では開始前に一つ。これを含め掲載小説は完全な道楽でやっているものなので、何の予告もなく編集が入ります。主に自分で気がついた誤字脱字や、読み返して自分で気に入らない表現方法だったりと読んでいただけている皆様にはご迷惑をおかけするかもしれませんが、ご了承いただけると幸いです。
最後に一つ、今まで表記ブレがあり肝心の学校名が決まりかねていましたが、正式名称は「ハロウネスト総連合学院」で確定させて頂きます。
9月7日昼頃 サンクトゥムタワー 玄関前
「いやー、まさかシャーレに所属している生徒を差し置いて私達が先生と同行できるとは!しかも密着取材だけじゃなく!新たなスクープが発掘できそうな未知のエリアにまで行けるなんて帰ってきたらミサイルでも降ってくるんでしょうかね!まあ知る権利のためなら例え火の中水の中草の中森の中、あの子のスキャンダルだって飛び込んじゃいますけどね!ね!!」
「まあまあ先輩、独占取材に加えて式典の撮影と報告まで任せられて舞い上がるのもわかりますけど初めて訪れる場所、人が多いんですからファーストインプレッションは慎重に、ですよ。」
“ふたりとも、もうすぐ時間になるからね?”
「「はーい!」」
「……騒がしいなぁ」
元気よく返事をする二人は、クロノスジャーナリズムスクールの報道部に所属している記者の風巻マイと、レポーターの川流シノンだ。シャーレの休暇発表の投稿をした際に真っ先に部室に飛び込んできたのがこの二人であり、突撃取材と共に出てきた初耳の土地は、ジャーナリストである彼女たちの好奇心を膨れ上がらせ、密着取材と共にセレモニーの同行を志願した。
普段彼女たちの素行を見ればマスゴミ一歩手前の所業をやらかしている学園所属の爆弾2つと共に行動などリスクが高く、同じ生徒であれば真っ先に拒絶するだろうが、そこはみんなの先生。快くとは行かなかったが悩んだのはそこではなく周りに迷惑をかけないかの心配であり、付き纏われること自体の不快感は一切抱いていなかった。
もう一人はミレニアムサイエンススクールのヴェリタス所属の小鈎ハレ。撮影機材のメンテナンスエンジニアとしてハッカー集団ヴェリタスではなく、ハレ個人の仕事として報道部に雇われたのだった。
“なんかごめんね、ハレ”
「ううん、大丈夫。外に出るのは億劫だけど仕事だし…。」
いつも以上に口数の少ないハレ。それもそのはず同行している二人はヴェリタスもとい「ハッカー」という言葉のイメージを大きく損ねたヘイトスピーチ染みた記事を書いた学校の所属であり、自分だけでなく仲間たちまで悪く言われる原因となった彼女たちと打ち解けるというのはかなり難しい。それに相手は報道部。どんな発言が切り取られて世間に広められるか分かったものではない。
「まあ安心して下さいよ、ハレさん。いまのあなたは私達のビジネスパートナー!もし私達のカメラやマイクがおじゃんになった時に頼りになるお方ですので無関係の方を巻き込むことはしませんってば」
「実際いつもお世話になっていますしね、撮影ドローン。あれのお陰でカメラ写りの手ブレやシャッターチャンスを逃すこともなくなりましたから!」
彼女の傍らでふよふよと浮いている丸型ドローン中心に目玉のように配置された大型カメラ。クロノススクールの校章が付けられているがパーツの分割線にちょこんとミレニアムの校章も付けられている。マイの口ぶりから、これも彼女の発明品のようだ。
「あ、そうこうしているうちにらしい感じの車が来ましたよ」
“わぁ…リムジンとか間近で初めて見た…リムジン??”
