青年の異世界珍道中〜ガンダムSEED〜   作:クロイツヴァルト

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PHASE10

 

 

 現在、アークエンジェルはモントゴメリーと共にハルバートン提督率いる第8艦隊のいる方面へと航行している。

 

 「ん〜、今のホットスクランブルの状態だと、今後の戦いに必要なのは全体的な機能のアップグレードと新装備の開発がメインになる…か。」

 

 航行中のアークエンジェルの船室の一角、士官室でカイトはモニターに映した愛機の現在の状態チェックをし、今後の計画を考えていた。

 

 「この後も戦いは激しくなると思いますか?」

 

 カイトの部屋に訪れ、そのベッドに腰掛けたラクスがカイトにそんな疑問を投げかける

 

 「間違いなくな。ただ、連合にこの機体を持っていったら間違いなく悪用されるから何かしらの対策を考えないとならないが、他にもプラントに過激派がいるように地球軍にも排斥派とも言えるブルーコスモスがいる。それをなんとかしない限りは戦争は激化するだろうな。」

 

 「そう…ですか。」

 

 「ま、そうならない為にも打てる手は打っておきたいかな」

 

 「その為の物としてカイト様は機体の強化を考えているのですか?」

 

 「ま、そんな所だな。今のN.D.は未完成だし、どこか大きな工廠があれば今の機体の基本構造を大幅に改造したりも出来るだろうし…そうすれば色々とイジれるだろうが」

 

 「他にもあるのですか?」

 

 「こんなご時世だ…何があるか奥の手の一つや二つは用意しておくもんだ。ま、未調整のものだったけどな」

 

 そうカイトは戯けるが

 

 「カイト様、戦争とは理解いたしますが、私はカイト様のあのような姿は二度と見たくありませんわ。」

 

 ラクスは先の戦闘で医療班に運ばれるカイトの姿を思い出したのかベッドから立ち上がり、カイトを後ろから抱きしめる。その際にカイトはラクスが震えていることに気づく

 

 「俺だってラクスを悲しませたくはないさ。だけど、今は戦争をしている。だから約束はできないけど、なるべくは危険なことは極力しないように善処する。」

 

 「そこは絶対と言って欲しいのですけど」

 

 カイトの言葉にラクスはいじける様にカイトの頬に手を添える

 

 「ラクス」

 

 その時、カイトの部屋に通信が入った時の通知音が鳴る

 

 「タイミングが悪いな」

 

 「あっ」

 

 ラクスの腕からするりと抜けてカイトは通信モニターの方へ行く。そしてラクスはその腕の中にあった温もりが遠くに行くのを惜しむように手を伸ばす。

 

 「こちらカイトだ。ブリッジ、どうした?」

 

 『もうそろそろ第8艦隊との合流地点に到着するので艦長からブリッジに上がって欲しいとのことです。』

 

 「了解した。ラクスはどうする?」

 

 『船室に待機していた方が問題はないかと思います。』

 

 「了解、すぐに向かう。」

 

 「と、言うわけだからラクス、悪いが待っていてくれ。この部屋にいても良いから。」

 

 モニターの電源を消してカイトはラクスにそう告げる

 

 「仕方ありません。なら待っている間に私はカイトのベッドで休ませていただきますわ。」

 

 そう言って少し寂しげな表情でラクスは部屋のベッドに腰掛けそう言った。

 

 「分かった。少し時間がかかるようだしフレイのお嬢ちゃんを呼んでおこう。良い話し相手になるだろ」

 

 「フレイとですか?彼女とは色々なお話が出来て楽しいですわ。」

 

 カイトの言葉にラクスの表情が先ほどと比べて少し明るくなり、カイトは少し安堵する。

 

 「ならフレイにこっちに来るように言っておく。」

 

 「はい、カイト様もお仕事頑張ってくださいませ。」

 

 「その様ってもう止めないか?まだ正式には付き合ってはいないが恋人のようなものなんだから呼び捨てで呼んでくれ」

 

 「あ、えっと…か、カイトと呼んでもよろしいのですか?」

 

 ラクスは今まで様を付けるのが日常的だったのかカイトの提案に少し照れを感じながらカイトに聞く。

 

 「今更だろ?俺たちは好き合う者同士なんだ。様で呼ばれると多少なりとも壁を感じてしまってな。無理なら「無理ではありません」ふふ、そっか」

 

 「改めて、お仕事頑張ってください。」

 

 「あぁ、ラクス行ってくるよ。」

 

 「カイト、行ってらっしゃいませ。」

 

 チュッとリップキスをし、カイトは士官室を出る。

 

 「あ、そこの君」

 

 「は!ミサカ少尉どうされましたか?」

 

 ちょうど向かう先ですれ違うクルーがいたのをカイトが呼び止める。

 

 「俺の部屋にクライン嬢がいるんだが話し相手にフレイの嬢ちゃんを呼んでくれないか?」

 

 「フレイとはフレイ・アルスター…ですか?」

 

 カイトの言葉にクルーは戸惑う

 

 「先の件は知っていると思うが、彼女はクライン嬢を友だと言ったんだ。あの父親とは違うしそう色眼鏡で見ないでやってくれ」

 

 「は、失礼しました。では後ほど私がフレイさんをお連れします。」

 

 「頼んだ。」

 

 カイトの言葉を聞いたクルーと別れたカイトはそのままブリッジへと上がる。

 

 「すまない艦長、少し遅れた。」

 

 「大丈夫よ、大事な話はこれからするところだったから」

 

