青年の異世界珍道中〜ガンダムSEED〜   作:クロイツヴァルト

6 / 21
PHASE5

 

 

 「ミサカ少尉、今の現状がお分かりなのになぜこんな物を拾ってくるのですか!?」

 

 アークエンジェルに帰投したカイトだが、その機体が抱えている物をブリッジのメンバーが視認するのと同時に堅物軍人CIC担当のナタルが怒っていた。

 

 「そうは言うが、この電文見りゃほっとくわけにもいかんよ」

 

 そう言ってカイトは艦橋のサブモニターに先ほど機体側で受けた電文をナタルとマリューに見えるように映す

 

 「『こちらはジョージ・アルスター外務次官のご令嬢を乗せた救命ポッド。【紅蓮】および【エンデュミオンの鷹】の保護を要請する』」

 

 アルスターと書いてある一文にカイトもそうだがマリューやナタルも顔を顰める。

 

 「紅蓮ってカイトの事だろ?有名人は辛いねぇ」

 

 「フラガ少尉のエンデュミオンも呼ばれてますよ。それにしても寄りにもよってアルスター…か。穏健派だが結局はブルーコスモスの一員だ。様々なパイプを持ち、それを使ってコーディネイター排斥運動をする大きな権力を持つ人物だな。」

 

 ムウの言葉を聞きながら、カイトが苦虫でも噛み潰した様な表情で告げた言葉にマリューとナタルも同じような表情をする。

 

 「民間人にまで手を出す様なやつの娘が乗っているのですか」

 

 「致し方ないわ。ハルバートン提督のところまで連れて行って民間人の彼らにはシャトルで地上に降りてもらうしかないわね」

 

 ナタルの言葉にマリューは小さくため息を吐き、話は終わりと纏める。

 

 「連中はとりあえず20分はあそこで停留してくれる様だし今の内に距離を稼ぎたいところだな」

 

 「そうね。」

 

 「それにあの少年…キラ・ヤマトだったか。次の戦闘から乗ってくれるそうだ」

 

 「あんなに嫌がっていたのに?」

 

 「虫のいい話だな」

 

 カイトの告げた言葉に目を丸くするマリューと嫌悪感を出すナタル。そんな対極の様な反応をする2人を見てカイトは笑いそうになるが、そこは軍人として律して続きを言う。

 

 「本人が乗ってくれるのだから戦力が増えるのは喜ばしいことさ。本人も友達が乗って艦の手伝いをしているのにって悩んでたからな。ちっと発破掛けて本音を話してくれてな?それを聞いて俺はとりあえずは大丈夫だと感じたんでね」

 

 「そう、ミサカ少尉がそう言うのなら私からは特に言うことはないわ」

 

 「しかし、艦長!」

 

 「これは決定事項…艦長命令よ。」

 

 カイトの言葉に納得したマリューだが、ナタルがなおも食い下がるがそこは艦長権限で黙らせる。

 

 「ポッドの監視はフラガ大尉に任せて俺達は今後の方針を決めたほうがいいね」

 

 「というと?」

 

 「胡散臭いユーラシアの軍事基地アルテミスに行くか、最短距離でハルバートン提督率いる第八艦隊まで行くかの二通りだ」

 

 「そうですね、幸い物資の方は以前ヘリオポリスの食堂でミサカ少尉の進言通りある程度は余裕があるので民間人の分も含めても問題ないでしょう。しかし」

 

 「仮にアルテミスに行くとしてもこっちは秘密裏に建造した新造艦に新型兵器。しかも友軍識別コードが無い状態で入ればいろんな言い訳で拘束してこっちの情報は抜かれるな。その場合、機密もなにもあったもんじゃ無いだろうな。」

 

 「それは…」

 

 カイトの言葉に反論しそうになったナタルは口籠る

 

 「同じ地球軍だが、大西洋とユーラシアとでは仲が悪い。向こうからしたら鴨がネギ背負ってきた状態ってわけだから、俺としてはアルテミスに寄港するのは愚策と思いますね。」

