ガンダムSEED 〜守るための戦い〜   作:てこの原理こそ最強

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第六十四話

 

 

『今私の中にもみなさん同様の悲しみと怒りが渦巻いています』

 

月の地球軍基地が墜とされてから初めてデュランダル議長の声明が全国に向けて発信された

 

『なぜこんなことになってしまったのか。考えても既に意味の無いことと知りながら私の心もまたそれを探して彷徨っています。私達はつい先年も大きな戦争を経験しました。そしてそのときにも誓ったはずでした。こんなことはもう二度と繰り返さないと。にもかかわらずユニウスセブンは落ち、努力もむなしく、またも戦端が開かれた。そして戦火はいやおうなく拡大して、私達はまたも同じ苦しみを得ることになってしまいました。本当にこれはどういうことなのでしょうか。愚かとも言えるこの悲劇の繰り返しはいったいいつまで続かなければならないのでしょうか。ひとつにはもう申し上げた通り間違いなくロゴスの存在ゆえんです。敵を作り上げ、恐怖をあおり、戦わせてそれを食い物としてきた者達。長い歴史の裏側にはびこる彼ら、死の商人達です』

 

世界は議長の演説に傾聴した。道行く人は足を止め、何かの作業途中の者もみな手を止めて

 

『だが我々はようやく滅ぼすことができました。だからこそ今、あえて私は申し上げたい。もう一つの最大の敵と戦っていかねばならないと』

 

「始まったか...」

 

「はい...」

 

この演説をオーブ代表のカガリだけでなくアークエンジェルクルー全員も真剣に見ていた

 

『そして我々はそれにも打ち勝ち解放されなければならないのです。みなさんにも既におわかりのことでしょう。有史以来人類の歴史から戦いのなくらぬ訳。常に存在する最大の敵。それはいつになっても克服できない我ら自身の無知と欲望だということを!』

 

世界はどよめく。彼はいったい何を言い出すのだと...

 

『地を離れて宇宙を駆け、その肉体と能力のさまざまな秘密までをも手に入れた今でも人はいまだに人を知らず、人をわからず、自分を知らず、明日が見えないその不安...同様に、いやより多く、より豊かにと!飽くなき欲望に限りなく伸ばされる手、それが今の私達です!争いの種、問題は全てそこにある!』

 

世界はさらにざわめく。では人が欲望を持つことを止めねば戦争など無くならないではないかと...

 

『だがそれももう終わりにするときが来たのです!』

 

そこでデュランダル議長を映していた画像が切り替わる。流れてくるのは遺伝子操作、コーディネイターの仕組みだった

 

『我々はもはやその全てを克服する方法を得たのです。全ての答えはみなが自身の中に既に持っています!それによって人を知り、自分を知り、明日を知る。これこそが繰り返される悲劇を止める唯一の方法です。私は、人類存亡をかけた最後の防衛策として"デスティニー・プラン"の導入実行をここに宣言いたします!』

 

世界は困惑した。しかし、賽は投げられた。いや、投げられてしまった。もう止まることはないだろう

 

「これを見ていったいどれだけの人が理解できたでしょうね」

 

「わからんが、多分そこまで多くないと思うぞ。俺でも完全に理解できてるわけじゃないしな」

 

「まぁものすごく簡単に言えば、全人類生まれる前から遺伝子操作で生まれてからの人生を全て決められるってことですね」

 

「...」

 

マリューとムウが難しい顔で議長が発表したプランを理解しようと頭を動かす

 

「艦長。エターナルから通信です」

 

「わかりました。繋げてもらえる?」

 

「はい」

 

議長の発表したプランの説明ガイダンスが流れている中エターナルから通信が入った。画面を繋げるとバルトフェルドとキラが映る

 

『全員聞いていたと思うが、まさかこんなに強引に発表するとはな』

 

「いえ、多分タイミング的には今なのでしょう。ロゴスが壊滅した今なら世界の覇者は議長でしょうから」

 

『フッ、違いないな。しかし、思った通り世界の反応は緩慢なものだな』

 

