青年の異世界珍道中〜ガンダムSEED〜   作:クロイツヴァルト

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PHASE13

 

 

 アークエンジェルの降下準備が進む中、現れたザフト軍に対して第8艦隊の迎撃準備が行われていた。そして

 

 「ラクス、準備はいいか?」

 

 「ええ、いつでも」

 

 「分かった…ブリッジ!聞こえるか?こちらはいつでも行けるぞ。」

 

 機体のコックピットでカイトは後ろに地球軍のノーマルスーツに身を包んだラクスに確認する。

 

 『了解!』

 

 「ミリアリア…君も残ったのか。」

 

 『はい、私も皆さんの助けになれたらなって思いまして』

 

 「後悔はしないんだな」

 

 『このまま見ないふりの方が後悔しそうなので』

 

 「そうか」

 

 ミリアリアの言葉にカイトはそう短く応える。

 

 『それではミサカ少尉、発信シークエンスどうぞ!』

 

 「了解、ミサカ・カイト…ホットスクランブル出撃るぞ!」

 

 そう宣言し、カイトはラクスを乗せて目の前に広がる広大な宇宙へと飛び立つ

 

 「さ…てと、奴さんは誰を受け取り人にするかね?」

 

 「おそらくアスランが来ますわ。」

 

 「だろうな。一応は婚約者だもんな」

 

 カイトの言葉にラクスは寂しげな表情をする。

 

 「心配すんなって言っても無理か。必ずラクスを迎えに行く」

 

 「はい、お待ちしておりますわ。」

 

 出撃し、慣性に沿って移動する中で座席から離れたラクスは自身のヘルメットを外し前に座るカイトのメットも外すとキスをする。

 

 「いきなりだな。」

 

 「お嫌でしたか?」

 

 「いや、むしろ嬉しいさ。この後は長い間会えなくなるわけだからな」

 

 一度離れた距離を今度はカイトからする。そして

 

 「見えた…先頭はイージスで後方にバスターとデュエルか(こりゃラクスを引き渡した後にズドンってか?)」

 

 『こちらザフト軍所属のアスラン・ザラ。カイト・ミサカ、聞こえてるか?』

 

 「聞こえている。」

 

 『まずはラクスの安否を確認したい。本人はどこにいる?』

 

 「俺の後ろの席に座っている。ほら」

 

 「アスラン、私は無事ですわ」

 

 イージスからの通信に出たカイトに促されてモニターの見える位置に出てアスランに無事を知らせる。

 

 『確認した。これより返還をしてもらう』

 

 「一応確認だが、彼女は無事にプラントに戻るんだろうな?」

 

 『もちろんだ。彼女はプラントにとって大切な存在だからだ』

 

 「分かった。…そこは自分にとってもって言わないんだな」

 

 『?…何か言ったか?』

 

 「何も。ハッチを開けて彼女をそっちに流すから受け取れ」

 

 『分かった』

 

 そして通信が切れ、カイトがコンソールを操作し、ハッチを解放する。

 

 「ラクス、必ずまた会おう。」

 

 「はい、必ず。ずっとお持ちしております」

 

 ヘルメットの中にはすでに泣いていたのか彼女の涙が揺蕩っておりカイトは見ないことにも出来ずにいたが、ラクスがそっとカイトの手に添えてから外に出てアスランの元へと行くと受け取ったアスランはラクスの様子を見てギョッとし

 

 「彼女に何をした!」

 

 「なんもしてないって言えないが、同じコーディネイター同士だ。積もる話もあるだろうし、俺も彼女のファンなんでな、戦争が終わったら彼女の歌を聴きに行くと約束したんだよ。」

 

 「同じコーディネイターならこっちに来い!」

 

 「それは出来ない。お前にも譲れないものがあるように俺にも譲れないものがある…なら一度ぶつかるしか無いんだよ」

 

 「だが、彼女は…ラクスはお前の事で泣いてるんだぞ!」

 

 「そこは申し訳ないとは思う。傲慢だと捉えられるかもしれんが、慰めるのは婚約者のお前さんの役目だろ?」

 

 「だが!」

 

 「ッチィ!(思った通り撃ってきやがった!俺じゃなかったらやばかったな)アークエンジェル、こちらカイトだ!聞こえるか!攻撃を受けている!」

 

 『なんですってッ!?キラくんとフラガ大尉を向かわせるわ!』

 

 「いや、アークエンジェルは降下準備に入ってくれ!殿は俺がする!」

 

 『しかしそれでは!』

 

 「こいつには単機で大気圏突入能力があるから心配するな!」

 