 

 「…まぁ、そうね。あなたの言う通りかもしれません。では本艦はこのままヘリオポリスの宙域を抜けて第八艦隊がいる月方面へ最短距離で抜けます!各員準備をお願い!」

 

 「「了解!」」

 

 そして

 

 「艦長、フラガ大尉。少し良いか?」

 

 「ん、どうした?」

 

 「何かあったの?」

 

 「…ちょっとここじゃ話し辛い。艦長室で話できますか?」

 

 現在月方面へ向かうアークエンジェルは操舵のノイマン曹長とレーダー監視や連絡要員を残して交代で休憩を取っていた。そんな中でカイトは食堂で会ったムウと一緒にいたマリューに声をかけたのであった。

 

 「それで話と言うのは?」

 

 「とりあえずこれを見てくれ。」

 

 艦長室に入ったマリューがカイトに質問するとカイトは艦長室のテーブルに立体型の宇宙の簡易見取り図を展開する。

 

 「今、俺達はここ。で、少し問題なのが水が多少だが心許ない状態でな。進路上にユニウスセブンのデブリがあるから、心苦しいがそこから氷塊を回収して水の問題を解消しておきたい。」

 

 「ユニウスセブンか…」

 

 「墓荒らしみたいで申し訳ないが、こっちは生きているんだ。もちろん民間人に知られたら悪感情しか出ないだろうからな…もちろん少年達にも言わないし手伝わせないが、その分周囲の警戒をしてもらう事になると思うがそこは頼みます。」

 

 「確かにな、今の現状で十分な物資があると言えるが水不足なんかになれば問題が起きるだろうしな…わかった、俺とキラの2人で哨戒をしておく。カイトは悪いが水の確保を頼む」

 

 カイトの言葉に唸るムウだが、カイトの言う事にも理解はしているようで渋々だが同意する。

 

 「了解。なら早いほうが良いし、彼らに見つからないうちにささっと回収してとっととデブリ帯を抜けちまおう。」

 

 「そうね。ではミサカ少尉はホットスクランブルで水の確保をお願いします。」

 

 「了解した。」

 

 マリューの言葉に敬礼して返事をしたカイトはそのまま艦長室を出て格納庫へ向かう。

 

 「全く、俺より年下なのに頼り甲斐があるねぇ」

 

 「そうね、私達よりも大人に見える時があるくらいですからね」

 

 「あれ、ラミアス艦長まさか」

 

 「ひ、秘密です!」

 

 そんな一幕が艦長室で起きている中、カイトはすでにデブリ帯の中を進み牽引しているカーゴに氷塊を積んでいく。

 

 「ふぅ、ひとまずこんなもんか?」

 

 牽引しているカーゴ見るカイトだが

 

 「ん、なんだ?」

 

 何かに気付いたのかモニターとレーダーを駆使して周囲を索敵する。

 

 「こんな所に偵察用のジン…何かあるのか?」

 

 エレメントを組んでいるレドームを装備した広域索敵に特化したジンが周囲を確認していた。その様子を見てカイトは改めて周囲を確認するとデブリの間を漂流する1人用と思われる脱出ポッドが目に入る。

 

 「…あの様子からして要人を探している様だが考えても仕方ないか」

 

 そう呟くとカイトは機体の出力を戦闘レベルまで上げる

 

 「なんだ!?」

 

 「気づくのが遅い!」

 

 自機の近くに現れた熱源に驚くもカイトはそんな反応に意を介せずにライフルを二発、2機のジンのコックピットを撃ち抜き撃破する。

 

 「情報を持ち帰られるのはごめんなんでね。ま、友軍のシグナルが消えたからその内戦艦が出てくるだろうが今の内だな。」

 

 そう言ってカイトは牽引しているカーゴとは別に救命ポッドを手にしアークエンジェルへと帰投する。

 

 「…少尉、またですか?しかもこのタイプはザフトのものですよね?」

 

