俺には前世があると思い出したのは、というか、気がついたら赤ん坊になっていたから、赤ん坊になって再スタートか、死んでも人生は続いていたと認識の方が正しい。
ただ、この世界がマリッジトキシンの世界だと気づいたのは、最初から薄々感づいていた。
どう見てもカタギじゃない家業だし、数多のペットと呼ぶには殺意が高過ぎる生き物を飼育している実家、そして、俺の名前は道後十四郎。
一歳くらいで、マリッジトキシンの世界だと確信して絶望した。
この世界は、クソだ。
物語として読むなら極上だけど、登場人物として生きるなら死にゲーみたいなもん。しかも残機は一。
どうあがいても絶望、だろう。
そして、修行はめちゃくちゃ、いや、前世の休日なし残業代なし仮眠五分とか狂ったブラック企業戦士の苦行が、児戯みたいに感じるくらいに辛かった。
原作でも別の五大名家とはいえ、同格の家である下呂兄妹とテルアキくんが地獄の修行を味わってたから、辛いだろうなって思ってたけど、本気で辛かった。
それでも乗り切ってみたら、みんなできて当たり前、そしてお前は落ちこぼれ、みたいな感じで、道化だな、と読者であったときの十四郎に対しての評価が、あいつすごいな、ネバーギブアップの擬人化かよ、って、なった。
まぁ、そんなことはどうでもいい。
さらに、絶望したのが6歳の時だ。
傍家の会合に本家の人間として参加したときに、誰それが『幼稚園』に手を出した、と聞いた。
だから、謝罪が必要だと。そして、みんなが俺を見やがる。
誰それを狩って、首もって謝罪に行ってこい、とことだった。
そんなわけで、やばいことをやらかした誰それさんを狩って、首をもって行ってみれば、ブラック幼稚園とかいう、幼稚園。
あれ? これ、幼稚園WARSじゃね? と思ったのもつかの間、メイド服の女性が出てきて――。
『あらあら、ずいぶんと可愛いお使いですこと』
俺が、生け贄にされたと気づいたのはそのときだった。
☆
「どうした? 『社長』」
「あ? 俺、上の空だった? ごめんごめん」
夜風が気持ちいい公園のベンチに、男三人が集まってる。
俺こと道後十四郎と、マスクをした禿頭の男『蟲使い』そして、眼鏡をかけた優男、原作主人公の下呂ヒカルだ。
「あんな上の空をみたことないぞ」
謝りつつ、下呂君が持ってきた酒を、密造酒を飲む。
お前ら五大名家なのに会ってていいの? と思うだろう。
良いんです。俺はほぼ見捨てられてるし、ちゃんと家の許可は取ってます。
「で、何の話だったっけ?」
全く、と下呂君が呆れ、蟲使いがまぁまぁとなだめながら、
「『蟲使い』が結婚するんだよ」
下呂君の説明に追従するように、蟲使いはスマホに映る女性を見せる。
おー、おめでとう! そんなありきたりな言葉とともに、大げさに驚くが、内心、ついにか、との緊張が走りまくってる。
これを、俺は知ってるからだ。
これは、俺が何度も読んだからだ。
マリッジトキシン、原作の第一話が、今の場面だ。
ついに、原作が始まった。
「じゃあ、今夜の飲み会は追いコンに変更で!」
ウェーイと俺は大げさにはしゃぐ。
はしゃいではしゃいで、解散となって終わったあとに、あまりの緊張で酒とつまみ、全部吐いちゃった。
緊張に、俺はめっちゃ弱い。正直、胃が痛い。蟲使いが女性と付きあってるとの話を聞いたとき、緊張で三日ぐらい眠れなかった。
そんな俺に、近寄る人影が。
黒いはっぴ姿の男――幼稚園WARSだとほぼ最強クラス、この世界だと使い手になってる、ポイ使いのナツキだ。
「社長、プライベート中にごめん。仕事だ」
クソッタレ。
☆
そして、こっちも第一話が始まった。
「久々ね、『首輪付』」
「俺は会いたくなかったですけどね、『園長』」
