青年の異世界珍道中〜ガンダムSEED〜 作:クロイツヴァルト
マリューとカイトが機体の最終チェックを終え、搬出作業の確認をしている時
「な、何?」
「今の振動は…爆薬!大尉、搬出作業急いで!襲撃だ!」
「ッ!?みんな、搬出急げ!手の空いている者は銃を装備し辺りを警戒」
「ッ伏せろ!」
マリューの言葉を遮るようにカイトはマリューを庇いながら地面に伏せる。直後に頭上から易々と人を殺せる銃弾の雨が降り注ぎ一瞬のうちに阿鼻叫喚の地獄絵図と化す
「ッ!やはりザフト…情報が漏れていた?残っている者達は各自お互いをカバーしつつ応戦しろ!絶対に機体を連中に渡すなよ!」
カイトはマリューと共に機体の影に隠れ、カイトはその場から未だ生きている軍関係の整備員達に聞こえる様に声を張り上げる。
「大尉はストライクの事を頼みます。」
「少尉は」
「俺は連中と交戦しつつ相棒予定の所に行きますよ。なに、俺は案外しぶといのでまた後で」
「えぇ、気をつけて」
マリューと言葉を交わしてその場を離れるカイトに対して狙うように緑のパイロットスーツを着たザフト兵から狙われるが
「甘い!」
そう言ってカイトは腰に差している二つのガンホルダーから銃を取り出して撃ってきた者に撃ち返す。
正確に狙ったカイトの銃弾はザフト兵の心臓を一撃で捉える。そんお様子を見ていた他のザフト兵がカイトの危険性を察知し、更に攻撃を強める。
「ちぃッ!」
流石のカイトも生身でしかも味方のいる中で魔法を使うわけにもいかずGの機体の影に潜り込み銃弾の雨から逃れる。
「やっぱ、短銃と自動小銃じゃ、奴さんの方が有利か。」
「ラスティ!?」
様子を伺っているカイトをよそにザフトの誰かの知り合いが撃たれたのか悲痛な叫びを上げる
「ま、軍人やってりゃそういう事もあるわな。割り切れるかは別として…な!」
そう言ってこちらに近づくザフト兵を撃ったカイトだが
「一機はマリュー大尉と民間人…イージスは奪われた…か。こっちも急がないとな」
そう言ってカイトは最後のザフト兵を撃ち殺し、周囲の状況を確認する。
「2機はすでに外に出たか…後はこっちか」
そう言ってカイトはホットスクランブルに乗り込む
「流石に全天周囲は出来なかったが、他の技術に関しては俺がやった事にして出来たがまずはここを離れる所からだな。全システムオールグリーン、各兵装問題なし…バッテリー残量100、弾薬も問題なし…戦闘ステータスオールグリーン…よし。」
そしてフットペダルに手元のレバーを操作して周りの物を崩して音を立てないようにゆっくりと立ち上がる。
「レーダー起動。周囲の状況は」
そう独り言を呟きながらカイトは周辺を警戒しながら確認する。
「イージスの反応は無し…すでに撤退したか。こっちに残ったのは俺の乗る相棒とストライクだけ…か。」
周囲の確認が終わったカイトはペダルを踏み込みスラスターを吹かせストライクの下に降り、コックピットからワイヤーを使わずに降りる
「少尉、無事だったのね!」
「言ったでしょう、俺はしぶといって。それよりも大尉は怪我しているようなのですから安静に」
トレーラーの横に鎮座するストライクの近くのベンチに座っていたマリューは降りてきた機体を見るや否や機体近くまで来ておりカイトが降りるのと同時に声を掛けてくる。
「それで大尉、この子供達は?」
「えぇ、そこの少年がストライクを動かしてジンを撃破し、その少年の後ろにいるのが彼の学友達よ。」
「キラ・ヤマトです。」
「サイ・アーガイルです。」
「カズイ・バスカークです。」
「トール・ケーニヒです。」
「ミリアリア・ハウです。」
マリューの言葉を聞きながらカイトは自己紹介してくる子供達を一瞥し
「地球軍所属の技術士官カイト・ミサカ少尉だ。君たちと今後よろしくするかどうかは今後の事だ。それよりも大尉、他の者達と連絡は?」
カイトの短い言葉にムッとした数名がいたがまるッと無視をしてそばにいるマリューにカイトが尋ねる。
「…仕方ない。少年、トレーラーの中にある装備をいつでも使えるようにした後に通信機でこの周波数で呼びかけ続けてくれ」
