拝啓 ムシの国へご案内   作:ゑりおっと

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二重連載、ちゅらい。プロットは出来てるのに文字起こしの時間が無ぇ…!不定期連載のタグを付けようかしら…。


到着・集結・そして…

9月8日 18:00

「「ほぇー…!」」

 

「き…緊張してきた…。」

 

“来賓…ってのは聞いてたけどまさかここまでとは……。”

 

リムジンが停車し、ハロウネストに着いた。文献にあるようなおどろおどろしさは全く感じず、寧ろ温かく、優しい風が体を包んでいた。同時に一行は困惑した。なぜなら…

 

『ようこそ!いらっしゃいませ!』

自分達を取り囲み、歓迎の挨拶をする一般市民と思われる人々。〈ようこそ!ハロウネストへ!〉と書かれた横断幕に降車した足元にはレッドカーペット。そして旗を振る老若男女様々な人々がこちらに手を振っていた。そして何より、先生にとって、市民の容姿に驚愕していた。

 

“人間…!?”

 

「そういえば、キヴォトスでは犬や猫、鳥、ロボットの市民でしたね。」

 

そう、生徒や自分達と同じ、ホモ・サピエンスと非常に似た姿形をした、ヘイローを持っていない男女があちこちにいた。しかしよく目を凝らすと、違う所はある。やけに肌がつやつやしており、頭からは角や触覚を生やしている。また、背中には翅を持っている者もおり、横断幕を空中で持っていた。

 

「では、こちらへどうぞ。」

 

足を進めるイズマにいつの間にかスーツから作業着のようなラフな格好に早変わりしていたショウ。カーペットの先には見たこともない機械が2台あった。

最も近い形状の乗り物としては車、特にタクシーを思い浮かべる。しかし、本来タイヤ部分に収まっている場所には機械の脚が付けられていた。

 

「これこそが、ハロウネストの急勾配でも車酔いせずに走破できる四脚マシン『スタグ』だい!」

 

「これはまた珍奇な…先生?ハレさん?」

 

“四脚ロボ…!良い…っ!!”

 

「デザインは敢えてのスチームパンク風…毛色が違うけど大型四脚の参考になるかも…!」

 

「あーらら、機械屋さんとロボマニアは釘付けみたいですね…。」

 

「実際ああいう形の機械はフィクション内でしか見られないので刺さる人には刺さるんでしょうね。…はっ!アニメ欄の読者もこれで釣れる…?すみませーん!乗る前に写真お願いします!」

 

各々違う部分で気分が上がってはしゃいでいる光景を、案内役の二人は後ろで眺めていた。

 

「皆さんに喜んで下さって本当に嬉しい限りですね。」

 

「だな。これだけマシンに期待を寄せてくれるんなら運転の腕もしっかりしなくちゃだな。……撮り終わったかー?そろそろ出発せんと晩餐会に間に合わなくなっちまうかもしれんからとっとと乗ってくれ!荷物は別で部屋に運んでおくからよ!」


「揺れは少々。車体そのものが揺れているため人力車よりも揺れているが乗馬よりは快適。駆動音も車内からは殆ど聞こえない…ブツブツ」

 

「メモばっかり取ってないで外の景色とか見てほしいがね…。」

 

「そっちは私がばっちし撮っているので!」

「いやそういうことじゃあ無いんだが…まあそういう仕事なんだな。」

 

「ここまでの複雑機構に電気駆動はおろか、ガソリンや燃料の類は使ってないでしょ。一体何を使っているの?」

 

「そこに気がつくとは、流石はミレニアムのメカの源泉、小鈎様ですね。明日の午前…開校式が始まる前に視察に行くとは思われますが、このスタグを含め、チーム・マンティスのホバーバイク、そして本校で扱っているレーザー兵器には、水晶山で採掘されるクリスタルが使われています。

この水晶というのが、エネルギー伝導率、加工性、保存性に長けていまして…通常の電力や燃料を使用するのにコスパが良いのです。あ、勿論スマホの充電や暖房器具として電気設備が無いというわけでも有りませんが…、発電ですらこの水晶数キログラムでハロウネスト中の電力一月分を賄えるのです。」

 

「新エネルギー、ね。」

 

「良ければセミナーとも直接交流してそちらと交流を深めて行くことも考えていらっしゃいますが…どうです?」

 

「私の一存では決められないけど…うん、ウチにとっては良い起爆剤になると思う。」

 

「ではそのように…。おや、そうこうしているうちに首都が見えてきました。」

 

“おお…おぉ?”

