青年の異世界珍道中〜ガンダムSEED〜   作:クロイツヴァルト

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PHASE14

 

 「待てぇ!裏切り者がぁ!」

 

 「いい加減しつこい!」

 

 地球に向かう為にアークエンジェルが降下した所に向かおうとしている所をデュエルが執拗なまでに追いかけて来る。しかも

 

 「追加の注文なんてしてないんだがなぁ!」

 

 カイトがそうぼやくもデュエルの後ろからバスターも迫っており、両手に持ったライフルをカイトに向けて何度も撃って来るのである。

 

 「きゃぁッ!?」

 

 「ぐぅぅッ!流石、中遠距離型の機体だな!精度が良いな!」

 

 バスターの持つ物理型ライフルガンランチャーが機体に当たったりするが、そこはPS(フェイズシフト)装甲のおかげで機体にはダメージは無いもののその衝撃までは殺せず、機体の中でラクスが悲鳴を上げる。

 

 『ミサカ少尉、いや大尉聞こえるかね?』

 

 「ハルバートン提督?!」

 

 『今から第8艦隊が感応射撃で援護する。その間にアークエンジェルの下へ行くんだ!』

 

 「しかし、それでは提督達が」

 

 『なに、希望はすでにある。なら老兵は若者達の礎になるさ。』

 

 「上官侮辱罪覚悟で言わせて貰います。スゥー、んな事言うんじゃねぇよ!俺は貴方がいたからこそ地球軍に入れた!その恩を返せないままでいられるかよ!俺にも果たしたい信念がある!貴方にも果たすべきことがあるはずだ!だから生きてくれ!」

 

 『ミサカ大尉…』

 

 「だから生きてまた会いましょう。その時は美味い酒でも交わしましょう。」

 

 『…分かった。だが、必ず無事に降りろよ?死んだりしたら承知せんぞ!』

 

 「了解しました。提督、どうかお元気で」

 

 『君の武運を祈る。メネラオス、機関最大!現宙域を離脱する!』

 

 アークエンジェルを見送り、カイトのことを援護するために残っていた第8艦隊はハルバートンの指示を受けて現在の宙域から離脱を開始する。

 

 「行きがけの駄賃だ!」

 

 主翼の部分にあるビットを切り離して第8艦隊の追撃をしようと残存するジンの部隊に対して攻撃を行い、両腕を破壊されたり、頭を破壊し行動を制限していく。

 

 「破壊されたMSのパイロットが生きてると厄介だよなぁ!」

 

 カイトは敢えてMSを完全に撃破せずにザフト軍の足枷にするために完全破壊をしなかった。そして

 

 「くそがぁ!」

 

 「こんな状況で冷静にこんないやらしい事が出来るってほんと厄介だぜ!」

 

 イザークはそんなカイトを見ながら悔しげに吼えるしか無かった。いかに復讐をしようにも大気圏近くの友軍を見殺しにできるはずも無く、バスターと共に四肢や頭部を破壊されたジンを回収していくしかなかった。

 

 「さてと、アークエンジェルは…と」

 

 カイトは手をこまねいているイザーク達を尻目に降下態勢に入り、モニターからの目視でアークエンジェルを探し、視認するが

 

 「あ〜、やっぱりコース外れてやがる。」

 

 「どうしたのですか?」

 

 「本来ならアラスカに降りる予定だったんだが、この降下進路予想だと…アフリカか」

 

 「あそこは確かザフト軍が占領していたはずですわ。」

 

 先の戦闘の所為なのかアークエンジェルが降下する先は本来の目的地とはズレてしまい、ザフト勢力下にあるアフリカに向かっていた。

 

 「砂漠の虎の異名を持つアンドリュー・バルトフェルド。そして穏健派のクライン派でもあったはずだからそっちならラクスを預けても大丈夫だろうな。」

 

 「やはりダメなのですか?」

 

