青年の異世界珍道中〜ガンダムSEED〜 作:クロイツヴァルト
「やはり…奇襲か!」
カイトが艦隊の後方へ移動する中、艦隊の奥の方から2機のMS『ジン』が迫っていた。
「向こうも気がついているようだが…油断大敵だ!」
そう言ってカイトはトリガーを絞り、ミサイルを人に向けて撃つ。
「っ!?この」
「見え見えだ馬鹿者!」
敵の回避先に向けてレールガンによる偏差射撃で直撃を受けてよろめくジンにミサイルが殺到し、ジンの一機が爆発する。それを見たもう一機のジンが腰にマウントしてある実体剣を抜き放ちカイトの乗るメビウスに迫る。
「その辺も想定済みだ!」
迫るジンの剣に対してカイトはメビウスのマニューバで急制動をし片方のバーニアを吹かして無理なターンを決めてジンの背後を取り背後に向けてゼロ距離からのバルカンとレールガンの一斉射により爆発する。
「ふぅ、こちらカイト。フラガ少尉聞こえますか?」
「あぁ、聞こえてるよ。急に敵前逃亡かましたのかと思ってヒヤヒヤしたぞ」
「すみません、ですが先ほどザフト軍のジンを2機処理した所です。」
「…改修機の性能試験と実戦データの蓄積でいきなりジン2機落とすって技術士官じゃなくて正規パイロットにならない?」
「今は考えてないですね。とにかく今は戦線の維持若しくは被害を抑えるのが賢明かと」
飛び回るジンをミサイルをうまく使いながらレールガンでコックピットを正確に打ち抜きながらカイトはそうムウに提案する。
C.E.70年…後にグリマルディ戦線と呼ばれるこの戦いは連合の大敗に終る。しかし、連合も負けてばかりではなかった。この戦いで宇宙戦闘機MAメビウスがMSを撃破すると言う快挙を成し遂げ、ジンを5機を撃墜しエンデュミオンの鷹の異名を貰った男以上のジンを撃墜したカイトにも異名が付いた。試験機という事でカラーリングが燃える様な赤だった事から『紅蓮』の二つ名を貰う。
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あれから一年が過ぎようとしていた。
「ふぅ、システム構築完了。後は実際に動かしてみないと分からんか。」
カイトはとあるコロニーの工廠内でMSのコックピットに搭乗し軽やかな手つきでキーを叩く。
「カイト少尉、そちらの進捗状況はどうかしら?」
「ラミアス大尉、そうですね。システム面は完了してますよ。後はハード面の見直しって所ですね。」
「それにしてもXシリーズは最初は5機の予定だったのに新規で6機目を建造するなんて」
「もしかしたらと思って自分の構想が採用されるとは思いませんでしたが」
「GAT-X111ホットスクランブルガンダム」
「汎用強襲可変機体…コンセプトとしてはMA形態で敵陣に突入し、高火力を叩き込むってシンプルな物になっていますね。」
「確かにスペックだけを見れば他のGシリーズとは違うけど」
「特質すべき所はこれはマンマシーン構想の代物なので限られた人間しか乗れないので実質的には自分専用になりそうですがね」
「System N.D.にサイコフレームに無人誘導兵器ビット、そして高出力ライフル。特に驚いたのはバッテリーの拡張よ。これだけの装備を運用しようとするなら現状のバッテリーでは継戦能力に問題が生じるのにそれを簡単に解消しちゃうなんて」
「俺は方法を知っていただけでそれを組み上げるのはラミアス大尉達がいなければ完成しませんでしたよ。」
呆れ顔の女性、マリュー・ラミアス大尉に対してカイトは苦笑いしながら答える。
「それにしても先の二つに関しては情報がないのだけど…」
「それはまた機会のある時にでも…とりあえず今出来るとこまでは仕上げたので先にお昼行きますね」
「えぇ、わかったわ。」
「早くこんな虚しい戦いを終わらせないとですね。」
「そうね。1日でも早く平和な世界にするためにも」