 

「なんというか…その…」

 

「白いですね…うわ、レンズ絞らないと白飛びするってどんな素材使ってるんですかここの建築物。」

 

その街は先生が訪れた他のどの自治区とも建築様式が異なっていた。こちらの世界で近しいものを上げるならばポルトガルのマヌエル建築だろうか。しかしそれら使われている色があまりにも現実味が無かった。遠目に見える王宮、のように見えるのは校舎なのだろうか、屋外にも関わらず色褪せた形跡もない白い宮殿が聳え立っていた。しかし真ん中の建物から離れるにつれ、だんだんとそれらは正反対の黒色に染まっており、絵画の風景と言われた方がまだ現実味のある光景を来訪者達に見せつけていた。

 

 

「おや?はい、イズマです……レディ!?……はい、こちらはもうすぐ到着しますが…はい、了解しました。」

 

「皆さん、本日の晩餐会が当初の予定を遅らせて20時に行われますのでその旨をご周知下さいませ。」

 

“何かあったの…?”

 

「お返事を今さっき送った方が居たためです…申し訳有りません。」

 

“いいよ、私もどんな子たちが出席するのかも知りたいし。”

 

「あ、それ私達も気になります!マンモス校のお偉方も居ればスクープ間違いなし!ですからね!」

 

そんな話をしている間にもどんどんと白い宮殿に近づいてくる、どんな出会いがあるのか、どんな出来事が起こるのだろうか、そんなことを先生は考えていた。

 


ハロウネスト総連合学院 大広間

荷物と宿泊する部屋を案内され、軽い身支度をしてから大広間に向かうと先客が幾人か、既に着席していた。

 

「あ!ご主人様だ!やっほ~!」

 

「…おや、先生。君だったのか」

 

“やあセイア、トリニティの代表は君だったんだね。”

 

「ああ、ミカはティーパーティーの一員から外され、ナギサは先の動乱でてんてこ舞い。無論私も彼女の手伝いをしていたのだが…ナギサやティーパーティーの皆が『療養ついでにぜひ』とね、彼女らの厚意を頂いたわけさ。」

 

「あらご主…先生。私達には何か無いのですか?」

 

“ごめんってアカネ…ミレニアムはC&Cが代表なんだね”

 

「はい、当初はセミナーの誰かが向かう筈でしたが…今年の光輪大祭がミレニアム主催のためそちらの対応に追われていますので、私が派遣されました。」

 

“キヴォトスの体育祭、だっけ?”

 

「はい、恐らく連邦生徒会の代表として先生も運営に携わることになると思われますので。」

 

「なあアカネ…この格好落ち着かねえんだけど着替えちゃ駄目なのか?他の奴らだって

 

「何か言いました?リーダー?」

 

な…なんでも無ぇよ…はは…。」

 

“ネル…。”

 

「流石に来賓の場ですので、スカジャンは没収させて頂きました。プライベートでは着られるので我慢して下さい。」

 

「…はぁ。」

 

“…大変だね。”

 

「後は…ゲヘナ学園の代表だね。全く無理に参加せずともよかろうに。あそこの治安の悪さは聞き及んでいる。」

 

「我々からすると王の誘いを断ることなど言語道断だがな!」

 

奥からハキハキとした声が響いた。振り返ると案内役のイズマと同じような白い制服に身を包んだ大小様々な体躯をした4人の少女が並んだ

 

「あなたと一緒にしないで…ヘンゲはニュースを見無さすぎだし遅れるのはある程度予測できる。そしてここにいる人達は我が君と同じく土地を治めておられる方々。気分を害することはあのお方の顔に泥を塗るも同然。」

「んだと…!」

「タヨリ、その言い草は流石に失礼でしょう。事実とはいえ王に尊敬を抱いている方は多いのですから。」

「まあまあ、折角遠方から来られたお客様なのだからそこまでにしておきましょうぞ、先輩方。」

 

「…なんか賑やかだね。」

 

“君達は…?”

