さて今回はキヴォトスに突如生えたハロウネストについて、生徒から見た視点での説明回です。
「さて…移動している最中で私達の土地…ハロウネストについて語りましょう。」
「ホームページ等でも記載されていますが、私達が住む土地はかつて、多くのキヴォトス人が探索に挑んだものの、努力も虚しく踏破した人はいませんでした。しかし約20年前。我が王…現生徒会長をお勤めになられている、波楼ウィルム様の一行によって開墾され、今に至ります。」
「ちょ、ちょっと待ってください20年前?!…で、開墾したその人が現生徒会長…というのですか?!」
「はい、それがどうかいたしました?」
「ということは、そちらの生徒会長…いえ、王様は大人の方…ということですか!?」
「はぁ…?まあ、そうなりますね。」
“っ!!”
大人が子ども達の上に立っている。それを聞いた先生は警戒心を上げた。先日のアリウス分校がまさに同じ状況だった。「子供は大人のための道具」と言い放った
「しかし彼の君は私達に非常に良くして貰っています。今の生活も、私達が学び舎に通えているのも我が王のお陰なのです。」
「ですので何処ぞの、子供を道具にしか思っていない阿呆とは違いますからね?先生。」
“……実際にそうかは、私自身が見てから判断するよ”
「…ええ、そうして下さい。それと、不愉快な気分にさせてしまい、申し訳ございませんでした。」
“ううん、こちらこそごめんね?”
「さて、続きを…いえ、そちらからのご質問に対して答えた方が良いでしょう。丁度報道関係者の方も居られますし。」
「では私、川流シノンからの質問です!先ほどショウさんがおっしゃられた『五大騎士』とは一体何なのでしょうか!」
「えぇ……。はぁ、まあ隠すものでもないので答えましょう。
五大騎士とは、ハロウネスト総連合学院の生徒会の執行部を指します。為政を我が王と副会長であるレディ…白根レイコ様が主導で行い、彼女達の護衛兼市井での活動を行っているのが私達、執行部こと『五大騎士』です。この名称は市民の方々が私達をそう呼んでいる通称なのですが…一部の部員が気に入り、そして我が王とレディもお気に召されたため正式名称になった。という経緯があります。蒼白なる方々と市民との距離を縮めるのが私達執行部のお仕事なのですが、執行部にも特別な名前を付けられるのは余計距離感を感じるので私はあまり好きじゃないんですよね……。」
「ふむ…?では次の質問です。先程の五大騎士は市民の方々の通称、とのことでしたが、学校の運営はまだ始まっていないのでは…?」
「えーっとですね…実際の学校活動自体は既に数年前から始まっていまして、今回の開校セレモニーは他自治区への門戸を開けるのが今回初めて、ということです。連邦生徒会への認可も出されていなかったので……。」
「ふむふむ、では非認可の学校だったのが連邦生徒会からの認可を貰ったため、改めて開校式を行うということでよろしいのですね?」
「はい、そもそも開墾された時も他の生徒さんや企業が一切足を踏み入れていないとのことだそうです。ですので他校からのお客様を招いたセレモニーを期に、ようやくキヴォトスの学校の仲間入りを果たした素敵な日ということですね。」
「ありがとうございます!では次に…ズバリ、王様の印象をお聞かせ下さい!」
「我が君のことですか?そうですね…メリハリのある方、でしょうか?民の前に出られる時や公務の最中は威厳を保って居られ、副会長や私達とのプライベートでは別け隔てなく催し物をお楽しみになられます。何より…」
「何より?」
「後光が射されているため誰もが崇めるのも当然というものです。」
「は、はぁ…。」
カリスマにあふれているのかな…?とインタビュアーは疑問に思うもそのまま記者帳に書き込む。
“じゃあ次は私からいいかな?”
「はい、勿論です。」
“連邦生徒会の記録からあの地には「大穴」があったって書かれていたけどそれはまだ存在するの?”
「大穴…ああ、地下都市のことですね。」
“地下都市?…都市?!”
