青年の異世界珍道中〜ガンダムSEED〜 作:クロイツヴァルト
メネラオスから戻ったマリューはすぐさま艦に乗る避難民に提督と話していた事を説明し随時メネラオスへと移動してもらう事を避難民達に話し、ヘリオポリスから協力していたキラ達はアークエンジェルの食堂で艦の協力をしていた面々が集まっていた。
「みんなはやっぱり降りるよね?」
「そうだな。もう戦闘に巻き込まれるのは懲り懲りだよ。」
「私も」
「僕もだね」
「キラもだろ?もうあんなもんに乗って戦いたく無いだろ?」
「あ、僕は」
カズイの言葉にトールや、ミリアリアも同意し、サイも疲れた表情を隠しもしないで告げ、続けてトールがキラに聞くとキラは一瞬迷っていると
「私は艦に残るわ!」
「「え?!」」
「フレイ、何を言ってるんだ!?」
トールとミリアリアは驚き、恋人のサイも同じような反応をし席を立ちフレイに詰め寄る。
「私はヘリオポリスからの戦いを見てきたわ。そしてラクスと話して決めたの。私には確かにキラやカイトさんみたいな戦うことは出来ないわ。けど、やれることは他にもあるはずよ。あの子とだって約束したのよ。戦争が終わったらまた会おうって。だからこんな戦争は終わらせないといけないんでしょ?なら私はその為にどんな事でも手伝いたいの。」
「でも!」
「降りたいなら降りれば良いわ。私は私の意思で残って戦うわ!」
「フレイ待ってよ!」
なおも言い募るサイの腕を振り払いフレイは一同を残して食堂から走り去る。それをキラが咄嗟に追いかけていく。
「…どうするのこれ?」
「フレイ……」
愕然とした表情で固まっているサイを見てトールは気まずそうに呟くが誰も答えられずにいると
「…あたしやっぱり残るわ。」
「ミリィ?」
席を立ちながらミリアリアが告げた言葉にトールが不思議そうな顔をする。
「だって同い年のフレイが残るのに降りるわけにはいかないじゃない。確かに艦長は女性だけど少ないしフレイとは知らない中ってわけでも無いしね。アークエンジェルに乗ってオペレーターをしていてカイトさんやフラガ大尉と話していて思ったの。この戦争はいつ終わるのかなって。」
「なら!俺も残るよ。」
「トール」
「恋人のミリィだけ残して俺が降りるわけにはいかないだろ?」
「ありがとう。トールならそう言ってくれると思ったわ。」
「へへ。」
トールとミリアリアのやり取りを見てか
「…僕も残るよ」
「カズイ」
「確かに僕は戦いが怖いよ。フレイやミリアリアみたいに明確な意思はないけど友達が残って戦うのに僕だけ降りるのは気が引けるっていうか」
「良いんじゃないの?あたしやフレイは戦うことは出来ない。けど他の事で艦に乗るみんなのサポートが出来ればいいと思うわ。それはカズイ本人が見つけないとだしね。」
「僕にできること…あるかな?」
「それを見つけるのは俺達じゃない。お前自身で見つけないとだろ?」
「…うん、そうだね。」
「サイ、あなたはどうするの?」
「僕もフレイを残して降りることは出来ないよ。」
ミリアリアはカズイの言葉を聞きながらいまだに呆然とした表情でいたサイに聞くと複雑な表情で残る事を告げる。
「なら、決まりね。艦長に話して志願しますって言わないとね。」
ミリアリアの言葉に各々は頷き席を立ちマリューのいるブリッジに向かうのであった。その頃
「フレイっ!」
「キラ、追いかけてきたの?」
「だって、艦に残るって…軍人に志願するって事だよ?」
「そうよ。あたしはラクスと話してコーディネイターってだけで怖がっていたのがバカらしくなっちゃったのよね。確かにナチュラルとコーディネイターで戦争をしているわ。けどそれでも一部のコーディネイターだけ。ラクスと話してみても見た目はあたしと同じ女の子だもの。それが一緒に話してみて分かったの。」
戸惑うキラにフレイは覚悟を決めた表情でキラに言う。
「もちろん、キラが残ってくれれば助かるわ。けどそれは押し付ける物じゃないわ。キラが優しいのは知ってるしね」
そう言ってフレイはキラに微笑む。
「フレイ、僕は」
「あ、パイロットのお兄ちゃん!」
「君は」
キラがフレイに何か言おうとした所、年端も行かない少女がキラに近寄り話かけてきた。
「これあげる!」
「これは…花?」
「うん!助けてくれたお礼!」
「でも」
「キラ、受け取ってあげなさいよ。」
「フレイ」
少女が両手に持った黄色の紙で折った小さな花をみて困惑する中でフレイが助け舟を出す。
「ヘリオポリスのポッドを回収して来たのはカイトさんよ。でもその後の戦いではキラも戦っていたでしょ?」
「でも僕は」
「もう…どうしてそう卑屈になるの。この子はキラに感謝しているからこうやってお礼を持って来たのでしょ?」
「うん…そうだね」
フレイに言われてキラはそっと少女から花の形をした折り紙を受け取る
「…ありがとう。」
「どういたしまして!お兄ちゃんありがとう!」
