ビーストテイマー/ウェアウルフ♂
プレイヤーネーム「Sera」Lv19
拳士/ウェアタイガー♀
プレイヤーネーム「アギ」Lv22
戦士/ヒューマン♂
プレイヤーネーム「ライリー・ホーン」Lv42
呪詛使い/妖精♀
プレイヤーネーム「
魔法使い/エルフ♂
『ヴォルガスト・ヴァッサーロード』
有効属性:雷・毒・打撃
抵抗属性:火・水・斬撃
残存HPゲージ:全損・全損・1/2
川そのものを使った大技は防いだが、依然両の手の大剣は猛威を振るう。
「もう大技入んないよ!」
右手の大剣を跳んで躱す中、Seraさんは物惜しそうに拳を揺らす。
左手の、水で出来た大剣を潜って一太刀入れるアギさんだが、手応えの無さを顔に出している。
背後では鴉魂の範囲移動速度デバフで鈍くなった水コボルトが、full川さんの手によって殲滅されていく。MPは、心もとない。
「……っ言ったでしょう? ハメるって!」
ヒールで地面を数度叩き、スキル条件の動作を満たす。
《強化脚力》
足を使用した格闘の威力上昇は一旦置いといて――真髄は機動力強化。
脳裏には、猛攻の直後に先駆けたSeraさんの姿がよぎる。
「フルークさん!? 出番だよ!」
身体を這うナニカの感触を覚えながら、私は高く跳躍する。
人狼長の頭上を取る。さしもの奴も、人間と比べて遥かな体躯を持つ自分が上を取られるとは思っていなかったのか。反応は鈍い。そもそもの話、大剣は頭上への迎撃に優れない。
尤も、防衛に回せば、大剣は体積の長い盾とも言える。
人狼長が右腕を振り上げた直後、私の左腕に細いものが這い回った。
水に毒を流すというのは、やや古風ながらも、強力な戦争手段だ。現代においても避けるべき悪行、法律が目を光らせる危険行為に違いない。
ところで、私のテイムモンスターのスロットは三匹。
待機状態の冰熊さんに、後衛の補助に徹する鴉魂。
残り一枠は予備に――いやまさか。スキルポイントじゃないんだから、有用なモンスターに割くとも。
『ディク・フルーカー・ラスネーク』……ディク・ラスネーク種のレア個体。
LUC補正スキルや、LUCと別判定のドロ増スキルを持つ、レア個体に憚らぬ幸運の白蛇。だからと言って、攻撃手段がないでもない。
むしろ――奇襲としては王道も王道か。
《ポイゼニック・ローズ》
頭上を取った私が、人狼長に左手を伸ばす。それを架け橋のように用いたのは誰あろう、純白の毒蛇だ。
赤黒く光った牙が人狼長の首に飛んでいく。これが私にとっての暗器。いるだけで幸運が働く、インスタントな毒牙。
「
高確率毒攻撃。『ヴォルガスト・ヴァッサーロード』の有効属性は雷・打撃――そして毒。
ここにきて初めて与えられた毒攻撃に怯んだ隙を、二人は逃さない。
「《バレット・インパクト》!」
素早い一撃に、アギさんのスキルアシスト無しの斬撃が続く。相手モーションを警戒出来ている、素晴らしい判断だ。
ここで着地する私にヘイトが向くかと思ったが――モンスターのヘイトは気まぐれ。挑発スキルのないこのパーティに絶対の誘導は不可能。
「っと――!」
人狼長が持つ右手の大剣が、スキルの光を帯びる。あれは突きの構えだ。左手の水大剣を担ぎ、慣れたモーションで首を落としにかかっている。
刺突斬撃混合スキル《破点失印》
盾のないアギさんへ迫る――!