「思った以上にじゃない?」

 

「よくわからないってのが本音だろ?人種も国も飛び越えていきなり遺伝子じゃ誰だって困惑するだろ」

 

「あれだけ聞くと本当にいいことずくめですものね。不安がなくなる、戦争が起きない、幸福になれるって...」

 

『議長は信用ありますからね、今は』

 

「...。だが、これがプランの提示だけで終わるはずはない」

 

「それはそうだろうな。議長が言ったのはプランの導入と実行だからな。ミリィ、オーブの反応はどうなってる?」

 

「もう防衛態勢に入ってるわ。プランの拒否が採択されるのは間違いないもの」

 

「力押しでこられたら、もう戦うしかないものね」

 

議長は間違いなく自分が提示したプランに反対するものは消し去るはず。そうなればオーブ一国でザフト全軍と戦うこととなってしまう

 

『戦う、か...』

 

「キラ?」

 

『あ、いや。あっちもそう思ってるのかなって』

 

「議長も、ということか?」

 

『うん。戦うしかない。これじゃ戦うしかって...結局僕達は戦っていく。プランは嫌だけど、本当はこんなことももう終わりにしたいのに...』

 

「あぁ...」

 

離れていても考えることは同じキラとアスラン。2人して顔をしかめる

 

「しかし、わたくし達も今は戦うしかありません。夢を見ること、未来を望むこと。それは全ての命に与えられた生きていくための力です。何を得ようと、夢と未来を封じられてしまったら、私達は既に滅びた者としてただ存在することしかできません」

 

「ラクスの言う通りだな。議長の言うプランは聞こえはいいかもしれないけど人から夢や希望を奪うってことだ。そんなこと誰であっても許されることじゃない」

 

「全ての命は未来を得るために戦うものです。戦ってよいものです。だからわたくし達も戦わねばなりません。今生きるわたくし達として、わたくし達を滅ぼそうとする者、議場の示す市の世界と」

 

「俺達の、明日を生きる未来のために、な」

 

「はい」

 

「あぁ」

 

『うん』

 

「そうね」

 

最後のレオの言葉。ラクスも、アスランも、キラも、マリューもみな決心する。自分達の未来は自分達が決めると...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デスティニー・プランの宣言後、月のアルザッヘル基地が崩壊した。"レクイエム"によって...

 

「やっぱりこうなったか...」

 

「レオはわかっていたのか...?」

 

「予想はついてた。あの議長がオーブみたいな犯行勢力に対しての抑止力を持たないまま強引に実行するわけはないとは思っていたんだが...」

 

「まさかこんなに早く...」

 

それはかつて地球軍が月面ダイダロス基地に設置した巨大ビーム砲。そして月の周辺に配置された複数の廃棄コロニーで構成される軌道間全方位戦略砲。これでプラントを焼こうとしていたことが記憶に新しい

 

「これで残っていた連合の戦力もほぼ全滅だわ」

 

「あれの破壊力もジェネシスに劣らない。中継点の配置次第で地球のどこでも自在に狙えるぞ...」

 

アスランの考察にブリッジにいる全員が固唾を飲む。もしあれの狙いが地球に向けられたらと思うと、考えたくもない...

 

「艦長、オーブに連絡を。エターナルと合流します。すぐに発進準備を始めてください」

 

「えぇ」

 

「行くのか、ラクス」

 

「従わねば死。どちらにしてもこのままでは世界は終わりです」

 

「わかった。俺はどこまでもラクスについていく。君と、君の理想を守るために」

 

レオはラクスに向かって手を差し出し、ラクスはその手を笑顔で取った

 

「行くぞアスラン。オーブを守る。そして、人類を救うぞ」

 

「あぁ!」

 

みな決意を胸にアークエンジェルはセラフィムと共にコペルニクスを発進。エターナルと合流した

 

「マユ、メイリン。君達にはエターナルでオペレーターを任せたい」

 

「私達が...」

 

「あのエターナルの...」

 