ブロロロロ、と活気の良いエンジン音を立ててこちらに向かってくるのはセレブが乗っている車のイメージとして真っ先に挙がるであろうリムジン。しかしハリウッドスターの授賞式や映画の中のセレブたちが乗っているようなそれではなく、オフロード車をそのまま引き伸ばしたような、四角くゴツゴツとしたフェイスが特徴的な「ハマーリムジン」と呼ばれる車種であった。
その場に居た誰もが呆然としているなか、ピタリと先生たちの前に停車し、運転席と助手席のドアが開かれた。
扉から出てきたのは二人。緑色の髪をたなびかせ、おっとりとした顔つきを見せるも、立ち姿には一切ブレが無い、純白の制服に植物の刺繍が施されたセーラー型の制服を着ている。そして先生が目に入ったのは円状に並べられた6つの楕円を茨の環で囲まれたヘイローを浮かばせた少女。
もう一人は、紺色のスーツをがっちり着こなし、茶髪をショートにざっくりと切り揃えられ、点対称に配置されたカブトムシの角2本が円に囲まれ、それそのものが車輪に見えるヘイロー浮かべた固い印象の少女が一行と対面した。そして、落ち着いた印象の少女が口を開く。
「この度は私共のご招待に快いお返事頂き感謝しております。本日移動までの案内を務めさせていただきます、
「運転手の交通部部長、
「以後、お見知りおきを。」「よろしく頼む」
二人が最敬礼の斜め45度の位置で数秒止まり、顔を上げた。
「さて……ショウさんったら固すぎじゃありませんか?丁寧に、とは言いませんがいつも通りの気さくさを出して下さいよ。」
「仕方無いだろ、普段着ない一張羅に普段乗らないマシン。せめてどっちか片方を普段通りにしてくれると嬉しいんだがね。」
「これは先生が最初にハロウネスト学院とはどんなものかを印象付ける大事な式典なんですから、そこのTPOは弁えないと我が君に恥を欠かせることとなりますよ?」
「ちっ、わーったわーった。えーコホン、悪いな先生。普段走り屋をやっているお陰でこういう性分なんだわ。その辺り分かってくれるとこちらとしてもありがたいがどうかね?」
「走り屋って…あなた学園の交通機関組織のトップでしょうに…。」
“大丈夫、気にしていないよ。”
「ほれ、先生殿もこういっていることだし良いよな?五大騎士様?」
「ちょっと、その名前をあまり出さないでください!…はっ申し訳有りません、ただいまお荷物の方預けさせて頂きます。」
「間違ったこたぁ言ってないだろ。これから長~いドライブになるんだから、そこの話題作りも大切だぜ?」
丁寧な所作の礼は何処へ行ったのだろうか。周りを置いてけぼりに話を進める二人。ショウがイズマをからかい口を尖らせながら、先生達の荷物をトランクに移動させるのを余所に、ショウは後部席の前へ移動しドアを開く。
「さあさ、待っているのにも疲れたろ。とっとと中に入っておけ。自慢じゃ無いがこいつの座り心地は快適だぞ!」
ショウが豪快に、しかしドアの開閉によって生じる風圧をもてなす客人に浴びせることの無い絶妙な力加減で、それを開いた。
「おぉ…これはまた豪華な…」
「冷蔵庫付き…あ、妖怪マックスが入ってる」
「これぞまさにセレブリティ!お世辞抜きでワクワクしますね!」
無骨な外観とは裏腹に、内装は白革のシートにロイヤルブルーの天井とファーが施され、ゲスト同士が団欒できるようぐるりと内周を囲っている。元がオフロード型の車のため天井も高く、腰を低くしながら乗車するのは身長2メートルを超えた巨漢くらいなものだろう。開放感溢れる空間は快適そのもの。運転席と客席の間には間仕切りがされており、プライバシー対策も万全だ。
“ハレ、早速冷蔵庫を開けないの…ここの飲み物とかは全部自由に飲めるの?”