 『…わかりました。みんな、聞こえたわね?ストライクとゼロを回収後に降下シークエンスに入ります!』

 

 なおもカイトに言い募ろうとしたアスランだがカイトが機体をバックブーストで距離を空けた行動に驚くのと同時に後方からビームが飛んできた事で事態を把握する。そんなアスランの様子を見ながらカイトはアークエンジェルへと通信を行い、先に地球へ降りる様に指示をする。渋るマリューだがカイトが折れる様子を見せない事がわかったのか苦渋の表情をしながらクルーへと指示を飛ばす。

 

 「イザーク?!何をしている!」

 

 『それはこっちのセリフだ馬鹿者!いつまでもチンタラと裏切り者とおしゃべりなど!』

 

 「私がいるこの場所を戦場になさるおつもりですか?」

 

 『戦場のことを知らないお姫様は王子様と一緒にお帰りくださいってな。』

 

 「アスラン・ザラ、これが戦場だ!騙し騙され、お互いの主張を押し付け合い勝者が正義、敗者が悪と定義される世の理で真理だ!そして、その行き着く先は何も無い!コーディネイターでもナチュラルでもない!人類はヒトの手によって滅びるんだぞ!」

 

 「それは…」

 

 「迷いのあるものが戦場に立つな!」

 

 メット越しの通信が切れるのと同時にカイトはハッチを閉めてなおも攻撃をしてくる2機のGの追撃を捌いていくが

 

 『さぁ、ここらで墜ちてくれるかな?カイト・ミサカ!』

 

 「クルーゼか!」

 

 イージスの横を通り過ぎるバスターとデュエルの後から出てきた白色のシグーを見てカイトはそう毒づく

 

 「チィッ!」

 

 シグーが持つシールド内蔵式バルカン砲が正面から、バスターが両肩のミサイルと散弾で逃げ場を潰し、デュエルがサーベルを抜いて横合いから迫る。

 

 「流石に連携が上手い!」

 

 シグーの攻撃を避けながら、バスターからの攻撃はシールドで防ぎながら牽制目的の射撃でデュエルとの距離を取る。

 

 『私も君との戦いを楽しみたいが、そうも言っていられないのでね』

 

 「何をッ!戦争を望んでいるような奴が!」

 

 シグーとデュエルが接近戦でカイトに迫り、2機のカバーをするように時折バスターからビームやミサイルが飛び交う。

 

 『貴様らがこんな物を作るからだろうが!』

 

 「こっちだって無抵抗でやられてばかりじゃ無いんだよぉ!」

 

 イザークの言葉にカイトが反応し、あのシステムを使う。そして、その瞬間、イージスに乗るラクスが何かを感じ取る

 

 「カイトッ!いけませんわ!」

 

 「ラクス?!なにを!」

 

 2人の目の前でカイトの乗る機体が赤く発光する。その現象を見てか、攻撃をしていた3機もその不思議な光景に手を止めるが

 

 「そんなコケ脅しが通じるかよ!」

 

 『待て、イザーク!』

 

 イザークは様子を窺う事もせず、サーベルを手にアスランの制止も聞かずにカイトに迫る。

 

 「…遅い」

 

 「なッ?!ぐぁぁぁ!?」

 

 しかし、気付けばカイトの機体は瞬きの間にデュエルの懐に潜り込み、回し蹴りを入れデュエルはその衝撃で蹴られた方向へと大きく飛ばされる。

 

 「はぁ、はぁ…、やっぱ完治してない状況だと厳しい…な」

 

 カイトはスーツ内で汗を大量にかきながら戦況をモニターで確認し、クルーゼ隊の他に戦場にいるジンの部隊に対してキラとムウが大立ち回りをしているのを確認する。

 

 『やはりお前は危険な存在だよ、カイト・ミサカ!』

 

 「ラウ・ル・クルーゼぇ!」

 

 デュエルと変わるように迫るシグーに対してカイトは吼える

 

 「隊長、待ってください!何故、何故約束を反故にするのですか!」

 

 『あれが危険なのはわからんでもないだろう?放置し、あれが地球に降りれば連合はあの強力な力を我らプラントに間違いなく向けるだろう。力は憎しみを呼ぶ。そして憎しみからまた憎しみが生まれる!』

 

 「しかし!彼は…彼とは話をしました!そんなことを」

 

 『奴の言葉は綺麗だったろう…しかし、きれいごとだけではこの戦いの連鎖から抜け出すことは出来ない。わかっているだろう』

 

 『アスラン!下らん事を言っとらんでさっさとラクス様を降ろして貴様も戦線に加われ!』

 

