防御魔法はオーバースペックくらいがちょうどいい!! 作:あめざり
リヒター先生の魔法史授業から着想を得た
やるなら多分アウラ編と一級試験まで
『防御魔法』
それは魔法における基礎も基礎、命を守る最低限の常識である。
魔法使いの戦いとは例えるならば騎士だろうか?防御魔法という名の盾で攻撃を防ぎながら、攻撃魔法という名の剣でトドメを刺す……違う点があるとすれば魔法か物理かくらいだろう。
だが防御魔法は簡単な術式でなければならない。
敵の攻撃を防ぐための魔法に、敵の攻撃を防ぐ以上の効果は必要ないのだ。だからこそ魔法史にはこう書いてある……『攻撃魔法の進化に追いつく形で防御魔法は進化した』と。『防御魔法の進化に追いつく形で攻撃魔法が進化した』訳ではないのだ。
故に……現代の魔法使いには癖がある。
一つ目は『防御魔法を疎かにしてしまうパターン』、二つ目は『防御魔法に頼りすぎてしまうパターン』だ。
前者は守りが足りず、後者は魔力が足りない……ならば、だ
もし『防御魔法がオーバースペックなら、そしてそれに値する魔力があれば最強では無いか?』
私はその馬鹿みたいな理論を完成させ、それを試すため旅に出ようと思う。
約2000年間進化を続けた防御魔法を携えて……
歩き始めて30分、私はバテていた。
魔法の研究してる奴あるある第一位は大差で『すぐバテる』だ。共感してくれる人は多いだろう。
それに問題二つ目、迷った。
先ほども言ったように体力が皆無な私はめちゃくちゃ軽装でここまできた訳だが、そのおかげで目的としている都市の方向が分からない。だからどこかしらで質問できそうな人が居ないか彷徨っているのだが……ん?
遠くの方に風車が見える……風車あるところに村ありだ!!行こう!!
さて、長い間歩いてようやく村まで来た訳だが……想像していたよりもはるかに大きな村だな。情報と装備が整うまでここで居候しても良いかもしれない。
「おや……?お客人ですかな?」
「ええ、お恥ずかしい事に道に迷ってしまって」
ほんわかとした老人と軽い挨拶を交わし村の門をくぐる。
私は初めて訪れた村の空気が好きだ。今までいた草原とは隣り合わせなのに全く違うような雰囲気がある、人の匂いと生活のある場所だから……
「ここは大きさの割に人が少ないですからな……ゆっくりしていってください」
「では少しの間ここに滞在することにします。ですが何もしない訳にはいきませんので、何か困り事があったら何でも手伝いますよ。こう見えても熟練の魔法使いですので……」
「……そう言う事でしたら少し頼みたい事がありまして」
さっそく来たな!こう言う依頼は人からの信頼を勝ち取るチャンスだ。しっかり解決してしっかり報酬を掻っ攫おう。
「……実はこの村は魔族に支配されているのです。その元凶を討伐していただきたく……」
人が少ないのはそう言う理由か。見つけた人間を狩るよりも牧場を作ってしまった方が早い……所詮は魔族の考えることだな、倫理観なんてものがまるで無い。
「それは気の毒に……ですが安心して下さい。もうその魔族によって支配される事はありませんので」
「おお!ありがたい……奴を討伐した暁には、村1番の大きな宝石を差し上げましょう……!」
「って経緯でここに来た魔法使いだ。とりあえず君は殺す、その後死体蹴りでもしてあげるから安心して」
「……一つ問う、貴様は何故ここに居る。我を殺そうとするのだ」
「……?いま言ったでしょ?村の人が困ってるから君の牧場をぶち壊しにきた」
「そうでは無い、何故"貴様の様な存在"が我を殺しにくる?重要なのは理由では無く貴様の……
「いいから始めよう。私も戯言に付き合ってるほど暇じゃ無いから」
「……良いだろう」
私は取り出した杖を相手に向ける。だがそれよりも相手が魔法を放つのが早かった様だ。
魔法戦において、杖無しと杖有りの差はコレ……魔法の発生速度、と言うより取り回しだ。魔法使いは基本、杖を体の一部の様に扱える事が前提となるのだが、私の本業は研究者なもんで……知識ばっかりで実戦は慣れてないんだ。
だが、そんな私が勝てると確信する理由……それが私の研究した魔法『
だって『万物を防げる』と言ったら嘘になるし、『大体なんでも』は思いついたがもっと馬鹿っぽい。とにかく!この魔法を使いさえすれば……
「防がれた!?防御魔法は質量攻撃への耐性が低いはず……」
「残念ながら、山並みの質量じゃ無いとヒビも入らないよ」
私はゆっくり、ゆ〜っくりと相手の方に歩いて行く。もちろんシュエルブルムは全面展開、コスパは悪いがそこは何とか長命魔力で補ってる。
「ほらほら、早く破らないと負けちゃうかも……」
「……舐めるな!!」
甲高い金属音と共に地面を擦りながら巨大な斧が飛び出す。どうやら魔法を使う事で手で持たずとも武器を振れる様だ。
私はその斧に見事クリーンヒット、せっかく近づいたのに大きく吹き飛ばされてしまった。
「肉弾戦もできるんだ……」
「貴様の防御魔法がどれほどなのか試してやろう!!」
リーチ無視の武器相手だと全面展開は動きにくい……それなら斧の軌道上に事前展開、その隙に刃の内側まで潜り込む!