全員が乗り込んだことを確認してから、ショウは運転席へと戻っていった。
一方、丁度乗り込んできたイズマは先生の疑問に対し、広い後部座席の先生とは向かい合わせとなる位置に着席しながら答えた。
「はい、勿論。冷蔵庫内にある飲み物や軽食は全てご自由に召し上がって下さい。特に軽食はわt…うちの子達が腕をふるって作ったものですので寧ろこちらから勧めたい程です。」
“そっか、ありがとうね。”
“?…うちの子ってどういう”
「あっ…」
恥ずかしそうに口を押さえるイズマ、ショウの砕けた雰囲気に揉まれたのか素がでてしまったようだ。
「お恥ずかしいことながら…私、料理部の部長も兼任しておりまして、初めて外の方に私達の料理が振る舞えることに舞い上がってしまい…お目汚し失礼いたしました。」
“そんなことないよ”
“寧ろその説明を聞いて食べてみたくなった”
「!それは左様でございますか!ありがとうございます!それでは早速こちらを…」
冷蔵庫から取り出されたのは少し大きめのサイコロと同じサイズのミニケーキの盛り合わせだった。予めピックが刺されており、ブラウンのチョコレート、桃色のベリームース、白のレアチーズ、緑のピスタチオタルトと彩りも申し分ない。揺れる車内でも零さずに食べられるように工夫された一品だ。
「では私から………ほほう!冷蔵庫に入っているためクリームやスポンジが冷えて固くなっているかと思えばそうでもなく、ひんやりとした食感から徐々に人肌に馴染んでとろける舌触り!味も以前取材で頂いたトリニティの老舗ケーキと比べても遜色ない!凄いですよこのケーキ!レベルが高すぎます!」
「美味しい…!」
「なめらか…!」
“…凄いね!”
レポーターの職業柄が出ているシノンが懇切丁寧に食レポをしているが他3人は口の中に入ったものの出来が、今までに食したことのない上品な味であったため言葉も出なかった。人は本物の美食に出会った時、美味しさに対しはしゃぐのではなく黙ってしまうものである。
「それは真でしょうか!腕をふるった甲斐があるというものです…!っよし!」
各々の反応を見てガッツポーズを決めるイズマ。料理人としての腕を褒められ案内人としての粗相を指摘するような無粋な真似をする者はこの場にいなかった。
『いいなー、俺の分も残してくれよ。』
どこからかショウの声が響く。運転席のパーテーションに目立たない位置に配置された車載スピーカーからだ。
「あ、ショウさんの分はありませんね」
『おいおい美味そうな食レポは聞こえてくるのにお預けって…んな生殺しあっかよ!』
「まあセレモニー後の食事会でも同様のものを出すようにはするのでその時のお楽しみにということで」
『そういうことならなら我慢すっけどよぉ…お前さん方、食べ終わったか?そろそろ出すぞ。』
「OK」
「どうぞ出して下さい!」
「よろしくお願いしま~す。」
“ということだから、お願いします。”
『ほいほい、ァでは~、ハロウネスト行のリムジンがァ発車致します。揺れることはあまりございませんが、不測の事態ではシートベルトの着用をお願いしまっす。それではァ、ア発車致します。』
“…ショウってバスの運転手さんか何か?”
「バス…では無いのですが、まあ、はい。あの喋り方の方が仕事をしている気分になるとかそういうことにしてもらえると……。」
高級車とはかけ離れた庶民的な公共交通機関のアナウンスと共にリムジンはゆっくりと発進し、一行にとって未知の土地へと向かうのであった。
□ハロウネストの部活動1
・給食部
日常的に校内の食に関する部分を担当している。メインスタッフ20名、補佐100名程度で学生だけでなく一般の市民も食堂利用するためランチタイムは文字通り火の車となる。また、今回のような催事の際にはパーティー用の料理も担当するため料理の技術力や給仕を行うための相手に不快感を抱かせない所作も高く求められるため、入部するにはそれなりの覚悟が必要とされている。
□ハロウネスト総連合学院生徒紹介1
・緑川イズマ
2年生。五大騎士のオカン枠。元給食部部長を兼任しており、現在でも厨房に立っている。また外交担当でもある苦労人枠。騎士の中では一番戦闘力が低いが参謀やメンタリストとして、欠けてはならない存在である。余談だがハロウネスト生徒会内だと一番ないすばでーである。元ネタは五大騎士のイズマ。
・阿見駆ショウ
3年生。交通部最年長にして最高の■■■乗り。とにかく自分で乗り物を運転することに拘っており、大型輸送手段である電車や飛行機、船嫌い。客としてそれらを利用する位ならバイクや車で走り、セスナ機で空を舞い、ジェットスキーやヨットで海洋を踏破する現代に生きるには難儀な性格。バスやチンチン電車(1両編成の路面電車)は許容範囲らしい。元ネタはホロウナイトプレイヤーだったら絶対にお世話になるファストトラベル要員のあのムシ。