拝啓 ムシの国へご案内   作:ゑりおっと

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初めまして、ゑりおっとです。

設定集を書いたりHollow Knightをプレイしている間にアイデアが膨れ上がったため元々書こうとしていたブルアカの別のクロスオーバーものよりも先に出来てしまったため、決心のためにも公開した次第です。プロットが出来たところまでは定期的に更新するよう頑張ります。


開演

滅びゆく世界で、彼らは敬いと悔いを込めて私を呼ぶ

 

私の我が儘で夢に蒙昧する彼らの魂を、救おうとした

 

魂を焚べ、我が子を贄に、私の国は栄えた

 

屍の上に成り立った事実を知った時

 

君は私を罰する資格がある


 

 学園都市キヴォトス。その中央にそびえ立つサンクトゥムタワーの上階にて、いつものように執務と書類に追われている大人がいた

 

“しごと……うめ…うめ…”

 

『せ…先生、そろそろ小休止を入れるべきでは…』

 

“きょうのごはんはチンギスハーン”

 

『いくらなんでも無茶です!アリウス分校の処遇やミカさんの公開尋問と立て続けに忙しいこともあったんですから少し休むべきです!休暇は逃げませんから!……でもサインや記入箇所には一切不備は見当たりませんね。まさか無心でこれを…?』

 

連邦生徒会捜査部シャーレ(S.C.H.A.L.E.)の顧問「先生」は先のエデン条約の動乱を一段落し、D.U地区に戻ってきて得られたのは束の間の休息ではなく、トリニティゲヘナ以外から送られてきた山のような書類であった。本人曰く“撃たれた傷は3章と4章の間で大体治っていたからね!”とのことのため、疲労困憊のなか業務に取り掛かろうとしたが、先のごたごたの事情も連邦生徒会の方で把握しており、先生がトリニティに行っていた間に舞い込んできた書類を片付けた後は二週間の長期休みが約束された。

 

それを七神リンから聞いた彼は死にものぐるいで、モンゴル帝国の初代皇帝を昼飯にするという頓痴気な言動をするまで摩耗しようとも、時々自身の状況説明を実況するアロナと共に、すぐに終わらせようとしていた。ちなみに本日はどの生徒も奇跡的にそれぞれのテスト期間や部活動での遠征等々が重なり、当番が一人もいない。先生がシャーレの顧問就任直後には珍しくない光景であったが、現在、その違和感を覚えるべき二人は書類に悩殺されていた。

 

『ああ…また妖怪MAXの栓を空けちゃいました。これにて先生の連続エナドリ飲用率が過去最多記録を12時間ぶりに更新…あれだけあった書類の山も残すところ両手で数えられるだけになりました。これが休みに飢えた大人の力…!』

 

“このまま最後までフルスロットルで行くぜ行くぜ行くぜぇ!うおぉぉぉぉ!”

 

『これ終わったら絶対に寝てもらいますからね!フレー!フレー!せ・ん・せ・い!』

 

〈教師仕事中…〉〈少女応援中…〉

 

暫くして、すっかり西日が差す時刻になった頃、その時はやってきた

 

“お…”

 

『お…』

 

“『終わったああああ!』”

 

“よし!終わったぞ寝れるぞ遊べるぞ!”

 

『これでリンちゃんに言われたタスクも完了しましたね!それはそうと寝ましょう!スーツのままでは後々の洗濯が大変になるので着替えましょうね。』

 

“いやぁ、作業中はどうなるかと思ったけどなんとかなるもんだね…”

 

『では私の方で連邦生徒会向けの作業終了の報告を行いますので、先生は休んでください』

 

“うん、おやすみ。アロナ”

 

『おやすみなさい!さぁて休みはどこに行こうかなっ☆』

 

大あくびをしながら流れるようにシャワー室へと消えていく先生。シッテムの箱内で2週間何をしようかうきうきでスイーツカタログと旅行ガイドブックを開くアロナ。これから彼らはどこで何をするのか、それは誰にもわからない。