そして、カイトはヘリオポリス内にある軍用の食堂に訪れる。
「おっ、今日の日替わりは日本食か!」
そして、カイトが食事をしていると
「相席よろしいか?」
「ん?構わないよ」
目線だけで確認するとビシッと地球連合の女性用の士官服に身を包んだ女性が食事用のトレーを持って立っていた。
「ナタル・バジルール、貴方と同じ少尉です。そしてこのような所でかの有名な『紅蓮』に会えるとは光栄です。」
「やめてくれ、そんな大層なもんじゃない。同じ人間を殺しただけだ」
「な、何をいうんですか!相手はコーディネイターなんですよ!?」
「だとしても、同じ人類には変わらんよ。ただ生まれが違うだけの…な」
「ですが…」
「少尉は過激派か?」
席に座る彼女を一瞥してカイトが告げた言葉にナタルは驚き反論するが、カイトは冷静に告げる
「あの様な一般人を巻き込む様な者達と、一緒にしないで下さい!!」
「悪かった。だが、声が大きい。少しトーンを抑えてくれ」
「あ、あぁ。すまない」
「こっちこそすまない。あの戦いは酷いもんだったからな…メビウスに乗って生存したのは俺とムウ大尉だけだったからな。」
「ですが、そもそもMAでMSを倒した事がすごいのですよ?」
「…君は俺の経歴を見たか?」
「え、はい。オーブの生まれで、かのアスハと懇意にある家系にあると」
「そこは合ってるが、両親が特殊なんだよ」
「ご両親が?」
「親父がコーディネイターで母親がナチュラルだ」
「そ、それは」
「純粋なコーディネイターじゃなく混血って訳だ。ま、遺伝子操作されてないからどっちなのかって感じで純血派の上層部からは結構嫌われてるな。」
カイトの出自にナタルが言葉を詰まらせるがカイトはその様子を見て戯けるように見せる
「さてと、俺は食べ終えた事だし、少尉はこの後新造艦の艦長達と顔合わせだろうから先に仕事に戻るよ。」
「食事中にすみませんでした。ですが、同じ階級なので私のことはナタルとお呼びください。」
「ん〜、わかったそうさせてもらうよ。ナタル、また機会があれば一緒に飯でも食べよう」
そう言って席を立ちトレーを返却してカイトはナタルと別れるが
「そうそう、俺の勘だが…新造艦の備蓄は早めに積み終えたほうがいい」
「それは、何故と聞いても?」
「悪い予感がするんだよ……単に俺の気のせいかも知れないがな。気のせいならそのまま笑って終わりだが、起きた時に何の準備も出来ていないと痛い目に遭うのはこっちだって話だ」
「そう…ですか。艦長に言って乗組員の者達に通達しておいた方がいいですね。」
「悪いが頼むわ。畑違いの技術士官の俺が言った所で一笑に付されそうだしね、軍の家系のナタルのいう事なら無下にもされんだろ」
そう言ってカイトは後ろ手にひらひらと振りながら食堂を後にする。
「あら、もうお昼は食べ終えたの?」
「はい、ですのでラミアス大尉もお昼に行ってはどうですか?その間はこちらでも出来ることはしておくので」
「…そうね、そうさせてもらうわ。後の事はお願いね」
現場に戻ったカイトはラミアスと交代し、引き継ぎのためのファイルを閲覧する。
「もうある程度の準備は終わって後は最終チェックと搬出作業って所か。あ、そこの君」
「ミサカ少尉、何か?」
カイトは傍を通り過ぎようとした軍の整備員を呼び止める。
「何、最終チェックの方は俺と大尉でやるから君らはすぐにでも搬出作業が出来るように頼む。」
「了解しました。」
カイトに対して敬礼をした整備員は仲間の下に行き、カイトの指示通り迅速に作業を始める
「さてはて、俺の勘が当たらなければ取り越し苦労の笑い話で終わるが」
そう言ってカイトは傍にあるガンダムを見上げる
「ガンダムに選ばれるのは稀有な運命にある者達…さて、此度の世界のガンダムに選ばれる者達はどうだろう…な」
そう吐き捨ててカイトは自身の愛機になるであろう機体のチェックを始めるのであった