青年の異世界珍道中〜ガンダムSEED〜   作:クロイツヴァルト

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PHASE11

 

 

 「さて、諸君。集まったようだな。」

 

 ザフト軍の足付きを追いかけているナスカ級の戦艦ヴェサリウスのブリッジにてクルーゼが集まった面々を見てそう告げる。

 

 「隊長、もしや足付きの件ですか?」

 

 「その事についてなんだが、先の件でこちらに捕虜になったミゲルの返還交渉があったと思うが今回も同様の要求の通信が電文で寄越された。向こうの言い分は『プラント評議会議長の娘ラクス・クラインを紅蓮が保護している。要求は降下する足付きを見逃して欲しい』というものだ。」

 

 「そんな嘘を信じるのですか?」

 

 「それがあながち嘘とも言い切れん。足付きが巡航した経路を調べたが、彼女が行方不明になった宙域と見事に被っているのだ。早計に嘘と断じて彼女を失ってはこちらとしても困ってしまうのでな。」

 

 クルーゼの言葉にイザークが疑わしげな表情をしてクルーゼを見るが、仮面越しのためにクルーゼの反応が口元でしか判断できないが、彼は余裕とも取れる態度でイザークの言葉に返す。

 

 「しかし、そうなると誰が来るのか」

 

 「電文を読めば十中八九【紅蓮】が出てくるだろうな。そして彼女の受取役は婚約者であるアスラン、君に行ってもらう。」

 

 「自分が?!」

 

 「おや、婚約をしている当人同士の方が問題も無く何もおかしくは無いだろう?それとも他の者に任せるかね?」

 

 「…いえ、了解しました。」

 

 驚くアスランに対してクルーゼは不思議そうな口調で問えばアスランは特に反論が出ないのかそのまま了承する。

 

 「さて、相手は我々が纏めてかかっても相手にならなかった紅蓮だ。念の為に護衛としてディアッカとイザークにも出てもらう。ニコルとミゲルは艦で待機だ。」

 

 「「「「はッ!」」」」

 

 「それとディアッカとイザークは後で私の部屋に来る様に」

 

 敬礼するアスラン達を一瞥した後にクルーゼはブリッジから退出する。

 

 「なぁ、イザーク、隊長が俺達に話ってなんだろうな?」

 

 「さぁな、俺達が考えたところでクルーゼ隊長のお考えは俺はわからん。」

 

 「護衛は俺も進言したかったが、機体がな…」

 

 「ミゲルの機体は今、本国ですもんね。一般機では」

 

 「まぁな、今あの艦には腕利きしかいない上に新型機だ。一般のジンだとどうしようもないからな」

 

 イザークとディアッカは壁際に移動しながら、ミゲル達はその場にとどまり喋り始める。

 

 「羽付きのパイロット、カイト・ミサカでしたか…捕虜になっていた間に会話をしていたのでしょう?改めて聞きますがどのような人物だったんですか?」

 

 「どんなって言われるとなぁ…一言で言うなら不思議な奴って感じだな。一見だがつっけんどんな物言いをする時もあればこっちを気遣うような言動や行動をするんだよ。」

 

 あどけなさの残る緑髪の少年の言葉にミゲルがそう悩みながら応える。

 

 「要領を得ないですね…」

 

 「ニコル、何を考えているんだ?」

 

 「アスラン、いえ、同じコーディネイターならこちら側に引き抜く事ができないかと」

 

 「ニコル、それは難しいと思うぞ。」

 

 「それはなぜ?」

 

 「アイツにはアイツの信条があるみたいだからな。それを曲げてこっちに付くってことはない」

 

 ニコルの疑問の声にミゲルはそう断言する。

 

 「奴と面と向かって話したミゲルの言う事だ。可能であれば俺の方でも説得だけはしてみる」

 

 「アスラン」

 

 「俺だって同胞を殺したくはないんだ。なら、説得するだけの事だ。ラクスを受け取る前に一度休んでおく」

 

 ミゲルの責めるような目を見返しながらアスランは自分の気持ちをミゲルに告げ、ブリッジから出ていく。

 

 「アスランは大丈夫でしょうか?」

 

 「さぁな、俺にも正直な所わからん。そもそも、あのもう1機の新型を相手にしたあたりから様子がおかしいんだろ?なら何か理由があるんだろうからアスランが言ってくるまで待つのも一つだと俺は思うが」

 

 不安げなニコルに対してミゲルはそう告げるとニコルが不思議そうな表情でミゲルを見ると

 

 「ミゲルは少し変わりましたね?」

 

 「そうか?まぁ、少なからずアイツの…カイトの影響は受けたのかもな」

 

 ニコルの言葉にミゲルは脳裏にあの皮肉を言うぶっきらぼうな表情のカイトを思い出して苦笑いする。

 

 電文は送った物の、結局第8艦隊と合流してもクルーゼ達がカイト達アークエンジェルの前に現れずにいた。

 

 「参ったねこりゃ、本部に行くまでは出てこないんじゃないのこれ?」

 

 「彼女を連れたまま本部に行くわけにもいかないのよね。」

 

 不安げに呟くムウに対してマリューもそれに同意する。

 

 「艦長!間も無く第8艦隊旗艦メネラオス付近へ到着します。」

 

 「わかりました。ミサカ少尉をMSハンガーまで来るように呼び出して、私とバジルール少尉にフラガ大尉とミサカ少尉の4人はランチを使って向こうに渡ります。後のことはお願いね。」

 

 「了解です。」

 

 「バジルール少尉、フラガ大尉行きましょう。」

 

 そう言ってマリューは2人を伴ってメネラオスへ行くためにランチのある区画へと向かう。

 

 そして

 