花を貰ったキラは少女が不快にならないように笑いながらお礼をすると少女も笑いながらキラにお礼を言って近くに来ていた母親に連れられて兵士の下へと去っていく。
「僕にこんな物もらう資格なんて……」
「だからぁ、資格があるとかないとか関係ないの!あの子が感謝のお礼をしたいって言ったの忘れた?それともあたしの話聞いてた?」
「き、聞いてたよ。けど」
「お、少年にフレイの嬢ちゃんこんなところでどうした?」
「「カイトさん!」」
詰め寄るフレイに戸惑い答えあぐねているキラの所に反対側の通路からカイトが来て2人が反応する。
「フレイの嬢ちゃんは軍の制服着てるってことは残るってことで良いのか?」
「はい、あたしはアークエンジェルに残ってみんなの手伝いをしたいので」
「そうか、ならこれからは同僚だな。だが、無理はするなよ?」
「それをカイトさんが言いますか?」
「はは、これは痛いところを突かれたな。」
フレイの言葉にカイトは苦笑いする。
「カイトさん、僕は」
「少年、確かにお前さんは戦いが嫌いなんだろ?なら無理はしないで良い。途中で発破かけた俺が言うことじゃないだろうが、言わせてもらう。ここまで協力をしてくれてありがとう。」
迷うキラに対してカイトはいつものぶっきらぼうな感じで言うのではなく真摯に大人としてキラに感謝し頭を下げる。
「カ、カイトさん?!何を!」
「正直な話、俺とフラガ大尉だけだったら戦力的にもっと厳しい戦いになっていたと思う。だが、少年がいてくれたから皆が無事にここまで来れた。」
カイトの行動にキラは慌てるが、カイトはそんなキラを無視してなおも頭を下げた状態で言葉を紡ぐ。そして
「少年はこの艦を降りるのだろう?」
「それは…」
カイトの言葉にキラはフレイをチラリと見ながら迷いの表情を見せる。
「…今後の自分のことだから悩むのは良い。が、時間は待っちゃくれない。後悔の無い選択をしろ。」
「後悔の無い選択…」
カイトの言葉にキラも自身で多少なりとも思うことがあるのか、カイトの言った言葉をつぶやく。
「俺はこの後出撃準備があるから行くが、気をつけてな。」
「また戦闘になるんですか?」
「なるかもしれないし、ならないかもしれない」
「ラクスね」
キラの疑問にカイトがはぐらかすように言うがフレイの寂しげな呟きにキラがハッとする
「正解だ、フレイの嬢ちゃん。ラクスを向こうに返す代わりにこっちの行動の阻害をするなって電文を送ってあるから、もうそろそろ来てもおかしく無いんだよ。だからそれの準備でラクスも後で連れていくんだ。」
「そう…なんですか。」
カイトの言葉にキラは絞り出すように納得の声を上げる。
「ま、正直な話このまま一緒にって思いたいがそうも言ってられないしな。」
「カイトさんはそれで良いんですか?」
「そこは我慢するしかないな。永遠の別れってわけじゃない。戦争が終わればまた会えるさ」
仕方ないと言うカイトだがその表情は少し寂しそうであるがその目にはフレイと同じように覚悟をした目をしてキラを見ていた。
「終わるんでしょうか」
「終わるんじゃない、終わらせるんだ俺たちの手で。」
キラの質問にカイトは力強く答える。
「キラ、これ以上はカイトさんの邪魔よ」
「悪いな、こんな状況じゃなかったらもう少し話を聞いてやれたんだが」
「いえ、僕のほうこそ。あの、気をつけてください」
「あぁ、少年も元気でな」
そう言って2人からカイトは離れていく。
「僕は…どうすれば良いんだろう」
「…キラ」
「あ、2人ともこんな所にいた!」
悩むキラをどう声を掛ければいいか悩むフレイ。そんな2人の所に地球軍の制服を着たミリアリアとその後ろからトール達も一緒に来ていた。
「みんな、なんで地球軍の制服を」
「キラ、ごめんね。私たちもフレイと一緒に残ることにしたの。」
「え、だってもう戦いは嫌だって」
「だけど友達を残していくわけにも行かないし私も私で思うところがあるってこと。」
「俺はミリィが残るって言うんだ。彼氏が彼女を置いていくかってね。」
戸惑うキラにミリアリアはミリアリアで考えて行動し、トールもまた別の理由だが残ると言う。
「カズイやサイもなの?」
「うん」
「ま、僕もフレイを残していくわけには行かないしね」
残りの2人の言葉にキラは少なからず衝撃を受ける
「キラはどうするのか決めたの?」
「僕は…」
ミリアリアの言葉にキラは決めあぐねていると
「これ、警報!」
『総員第一種戦闘配備!繰り返す!第一種戦闘配備!MSおよびMAパイロットは急ぎ出撃準備!』
「あいつらやっぱり来たのかよ!」
「先に行くわよ!」
「あたし達もよ!」
「みんな!」
艦内に警報が鳴り響き、ブリッジからナタルの声が響く中、学友達が駆けてキラは迷子の子供のように声を上げるが彼らはブリッジの方へと進んでいく。それはまるで自分だけが取り残されたようにも思える孤独がそこにはあった。
「僕は…どうすれば…どうしたいんだ」
残されたキラの言葉に答える者はこの場にはいない