「ええ、ハロウネストは巨大な盆地なのですが居住区域の更に下、地下に建造物群が存在するのです。しかし地下は禁足地…それでも気になる…そこで結成されたのが考古学研究会です。発掘された古文書や遺物の研究を日々行っています。」
『盆地とはいえ急勾配なところも多くて山道もある。そこでうちら交通部の出番ってことよ。』
「ええ、ハロウネストには車や飛行船、戦車とも違う特殊な乗り物が主に使われています。自治区に着いたら乗ることになりますので、楽しみにしていて下さいね!」
「むむっ、気になる単語発見伝!横から失礼します先生。イズマさん、なぜ地下が禁足地なのでしょうか!」
「言えません。」
「はい?」
「我が君から直接箝口令が出されているので、その質問に対してはお答えできません。申し訳ございません。」
「………」
先ほどまで楽しげに話していた雰囲気に乗じて質問しようとすると、一変した態度でぴしゃりと拒絶を示され、反論の余地も与えない返答に唖然とする報道部の二人。一方先生は今まで訪れた学園とも違う、彼女達の特色が見え始めていた。
ここにいるクロノススクールも、ミレニアムも、トップが一番実力あるものが務めている学園で、トリニティは為政と気品、思想、ゲヘナは野望と独占欲の強いものが上の立場に居る。それらとはかけ離れ、ハロウネストは絶対王政。上に立つのは住めない土地を住めるようにしてくれた恩人。当然そこに住む人々は土地を切り開いてくれた英雄を称え、崇めるのだろう。その恩人からの発言も怒りも、生徒間の生易しい関係ではないことが推測される。
【王様の言うことは絶対。】
王権神授説という権力を振るうこじつけをする必要もなく、市井にとっての神そのものが王に君臨している。この言葉がピタリと当て嵌まるのがハロウネストというところなのだと、彼は薄々感じていた。
『……まあ許してやってくれ、理由を知っている私らにとっちゃあれはそう簡単に開けっぴろに出来るもんじゃ無ぇ。言える範囲で言うが…あそこにはヤベーもんが封じられている。それこそキヴォトスを滅びしかねない、「災い」がな。』
「……余所見してて良いんですか、ショウさん?」
『あたぼうよ、この会話だって常に前見ながら走ってらぁ。そろそろDU抜けてゲヘナ自治区に入るぞ。ァ揺れますので~ご注意ください。』
「…コホン、話題を変えましょう。ショウさんはハロウネストのインフラを司られている交通部の部長なのですが、こうして今でも自分でハンドルを握って人に物資と、色々なものを運んでいらっしゃいます。」
『ただ好きなことをやってるだけなんだがねぇ…交通網の拡張とかスタグの料金設定ならまだいいんだが、政治の話はさっぱりだな。』
「それでも学院及び自治区内の住民の方々に多く愛されているのも事実じゃないですか。謙遜のし過ぎは嫌味に見られますよ?」
『そうかい…まぁ祝賀会が終わったら通常運行の私が見れるだろうしどっか行きたい場所があったら連絡してくれ。』
“そうするよ。”
「私達も取材で駆け回ることがあるので交通部の皆さんを取材させていただくとともに利用させていただきます!」
『そいつぁ嬉しいが値下げはしねぇからなー。』
がははと豪快に笑い出すショウ。初めて訪れる土地の話を聞き、興味で胸を膨らませる先生一行。しかしここはゲヘナのど真ん中、当然リムジンという物珍しいものを見かけた不良達は勿論……
「ヒャッハー!高級車だー!」
「襲え襲えー!」
「我らブロロロヘルメット団!行くぞぉ!」
パラリロパラリロと喧しいクラクションを鳴らして、こちらに向かってくる単車や改造車の一団…つまるところ暴走族がこちらに迫ってきた。
「…はぁ、どうやら面倒な方々に絡まれましたね」
『どーするよ、カーチェイスならやっても構わんが?』
「そ…それよりもこの車耐久性とか…」
「問題有りません。この車は要人護衛のカスタム使用。防弾防爆防レーザーは勿論施されております。並大抵の襲撃ではこの車輌は止まりませんので」
「ほほう、それは凄い!流石は新学校の強みといいましょうか…ん?防レーザー???」
「えぇ、対レーザー加工がどうか致しました?」
「キヴォトスに於いてもそんな技術は稀……それこそミレニアムが開発したものが少々くらいですが…?」
「でも存在するのでしょう?外にもレーザーが撃てる存在が。であれば今後の危機に備えておくのも当然かと。」
イズマの言葉通り、いくらVRゲームがレトロゲーム扱いされているミレニアム内に於いてもレーザー兵器は稀であり、それを扱うのはデカグラマトンの使徒達や無名の司祭の産物といったオーパーツであり、例外として、ある生徒はレーザー兵器を扱うのも事実だ。
“……どこで調べたの?”
「えぇ、それは…いえ、先に闖入者のお片付けが先でございますね。」
「ここから戦闘に入るんですか!?窓から覗いて射撃って難しいですよ?!」
「一応ドローンを飛ばして遠隔操作でバイクの動力を落とすことも出来るけど…多人数相手は難しい…。」
“どうすれば…”
「いえいえ、来賓の方々のお手を汚すわけにはいけません。」
そう言うと懐からスマホを出してどこかに連絡をした。
「はい、イズマです。数は30ほど、場所はゲヘナ自治区外縁付近です。風紀委員の方々…見えませんね。まあ、あの動乱の後です忙しいのでしょう。ここは派手に貴方がどれだけ強いのか…氏族があの土地の外でも通用するかを試される格好の場ともなるでしょう。どうか、お願いします。」
ヘルメット団の猛攻もどこ吹く風でいなしている装甲は何一つ問題がなかった。しかし淡々とスマホでどこかと連絡を取り合っている彼女はそうでは無かった。
学校の来賓が乗っている以上に、自分達に手を出すということはどういうことなのかを思い知らしめたい、という怒りに満ちていた。
“どこへ電話かけていたの?”