 

「失礼致しました。我々は我が君…ハロウネスト総連合学院の生徒会執行部『五大騎士』です。以後お見知りおきを。」

キリッとした印象の子が一礼をすると、先程までの喧騒は嘘のように静まり、他の3人も併せて礼をする。

 

「私はレディの懐刀を務めさせて頂いている堂垣ライヤ、そちらの一番大きいのは杜山ヘンゲ、小さいのが灰原タヨリ、最後に庭回オグリです。これから最後のお客様をお迎えするためこちらの護衛をさせていただきます。ご承知おき下さいませ。」

 

「ふむ、五大、というには四人しか見当たらないが…残りの一人は?」

 

「ここには居ない緑川イズマは、皆様のお食事を担当に当たっているためこの場に居りません。お料理が運ばれた時には顔をあわせられると思うので、そのように。」

 

「…先程までガイドもしていたというのに。」

 

「ワーカーホリックなのは同意するがね、それをすると選択したのは彼女自身だ。要らぬ心配は彼女のプライドを傷つけると知れ、オグリ。」

 

「……」

 

口を一文字に結ぶオグリ。

 

「お客人が到着したぞ!陛下とレディ、後継をお呼びしろ!」

 

「では皆さん、配置について下さい。」

 

その一言でオグリとヘンゲは扉の外に行き、タヨリと奥から現れた目元の隠れた生徒達*1は名札が立てられた席2つの椅子を引き、いつでも座れるように待機する。それを確認したライヤは大広間からを出てどこかに消えていった。暫くもしないうちに、再び扉が開かれた

 

「…どうやら私達が最後みたいね。」

 

「はぁ…はぁ……弾道ミサイルになる体験は初めてでした…。ドレスでなくて良かったです…。」

 

“ヒナ!それにチナツ!”

 

「良かった…先生はいつ頃着いたの?」

 

“6時くらいだったかな?”

 

「そう…待たせてしまって申し訳なかったわ。」

 

「…いいのかい?ゲヘナの抑止力がこんなところに居て。」

 

「問題児は殆ど牢に放り込んでおいたわ。勾留期間もセレモニーが終わるまで出させないつもりだし。」

 

「なんというか、凄まじいね…。」

 

「そう?このくらいは捌けないと。」

 

“お疲れ様、ヒナ。”

 

「…うん、ありがとう、先生。」

 

「委員長、そろそろ座りましょう…。」

 

「それもそうね。じゃあ、また。」

 

二人が椅子に座るとそれを見計らって給仕達が入室し、カトラリーをセットしていく。配置が完了すると後方へ下がり、壁に近い場所で、休めの姿勢で待機し始めた。

 

扉が開かれ、ライヤが戻った。

 

「蒼白なる者の、おなーりー!」

 

高らかな声で大広間に声が響く。その声と同時に部屋に居た給仕や、監視の役に徹していた他の騎士達も上半身を斜め30度の位置で曲げ、そのまま固まる。扉の方をみれば、まばゆい光が差していた。

 

光の中心に居るのは王冠を被った、自分とさほど変わらない背丈をした女性であった。イズマの話では20数年は居るとされている支配者はそれこそ周りの子達とさほど変わらない顔つきの若さだった。まあ学生と言うにはかなり大人びているのだが、他校にも似たような出で立ちの者は居るため、さほど気にならなかった。

 

しかし顔よりも目を引くのはヘイローと、マントからはみ出している、後ろに生えた六枚の翅だった。強大とされている生徒…それこそヒナやミカのような特徴的な形状こそしていないが、ヘイローと翅が白く輝いていた。比喩ではなく本当に後光が差している生徒をこれまで見たことが無い先生及び来賓として招かれた生徒は愕然としていた。

 

そして二歩半後ろをついていくのは前を歩く彼女の次に大きい少女だった。白磁のような肌に毛先が薄緑に染まっている少々癖が付いた長髪。とても淡い空色の瞳。幻想的な見た目に加え、全ての所作に於いてまさに王妃と云える高貴さを体現している。

 

そして最後に、その二人よりも背丈が高く、この場に居る同学生とは真反対の黒色のブレザーとスラックスに身を包んでおり、前の二人や騎士と同じく白い外套を肩にかけている。前の二人とは何処か自我が薄そうで、なんとなくついて行っているような仕草も見られたため、一番幼くも見えた。