カイトはキラに近づくなり一枚の小さな紙切れを渡すと手元にある救急キットを持ってマリューをベンチに座らせる。
「大尉、簡易ですが手当てをしますので…ミリアリア・ハウだったか、ちょっと手伝ってくれ」
「あ、はい!」
カイトは服の上から結んだ包帯を痛まないようにゆっくりと外す
「大尉、上着を」
「えぇ」
カイトに施され、マリューが上着を脱ぐ。女性特有の豊かな胸が服越しに強調されているためかキラを含めた男子達は顔を赤らめる。その様子に気づいたミリアリアは
「そこの男共は後ろを向く!」
と一喝され慌てて後ろを向く
「…弾は残ってないな。大尉、少し沁みるが」
「大丈夫よ、お願い。」
カイトは傷口から化膿しないように消毒をし、アルコールで濡らしたガーゼを傷口に貼り、丁寧に包帯を巻く。
「この上着は衛生的に悪いからこれを着てくれ」
そう言ってカイトは自身が羽織っていた上着をマリューに渡す。
「少尉、ですが」
「男物なので多少サイズが大きいですが、そのままですと目の毒ですので」
カイトは治療が終わるのと同時にマリューから視線を外す
「あら、私は少尉にとって毒なのね?」
「言葉の綾です。男からしたら大尉は大変魅力ある女性ですので、俺からしても不謹慎ですが眼福です」
「ふふ、正直者なのね。じゃ、これは治療のお礼ね」
「ちょ、大尉!?」
マリューは言うや否や立ち上がるのと同時に背後からカイトを抱きしめてその頬に軽く口づけをし、近くにいたミリアリアは黄色い悲鳴をあげる。
「全く、年下を揶揄わないで欲しいものですね」
「ふふ、ごめんなさい。でも感謝しているのは本当よ。」
そんな戦時中のわずかな和やかな時間も上空の爆発音に破られる
「メインシャフトの中!?」
「あれは…シグー!それにメビウスゼロってことはフラガ大尉か!少年、ストライクを起動しろ!戦闘だ!大尉達は少しでも安全な所に避難してください!」
そう言い捨ててカイトは機体にひとっ飛びで乗り込むとすぐにシステムを起動。電源が入るのと同時に機体の色が鮮やかな真紅に染まる
「少年、そっちは!」
「今、動きます!」
短いやり取りの最中にも上では激しい戦闘が繰り広げられており、ムウの乗るメビウスの武装のガンバレルは全損し、残るはレールガンだけであったが、それも今シグーの持つ剣で半ばから両断され全ての攻撃手段を失ってしまう。
「先に俺が仕掛ける!少年は後ろから援護射撃!」
「は、はい!」
カイトはそう告げるのと同時にフットペダルを勢いよく踏み込み、スロットルを全開にして飛び、こちらに向かってくるシグーに向けてライフルを構えて撃つ
「こちらに情報の無い新型か!?」
「はっ、諜報はお前らだけの得意技じゃないんだよ!」
腰部にあるビームサーベルを発振させながらシグーの剣と交わし接触回線で短いやり取りをする。
「カイト、お前か!すまん、助かった」
「フラガ大尉、ご無事で何よりです。今、下に仲間がいますのでそちらまで下がってください」
「すまん、頼んだ!」
そう言ってムウは機体をストライクより後方へと退がる
「ここで討っておきたかったが、君の方が厄介そうだね!」
「そう思ってもらえて光栄だね!」
悪態を吐きながらカイトはシグーと激しい戦闘を繰り広げる
「は、速い!」
シグーと戦うカイトの動きにキラはついて行けず援護射撃が出来ずにいた。
「ふむ、あちらは素人でも乗っているのかね?」
「ッ貴様!」
敵の含み笑いのような言葉にカイトは一瞬で気付く
「まずは弱い方から叩くのが定石だろう」
そう言ってシグーの蹴りを躱したカイトの機体の下を潜り抜けるようにシグーが迫る
「させるか!」
機体の下に差し掛かったシグーに対してカイトは左腕に増設し内蔵した武装ヒートロッドを展開してシグーの足に巻き付ける
「なにッ!?」
「近づくんじゃねぇ!」
そう叫びながら巻き付けた方の腕を振りかぶり反対の方向へとシグーを投げ飛ばす。
「ぐぅぅッ!厄介な!厄介なやつだな君は!」
「はんっ!ならさっさと帰んな!」
そして今まさに再び両者が激突しようとしたその時
「なんだ!?」
「あれは…アークエンジェル?」
港の隔壁を吹き飛ばして白亜の戦艦が戦場にその身を表したのであった。