ペントラファミリー
そこは、死ぬ気の炎や
山の奥地にある研究所と、或る条件で併設・提携された屋敷は、珍しくも主要メンバーがほぼ揃っていた。
重ねて言うが――数少ない主要メンバーが、珍しくも揃っていた。
「はい」
「はいじゃないが」
広間に全員分の椅子はない。なにせ集まることはそうないのだ、あるだけ邪魔である。
あるのはただ一席。
奏雨は壁に背中を預けながら、豪奢な椅子に座るボス――白金縁をじとりと見つめた。
「もうちょっとマシな切り口なかったかなぁ」
「まぁ、そういうのも惜しい事態。ということで」
「ほむ。あんまりふざけてもいられなさもごね」
普段ならここぞと茶々を入れる雨葉も、真面目な表情で咀嚼する。
「なんでタコス咀嚼してんの……?」
「シャワルマだよ? 夜食がまだで……」
「なんて?」
「シャワルマ。一昨日までイラクにいたんだよねぇ。いる?」
「いやぁ……」
そういって『
「成果はどうでした?」
「全員分あるよー」
「ホントですか!?」
「やったぁ~!」
「シャワルマの成果ではなく……」
「あっ、
ざっくばらんと、食いつきかけた愛凪、渚沙ごと切って捨てる塩宮。
見たところクレープにも近いだろうか、薄生地に包まれた肉料理をごくりと飲み干し、雨葉は眠たげな目を残念そうに細める。
「そっちは残念、空振りだったかな。――ふひゃう」
時差が直らないのか、語尾にはあくびがくっ付いた。
イラクにはとある都市遺跡が文化遺産として登録されている。『
これから世界を変え得る技術だ、その技術を保有しているマフィアとしては、無い事が分かっただけで、収穫と言えるのかもしれないが。
「ボスが惜しんだ時間がシャワルマにもっていかれたところで、おまけでも聞こうか」
「シャワルマに負けた……?」
「おっと……失礼しました」
「塩宮はあんま悪くねえんじゃねえかな」
ふう、と息を吐く白金。
「今から二十……あ、もう十五分かな。
えー、残り十五分で、我々の技術を欲しがり、はるばる海を越えた同業者様がやってきます」
「「「えっ」」」「「「マジ?」」」
屋敷の中を駆けずり回る六人。
分度器のような半円が上部にある、クラシックなエレベーターが二つ。
「では、我々は上へ。健闘を祈ります」
「間に合うか否かって感じですけどね!」
「ぜってぇアイツ街守る気ねえだろ」
「まぁ守護者は私達だしね~」
「その守護者、現在進行形で
「ま、塩宮もいるし。大丈夫だろ」
エレベーター内で、椒、奏雨、雨葉は呑気に語り合う。
下降の時間は長く、何気ない様子で、雨葉は両手を構えた。
ガチンと、左手に収まった正方形と、右手にはめられた指輪が噛み合う音が響く。
「びっくりした……」
「慣れろよ」
緊張気味な奏雨を笑う椒。
雨葉といえば、収められた正方形――『
最早慣れた様子で、
「カレーパンみてえ」
「フッベハッて」
「なんですって?」
「クッベだって」
「えー、一口頂戴」
「なんなら一個食べる?」
「マジ! 貰います」
と、雨葉の持つ
ペントラ*1ファミリーの技術班と雨葉が共同で作り上げた匣兵器、『
雲の死ぬ気の炎が持つ性質、増殖を匣内部の機構に適応し、『食料保存空間を際限なく広げる』という……別の物体などに置き換えた方が余程有益そうな匣兵器だ。
尤も、兵糧戦において天下無双の匣兵器だからこそ、雨葉は一人世界各地に派遣されてはのほほんと帰ってこれるのだが。
エレベーターに満ちた肉の香りに奏雨が辟易してきた頃、気の抜けた音と共に扉が空く。
そこには潔癖な白い空間が広がった。
椒、奏雨は真剣な表情に変わる。
「っし、行くか」
広く白い空間の先には、長い廊下が一本伸びている。
そして、今か今かと、長い行路を待ちわびるバイクが三台。
三人が各々バイクに駆ける中、天井のスピーカーが短いノイズを放った。
『調整は終わってます。エンジンをかけてもらったら各要所のナビが表示されるので、くれぐれも安全運転で急行してくださいー』