 

その3人が大広間の一番前方に置かれた、一段高くつけられたテーブルの前に来た。王冠を被った女性が前に出る。

 

「皆様、ようこそ私達の国へ。私こそがあなた方に招待状を送った本人で、この地を治める王…もとい、ハロウネスト総連合学院生徒会長、波楼ウィルムだ。まずは招待に応じてくれたことを、この場で感謝申し上げたい。右が副会長の白根レイコ、左が次期生徒会長で私の妹、波楼ユウキ。そしてここの護衛や厨房に立っている緑川イズマ、堂垣ライヤ、杜山ヘンゲ、灰原タヨリ、庭回オグリ。以上の8名がこの学園の生徒会となる。以後、お見知りおきを。」

 

名前が呼ばれた順に曲がった腰が真っ直ぐになる。全員の名前が呼ばれ、王が礼をすると同時に呼ばれた7人も全く同時に頭を下げる。

 

ウィルムの背後。その両端の扉が開いた。玄関先で分かれたイズマとその配下と思われる生徒が、料理を乗せた皿を運んでくる。皿に乗っていたのは生ハムやチーズ、野菜のピンチョスであった。時刻は既に午後9時、胃に負担のかからないもの且つ調理に時間のかからないものであったのは偶然ではなかろう。

 

「時間も時間ですし、このような粗末なものしかお出し出来ないのは誠に心苦しいが、どうか我らのささやかな歓迎、受け取って頂きたい。」

 

宴は始まった。先生は招かれた生徒と歓談をし、五大騎士とも軽い雑談を交わし、特に何事もなく終わった。ただ二人、高座に居た二人は先生に視線を向けていたことに気がつくこともなく。

 


 

晩餐会も終わりすっかり夜闇に包まれた深夜時、自室に戻った先生は明日の準備とアロナとミーティングを行っていた

 

“料理も美味しかったし、みんないい子みたいだし、だけどあの人は…いや、明日考えよう。”

 

「モグモグ…まったく今日から2週間はじっくり休むためにここに来たんですから…。にしてもおいしいですねこれ。」

 

“気に入ってくれてなによりだよ。”

 

部屋に着いて暫くたたない内にイズマがやって来て

「お連れ様にもお出しするようにレディからのご指示でお料理をお持ちしましたが、はて?……まあいつものことです、私は深く追求しませんのでごゆっくり。ワゴンはそのままにしておいてください。明日には清掃のものが回収いたしますので。」

 

と晩餐会に出されたものにいくつかの料理…チキンライス、オムレツ、唐揚げ、レタスに生クリームと砂糖漬けのさくらんぼがちょこんと乗ったプリンが追加されワンプレートにした……見た目が完全にお子様ランチのそれと晩餐会には出されていなかった酒類のボトルや缶、それを注ぐグラス2つがルームサービスワゴンに運ばれてきた。

 

「明日の午後はセレモニーですし見て回るところはしっかりと決めないとですね…。このガイドサイトには色々ありますが…まずは景観とかでしょうかね?」

 

“温泉も気になっているけど湯冷めしちゃうかなぁ…。スイーツ、炭鉱、美術部…迷うな。”

 

キンコーン、とインターホンが鳴り響く

 

“おっと…ごめんアロナ、ちょっと席外すね。”

「はい!私はこのおいしいディナーを堪能していますので!」

 

“はーい、今行きまーす”

 

“(ドアスコープを覗く)”

 

“…………………………”

 

“(見なかったことにしよう!)”

 

先生はそのままシッテムの箱に戻ろうとした。

 

『クックック…流石に無視は酷すぎませんか先生?ここが駄目となると他の部屋に』

 

“(ガチャン)………入れ”

 

「おお怖い怖い。では、お邪魔しますよ。」

 

扉から入ってきたのは先生と同じくスーツを着た人物。しかし決定的に違うのは体表と思われる部分が黒く染まり、ところどころ光が漏れているひび割れが走っている。目と思われる部分は丸い穴が一つ空いているだけ。アビドスではホシノ関連で揉めた人物…黒服であった。

 

「どうしてここに?何をしに来た?と疑問は尽きないでしょうが一からお話しますので。あ、グラスもらいますね。」

 

“グラスが2つだったのはお前が頼んだのか……。”

 

「ええ、あの時は敵対していましたが、こうして盃を交わしてお話してみるのも一興かと。ここでは私も来賓として招かれましたから…。」

 

“何……?”