 「ハルバートン提督、マリュー・ラミアス以下四名、只今参りました。」

 

 ランチを使ってメネラオスに移動したマリュー達はメネラオスにあるハルバートンの艦長室兼執務室に通されていた。

 

 「よく来てくれた。苦労をかけた私の方が自ら赴ければ良かったのだが」

 

 「いえ、提督は忙しいのですのでお気になさらないで下さい。」

 

 申し訳なさそうな表情のハルバートンに対してマリュー達は敬礼したままそう応える。

 

 「提督、今は」

 

 「分かっている。ここは私と副長しかいないのだ。休んでくれ。」

 

 「「は!」」

 

 ハルバートンの言葉に返事をしながらマリュー達は敬礼の姿勢を止める。

 

 「さて、色々と聞きたいが…まずは人事の事だ。君達には申し訳ないが、このまま月基地に向かわないで地球に降下してもらう事になる。」

 

 「それは!」

 

 「すまないと思うがこちらも人手不足でね。月の本部に行っても人員の補充が期待は出来ない。」

 

 「なのでヘリオポリスからここまで運用してきた君達が適任ということになってしまったのだ。」

 

 「ですが…」

 

 「無論そのままという訳ではない。君達が保護しているヘリオポリスからの避難民はこちらで受け入れて降下シャトルに乗せて安全に地上へと降ろすので安心して欲しい」

 

 渋るマリューに被せるように告げたハルバートンは不安の一因である避難民の事について言及する。

 

 「また、民間人の中から希望するものがいれば軍人として登用するように」

 

 「提督、それは…」

 

 「もちろん強制はしない。あくまでも希望者だ。艦の運用に協力してくれた学生達は別に艦長が面談をして勧誘するかどうか決めてくれ。」

 

 「…了解しました。」

 

 「ストライクのパイロットをしてくれていた少年は残ってくれると思うかい?」

 

 「それはあの少年が自分で決めるでしょうから、こちらから何かするのは違うでしょう」

 

 「確かに少尉の言うとおりだな。」

 

 カイトの言葉にハルバートンは理解を示すように頷き

 

 「そういえば今までの戦闘の報告は受けているが、ミサカ少尉の専用機の機能なんだが…あれは今後のMS開発に転用ないし反映は可能か?」

 

 「そうですね、試験的な運用で使ってはいますが難しいといえますね。」

 

 「それはまたどうしてだ?」

 

 「そもそもの前提が常人を乗せる想定をしていないためにですね。それこそパイロットを消耗品と割り切れば可能ですが、N.D.は未調整の段階でフィードバックがひどいので、下手をすれば発狂または廃人になってもおかしくはないんです。今後の目標はシステムの調整次第では可能でしょうけど、やり方次第では性能が落ちたりする問題もあるので参考にするのならストライクの実践データの方が有用かと。また俺の機体データがユーラシアの方へ渡った場合の方がより厄介になるので」

 

 「ブルーコスモスか」

 

 尋ねるハルバートンにカイトは説明しハルバートンは苦々しく呟く

 

 「はい、ですので戦闘データは開示しますが、システムや技術の関係は公開は出来れば提督の方から止めていただけれると助かります。」

 

 「分かった。その点は気にしなくとも大丈夫だ。聞いた限りだがミサカ少尉は大丈夫なのかね?」

 

 「ここに来るまでに一度ですがシステムを使った戦闘をしましたが俺の体質なのか、半分コーディネイターの為なのかわかりませんが、想定していたほどの身体ダメージはありませんでした。」

 

 「報告では意識を失い麻痺もあったと聞いたが?」

 

 「それでも想定内です。最悪半身不随になってもおかしくはないと思っていたので」

 

 「それは…本当なのか?」

 

 カイトの言葉にハルバートンは顔色を変える。

 

 「そんな危険な物をあの機体は積んでいるのか?」

 

 提督の副官であるホフマン大佐は思わずカイトに聞く

 

 「危険は危険ですが他の技術で得た物については問題無いです。」

 

 「しかしだね」

 

 「早期戦争終結の為なら俺の命など安いものです」

 

 「ミサカ少尉」

 

 「カイトくんッ!」

 

 カイトの発言に眉を顰めたハルバートンだが、横に立つマリューがカイトの名を呼びながら頬を打つ

 

 「なんでそんな簡単に自分の命を捨てるようなことを言うの!命を粗末にしないで!」

 

 「…すみませんでした。とにかくN.D.とサイコミュシステム関係以外の物であれば転用は可能な様にデータに纏めておきましたのでご覧ください。」

 

 マリューの言葉にカイトはマリューに対して謝罪をした後にハルバートンへカイトは制服のポケットからメモリースティックを取り出すと机に置く。

 

 「うむ、後ほどゆっくりと見させてもらう。後は報告にあった評議会議長の娘の件だが」

 

 「はい、その辺りについては向こうが出て来た所には電文で交渉内容は送ってあるので降下する前に接触してくるかと」

 

 「その辺りの裁量はラミアス大尉に任せる。」

 

 カイトの置いたメモリースティックを一瞥したハルバートンは思い出したかのようにラクスの件をマリューに聞き、マリューの判断に委ねる。

 

 「閣下、それは」

 

 「ホフマン、私の決定が不満か?彼女を保護しここまで連れて来たのはアークエンジェルだ。ならば最終決定権を持つ私の判断で今決めたのだが?」

 

 異を唱えようとしたホフマンに対し、ハルバートンは一瞥しホフマンの不満を黙殺させる。

 

 「すまんな。それでは君達はアークエンジェルに戻り降下準備と避難民の移動を頼む。」

 

 「「「は!」」」

 

 そして、マリュー達は自分達が乗ってきたランチに再び乗り込むとアークエンジェルへと戻っていく。

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