「皆様ご安心ください。まもなく護衛の方々が煩わしい追手を排除致しますので、マイ様、シャッターチャンスにもなりますのでカメラの起動をお勧めします」
「お、そこまで自信があるのでしたら遠慮なく撮らせて頂きますね。Heyプロビくん4号、録画モード!」
ピピッと電子音が鳴り、乗車してからは大人しくしていた風巻マイの愛用カメラドローン「プロビデンス4号」が起動し、ふよふよと浮き始めた。
「17、16、15…」
わざとらしくスマホを見ながらカウントダウンを始めるイズマ。防弾仕様とはいえいつまでも追い続けられ銃弾が窓に当たる音が鳴り響く中、
「3、2,1…0。」
後ろから鳴り響いていたエンジン音と銃撃音は、それよりも大きな爆発と煙によってかき消された。
“……?!”
「なっ…」
「うっひょー!映画さながらの爆炎が舞う乱痴気騒ぎはあまり目にしたことないので絵になりますねぇ!おや…もしかして糸?ですかあれ…?」
爆風で全く見えていないが、爆発が起こった場所には確かに細い糸のようなものが張り巡らされ、ヘルメット団たちもそれに絡まっていた。乗り手がいなくなったバイク達はスリップと衝突が何十も重なり大惨事となっていた。
「痛ぇ…」 「首っ…首絞まってるって…」 「前が見えねぇ」
「腕外れる外れる!あと腰もやばいって海老反りキープは流石に…ぁふん♡」「折れたぁ?!」
だんだんと遠ざかって行く背には糸に絡まっている不良達。さながら蜘蛛の巣に捕まった羽虫のように暴れているが、その抵抗も虚しくただただ巻き付かれている糸がよりきつくなるだけだった。
『こちら護衛、対象の無力化を行った。こいつらどうする?』
『不良っていうから警戒したが…うちのと比べて張り合いが無かったな。』
『姉者、いくら下衆でも宙吊りは可哀想。あとそこの子鯖折りにされてる。開放して身動き取れないようにするべき。』
「ご苦労さまです。ここはゲヘナ領域下のため私刑は行わないようにしてくださいね。では流さん、神さん、車さん、引き続き持ち場に戻って下さい。」
『『『応っ!』』』
通話機越しでも聞こえてくる大きな声、頭上から聞こえる風切り音と舞い上がる砂煙に先生一行は窓から顔を出し、空を見上げた
車と併走するそれはバイクと同じような見た目をしているが先程の追手が乗っていたものとの相違点を挙げるならば、それには地面を走るタイヤがついていなかった。それもその筈、その3機の乗り物は空中に浮いていた。
“あれは…”
「あれこそが…彼女たちこそが我が校の治安維持組織の精鋭、チーム・マンティスでございます。」
「ホバーバイクまで…一体ハロウネストってどういう場所なの……?」
「そんな疑問をお持ちのハレさんには、後で山への入山許可証をお渡しいたしましょう。ミレニアムと同じく技術者が多いのもあの山ですから。ほら、見えてきましたよ?」
先ほどのトラブルの間に、ゲヘナ自治区を飛び出しいつの間にか郊外に出ていた。周りが廃墟でもない寂しそうな荒野のなか、それは聳え立っていた。
頂上は岩肌が露出しているのか黒っぽく、山麓になるにつれ紫色の光が反射していた。その摩訶不思議な景色を綺麗という印象もありながら、黒い岩肌が不気味さを醸し出している。
「それでは皆々様、お待たせいたしました。ようこそ私達のハロウネストへ。」
ゲヘナ学園 地下牢
「はぁ…銃とかペンを使ってないのに疲れた…。」
空崎ヒナは書類仕事や武力制圧以外に対して疲れを感じていた。
先生一行を乗せたリムジンが去った後のこと、リムジンを追いかけ回している不良がいるとの通報を受け、自治区外縁から爆音を聞きつけてやって来たゲヘナ風紀委員会達が見たのは奇妙な光景だった。
ガソリンが燃えた匂いと多数のバイクと思われる残骸よりも彼女達の視線を釘付けにしたのは、中空で蜘蛛の巣のように張り巡らされた糸の網に、数十個程の人間サイズの糸玉。
試しに一つを切り裂いて見ると、中からヘルメット団が出てきたため、事情聴取のために全て回収。糸玉を牢屋へと送還した、事情聴取のために糸玉から出そうとしたが、不良たちに巻き付いた糸が有り合わせの刃物でなかなか太刀打ち出来なかったため、他部活から製鉄用の切断工具を借りる羽目になり、現在全ての糸玉を壊し、不良たちを全員牢屋に入れ終えたところだった。