 

「そもそもあの蒼白なる者をキヴォトスに手引したのは、我々ゲマトリアです。」

 

“!!!”

“……どういうこと”

 

「二十数年前でしたか、あの方はキヴォトスの外周を彷徨って居まして、どうにも中に入りたがっていたので、それがどのようなものかを調べた上、制御役もたまたま産まれていたこともあり、ちょこっと細工をして中に入れました。」

 

“制御役?”

 

「ええ、ここの住民から『レディ』と呼ばれているあの存在です。いやはや、小鳥遊ホシノを観測する前までキヴォトス最高の神秘はあの者だと思っていましたが…規格外過ぎてなんとも。世界を見通すあの根はやはり……神秘が子どもという規格に収まっているここで無ければどうなっていたことか。」

 

“世界を、見る…?”

 

「ええ、それが彼女の神秘。多元世界の観測と記録です。先生は神社や仏閣で別々の場所で同じ神を祀られているのを見たことがありますか?あれは謂わば分霊と呼べる存在。本体は別の場所に根付いている神です。樹木に栄養を送るために張り巡らされた根、その一本が彼女です。」

 

“それで、あの子を招いたのは分かったけど、お前がここにいる理由にはなってないよね?”

 

「おやおや、せっかちですね…あ、わざわざどうも。しかし気まぐれで招いた存在があの岩場と深淵しか存在しなかった荒れ地をこのような美酒を造れる程に発展させたというのは凄まじい、そう思いませんか、先生?

……ああ、なぜここに居るのか、というお話ですね。実は招いた当初はそこまで気にも留めていませんでしたが、我々ゲマトリアが目をつけたのが六年前。超大な神秘の出現と突然の消失をもって警戒を取りました。まあ私はアビドスでの探求を主にしていたので、時折調査するくらいに留めていましたが…何より遠いですし。

本腰を入れるようになったのは先生、あなたが私に小鳥遊ホシノを諦めさせたときでした。初めて会った頃とは見違えっていた蒼白なる者によれば、水晶が肝なのだと。そこで調査したところ、ここで採れる水晶は神秘を溜め込む性質があるではありませんか。無色透明な、何者にも染まっていない神秘。これを逃すわけには行きません。キヴォトス外の技術と引き換えに定期的に水晶を手に入れているのですよ。これがそれです。」

 

黒服が懐のポケットから紫色の石を取り出す。

 

“それって…!”

 

「おや、先生はご存知でしたか?」

 

先生にとっては見覚えのある…連邦生徒会のアーカイブでは神名のカケラと名付けられているものがここで見られたことに驚きを隠せなかった。

 

“あの石ってここが出所だったのか…。”

 

「成程、ショップで時々見かけるのでしたか…。確かに古物商や宝石商でも数は少ないですが、珍しい石としてこれらは売られています。が、その出所は長らく不明であったとのことで、それがこの地のあの山から採れるとのこと。ご安心を、先生。この結晶によってあなたが嫌う生徒を実験対象にする必要が無くなったのです。どうです?ゲマトリア、とは言いません。私個人と同盟でも結んで見ませんか?」

 

“…うーん、でもなぁ。”

 

「何を躊躇うのです?私はもう生徒に対する脅威には成り得ません。それに個人的に仲良くしたいのですよ。」

 

“本当にもう、生徒に手を出さない?”

 

「はい、勿論……。そういえば先生はこの結晶をどのように使っているのです?」

 

“え?そりゃあ生徒の強化に使

「ほほう!やはり生徒達のような神秘を持つ者に対してはその質、量を向上させる機能があるのですか!!でしたら先生、今度シャーレの方にその様子を観測させて貰えないでしょうか?」

……………やっぱり、お前とは仲良く出来ないよ。”

 

「おや、振られてしまいました…結構。あの時の決意を変えないのですね。」

 

“そろそろ眠いし帰ってくれる?”