 「えーと、すまん。だが、推進装置も壊れている様だったから人道的というか俺の信条的に放置は出来なかった。」

 

 「はぁ、少尉のお気持ちもわかりますがそうホイホイと拾われてもこちらとしては困ってしまうのです。」

 

 「面目ない」

 

 「お二人さん、良いですか?開けますよ!」

 

 カイトの拾った救命ポッドの前に集まったアークエンジェルの面々に対して整備班長のマードック軍曹が声を上げる

 

 「えぇ、お願いします。」

 

 マリューの言葉に頷くとマードくはポッドのハッチを解放する。

 

 「テヤンデイ!」

 

 「は?」

 

 「ミトメタクナイミトメタクナイ!」

 

 「あら、あらあら?」

 

 ポッドから最初に出て来たのは球体型のロボットなにやら喋っているが意図が掴めずに呆然としているとさらに出てきた人物にカイトは先のジンの行動に得心する

 

 「連中が探していたのはこの子だったのか。」

 

 「ここは…ザフトでは無いのですか?」

 

 カイト達の目の前に現れたのは桃色の長い髪をなびかせ、白を基調とした服に身を包んだ少女

 

 「残念ながらこの艦は地球軍の物だ。まさか拾った救命ポッドにザフトの歌姫様が乗っているとはね。」

 

 「…貴方は、強いのですね」

 

 カイトの言葉に少女はカイトの目をじっと見た後にこぼした言葉に一瞬だがカイトは目を瞬かせる

 

 「なにを」

 

 「貴方の目がそう主張しているように見えたもので」

 

 そう言って少女はふいに流れるままにカイトに近づくとその頬に手を触れる

 

 「まるで見透かすかのように言うんだな君は」

 

 「申し遅れましたわ。私、ラクス・クラインと申しますの。」

 

 「俺は地球連合軍アークエンジェル所属のカイト・ミサカ少尉だ。…艦長、とりあえず本人が名乗ってはいるが身元がわかるまでは別の場所に移したほうがよろしいと」

 

 「え、えぇ、そうね。ミサカ少尉は彼女をお願いします。キラくんとフラガ少尉は付近に他のザフト軍がいないか警戒をお願いします。私達はブリッジに戻ります。ミサカ少尉も彼女を部屋への案内が終わり次第出撃をお願いするわ。」

 

 「了解!いくぞ坊主!」

 

 「あ、はい!」

 

 マリュー達やムウ達が行くのを見送ってからカイトはラクスを伴って比較的清潔に保たれている独房に向かう

 

 「すまんな、少し我慢してくれ。本人確認が終わればすぐに船室に移れるように上には掛け合っておく」

 

 「ミサカ様はお優しいのですね。」

 

 「優しくはないさ。君の言う優しいのであればこんな戦争になど出ていないだろうに」

 

 「そのような事は」

 

 「話は急に変わるが、君には婚約者がいるのだったか…確か名前はアスラン・ザラだったか?」

 

 「ご存じなのですね。」

 

 カイトの言葉にラクスが驚き、軽く微笑む

 

 「ま、正直な話だが男なら君のような美人を婚約者に持つのが羨ましいと思ったのさ。それに俺は個人的な物だが君の歌が好きだな」

 

 「ありがとうございます。ですが、アスランはよく贈り物をしてくださるのですけど…私のことをどうお思いなのでしょうか」

 

 カイトの言葉にラクスは最初は喜色ばんだ表情をするが、婚約者の話になると少し沈んだ表情を見せる。

 

 「さてな、俺はその婚約者様本人じゃ無いからそいつの本心はわからん…だがな、もし俺が君の婚約者なら嬉しいって思うがな」

 

 「ミサカ様…ふふっ、ありがとうございます。」

 

 「その様ってのはやめてくれ。背中が痒くてしょうがねぇ。呼び捨てでカイトって呼んでくれ」

 

 「ふふ、では、私のこともラクスとお呼びくださいな。」

 

