スライムと戦う話   作:閻魔蟋蟀

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スライムと戦う話

 スライムが現れた。

 体長は三十センチほどで、ゼリーに目をつけたようなシンプルな見た目をしている。

 青い体をぷるぷると揺らす姿は、どこ愛らしささえ感じさせた。

 

 勇者は素早く駆け寄りながら剣を振りかぶり。瞬間、背筋に悪寒が走るのを感じた。

 そして、直感のまま、転がるように今いる場所から離れた。

 

 ——ヒュンッ

 頭上を一瞬で通り過ぎる、青い斬撃。

 

 それは超速で回転したスライムが遠心力の勢いで体の一部を投げ飛ばしたもの。

 ぷるぷると震えていたのは、攻撃の予備動作だった。

 

 ヒュンッ、ヒュンッ。

 辛くも逃れた勇者を追撃するように再び青い斬撃が襲った。

 咄嗟に剣を振るい、勇者の首を刎ねる軌道にあるそれに叩きつけた。

 重い一撃であったものの、スライムの体の一部であることは変わらない。

 女神から授かった退魔の剣は、接触と同時にスライムの断片を打ち消した。

 

 そのまま攻撃に移ろうとして、目の前に青が広がった。

 次の瞬間、スライムが直撃した。

 

 

 気付けば勇者は倒れていた。

 脳が揺れる。手足がおぼつかない。

 魔力操作により硬化したスライムは、鉄と同等の硬さを持つ。

 それが回転を掛けながら高速で頭にぶつかった衝撃は、大砲の一撃にも等しい。

 

 頭がぐらつき、チカチカと白い火花が瞬く。

 そんな視界の中で弾かれたスライムは空中から何かを射出するのが見えた。

 勇者は立ち上がって躱そうとしたが、足がもつれ、再び倒れ込む。

 そして、べたりと。粘液が浴びせられた。

 

 ねっとりした感触が鎧越しに伝わって、その次には激痛が走った。

 魔力により強化された酸が一瞬にしてミスリルの鎧を溶かしたのだ。

 当然のことながら、鉄を溶かす酸の前に肉体なんてぼろくずのようなもので。

 肌に焼くような痛みがあったときには、既に肉をどろどろに溶かし、骨をぼろぼろに蝕んでいた。

 

 最期に勇者の目に映ったのは、じりじりと忍び寄る青いスライムと、その背後からわらわらと現れる色とりどりのスライムの姿だった。

 

 

 勇者が目が覚めると、そこは見慣れた祠だった。

 今日も魔物一匹も倒せないことに気落ちしながらも、次こそはと一人ポジティブに意気込む。

 転生して一週間、魔物に殺され続けながらも、人里目指して勇者はリスポーンを繰り返していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔界。

 それは魔物発祥の地であり、大陸で生存する魔物はその全てが魔界での生存競争に敗れた個体だとされている。

 

 星の防衛機能である真龍を捕食するスライムに、無限の命を有する吸血鬼を死に追いやるゴブリンの群れ。最高位の神聖魔法で傷一つつけられないスケルトンや、精霊の末裔である森の民を苗床にするマタンゴ。

 たった一種でさえ人類を滅亡させかねないこれらの魔物すら、暗黒大陸では下位に属する魔物でしかなかった。

 

 そんな極限生存地帯に送られた一般転生勇者は今日も一人、必死の魔物討伐に挑む。

 

 




攻略ヒント:マンドラゴラをいっぱい抜きましょう。
      マンドラゴラの悲鳴は半径一キロの下位の魔物を確定で死亡させます。
      それを繰り返して安全を確保しながら、探索を行いましょう。 

※一定以上のゴブリンを殺害してしまうと、ゴブリンの注意ゴブリンジェネラルによるリスポーン狩りが始まりますので注意してください。


 続かない。
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