ビーストテイマー/ウェアウルフ♂
プレイヤーネーム「Sera」Lv15
拳士/ウェアタイガー♀
プレイヤーネーム「アギ」Lv20
戦士/ヒューマン♂
プレイヤーネーム「ライリー・ホーン」Lv42
呪詛使い/妖精♀
プレイヤーネーム「
魔法使い/エルフ♂
《イリュジオンライト》で近接武器化した『黒杖ヴァングラシオ』が亜人モンスターの剣を弾く。
「Seraさん!」
「りょー、かい!」
素早く退避した私と入れ替わる形で、ウェアタイガーの拳士が、仰け反った亜人に突っ込む。
《虎意発呼》
Seraさんのグローブが黄色に光り、亜人のウィークポイントへ五連打が決まった。
間もなくパーティクルと化し、一帯の群れを狩り終えた形となる。
「近接連携はもう行けそうですね!」
「オレより全然パリィ上手いんすけど??」
「90レベですからねー*1」
「ったー! レベルまた上がった!」
「ヒール……あんまり出番ないですねぇ」
ヒールの件だけは結構ちゃんと申し訳ない。
如何せん、ヒール無しの戦闘に慣れ過ぎて、立ち回りに入れるのを忘れてしまうのだ。これも良い事だけではないし、これからはヒールに頼れるよう、わざと立ち回りを変えることにしよう。
にしても経験値の伸びが早い。少し背伸びした狩り場を選んでいることと、普段の戦闘用外套『砕氷知らず』ではなく、経験値補正用外套の『ヘルプシグナル・コート』がもたらしてくれてる恩恵がやはり大きい。被ダメージ増加のデメリットも、特段気になりはしないし。
「奏雨さんて魔法剣士テイマー? そんなんあるんすか?」
「いや、この杖でパリィ出来るのは単にそういうスキルがあるからですよ。full川さんは、前一回試しましたよね」
「杖の耐久値だけ減った」
「はははははっ!」
昼過ぎに集まって、大体三時間か。
「夜まで行けるんですよね。休憩はどのタイミングで挟みましょっか」
「晩飯と風呂済ませたいんで、あと一時間したら落ちたいかもっす」
「ボクもそれくらいかな~!」
アギさんとSeraさんが、手慰みに武器を振って応じる。
杖持ち二人は所作も落ち着いていた。
「……ライリーは?」
「わたしは、でも、それくらいかな……」
「了解です。んじゃもうひと狩した後、町まで行きましょう」
Seraさんは王道な拳士ビルド。
本人の気質にも合ってそうだが、ちょっとスキルの吐きどころに注目した方がよさそう。
アギさんは軽量剣士ビルド。
片手盾はまだ慣れてなさそうだけど、この四人なら盾の活かし方を掴んでもらう方が合いそうだ。
ライリーさんは呪詛使い。
呪いは呪いでも、癒しの方面に特化した、清々しい純後衛。視野はありそうだしオペレーションが出来ると良いけど、求めていいものかな?