「無茶を言いなさる!」
ペントラファミリーの情報工学筆頭であり諜報部隊長、累の声が三人の背中を押す。
雨葉が『空匣』を
バイクにあるべきはずの鍵穴はなく、あるのは丸い孔。
彼らは、三者三様の色をした炎を、孔へ押し当てる。
突如唸りをあげたエンジン。ハンドルの間、ステアリングからはホログラムが形成され、長い廊下の一本道を矢印で差す。
「朝までに終わるといいですね」
「終わらすんだよ」
「確かに、お腹いっぱいのまま寝たくないしねぇ。朝ご飯の時間の前には寝なくちゃ」
長い言葉は交わさず、法外な速度で走るバイクは、廊下の先――解放されたシャッターを越え、街へ繰り出した。
ナビに従い散会する三人。
ふと青い光が見え、顔を上げた奏雨の瞳には――いやに近い流れ星が映った。
時間は僅かに巻き戻り、塩宮、愛凪、渚沙がエレベーターから降りた頃。
その深い青と似ても似つかない夜空を見上げ、愛凪は目を輝かせる。
「天気いいですねっ! 狙撃日和って感じだぜ……!」
「あんま夜に言う台詞では……いえ」
不敵に笑う愛凪を見て、水を差すのも違うだろうと言葉を収める塩宮。
それに、これから水へぶち込むのだし、言ってもいられまい。
「え、私本当にまたぁ……??」
「ここまで来て何言ってんですか。私は済んだらさっさと持ち場に戻らないとなんですから」
「渚沙さんファイトーっ!」
「お、おー……」
悪意のない応援には、如何に気が進まなくとも、右の腕を掲げる他なかった。
エレベーターの最上階は建物の中ではなく、不釣り合い甚だしい平らな地面だった。固くつまらない地面は、すぐ傍の研究所と同じだ。
……端にある『機構』を除けば。
「渚沙さんっへいパスッ!」
「おわっと! ナイスパスですっ」
愛凪から渡されたものはヘルメットのように見えるが、それにしてはガラス面が広い。被れば確かに視界はクリアだろうが、保護という目的に適切かと言われれば首を傾げるデザインだ。
その間にも『機構』の傍らでしゃがみ、最終確認をする塩宮。
「起動――よし、問題ないですね。……渚沙さん? 行きますよ」
「ううん……私だけ扱いが毎回酷いような……」
「何言ってるんですか。海は、貴女にしか、守れない。
「だ、ダコール! そう、海は私の領域っ!」
焚き付けられた渚沙は、ヘルメットを被り、いそいそと『機構』で匍匐の体勢を取った。
塩宮が握り込んだ拳はいきなり月光欲をした女性に向けるものではなく、“彼ら”と同じように、リングへ炎を灯す為だった。
煌々と輝く黄色の炎は、見ている者へ元気を与えそうな炸裂具合を見せる。
静かに『機構』を見据えた。
『機構』はレールガンとカタパルトを足して二で割ったようなもので、少なくとも屋敷の屋根にあっていいデザインではない。
屋根をはみ出てその『機構』は伸びている。屋敷の屋根からは街が一望でき、その伸びた方角も過不足なく確かめられた。
深夜の空を反映した、昏い、昏い、海が。
「……言わないといけないような気がしますね」
「??」
晴れの炎――活性の力が流し込まれ、『機構』に黄色が奔る。
「――
「わああぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁ!!」
……
海域迎撃のお約束。青い流れ星が海に着弾した。
ペントラファミリーについて。
大空:白金
嵐:椒
雨:渚沙
晴:塩宮
雷:愛凪
雲:雨葉
霧:奏雨
諜報部隊長:累
蒼星、月詠、シジミーは当分おやすみです(書き上げれば出る予定です)
闇鍋……鍋! せや!
元ネタがボンゴレだし、単語そのものがカッコよくある必要はないなぁって思いました。
ファミリー規模自体は小さそう。海沿いの街で、山奥に研究所と拠点の屋敷を保有してる、くらいの設定しか考えてないです。
守護者≒幹部って感じで、累さんも蒼星さんも幹部ではあるかな? の思い。
原作に鎌使いがいるせいで蒼星さんの武器に迷ってます。助けてください。