私が駆ける時の足音はシュエルブルムと斧の衝突音でかき消され、衝突のたびに鈍器の様な鈍い轟音が響き渡る。
足元への薙ぎ払いにも、脳天への振り下ろしも、胴体への振り上げさえも弾き防ぎ距離を詰め続ける……
クソ……クソクソクソ!!
何故当たらない!?この女は未来を見ているとでも言うのか!?
おまけにあの防御魔法……いや違う、あれは完全に別物……防御魔法に似た何かだ……
『山並みの質量じゃ無いとヒビも入らない』とは本当だったのか?巨岩を砕く程の一撃が軽々と防がれている。実際ヒビの一つすら入っていない……だが勝機はある……!
奴もだんだんと防御の正確性が低くなっている……つまりこのまま攻撃し続ければいつかは……いや、その前に射程外に潜り込まれるのが先だな。
……!この一撃、奴は防御魔法を展開していない……!?
魔力切れか?なるほどな、よほど魔力消費の激しい魔法だと見た……ならばこの一撃で、胴体を両断してくれよう!!
直後繰り出された一撃はシュエルブルムを軌道上に持たない……つまりはクリーンヒットが確実なものだった。予想通りその一撃は腰辺りを始点に一刀両断し、そして……斬られた体は"幻影の様に消えた"
(……?何が起こった……?何故我が地に伏せている?……いや……これは……我の首が飛んでいるのか)
「やっぱり魔族相手は楽だね。魔族ってのは魔法使いが魔力を消して不意打ちするなんて微塵も思わないし、ましてや幻影を使ってだなんて卑怯な発想考え付くことすらないんだから」
「ハハハ……何を今更……貴様も、生まれた時から知っていたであろう」
「なあ知ってるか?魔族って色んな種類が居て、その中には人の姿をした奴も居るらしいぜ?」
「本当だったら怖いなぁ……ボクの近くにも魔族がいるかもって思っちゃうし……」
「こうやってツノ生えたやつが『魔族だぞー!!』って脅かしてくるのかな?」
「でもそれより……ボクは斧を持った魔族の方が怖いよ……」
「確かにな〜あっ、だけど噂によるとさ、外から来た魔法使いが討伐してくれたらしいぜ!」
「えっ本当!?その人に会ったらお礼しなきゃ……『村を救ってくれてありがとう』って」
「どんな見た目なんだろうな……?やっぱカッコイイ杖とか持って……」
ドカッ!!
「いたた……ご、ごめんなさい……」
「大丈夫だよ坊や、謝らなくて良いよ」
「……その杖、もしかしてお姉ちゃん魔法使い!?」
「そうだよ〜ちょうど魔族を倒して帰ってきたところなんだ」
「じゃあお姉ちゃんが村を救ってくれた英雄なの!?ありがとう!!」
「そんな凄いことをした訳じゃ無いよ。私は報酬に目が眩んだだけの汚い人間だからね」
「報酬って何?村に伝わる伝説の剣とかでっかい宝石とか!?」
「それはね……」
突如、強く冷たい風が吹いた。
私のフードが取れる。
「…………え、お姉ちゃん……そのツノ……」
「……っ!!おい逃げ……」
グチャッ
「…………」
「ダメじゃ無いか、英雄サマを怖がっちゃ」
「……お姉ちゃん……魔族だったの……?」
「うん、坊やの見た通り、ツノの生えた魔族だよ」
「じゃあ何で……斧の魔族を殺して……村を助けて……」
「資源調達のついでと暇つぶしだよ。あと食べ物も」
「じゃ、じゃあ……村のみんなは……」
「半分殺して、もう半分は食べちゃった。そこにあるもう1人の坊やは前者だね」
私は男の子に背を向け、村を去ろうとする。
「君は殺さないでおくよ。この村の全員の無念を背負って、せいぜい私と戦えるくらいにはなってくれ」
そうだ、日記に綴っておかないと……
私の名前はアルプトラ
無名の大魔族だ
いつかキャラデザ載せます
遅筆なので完結後になるかも知れないしすぐ出せるかも知れない