 「俺だって一緒にいたいさ。だけどラクスがこのままこちらにいてはいけないんだ。一度、本国のプラントに戻って穏健派をまとめ上げてもらいたいんだ。タカ派…過激派のパトリック・ザラが台頭でもしたら戦争はより激化し混迷となる。それを防ぐにはラクス、君の力が必要なんだ。利用するようで俺も悩んだけど、ラクスの人気やカリスマ性があれば現状派クライン派が優勢になる」

 

 「…分かっていますわ。アスランのお父上は好戦的でいらっしゃいますから。」

 

 「悪いな、ラクスには負担になってしまうが」

 

 「謝らないで下さい。愛する人の力になれるのなら私は頑張れますわ。」

 

 カイトの申し訳ないという言葉に対してラクスは健気にもそう答える。

 

 「なら、無事に送り届けるさ。降下シークエンスに入る。ラクス、かなり揺れるから気をつけろよ?」

 

 「はい!」

 

 カイトの言葉にラクスが返事をし、その言葉を聞きながらカイトは備え付けのコンソールを引っ張り出す。

 

 「大気圏突入用のシステム起動、同時に機体冷却システムスタンバイ。降下軌道をアークエンジェルのいる地点に設定。」

 

 コンソールの上をカイトの手が指が目まぐるしく動き、軌道計算式を算出する。

 

 「デバイスAI【アルカイン】起動!」

 

 『おはようございます、マスター。ようやく私の出番でしょうか?』

 

 「そうだ。今、大気圏突入の準備を急いでしている所だが、搭乗者に訓練した人間だけじゃ無いから機体冷却機能だけでは少々不安なんでな。」

 

 『では、シールドを張ればよろしいので?』

 

 「頼む、耐熱耐圧用のシールドを展開してくれ。魔力は俺の方からがっつり持っていってくれてかまわん。」

 

 『了解しました。』

 

 「カイト、それは?」

 

 「落ち着いたら説明するけど、この機体のシステム以外にも外付けのサポートデバイスなんだ。」

 

 『ミス・ラクス、私の名前はアルカインと申します。気軽にアルとお呼び下さい』

 

 「アル様、よろしくお願いいたしますわ。」

 

 「アル、話は後だ。そっちは頼んだぞ!」

 

 『承りました、マスター』

 

 そして、機体が大気圏に入ると画面の外は空気の摩擦熱で赤く燃え始めるが、機体冷却機構で表面と内部の温度はそこまで暑くならずに済んでいるが

 

 「やはり結構揺れるな…ラクス、大丈夫か!」

 

 「心配ありませんわ。」

 

 『シールド強度問題無し。正常作動中です』

 

 本来であれば画面の外は摩擦熱の炎により赤くなっているが突入角の機体下に展開された翡翠色の半透明な壁により視界を遮られずに眼下の様子を伺えている。

 

 「よーし、このままならなんとか無事に降りられそうだな」

 

 『痛覚遮断用の魔力は残してありますのでご心配なさらずに』

 

 「それは助かる」

 

 「痛覚遮断とはなんですの?」

 

 「あぁ、それは」

 

 『現在のマスターの状態は通常でしたら先のハイマニューバにより臓器の一部が損傷しており通常であれば激痛が走り意識を失ってもおかしくは無い状態です。』

 

 「…えッ?!」

 

 アルの言葉を聞いてラクスの顔色が青ざめる

 

 「今の所は大丈夫だ。つっても簡単に言えば感覚を麻痺させてるようなもんだからアークエンジェルに着いたら治療してもらわんとならんしな」

 

 『アークエンジェル、大気圏を抜けアフリカ上空に出ます。』

 

 モニターの拡大望遠先に見える赤熱した空気に晒されているアークエンジェルの状態をアルが報告する。

 

 「俺達もなるべくアークエンジェルの近くにいかんとな…降りた先はザフトの勢力圏だ。いきなり敵との戦闘にでもなったら洒落にならん」

 

 『了解、降下軌道再計算。目標アークエンジェル付近の地点に再設定』

 

 カイトの言葉に応えるようにアルカインは機体の降下軌道の情報を更新、アークエンジェルが降下するであろう地点を割り出し、その付近に機体が降りるように設定する。

 