「くッ!」
「アギさん!」
初撃の突きはどうにか防いだが、彼の体勢が大きく仰け反る。次は回避不能のバッテン斬り。
フルークが服の間に戻っていく。アイテムの使用は間に合わない。
……最終段は庇えるか。
「Sera!」
アギさんの刀身に赤い光が迸る。
――三連撃スキル《クルージーン・グラナーデルグ》。
初回とは違い、むしろ逆再生を行なうように斬撃を結び始める。
切り上げで二撃目を相殺。
怯まず繰り出された人狼長の三撃目を、同じ動きの袈裟斬りで叩き落す――さながら後の先。
だが、人狼長の《破点失印》には幻の四撃目がある。
形態を変えた今では、それも左手の大剣を使った――彼らにとって初見の斬り上げに変じている。
言葉より速く私の足は動く。
足より速く、眼差しは届く。
静かな視線――先程私が交わしたような視線。
その答えにも思える瞳を、アギさんは向けていた。
足が止める。
「はァァア――ッ!」
人狼長の直上斬り。
地面を抉りながら切り上げられる四段目を、しかし《クルージーン・グラナーデルグ》の三段目は捉える。
真っ向から弾かず、あくまでも斬撃で“受ける”ような動きだ。
……だが、《破点失印》は落胤を印す斬撃スキル。
二度目の十字――即ち横薙ぎが、スキル直後のアギさんを両断すべく奔る。
幻の四段目、とは――なにも人狼長の十八番ではない。
「ソウェイル!」
空中に刻まれたルーン文字が、赤雷を放って斬撃を牽制する。
スキルそのものを中断せずとも、弱点属性――それも痺れさせる性質の攻撃は、確かに人狼長の動きを鈍らせた。
『私一人でもやれるんです、二人合わせれば、凌ぐくらいはわけないですよ』
言った通り。
二人合わせれば凌ぐなんてわけのない話。
裏を返せば――。
「《インパクト・オーバーロード》」
――二人いれば、反撃すらもお手の物。
彼女の静かな呟きを掻き消す打撃音が、人狼長の脇腹から発せられる。
斬撃を取りやめ、大きく傾いた身体は、川の方へと揺らいでいく。
着水を迎えるより少し早く――『
「……やったか?」
「やった……やった! やったよ~!」
跳んで喜ぶSeraさんと、スキル代償の麻痺を片膝ついて受けるアギさん。
振りかえれば、すっかり脱力しきったライリーさんと、胸を抑えて安心しているfull川さんが。
「鴉魂、もういいよー」
一鳴きした後、鴉魂はスキルを中止する。……私のMPも、割と危なかったなぁ。
残り三割のMPゲージを見つつ、戦利品を表示していたウィンドウを閉じた。
「はーーっ……死ぬかと思った……」
「ねえアギくん! あれなに?!」
「なんか、途中でウィンドウ出てきて、使えるようになった……」
「なにそれ!?」
杖を下げて、私は懐中時計を見る。
総戦闘時間は30分。素晴らしい、タイムリミットから大きく余裕を持っている。
「お疲れ様です。花丸満点、想像以上のプレイでしたよ!」
「ぶい!」
「あざっす。なんか色々運が良かったけど*1」
「あんな感じで大丈夫でしたか。良かったです」
「わたしは……まだまだだったような気もします、沢山守られて……」
「ま、取り敢えず移動しますか! 町へ行きましょう!」
冰熊さんの待機状態を解除して、私は道を遡る。
「見張りありがとう。――おかげで、なんの邪魔も入らなかったよ」
森に言い聞かせるように、私は言った。
道中散々言われながらも*2、最寄り町へと着く。
一階が酒場、二階が部屋になっている王道な宿屋の中で、私達は端に集まる。
テイムモンスターは預け、なんだか身軽な気分。
休憩時間、暗に状態を伝え合うのも気まずかろうと、パーティは解散している。
「それでは一時間半後、ここで集まりましょう。ステータスの確認は各々のタイミングで。
戦利品については戻って来てから相談しましょうか」
「おっけーぃ!」
「うっす」
「……はい」
「分かりました。ではお疲れ様です」
四人が階段の方へ消えていくのを、窓際の席に座りながら眺めていた。
宿の部屋でなら安全にログアウトが出来る。逆に、他の場所でログアウトすると、肉体を持って意識を持たないプレイヤーがそこにいてしまうという……火を見るよりも明らかな危険性。
身内に守ってもらうことも選択肢には上がるが、部外者である私がいる中で取れる手段ではなかろう。
いや仮に信用されていようとも、別の信用に足らないプレイヤーの前で軽率にやってしまえば、それは前例になってしまった私の責任とも言える。
総括、宿は大事。
私も、宿は取るだけ取ったけど、別に今ログアウトして済ませたい用事もないからなぁ。
「お前は上で休まねえんだなぁ、凍星奏雨」
「…………宿屋のナンパなら、相手を酔わせてからでしょう」
大柄で禿頭の男、装備は大斧。背後には二人の青年が緊張した眼差しで私を見ている。
「ほざけ。お前のギルドの話だ、ちょっとツラ貸せ」
歯切れの悪さを誤魔化すように、少し音を立てて椅子から立った。
……見られてもいる中で、面倒なランダムイベントを踏んでしまったなぁ。