 

「おや…もうそのようなお時間に、私も早朝から予定が埋まっていまして。では先生、開校式にまた。」

 

“とっとと失せてくれ…。”

 

「クックックックック………」

 

黒服が自分の口をつけたグラスを持って部屋から出ていった。

 

『先生……。』

 

“なんかあいつと話してると疲れちゃった…。今日はお開きってことにしない?”

 

『そうですね!私もちょうど食べ終わりましたし、今日はもう寝ちゃいましょう!』

 

“歯磨きしてから寝るんだよ?”

 

『うう…別に私はOSですので虫歯になんかなったりしませんので!』

 

“そうすると明日のスイーツ無しにするけど。”

 

『ぅえ!?それは困ります!歯磨きしますからお菓子無しはご勘弁を~!』

 

“ふふっ”

 

予期していない珍客もあったが、先生は久方ぶりの熟睡をしたとのことである。


ゆめのなか

 

どれくらいの時が経ったのか

 

掘る進む掘る進む掘る進む進む進む

 

いくら探しても生きているものがいない、見つからない

 

さびしい

 

何かの殻にぶつかった

 

関係ない、私は探すだけだ。

 

それを通り抜けた。破る必要も無く、殻の中に誘われた。

 

殻の先の先、生き物がたくさんいた。それよりも、黒い影、懐かしい/怖い/謝らないと/見ろ/呼びかけろ

 

まずはあそこに、あそこに行かなければ

 

そうしなければ、私は…。

「……ウィルム、なのですか?」

 

声が、聞こえた。

「いえ、これは…?しかし魂は同じ……。転生、というものでしょうか。だとすると……。ええ、これが私の成すべきことなのですね、『私。』」

 

どうやら足元に居たらしい。何か…何か話せれば…。

「落ち着いて下さい。よくぞここまで来ました。詳しいことは後からお教えします。ここはただ、私の願いを聞いて頂けますか?」

 

どうやらこの小さき…いや、私と同じくらいの容れ物は続ける

 

ここは『忘れられた神々の住まう土地』だそうです。通りすがりの黒いお方が言いました。…貴方はもう覚えていないかもしれませんが、前の貴方が興した国は夢の疫病によって滅んでしまいました…。今は、あの子達が終わらせてくれました。あの子達の生まれ育った奈落もどういうわけか見つけました。ですが、私はあの子達に顔向け出来ない。…怖いのです。あれだけ産み落とすことに悦すらも感じていた私が、ここに来てからというものの。………あの時は民が夢の傀儡になるのを見ていることしか出来なかった。貴方が再び来たということは最悪、あの者も来るのでしょう。このまま放っておけば、この地もあの狂わせる光に惑わされてしまう。でも、今からなら防げます。私達の問題を他の者に背負わせるわけにはいきません。あれの始まりは貴方が原因でしたが、今は違う。初めから貴方の国を作れるのです。…私は病に怯えない貴方の国をもう一度見てみたい。正しく繁栄した国を見たい!どうか今一度、貴方の側に、居させてください。」

 

そうして、手を伸ばす彼女。私はそれを掴む手を持っていない。何か、何か、なにか……

 

私の願いに応えるように、体の奥底で何かが割れた。

*1
モブ。モデル;忠実な従僕




□神名のカケラ
この世界のキヴォトスもとい、本小説に於いてはハロウネストが産地の結晶。エネルギーや神秘を溜め込む性質を持っており、加工すれば何十倍にもそのエネルギーを放出することが可能になる。また、とある理由によりハロウネスト内では通常の銃器よりも近接武器やビーム兵器が流通している。

・未プレイの方に説明するとホロウナイトの「蒼白なる王」は「その土地に合わせて体を脱皮・変成を行う」という能力を持っています。本編ではモンゴリアンデスワームのような姿から仮面を付けたムシ達と非常に似通った躰になっていました。ということは人間型の生物が覇権を握っている世界に来たら…?

・ハロウネストのモブ達の見た目:イナズマイレブンGo3に登場する惑星ラトニークの住民を更に人間に近くした感じです。現在レベルファイブ作品に触れないでいるのである程度熱は冷めていますが過去キャラほぼリストラは今でも許してないからな日○ぇ…。
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