 

連邦生徒会調停室…岩櫃アユムの部下の一人が封筒を持って部室に入ってきた。もっともこの時点で、先生とアユムに面識は無いのだが、書類を持ってきてくれる部署として調停室のことを認知していた。

 

「ちわーす、先生宛に郵便でーす」

 

“取り込み中なのでそのまま机に置いてくださーい”

 

「はーい」

 

 

 


“にしても手紙か…”

 

『伝統を重んじるトリニティでも、連絡手段としての手紙はほぼありませんからね…』

 

シャワーを浴びている最中に届いた一通の手紙。表には万年筆で書かれたと思しき文字で『先生へ』と書かれているだけで、それ以外この封筒には文字が無かった。雪のように純白な封筒に箔押しで飾られた模様はシンプルながらも気品を感じるものであり、トリニティやゲヘナとも違う様式の文様は新鮮さを覚えた。

 

“宛名は…書いてないね”

 

『普通であればどこかに書いているはずなのですが…とにかく確認してみましょう』

 

…………

 

 

お初にお目にかかります。日が経つにつれ段々と冷え込む頃となりましたが、貴方様にはお健やかにお過ごしのこととお喜び申し上げます。さて、突然ながら私共は新たな学び舎を開校することとなりました。先のエデン条約動乱での貴方がたのご活躍は、両自治区やDUからも離れた私共の耳にも入る程です。つきましては来る9月8日午後1時より、開校を記念いたしまして式典と祝賀会に招待致します。貴方様には是非とも我が校やハロウネストの地を堪能いただけると幸いです。ご参加頂けた際には此方から直接お出迎えしますので、どうぞ御一考の程をよろしくお願い致します。

 

敬具

 

ハロウネスト総連合学院生徒会一同

 

追伸

参加のお返事は以下のアドレスからご連絡ください。また他校からの生徒様方の同行も大歓迎ですので、その場合も御返信に記載して下さい。

 

[email protected]

 

 

 

…………

 

“アロナ、この学校って…?”

 

『私も初めて聞く学校ですね…あ、どうやら本当につい最近出来た学校みたいです。』

 

シャワーも浴び終え、寝ようとしたところに届いた一通の手紙。手に取り読もうとしても眠気の方が勝ってしまい、現在は仕事を終えた次の日の午前中。謎の手紙の件でアロナと会話もしているため、現在はサンクトゥムタワーの地下室にて談合していた。

 

連邦生徒会のデータベースに登録されている学校の一覧、手紙に書かれた学校の名前は確かに存在した。しかし登録受理され、リスト入りしたのがつい一週間前。先生が丁度アリウスと共にベアトリーチェを撃破した日という文字通りの新参学校であった。

 

『学校がある場所は未開拓の山岳地帯でした。水晶の採掘地として期待されていたらしいのですが、当時存在していたどの学園からも遠くに位置しており、遠征隊も度重なる事故やトラブルにて何十年も放置されていた場所です。何より…』

 

“他に何があったの?”

 

『当時の遠征隊が、連邦生徒会に提出した活動記録には『山に近づけば近づくほどに怖くなっていった』とあり、生徒さんの気力が山に辿り着く前に無くなったそうです…。』

 

“遠征で疲れたとかじゃなくて…?”

