急に現れて意味深な事言って急に去っていく謎の美少女実力者ムーブをしたいTS系主人公 作:YTFY
「ふぅ……今日も疲れたな」
仕事により息が詰まってしまった私は、気分転換の為にシャーレビルの屋上へと来ていた。やっぱり、書類仕事だけだと疲れちゃうよねぇ……
「あー、風が気持ちいい」
そんな感じで、仕事の合間の休憩を行っている時、強い風が吹き荒れた
「うわっ!」
突然の強風により、思わず目を瞑ってしまった。そして、目を開けると目の前に少女が居た。
…………
え?
「……」
月明かりにより白銀の様にも見える美しい金髪に、無限とも思える程の色が鮮やかに混ざりあっているヘイローを携えながら、こちらに背を向け、彼女はいつの間にかそこに立っていた
「君は……」
思わず出してしまった私の声に、彼女はその肩をピクリと震わせ、こちらへ徐々に体を向けてくる
「っ……」
彼女が振り向いたことにより見えたその顔に、思わず息を呑んでしまった
夜空をそのまま映したかの様な黒を、空に浮かぶ星で飾り付けたかの様な美しい瞳。それがこちらを見つめていた
時間を忘れてしまう程に彼女の瞳に魅入ってしまっていると、ふいに、彼女が口を開く
「……もうすぐ、この地に災いが訪れる」
「え……?」
「分を弁えぬ道化により呼び寄せられたそれは、
彼女から発せられた言葉は、何かを感じた。それが何なのかは私にも分からないが、重要な事には違いないだろう……と。そう感じさせるには十分だった
「あなたには期待している。シャーレの先生」
「私?」
急にこちらへ向けられた言葉に対して、素っ頓狂な声をあげてしまう。そんな私の返事に、彼女は頷き、言葉を続ける
「あの子が自ら選び、全てを託したあなたなら、きっとあれを制する事ができる筈。それに、あなたは随分と……」
「?」
「……いや、何でもない。それに、そろそろ時間だ」
「時間?」
彼女がそう言うと、私の後ろにある扉が開いた。思わず目を向けてしまう
「せんせーい?そろそろ戻ってきて下さいよ。まだ書類は残っているんですよ?」
「ユウカ……」
扉を開けたのはユウカだった。おそらく、少し風に当たると言って抜け出した私を呼び戻しに来たのだろう
「…少し風に当たると言ったのに、20分以上戻って来ないんですから。まったく、1人で何をしてたんですか」
もうそんなに経っていたのか……ん?1人?
「いやいや、私は1人じゃないよ」
「何言ってるんですか?」
「いや、だってほら……」
あの子だって……と、そう続けようと振り向くと……いつの間にか、彼女は居なくなっていた
「あれぇ……?」
「……連邦生徒会に、もう少し書類仕事を減らせないか相談してみますね」
「え?……い、いやいや!疲れて幻覚を見たとかじゃないから!」
「良いんです、先生。正直私もあの量は多すぎると思っていたので」
「違うよ!本当にさっきまで居たんだって!」
「大丈夫ですよ、先生。私、頑張りますから」
「違うんだってぇ!」
◇◆◇◆◇◆
とある町外れの廃ビルに、1人の少女が佇んで居た。その立ち姿は、差し込む月明かりも相まって、神秘的な雰囲気さえ感じる程だった
「ふふふっ……あっはっはっはっはっは!始めてにしては良い感じに行けたんじゃないか!?」
……が、口を開けばそんな雰囲気は一瞬にして霧散する
「くぅ〜!やっぱり突風は意味深な事を言う謎の少女にはなくちゃ駄目だよな!いやぁ!我ながら素晴らしい考えだ!」
自分の独り言に対して自分で反応している様は、先程までの雰囲気とはまるで違う、どこか哀しき生き物に見えさえした
「はぁ〜……今まで頑張ってきて良かったぁ」
座り込み、満足気に天井を見上げそんな事を呟く少女。彼女がこんな変な事をしているのには理由があった
彼女は元々男性だった。元々……と言ってもこの世界では無く、前の世界。即ち前世では彼女は男性だったのだ
彼の人生は、一言で言えば空虚だった。何か特別不幸な訳でも無く、特別幸運な訳でもない。何か夢がある訳でもなく、生きる為に生きている様な、そんな人生だった。だが、そんな彼に、1つの夢ができた。それは……
『急に現れて意味深な事言って急に去っていく謎の美少女実力者ムーブしてぇなぁ』
という物だった。何がきっかけだったのか、何が彼をそうさせたのか。それについてはよく分からないが、ただ1つ言えるのは、そんな事は無理という事だろう
……だが、そんな彼もいつの日か事故に巻き込まれ死んでしまった。無理な夢を抱いた空虚な男の人生は、呆気なく幕を閉じた……筈だった
次に彼が目を開けた時、そこは彼が知っている世界とは違っていた。そして、自身の姿さえも。そんな事になってしまった彼は最初に何を思ったか。それは……
『あのムーブできるくね?』
と思ったのだ。そこから、彼……彼女は頑張った。『急に現れて意味深な事言って急に去っていく謎の美少女実力者ムーブ』をする為に……