 「後は艦長達と合流するだけ…ぐッ」

 

 『マスターの魔力残量の急激な現象を確認』

 

 「やっぱ、機体ごとってのは無理があったか?」

 

 『機体に回している魔力を止めれば問題は無いはずです。』

 

 「カイト、何をしているのかは分かりませんが止めてください!」

 

 「それは出来ない…相談だな。万が一の事があってラクスに怪我でもされたら俺は絶対に俺自身を許せないだろうからな。…アル、もし俺が魔力欠乏症で気を失う事があればアークエンジェルへの着艦もしくは付近の地上への着陸は任せたからな。」

 

 『身勝手なマスターですね。分かりました、その時にはこちらで操作して無事にマスター達を地上へお連れします。』

 

 「たのゴッホ!」

 

 アルカインの電子音声に返事をしようとした所、カイトが咳き込み、その口から夥しい量の血が吐かれる。

 

 「カイト?!」

 

 『マスターのバイタルに異常発生、緊急処置を要します。』

 

 「い…まは、むりだ…な。」

 

 ラクスがカイトが大量の血を吐いたことに悲鳴をあげ、デバイスAIであるアルカインは淡々と状況を報告する。が、カイトはそれを拒否する。

 

 「ですが!」

 

 「あと…ちょっとで」

 

 ラクスの言葉に返そうとするカイトだが、意識がすでに朦朧としていて何時気を失ってもおかしくは無い状況である。

 

 「カイト?!しっかりして下さい!」

 

 『マスターの意識低下…自動操縦に切り替わります』

 

 ガクンと体制が崩れたのを見て取り乱すラクス。それを観察していたアルは淡々と操縦をパイロットであるカイトからAIである自分に操作を移す。

 

 『ミス・ラクス。大気圏を突破しているのでアークエンジェルへの通信が可能です。』

 

 「つないで下さい!」

 

 ラクスの即答の返事を聞いてアルカインは通信装置でアークエンジェルへと通信を開くのであった。

そしてそこから少し時を遡り、アークエンジェルでは

 

 「ミサカ大尉は大丈夫でしょうか?」

 

 「俺らが大気圏突入する直前にはこっちに向かってきていたのは確認できてんだ。大丈夫に決まってる」

 

 不安げな表情で言うオペレーターの言葉にムウが気丈に答えるが、ブリッジの空気は正直重くなっており、好意を示していたマリューに至っては艦長用の座席の上で祈るようにしてうずくまっていた。

 

 「だけど、実際にGの2機にあのクルーゼを相手にしてるんだ…正直な話無事かどうかなんて絶望的だろ?それに加えて単機での大気圏突入なんて素人のやることじゃないよ」

 

 ムウの言葉に対してクルーの心無い言葉がブリッジに響く。そんなお通夜のような状況に対して

 

 「ミサカ大尉が出撃して作ってくれた機会だ。我々がそれを潰してどうする!アラスカではなくアフリカに降りてしまったが、なんとかしてストライクとアークエンジェルでアラスカまで行く!彼に報いる為にも」

 

 そんな空気を壊そうとナタルも気丈に言うが、その本人もまたいつもの凛とした雰囲気はなく重い空気を纏っていた。そしてそんな決意とも取れる宣言と同時に艦内のアラートが鳴る

 

 「ッ!?何があったの!」

 

 流石に警報がなったのか顔を上げたマリューがミリアリアに聞くと

 

 「艦の左方上空に熱源を確認!MSです!」

 

 「熱源照紋確認急げ!」

 

 「照紋確認!これは……ホットスクランブル!ミサカ大尉の機体です!」

 

 ミリアリアの言葉にナタルが叫び、確認を行なっていたミリアリアの言葉にブリッジの誰もがワッと活気付く。

 

 「な、俺の言った通り大丈夫だっただろ!」

 

 「よかった、本当に!」

 