 

『それもあるかもしれませんが、学生だけでなく、大人が仕切っている企業主体の調査隊でも同じ事態が発生したため、現在あそこの知名度はほぼ無いに等しく、知ってる生徒さんはそれこそ最近知り合った古書館に居るウイさんや歴史に詳しい方しか居ないかと…。』

 

“…あ、ネットにホームページがあるね”

 

『本当ですね…わっ、凄いですよ!この学校自治区内に温泉や歌劇場、パティスリーもあるんですって!』

 

“リゾートを主にした学校なのかな…?でも部活内容に偏りはない…。文化系、運動系どれも選り取り見取り。まさに総合学園って感じだね。”

 

よくある学園の紹介ホームページには、設立の経緯、カリキュラム内容や部活動紹介の他にも観光スポットや自治区内ツアーの案内、そして一際異彩を放つ生徒が制作した美術品や刀剣の購入サイトに繋がるというリンク集だった。

 

“それにしても刀剣、美術品かぁ…”

 

『美術品は出回ることがあっても、現在でも制作されている場所はキヴォトスでは非常に少ないので、学校を挙げて宣伝するとなると相当自信があるみたいですね。ワイルドハントは芸術学校、ですが殆ど個人や部単位で作品を販売していますし…学校を挙げてというのは凄いことですよ』

 

これから休暇だと云うのに「先生」として招待された。通常ならば休みを返上して来賓として学校の視察をし、その報告を連邦生徒会に行う業務となるだろう。しかし行き先は温泉に芸術、説明には無かったが写真にちらりと見えた美食と休暇を過ごすにはうってつけの場所。何より手紙には生徒会長が「堪能してほしい」と明言している。

 

であるからして、彼は迷うことなく決心した

 

“二週間、ハロウネストで観光だ!”

 

『了解です!早速メールに返信しますね!』

 

“あ、そうだ。”

 

“暫く休むからシャーレのSNSで告知しておくか”

 

“他にも休みの間頼める子にも一応連絡を…”

 

連邦生徒会長がいなくなっただけで校内の治安は悪くなった経緯もあり、先手を打つことにした。シャーレが機能しなくても支障をきたさないように、予めシャーレ所属の生徒が対応に回るというものだ。普段から先生の書類仕事や事務、時には不良の鎮圧を共にしてきた彼女たちであれば問題ないだろうと見ていた。勿論臨時当番はタダではなく、業務によって適正賃金を支払うつもりだ。もちろん、交通費と弾薬費も別払いである。

 

“よし、投稿完了…って早速か”

 

プルルルル、と先生休暇の投稿をした数秒も経たないうちに、デスクに備え付けている固定電話に着信が入った。

 

“はい、連邦捜査部シャーレです”

 

『あ、先生!こちらクロノススクール報道部の川流シノンです!早速ですが先生の休暇の件で取材宜しいでしょうか!』

 

“だよねー…”

 


 

ハロウネスト総連合学院 生徒会塔「白の宮殿」王の間

 

「ウィルム、早速先生からの返信が届きました。ご出席されるとのことです、こちらを。」

 

「ご苦労、レディ。…うむ、ひとまず先生殿に認知してもらうことは達成したな。」

 

壁も床も椅子も、調度品でさえ白で統一された豪奢な場に、これまた純白の制服に身を包んだ二人が待ち望んでいた相手からのメールの到着と、その内容に喜んでいる様子であった。

 

一人は部屋の最奥の真ん中、一際高い場所に尊大な椅子…玉座に腰を落ち着かせ、タブレット端末で共有された文章に目を通す。もう一人は玉座の傍らで時折携帯端末を操作しながらも、忙しなさは一切見られず、指先一つの所作から洗練された優雅さを保っている。

 

「ようやく、ようやくだ。」

 

玉座に座っている女性が虚空に手を伸ばす

 

「今度こそ、全てに繁栄を与えよう。」

 




本小説における王様やその他これから出てくる予定のハロウネスト住民の方々はかなり独自解釈が入っているため、そこだけは留意しておいてください。あのゲームの台詞付きNPC殆ど老成していてJCJKって感じじゃないので…。虫年齢換算するとしたらマジモンの思春期女子ってホーネッちゃんとブレッタちゃん、マイラちゃんくらいしかいないのでは。グリムも精神年齢高めだし。なんなら台詞がないキャラクターもいるので……。こんな調子で今後も続けられると良いなと思う深夜時。

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