前作主人公ぶる、主人公志願の少年の話。
――中央中立都市『セントリア』
「それじゃ、今日明日はよろしくお願いしますね」
――プレイヤーネーム「凍星奏雨」Lv96
「はぁ~いっ! がんばります!」
――プレイヤーネーム「Sera」Lv15
「熊かわいっすねー!」
――プレイヤーネーム「アギ」Lv20
「勝手に触らないようにね……」
――プレイヤーネーム「ライリー・ホーン」Lv42
「今回はありがとうございます。身内のナビまで」
――プレイヤーネーム「
言って、黒髪のアバターはペコリと首を下げた。
随分レベル差のあるパーティになったが、これには喜ばしい理由がある。
「いいえー。初めて一週間でしたっけ?」
「そです!」
「オレはフルダイブ自体はあるっすけど!」
事前に聞いていた通りだ。Seraさんとアギさんの利発な感じを見て顔が綻ぶ。
リア友か、別ゲーのフレンドかは知らないが、ともあれ四人はこのゲーム以前の付き合いがあるらしい。
この度full川さんが二人の布教に成功したことで、パーティとしてそれらしい人数が集まった。一先ずパーティの何たるかを知りたがった彼は、私に再度頼ることにしたようだ。
まぁ、このレベル差で報酬と言われても、有用なのは数時間あれば稼げる額のお金くらいだ。ゲーム内通過と言えど、ただの慈善にお金を持ち出されても持て余す。
ナビ側のそんな経緯は知らずとも、無償でコーチングじみたことを引き受けてくれるプレイヤーはあまり多くないのだろう。少なくともfull川さんの周りには。
私なんかを頼るくらいだし、もしかしたらカモったナビ職にでも当たったのかな?
ともかく。
「取り敢えずパーティ組んじゃいますか。今回のパーティリーダーはどうしましょうね」
「奏雨さんじゃないんすか?」
アギさんからの疑問に頷き、full川さんへ身体を向ける。
「ま、目的によりますね。
パーティリーダーの手本を見たいか、実際にやる中で私が茶々入れするか。みたいな」
「茶々入れ……?」
長い杖を持ったライリーさんが不安げに呟いた。
だって、ぶっちゃけゲームなんて楽しめればいいんだから、ここをこうすると上手くなるとか、茶々でしかないだろう。
とはいえそんなことを言ったところで、彼女には知る由もないこと。苦笑いで流す。
「多分、これから四人で集まる時はfull川さんがパーティリーダーになることが多いかな? って思ってますけど」
「……あ、はい。多分」
初心者二人の視線を受けたfull川さんは、しどろもどろに答えた。
「そしたら、いっそ今のうちにfull川さんがリーダーやるとかも有りです。
そうなったら私はちょっと口数減らしますけどね」
「え! 折角組むのにですか~? 全然言ってくれてもいいのに」
「っすよ」
「いざって時に揉めたり、不満が生まれないようにする為には、パーティリーダー以外が実権持つのはちょっとよろしくないですから。
勿論大事なことは言いますよ? 仲間内でやるのに、わざわざ時間割いてもらってるんですから」
謙遜が過ぎたかな、中級者二人がちょっと申し訳なさそうだ。
咳払いを一つして、仕切り直した間を使い、早速それっぽいことを言ってみる。
「パーティリーダーの言うことを優先する、言い換えればパーティメンバーがリーダーを尊重するのは大事です。
ここら辺が曖昧になって、トラブるパーティとか全然多いので!
勿論、リーダーが威張り過ぎてトラブルになるのも全然ありますが。要は相互に尊重する為に、色々ハッキリさせておこう、というやつです。ある種プレイマナーっぽいものと思ってください」
みんな真面目に聞いてくれている。
部外者に偉そうなことを言われた形ではあるのだが、私よりも余程器量があるのだろう。
「パーティリーダーを決める重要性は分かったかな、と。
このまま私が主導するのと、full川さんに主導してもらう形を取るの、どちらがやりやすい……というか意に沿いますかね」
「ぁ、今回は奏雨さんにお願いします。俺全然経験無いんで、ちょっと見本を」
「はーいっ。皆さんもそれで良いですか?」
異議なしと声が上がり、私はウィンドウを弄る。
「じゃ、今からパーティ申請を送りますね。組んだこと自体はあります?」
「最初にちょっと!」
「なら大丈夫そうですね。今来たと思います」
視界の端に名前が並んでいく。
レベルと、HPとMPのゲージ。10Lvと40Lvの差はまだ埋められる気になるが、60Lvと90Lvの差はちょっと威圧感があるなぁ。
「フレ
「あ、オレも今のうちにしとこ」
「えぇ~……あのう、大丈夫ですか?」
「全然? 嫌なら蹴りますし!」
アギさんがおどけたように恐れたりして、段々と探るような緊張も無くなってくる。
……フレ申のマナーとか、
転移門の開放状況を逐一聞くのも面倒だ。
メインストーリーで使ったマップを避ける感じで、セントレアから近い狩り場を目指そう。
腰のベルトに下げた愛杖に手を掛けながら、先導を始める。
一応、自分の装備は予定通りかも振り返っておく。
装備状況をウィンドウで出してみて。
E:ヘルプシグナル・コート
E:喚起の首輪
E:狼主印のバングル
上から深緑の外套、喉仏の位置が空いたチョーカー、回路のような線が刻まれたバングル。どれもナビ用装備で相違ない。
安心した流れで、雑談がてら間を繋ぐ。
「……そうそう、これは余談ですけどね。
もし自分に発生したクエストをみんなと一緒にやりたい時は、そのクエストを発生させた人がリーダーをやることをお勧めしますよ」
「なんでー?」
お、“フレンド”になったからか。いいねえ。
「自分がやりたいものをやるからです。
クエストを進める方針は、そのクエストを持ってきた人がやる方がお互い気を遣わないで済みます。あと――
『こんなクエを見付けてしまったら私は行くしかない! 行こう!』
『ちょっとギミックが面倒なんだよね。私以外に前衛と、あとテイムモンスターが欲しい』
『公式生でも言ってた
――その方が、やってる感が出て楽しいです」