 カイトがブリッジに上がるとすでに第8艦隊と通信を行っていたのかモニターには壮年の男性が映っていた。

 

 『ミサカ少尉、元気そうで何よりだ。』

 

 「は!ハルバートン提督もお元気そうで何よりです。」

 

 壮年の男性、デュエイン・ハルバートン提督。今回のG計画の提唱者兼責任者である。

 

 『そんな硬くなるなと言っても無理はないか。先のヘリオポリスでの働きはラミアス大尉から聞いている。他の4機に関しては残念だったが、ストライクを守ってくれてありがとう。』

 

 「いえ、自分は職務を全うしただけですので」

 

 『そういうと思ってな。私の権限で君達の昇進をすることにした。ちなみに言うとミサカ少尉だけは二階級上昇だがな』

 

 カイトとやり取りしている所にハルバートン提督がそんな爆弾をカイト達に…正確にはカイト1人に落とす。

 

 「フラガ大尉はともかくお…自分は他の軍上層部に嫌われていますが…そもそもいきなり二階級も昇進は」

 

 『そこはラミアス艦長を挟んでだな。まぁ、裏技というか抜け道のような物だが代理艦長とはいえ艦を預かる者はその裁量内であれば下位の官位の者を昇進させる事が出来るのだよ。そして私からは2機のGやアークエンジェルを守ってここまで無事にきた事による褒美と考えてくれて構わない。それに文句があるなら籠っていないで表に出て、手柄の一つでも挙げてこいと言うのだ。』

 

 カイトの戸惑いに対してハルバートンはそう声を上げる。

 

 「…自分がここで異を唱えても提督が決めたのなら決定事項なのですね?」

 

 『そう言うことだ。よく分かっているじゃないか。』

 

 「G開発計画の時からの付き合いになりますので」

 

 そう言いながらカイトは当時の記憶を思い出して苦笑する。

 

 『まぁ、通信越しで昔話もなんだ…詳しい話や今後の話は面と向かって話をしようじゃないか。』

 

 「そうですね、提督のいる第8艦隊にまもなく到着いたしますのでその時にでも」

 

 『うむ、では無事の到着を待っているぞ。』

 

 そう言って通信が切れる。

 

 「いやぁ、昇進ねぇ…嬉しいは嬉しいけどねぇ」

 

 通信が切れるのと同時にムウがそんなことを言う。

 

 「まぁ、悪い事じゃないのだし、喜んで良いのではないかしら?」

 

 「ま、とりあえずは目的だったハルバートン提督の所まであともう少しだ。頑張ろうぜ」

 

 「しかし、そうなると当艦にいるクライン嬢はどうされるのですか?」

 

 気を引き締めようと言うムウに続くようにナタルが今、アークエンジェルが抱えている問題を上げる

 

 「第8艦隊に合流する前に返還したほうが良いのでしょうけど」

 

 「連中は今、こっちを追っている状態なわけだし俺達が艦隊と合流した後だと難しいよな」

 

 ナタルの言葉に思案するマリューとムウ。そこへ

 

 「むしろ、連中なら降下中を狙って電撃戦を行なってきてもおかしくはないし、そこが狙い所だと思う。その辺りはハルバートン提督に聞いてからじゃないと決められないけど」

 

 「…確かにあの野郎なら痛い所を突いてくるのが得意だしありえないわけじゃないな」

 

 カイトの言葉にムウが納得している中

 

 「返還要求としての約束は降下中の妨害をしないといった所でしょうか。」

 

 「それが一番無難なところね」

 

 ナタルの言葉にマリューが同意する。

 

 「返還役は俺がやる。万が一のことがあった場合は少年だと荷が重いだろうからな。」

 

 「そうね…キラくんは正式な軍人というわけでは無いですし、お願いするわ。」

 

 カイトの提案にマリューが少し考え、了承をする。

 

 「連中が素直に交渉を受け入れるかね?」

 

 「さすがに現プラント議長の娘がいる所では襲って来ないのでは?」

 

 「いや、奴さんなら返還した後に不意打ちでドカンなんて事もありそうだけどなぁ」

 

 ムウとナタルがそんなやり取りをしている中で

 

 「ミサカ少尉、良いんですね?」

 

 「遅かれ早かれ、彼女はプラントに帰らなければならないのは確かだしな。ただ、過激派のクルーゼに任せるのは正直不安でしか無いが」

 

 「だったら、離れるまでは彼女の近くに居て安心させてあげて。恋人なんでしょ?」

 

 「分かっている。…それに艦長の事もあるし」

 

 マリューとは対照的にカイトは格納庫の一件を思い出し少し照れを見せる。

 

 「んんッ、艦長?」

 

 そんな所にナタルがわざと咳き込むような声と共にマリューに声をかける

 

 「な、何かしら?」

 

 ナタルの声にハッと我に帰ったマリューは少し慌てて反応する。

 

 「今は任務中なのでそういうのは終わった後にしてもらえると」

 

 マリューにそう言ってナタルは先ほどの2人のやり取りが甘いものになりかけていたのもあって、そっと目を逸らしながら告げ、見られていたことに改めて気付かされてマリューは首から上にカァっと血が昇り、茹ったように赤くなる。

 

 「ご、ごめんなさい。」

 

 「え、とそれじゃ俺はラクスの方へ報告も兼ねて戻るな。」

 

 小さくなるマリューを尻目にカイトもまた居た堪れない様子でそそくさとブリッジから出ていくのであった。

 

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