 ムウの言葉にマリューが大粒の涙を流しながら嗚咽する。そしてナタルは涙を見られまいと制帽を深くかぶり安堵の息を吐く。しかし

 

 「ホットスクランブルより通信です!」

 

 「モニターに映してちょうだい!」

 

 映った映像を見て湧いていたブリッジが再び鎮まり

 

 『アークエンジェル聞こえますか!』

 

 「ら、ラクスさん!?どうして」

 

 『話は後に!カイトの意識がありませんが今は自動操縦で動いていますので着艦の準備を!』

 

 「わ、わかったわ!」

 

 メインモニターに映ったラクスに驚くクルーだが、カイトの意識がないと告げた時に、マリューの顔色は青ざめ、震えながらもなんとか対応する。

 

 「こちらブリッジ!整備班はMSハンガーを開けておけ!ホットスクランブルが入ってくるぞ!」

 

 「医療班!ハンガーに至急急行して下さい!」

 

 CICのナタルが整備班へ通信を行い、ミリアリアが医療班の手配する。

 

 「カイト大尉は…」

 

 「艦長、行って下さい。」

 

 「ナタル、しかし」

 

 「こっちは俺らに任せて行ってきなって!高度もだいぶ下がっているし、いざとなったら俺やキラが迎撃してやるよ」

 

 「…ごめんなさい、後を頼みます!」

 

 2人の言葉にマリューは逡巡するが、意を決して席を立ちブリッジを飛び出す。

 

 「全く、女泣かせだねウチのエースは」

 

 「ですが、なぜか憎めないんですよね」

 

 「そうそう」

 

 ムウが呆れた表情と声に出し、さほど一緒にいるわけではないが彼の人柄に触れた面々が同意しながら少し笑う。

 

 「さて、艦長に任せろって啖呵を切ったのだ。安全な地表に降りるまで気を抜くなよ!」

 

 「「了解!」」

 

 空気を切り替えるようにナタルの言葉にブリッジのクルー全員の声が響き渡る。

 

 「カイトくんッ!」

 

 マリューはカイトが搬送されたこの艦の治療室に来ていた。

 

 「マリュー様」

 

 「ラクスさん、カイトくんは…」

 

 「奇跡的に一命は取り留めたと」

 

 ラクスの目の前に眠るカイトは人工呼吸器を着け腕には点滴の針があり、体の至る所に電極のコードがカイトの被る布団の下から伸びていた。

 

 「数日は目を覚まさないと言われましたし、目覚めても経過観察と絶対安静と言われましたわ。」

 

 「それで、なぜラクスさんがカイトくんの機体に?」

 

 ラクスはマリューに何故カイトの機体に一緒に乗ることになったのか経緯を話す。

 

 「あの時は咄嗟で動いてしまったのですが後悔は致しませんわ。愛する人が目の前でいなくなることの方が後悔してしまいますから。」

 

 ラクスの言葉にマリューは

 

 「ラクスさんは強いわね。」

 

 マリューの言葉にラクスは頭を振り

 

 「本当に強いのはカイトですわ。私はそんなカイトに惹かれ、その強さに見合う女性になりたい…そう思うと力が湧くのですわ。」

 

 ラクスの言葉にマリューも不思議と納得してしまう。どんな苦境でも彼ならなんとかしてしまうだろうと信頼をしているが故だろうか

 

 「とりあえずラクスさんも疲れているだろうから休みなさい。」

 

 「ですが」

 

 「カイトくんが目を覚ました時に貴女が倒れていました…なんてことになっていた方が大変だと思うわよ?」

 

 渋るラクスだが、カイトの事を想う者同士だからこそこの言葉が効いたのか少し迷うものの席を立つ。

 

 「…それでしたらしっかり休みませんといけませんわね」

 

 「部屋は…なんならカイトくんの部屋を使う?行き慣れているみたいだし」

 

 「あ、それは…はい、お願いいたしますわ。」

 

 「それじゃ、話はカイトくんが目を覚ましたらってことにしましょう。念の為に案内するわ」

 

 そう言って2人はカイトの眠る治療室を出ていく。

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