Full川さんは個人間でナビを請け負った通りだ。純魔エルフで魔法火力を担当している。
今までソロ――たまにライリーさんと組むくらい――なだけあって、ダメージの通し方はやはりピカイチ。
「リポップ待ちかな? 全然居ないね~」
背後でSeraさんが言う。のそのそと移動する私に気を遣ってのことだろうか。
口元が緩むのを抑えながら、私達は森の深部に入っていく。
冰熊は非戦闘モードのまま追従させておく。彼の存在は安全弁に近い。攻略対象外の目標が乱入してきた時のお守り。先の狩りでもぬぼっと待機していた。
この先のエネミーも、多分冰熊の力は必要ないだろう。
「冰熊さん? そこで待機しててね」
杖の先端で木のふもとを指した。のそのそとポイントに移動する様子をfull川さん以外が追っているが、私が手を合わせればすぐに意識を戻してくれた。
また数メートルか木々の間を歩いていけば、
「綺麗! あ、初期リスに似てるかも!」
「休憩っすか?」
そっか、Seraさんはウェアタイガーだから『黄昏の渓谷』がスポーン地点に選ばれてもおかしくないな。
懐かしみながら*2ウィンドウを弄り、私は一つのアイテムを実体化させる。
『青鍔の短剣(古)』を握る。さっきまで相手にしていた亜人モンスターの低確率ドロップだが、うちのシロヘビのドロ増にかかれば呆気ないものよ*3。
「奏雨さん? どうかしましたか……?」
流石に、何の反応も示さずに背を向けたままの私を、ライリーさんは訝しんだ。
今に分かる。そう小さく呟いて――私は『青鍔の短剣(古)』を、川に投げ込んだ。
「さーて、準備はよろしいですか~」
「えっ、はい?」
「か、奏雨さん……?!」
「うわっなんか、ゾクっとするー!?」
ドポヂャン、とアイテムが川に沈む音。それから――森全体に聞かせるような、高らかな遠吠えが聞こえた。
突如河原が揺れ始める。
砂利を踏む音がまばらに聞こえた。私は川から目を離さず、後退る形で前衛二人を視界に収めた。
ポンと、両手で二人の肩を叩く。
「前衛頑張ってくださいね。群れとボスが出ますが、一先ずボスの動きに集中を!」
「なんでー!? イキナリ!?」
「マージっすかっ、はは! やるかぁ! しゃーない!」
そのまま後衛と肩を並べる。多分私なら一人(とテイムモンスター)で大体済ませられるけど、いやぁそれじゃナビゲートにならない。
「戦ったことあります? お二人は」
「い、いえ! どうしてこんなやり方なんですか……」
「このゲーム、突然フラグ踏むことが多いので。full川さんは?」
「えー、ないです……」
「ふんふん。なるほどー」
ライリーさんの方へ身を寄せ、声を潜める。
その間にも川から、大きなシルエットが浮かび上がって来ていた。
「それでは、前衛二人に取り巻きが襲い掛かる時などに、警告をしてあげてください」
「け、警告……」
「私がさっき『右いますよー』ってやってたやつです。最初は時々で構わないので、前衛の死角を後衛の眼で補えると良しって感じです。
後は、さっきと違って、多少の被弾なら私はスルーするので、ヒール分のMPは保っておいてくださると助かります」
「……わかりました」
大きな水飛沫を上げて、四メートル弱はある図体が出現する。
相応に、川へ連なる丸石や砂利へ莫大な水が降りかかるが、それらはただ湿らせるに留まらない。
「うわっ、水系かぁ!?」
別ゲーの筋か、察しが速い。水飛沫は着弾すると、コボルトの形を取り始める。
「取り巻きは斬撃が利きにくい! 盾や拳、魔法で退けましょう!」
「了解っす!」「はぁ~い!」
『黒杖ヴァングラシオ』を引き抜きがてら、同じく杖を構えたfull川さんへ近寄る。
この声は更に密やかに。水の音に掻き消されそうにもなるが、そこはゲーム内聴覚アシストで上手い事拾ってくれるだろう。
「『
ま、ちょっと控えめに……そうだな、群れの撃退を重点において、緩く攻撃していきましょう。二人の作ったチャンスには全力を出して殴る感じで」
「分かりました」
一匹の大きな青毛の人狼と、川から増え続ける水コボルト。
「ヴォルガスト・ヴァッサーロード……!」
「ゲージ3本って、マジのボスじゃん!」
笑い交じりに言うアギさんへ、そうだよと言いそうになる口を諫めた。
今は彼らが主人公。二人の緊張感は、正しく抱いてもらおう。楽しむ為のスパイスを経験マウントで剥がすような真似はしちゃあいけない。
さて代わりに。
「コイツの目玉ドロップは獣人用装備と片手剣! さ、張り切っていきましょう!」
「「おーーっ!!」」