 アスランの呼びかけにクルーゼは諭すように告げ、イザークからは自分も戦えとせっつかれる。

 

 「流石にエース級がこんなにいて守りながらはキツイな!」

 

 高速機動をしながらカイトはクルーゼ達の攻撃を避け、クルーゼ隊の注意が後ろにいるアークエンジェルに向かいはしないようにし続けていたが

 

 「ゴハァッ?!」

 

 「カイトッ?!」

 

 遂にカイトの体が耐え切れず、臓器が傷ついたのかバイザーの中で吐血する。その瞬間をラクスはカイトと繋がった様な感覚に襲われ、カイトが血を吐く瞬間が脳裏に閃き、咄嗟的にイージスのコックピットハッチを開ける操作をして外に出てしまう。

 

 「ラクス!何をしている!危険だ、戻れ!」

 

 「放してくださいアスラン!危険なのはわかっています!それでも私はあの方を助けたいのです!」

 

 ラクスが涙を流す様子を見てアスランは

 

 「ラクスは…あの男を好いているのか?」

 

 「はい、愛しております。私のことをただ一人のラクスとして見てくださった方だから」

 

 「そう…か。」

 

 ラクスの言葉を聞いてアスランは咄嗟につかんでいた腕の力が緩んでしまう。

 

 「行ってこい。あいつを助けるんだろ」

 

 「はい!アスラン、ありがとうございます」

 

 アスランの言葉を聞いてラクスは最後にアスランに向けて微笑むと、無謀と思われようと戦闘が激化している中に単身で飛び出してしまう

 

 「俺はなにをやってるんだろうな」

 

 そんなラクスを見てアスランは項垂れる。

 

 『カイトッ!』

 

 「ッ!ラクス?!」

 

 聞こえるはずのない声が脳裏に聞こえた途端、カイトは即座にモニターを注視するとイージスの方からラクスがノーマルスーツのままこちらに飛び出してきているのを確認し、驚くがそんなことよりも彼女の安全が第一と考えたカイトは考えがまとまる前に機体を動かす。

 

 『羽付きッ!』

 

 「俺の…邪魔をするなぁ!!!!」

 

 『なにぃッ!?』

 

 横合いから突っ込んできたデュエルに対してカイトは機体を滑らすように回り込むとデュエルの背中を思い切り蹴り飛ばし、その衝撃でバランスを崩したデュエルは縦方向に回転しながら飛ばされてしまう。そして

 

 「この馬鹿ッ!なんでこんな危ない真似をしたんだ!」

 

 「愛してる方が危ない、その中を危険と承知してきたのです。」

 

 ラクスをそっと掴みコックピットの中に入れたカイトはそう叫ぶがラクスも負けじとカイトに言い返す

 

 「だがな」

 

 「アスランには私の気持ちを話しましたわ。快くかは分かりませんが、私の事を送り出してくれましたわ。」

 

 ラクスの言葉にカイトは言葉が詰まる。

 

 「帰るのが遅くなるぞ?」

 

 「構いませんわ。」

 

 カイトの言葉にラクスが平然と答えて、カイトは溜息を吐き

 

 「俺の恋人は困った人だな…後ろの席に座ってろ。荒っぽい動きになるからしっかり捕まってろよ!」

 

 「はい!」

 

 愛する人が近くにいる為なのか、カイトは先ほどの苦しい様子を抑え感情の赴くままに機体を操り、クルーゼ隊の攻撃を凌ぎ、僅かな隙をついてMA形態に変形してその場を離れて地球へと向かって行く。

 

 「アスラン!何をしている!みすみすラクス様を裏切者に持っていかれるとは!」

 

 「……」

 

 イザークの通信がイージスに入るが、アスランは俯いたまま反応しない事に苛立つ

 

 「えぇい、このまま逃がす物か!」

 

 「待てよ、イザーク!」

 

 カイトの行動が気に入らないイザークは去っていったカイトを追い、ディアッカはそんなイザークを追う。

 

 「アスラン、君はヴェサリウスに戻れ。」

 

 「…隊長」

 

 「今の君は正直な話だが、戦場に立つのは危険だ。」

 

 「…了解…しました。」

 

 アスランは力無く返事をして機体を反転し、母艦へと戻る。クルーゼはそんなアスランを見て

 

 「困った者だ。あれでは今後使い物になるか…、パトリックに立ってもらわねばならんというのにな」

 

 そうつぶやき、追撃を仕掛けているイザーク達を見やり、その奥にいるカイトを睨み付け

 

 「忌々しいな、奴はことごとく我々の邪魔をするな。次は必ず殺したいところだよ」

 

 そう呟くのであった。

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