「ただでさえこれから忙しいというのに…。」
彼女のスマホの画面を起動させる。そこには風紀委員会全体で使用されているグループチャットだった。行政官の天雨アコ発信の一枚の画像、黒い箔押しの白封筒だった。万魔殿のメンバー全員…正確にはイブキ以外のメンバーは飛行船墜落の傷をまだ癒せていなかったため、まだ動けている自分達へ横流しされたものだ。封筒には『ゲヘナ学園へ』という文字に、開校式への招待案内の手紙の内容が、写真のメッセージの下に表示されていた。
「本当なら先生を頼るべきなんでしょうけど……。」
これが届いた時には、既にシャーレの休業案内が発表された後であったため、休みを邪魔するべきではないというヒナ自身の判断で決めかねていた。
「いやぁ、愉快愉快。まさか糸玉からヘルメット団が発掘されるとは!さながらジオードだな!ハーッハッハッ!」
「随分と元気そうね、カスミ。」
「ヒュイ!あ、あはは…」
「…開校式、か。」
「む?どこかに行くのか?」
「…言う必要は無い。」
「ひええ……まさかあそこよりもまだお前の方が恐ろしいとはな…うぅむ…。」
「…あそこ?」
「ほう!聞きたいか!あれは我々が遠征合宿に行った時
「手短に、何処に行ったのかを教えてくれるかしら」
わ…わぁ……ぁ…………」
「泣いちゃった!!!」
「…なんかここまで来ると申し訳無くなってくるわね。メグ?代わりに話してくれる?」
「んー?遠征のこと?良いよー!あれはねぇ、数週間前のことかな?エデン条約でゴタゴタしてたから私達はなるべくゲヘナとトリニティから離れた場所に行くことにしたの。そこで見つけたのが知らない街。町の人は『ハロウネスト』ってところだって教えてくれたから早速温泉の場所を探しに行ったの!で、部長が地下に巨大空間があるって言ったから地下へ掘り進めたの!そうしたら…あれ?どうしたんだっけ?」
「肝心なところを覚えていないのね……。」
「………お前が現れた。」
「…え?」
泣き止んだのか、落ち着いたのか、再び鬼怒川カスミの口が開かれる。
「我々があの場所の源泉地を探ろうとしたら、お前が現れた。急いで撤退しようとしたらあいつ、急に飛びかかって来た。人の言葉を話していない。しかもお前の愛銃の影も形も見当たらなかった。抑え込まれた私は見たんだ、その…お前の口から…ひぃいいいいいいいい!!!」
「ちょっと落ち着いて…!私がそんな場所に居るはず無い…ってああ、もう…!」
「あ!思い出した!それで委員長に飛びかかった風紀委員長から変な音が出てたから火炎放射器で追い払ったの!それでパニックになった委員長を引き揚げてそのまま撤退。物凄く速い乗り物にのった人たちに追っかけられたけど帰ってきたよ!」
「そ、そうだったのね…。」
「………………これは忠告だ、空崎ヒナ。あの地下にはよくないものがある。例え安全だと謂われていても、私は絶対にあそこには行かない。だって、あんなもの……」
膝を抱えてガクガクと震えだす。それを少しでも抑えるために下倉メグが彼女の背中をさする。
これ以上囚人の負担をかけないためにも、地下牢から退出する。今までのやりとりを通じて、ヒナは決心した。
「確か、先生の休暇先は『ハロウネスト』という場所。そして開校式の招待状が来たのも『ハロウネスト総連合学院』…。いくら休暇とはいえ、あのカスミをここまで怯えさせる不確定要素がある場所に独りになんかさせられない。」
そして何より休暇中の先生と共に過ごせるかも…。という少々の下心があったことをここに付け加えておこう。
「……もしもし、アコ?招待状の件なんだけど…招待を受けることにしたわ。早速遠出の準備と、その、ドレスを選んでくれるかしら?」
こうして、ハロウネストに赴くものがまた一人、増えるのであった。
温泉開発部が出会った委員長モドキは既プレイの方ならわかるでしょう。そう、あの裏ボスです。
もう少し詳しい状況説明をすると、飛びかかられた直後にメグが咄嗟に火炎放射器を放ってなかったらヒナ委員長の形をした何かがR-18Gな変形をして、カスミのみならず温泉開発部全員のSAN値を直送するところでした。危なかったな。
変形シークエンスとカサカサ動くモーションさえ無ければ飛龍形態割と好きなんだけどなぁ…。