二年前不沈艦アークエンジェルと共に戦争を生き残った伝説の戦艦。メイリンもマユもそういう認識でいるため、そんな艦に自分達が乗ること。ましてや重要な役割を任されてもいいのだろうかと不安だった

 

「2人の腕はアスランから聞いてる。そんな2人にお願いしたいんだ」

 

「レオさん...」

 

「俺達が明日を生きるためには俺だけの力でもラクスだけの力じゃ足りない。2人の力も必要なんだ」

 

レオの言葉を聞いて先ほどまで不安になっていた2人はレオの手をそっと取った

 

「わかりました。私でもレオさんのお役に立てるのなら」

 

「私も守りたいです。ラクス様の理想を。レオさんと一緒に」

 

「ありがとう、2人とも」

 

レオから自分達を必要としてくれることを聞いたことでメイリンとマユのレオを助けるという意思はより強固となった

 

そして2人に加えてレオやラクス、アスラン達はエターナルへ移動した

 

「レオくん」

 

「キラ。それにフレイも」

 

「この子達もこっちに?」

 

「あぁ」

 

エターナルに着いてブリッジに上がろうとするとパイロットスーツ姿のキラとノーマルスーツを着たフレイと出会った

 

「フレイは移動するのか?」

 

「私はセラフィムに移動するわ」

 

「いいのか?」

 

「えぇ。キラとは離れ離れになっちゃうけど、バジルール中尉に恩があるから。助けなくちゃ」

 

「僕も一緒に移動できればよかったんだけど、ミーティアがある以上エターナルにいた方がいいってバルトフェルドさんが」

 

「だろうな。頼んだフレイ。バジルールさんのサポートをしてやってくれ」

 

「言われるまでもないわ。あなた達もよろしくね」

 

「「はい!」」

 

「フレイさん」

 

いつの間にか立派になったフレイがエターナルのことをメイリンとマユに託す。そんな彼女をラクスが抱きしめた

 

「どうしたのよラクス?」

 

「...。どうかご無事で」

 

「それはあなたこそよ。一番に狙われるのはラクスでしょ」

 

「ですが...」

 

「まぁそこは?あなたの愛しのナイト様が守ってくれるんでしょうけど」

 

フレイは隣にいるレオをジト目で見つめた

 

「任せてくれ。俺が命に代えても守り抜く。ラクスも、ミリアリアも、マリューさんもメイリンもマユも。もちろんお前もな、フレイ」

 

「ふん。私にはキラがいるから大丈夫よ」

 

「そうだね。フレイは必ず僕が守るよ」

 

「キラ...」

 

キラの熱烈な宣言を聞いたフレイはラクスを退かしキラに抱き着き熱い口づけを交わした

 

「はわぁ~...」

 

「ひゃ~...」

 

目の前の光景にまだ耐性がないメイリンとマユは顔を赤くして固まってしまう

 

「ふふっ、お子様にはまだ早かったみたいね」

 

「お熱いことだな」

 

「アンタには言われたくないわよ」

 

「フレイ。急がないと」

 

「そうね。じゃあ行ってくるわ」

 

「あぁ」

 

こうしてキラとフレイはセラフィムへ向かった。そしてレオ達はブリッジに上がる

 

「おかえり、と言っておこうか。ただそんなゆっくりしてる暇はなさそうだぞ」

 

「みたいですね。アイシャさん、2人をお願いします。2人とも優秀なので手はかからないかと」

 

「それはいいわね。わかったわ」

 

「「よろしくお願いします!」」

 

「坊主のお墨付きなんて、よかったな~嬢ちゃん達」

 

バルトフェルドからの軽口に少し照れながらアイシャにいろいろレクチャーを受けるメイリンとマユ

 

「さて、どうしたもんかね」

 

「なんと言ってもあの中継コロニーです。あれがある限りどこへでも撃たれてしまいます」

 

「ま、だろうな」

 

「すぐにアークエンジェルとコンタクトを取ってください。それとセラフィムとも」

 

地球に及ぶ脅威。それの排除のためにまた彼女達は動き出す...

 

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