナタルは頭を下げたまま今の自分の心情を正直に伝える

 

「軍に所属している身として上からの命令が全てだと思っていましたが、あの戦争での自分の行動が本当に正しかったと自信を持って言うことができません」

 

「...」

 

「自分は弱い人間だと自覚を致しました。ラミアス艦長のように間違ったことを間違いと言うことができず、ただただその時の流れに身を任せていただけだったと思います」

 

ナタルの懺悔とも取れる言葉を黙って聞いていたマリューとレオ。謝罪の内容も意味もわかっていた。ただそれは全てナタルが悪いわけではないことも2人の共通の理解だった

 

「頭を上げてちょうだいナタル」

 

「...」

 

マリューが声をかけるも一向に頭を上げる気がないバジルール。それを見てマリューはバジルールに近づき、彼女の肩を持ち強制的に姿勢を戻させた

 

「悪いのはあなたではないわ。あなたはその時の使命をまっとうしようとしただけよ」

 

「しかし...」

 

まだ自分を追い詰めようとするナタルをマリューは優しく抱きしめた

 

「自分を責めないで。あなたは十分過去の過ちを悔いたわ。ならもう、未来に進んでいいのよ」

 

「俺もそう思います。人間誰しも間違いは起こします。しかしそのことを反省し糧として前に進むことができるのも人というものだと思ってます。ただ今はあなたの無事を喜ばせてください、ナタル・バジルールさん」

 

マリューとレオの言葉が心に突き刺さったナタルは抱き締めるマリューの方に顔を押し付けて体を振るわせる

 

「また君は、1人の人間を救ったのだな。シュヴァルグランくん」

 

「何をおっしゃいますか。彼女をお助けになったのは提督閣下ではありませんか」

 

「そういうことを言っているのではないよ。君は既に多くの者を救い出しているのだ。その中には無論私やシーゲル・クラインも入っている」

 

「光栄です。しかし...」

 

「はぁ。もうよい。君の頑固なところは長所でもあり短所でもあるようだな」

 

「お、恐れ入ります...」

 

「たまにはもっと子供らしくすることだな」

 

ハルバートンは賛辞を素直に受け取らないレオの肩をポンっと叩いた

 

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