 「全く、罪な子だね君は」

 

 ラクスの表情にこの世界を含めて結構な年に換算できるカイトであるがラクスの可憐と表現できる彼女の雰囲気に綺麗で可愛げのある表情を見て少し顔を赤てしまいそれを見られまいとそっぽを向くが

 

 「なにしてるんだ?」

 

 「ふふ、カイト様は照れ屋さんなのですね?」

 

 「冗談言ってんじゃ無いっての。ほら早く入って怪我しないように座って待っててくれ。」

 

 「ありがとうございます、カイト様。んっ」

 

 カイトにすすめられて独房に入る直前にラクスが振り向き様にカイトの頬にキスをする。

 

 「んなぁッ!?」

 

 「カイト様、どうか、ご無事で」

 

 「…全く、婚約者がいるってのに他の男に、しかも絶賛敵対中の連合の俺なんかの無事を祈るかね、普通」

 

 「連合やザフトは関係ありません。私は素直にカイト様の無事を祈りたいのです。カイト様はきっと強く優しいお人ですから」

 

 「全く…かなわんな、こりゃ」

 

 ラクスの無垢な瞳で見上げてくる様子にカイトは苦笑いする

 

 「…怖いのですか?」

 

 「いや、怖く無いっていうか…俺は人の死に慣れ過ぎちまったのかもしれんな。その辺の感覚は鈍くなってんのかも知れん。だからこそ俺より年下の連中が戦いに出て消えちまうのは怖いかな」

 

 「でしたら、私がカイト様の怖い理由となり楔となりますわ。」

 

 「どういうッ」

 

 先ほどラクスはカイトの頬にしたが今度は正面から正真正銘キスをしてカイトの言葉を遮る。

 

 「短いやり取りでしたが、私はカイト様に惹かれています。ですから私の存在がカイト様の心をお守りしますわ。」

 

 カイトから離れたラクスはのぼせた様に赤くなった顔のまま慈愛の籠った目でカイトを見上げる。

 

 「あー、くそ!」

 

 「カイト様?」

 

 ラクスの表情にカイトは片手で頭を掻きむしる。その様子を不思議そうにラクスが見ていると

 

 「きゃッ!?」

 

 「ラクス、俺は絶対に帰ってくるからまた話をしよう。」

 

 「はい、無事を祈ってお待ちしています。」

 

 今の感情が爆発しそうなカイトはラクスを抱きしめて、正面から彼女の顔を見ながら愛おしい者を見る目で語り、カイトは優しくラクスを独房の中に入れて念の為に鍵を閉めてそれを自身の内ポケットにしまうと格納庫へと向かう。

 

 「マードック軍曹、準備は?」

 

 「ミサカ少尉、万全でさぁ!いつでも行けますよ!」

 

 「発進するから足元にいる連中に退くように言ってくれ!」

 

 タラップを駆け抜けながらカイトは下にいるマードック軍曹に声をかける

 

 「了解!おい、お前ら!少尉の機体が動くからすぐにその場から離れろ!踏み潰されてもしらねぇぞ!」

 

 マードックの怒声を聞いて慌てて整備兵が退避するのを確認してカイトはカタパルトに機体を乗せる

 

 「ブリッジ、聞こえるか?」

 

 「はい、少尉出撃されますか?」

 

 「あぁ、多分だが連中がそろそろ来てもおかしくは無いし、そろそろ仕掛けてきてもおかしく無い頃合い」

 

 カイトがミリアリアと会話をしている所に敵の接近を知らせるアラートが鳴る。

 

 「っと言ってる側から来たか!ミリアリア」

 

 「はい、タイミングをミサカ少尉に譲渡します!」

 

 「了解、いい加減この鬼ごっこも終わりにしたいもんだね。カイト・ミサカ、ホットスクランブル出撃るぞ!」

 

 そう言ってカイトはスロットルとフットペダルを踏み込み、暗いデブリの漂う暗礁領域に飛び込むのであった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。