一言目が、皮肉。
つくづく対照的な世界だ。
とある幼稚園の事務室にて、
俺の前にいるのは五十過ぎの、カチューシャと白いエプロンの女性。
園長――幼稚園WARSの暫定全ての元凶だ。
「まぁ、それくらいに挨拶もして、調べられたかしら?」
「はい、今日、襲撃した殺し屋はスペードとかいう、まぁ、新進気鋭のやつです。常識知らずと他人を巻き込む殺しする馬鹿で、依頼主は――」
俺は、この人に逆らえない。とある事情で。
その事情はまたあとにする。
まぁ、一言でいうなら、俺が会社作る羽目になった、ここでも全ての元凶だ。
「――……と、まぁ、依頼主も馬鹿ばっかりです。本人たちは大真面目なのが救えねぇ」
「そうね、凡庸でありふれた黒幕だこと」
お互いにため息をつく。
園長はどんどん出てくる屑が多くて、のため息だろう。
だが、俺のため息は種類が違う。
俺は、この殺し屋を知ってる。
これは、幼稚園WARSの第一話で、主人公リタが殺した黒髪イケメンだ。
いつか、どちらかが先に始まると思ったが、まさか同時に始まるとか、神様はとことん俺が嫌いらしい。
俺も嫌いだ、クソッタレ。
どっちも狂った世界だと知ってるが、狂いすぎだろうし、温度差が激しすぎだろう。
バランスが崩壊してるとしか言えない。
「そういや、園長、新人さん、どうです?」
園長の目が鋭くなるが、ひかない。
「どうどう、けど、有名ですよ、ここが伝説を手に入れたって」
「優秀ね、最近の中では一番だわ」
「そうですか、景気の良いことだ」
仕事は終わり、とばかりに俺は立ち上がって出て行く。
送るわ、と言う園長の申し出を断って廊下を歩いていると、一人の、右頬に傷がある金髪イケメンがいる。
「おっす、ルークさん」
金髪さん――ルークは無言で手を差し出した。恥ずかしそうに、照れながら、原作じゃ、絶対に見られない表情をしながら、
俺はにっこり笑って、
「はい、彼女さんからのプレゼントです」
そう、隠していた花束を渡す。
ルークからは代わりに、一通の手紙を受け取った。
ちゃんと届けるますよ、そう、俺は手紙をしまうと、ルークはただ無言で頭を下げている。
いいと言ってるのに、いつもそうしてくる。これが、俺たちのルーティーンだった。
☆
次の日、英国のとある花屋は和気藹々とした雰囲気だった。
店主も従業員も若い女性の三人だ。
店主はおっとりしてて、好きな作品を話すと止まらないし、狂ったような大の甘党。
従業員は二人とも日本人で、片方はハムスターを肩に乗せて豪快に笑って接客しているし、もう一人は包帯で目を覆って、狐耳のカチューシャを付けている上にメイド服を着ている。
変人三人組と現地では有名だった。
ただ、変な客は寄りつかない、変わった店だった。
そんな店の入り口のわきに作られた小窓から、ハムスターが手紙を咥えて入ってくる。
「店長! お手紙が届きましたよ!」
ハムスターから手紙を受け取った女性が笑いながら、店長に渡す。
「ありがとう、キミ恵さん、それと白狐さんも、いつもありがとう」
「彼氏さんですか?」
キミ恵と呼ばれた女性と肩のハムスターがニヤニヤ笑って問いかけると、
「えぇ、ルークからよ」
満面の笑みのまぶしさに、キミ恵とハムスターはまぶしっと、手で顔を光から隠した。そんな二人と関わらない白狐も、よくみれば聞き耳を立てている。
今日も、この店は平和だった。
うおおおおおおお!!
ルーク先輩! マリッジトキシン成分を注入されて幸せになれーーー!!
↓
なった!!!
そんな感じでこの小説は書かれてます。
追記
これを書いた数時間後に公式がコラボして頭抱えてますだ・・・。
私も●ナソニックさんだせばいいのか・・・?