-Ver.Extra2.1記載の『紫狐の尊・亜』で記載した属性を変更しました。
もう完全にミスです。本当にありがとうございました(すみません)
凍星奏雨
デバフ解除済
HP:4/5くらい
MP:2/5くらい(神代魔法直後。高速リジェネ中)
狼魂:シトラス
カウンタースキル保有
現在《憑霊・足》で奏雨のAGIを強化、憑霊状態付与
虹鯨
いるだけでバフばらまくわ主を口に含むと物理無効(ただしMP大吸収)にするやべーやつ
虹色の粒の光で出来た非実体
紫狐の尊・亜
HPゲージ:[1/4][満タン][満タン]
攻撃内容
魔法吸収鬼火、爆破粒子、デバフ矢など
――「『神代魔法:黒の咎』」
落下する奏雨は、左手を地上へ伸ばす。
激しく明滅する魔法陣へ触れるのが先か――待ち受ける、妖狐の猛攻が先か。
――同時。然して奏雨が狐に妨げられることはなかった。
触れた魔法陣が『光景』に置き換わる。テクスチャを貼り替えたように、魔法陣の広げられた円形だけ景色が変わる。
それは緑の宇宙。奥行きに富んだ星々の大海。
宇宙に手を伸ばすような形になった奏雨に、狐が食らいついた。
歯が服に触れる。よどみなく肉を裂こうとしたところで――妖狐は星に焼かれた。
地面の
そして五匹の獣へ、無感情に撃ち込まれた。
撃ち込まれた。
撃ち込まれ続けた。
地面を叩いて着地し、奏雨は顔を上げる。
床そのものの材質に変化はない。堅い床に片膝をついて惨憺たる光景を見た。
馬鹿みたいに持ってかれたMPと、馬鹿みたいに星を撃ち込まれるエネミー達。
幾らタフでも、それは通常エネミーにしては、という尺度にすぎない。一発、二発食らえば、群れを成していた妖狐はそのHPを全損させ、紫色の塵に消えた。
奏雨の足元に輝きが迫り、無作為な青黒き流星が通過していく。
『神代魔法:黒の咎』は一定期間、敵対者のみに命中する無属性攻撃を、発生させ続ける魔法。
「ギィィイイイィィィィイイイイイイッ!!!」
流星の光が身体を貫き続け――『紫狐の尊・亜』の声は今までで一番奏雨の鼓膜を揺らした。
HPゲージ一本全壊。残るゲージ二本。
形態変化。
《マエストロ・チェイン》の全工程を踏まえてようやく1/4まで削れたというのに、発動直後に早々HPを奪っていった。
尤も、事前に払った代償以外にも代償はある。
特殊デバフ――幻聴。
彼は、不愉快そうに目を細め、紫狐の振りかぶった前足を睨んだ。
「怒りを知った其の尊は……ついに自分の爪を血で雪ぐことにした」
地面を叩いた風圧で、奏雨の身体が浮き上がる。
いっそと身を任せて壁に接地した奏雨は、身体ごとこちらに向ける紫狐へ、冷めた視線を交わした。
うわごとのような幻聴を聞き流す中――奏雨の心臓が掴まれる。
「っ!? 強制デバフ! レジストも不可っぽいか……!」
幻聴に並んだデバフ内容は二つ。
アイテム効果低下――動転。
状態異常耐性低下――恐怖。
どちらも即座に影響の出るものではない*1が、無期限強制デバフの内容としては充分厄介極まる。
「移行時耐性も切れて、ダメージがまた入り出してる。これからだな……」
と――瞬きの間に、紫狐の牙が、眼前へ迫った。
「――――ッッ!?」
間一髪。
もしも地上ならば食らっていただろう。
壁を横に蹴り出し、背後を盗み見れば、壁に爪を突き立てて威嚇する紫狐の姿がある。重力を無視しているようにすら思える壁面直立は、その身体の持つ
「速すぎる……要因はなんだ。亜種共通の強化か、タネがあるパターンか!?」
僅かに身を沈めた紫狐に近い未来を見出す。
奏雨が壁を蹴って対角線へ奔った時には、紫狐も奏雨目掛けて爪を立てる。
これまた間一髪。
(やな予感――!)
「ひび……っ『呑め!』」
青黒い光にも惑わず其処に在った虹鯨が、紫狐の追撃から主を守る。
我先にと対角線上へ跳んだ紫狐の爪牙は、奏雨の身体をすり抜けていった
「速すぎる……これヤバいな」
虹鯨が封じるのはあくまで口内の呪文詠唱。既に成立した魔法まで関与することはない。
『神代魔法:黒の咎』は今も尚、紫狐に流星を浴びせ続けている。折角の俊敏性でありながら奏雨への攻撃が断続的なのも、流星のダメージリアクションあってこそだ。
だが、それにしても……と奏雨はHPゲージを注視する。
「もうちょっと、もうちょっと時間がいる……いやもういい、急がば回れだ」
一度攻撃を諦め、奏雨は緑の宇宙広がる地面へ着地した。
見上げた紫狐は既に自身へ噛みついていたのだが、虹鯨に含まれている以上物理攻撃に脅かされる日はこない。
それを良い事に、形式上一応走りながらも、奏雨はインベントリ操作を行ない始める。自分のMPとの勝負だ、最早撒こうという気概はない。
「あった。『賢獣の片眼鏡』」
所謂モノクルというやつである。獣人種が中心の都市、ウィズラムで踏めるクエスト報酬。効果は賢獣の片眼鏡を通してエネミーを見た際、《餓えし賢者》で閲覧出来る情報に、自身が起こしたアクションを加えるというもの。
つまり。
【餓えし賢者開示項目】
『
有効属性:光・水・■・■
抵抗属性:火・闇・■・魔法
「……あぁくそ! やっぱり! お前反転してたのか耐性!」
『お前かい。じゃあもう物理耐性は見えなくても分かるよ』
『思っったより効いたな……』
「神代魔法だぞ、
言って、片眼鏡をインベントリに仕舞う。
相変わらず紫狐は貼り付いたままだ。最低でも虚ろう獣爪の壁面AGIアップを加えなければ追いかけっこは成立しない。
(MPくっそ持ってかれ…………)
「はぁ!?」
減っているのはMPに留まらず、よく見てみれば進行形でHPが減っている。
すぐにデバフ欄を見るも、継続ダメージに関わるものは負っていない。幻聴・動転・恐怖の三種のみ。
被弾した記憶も勿論ない。
「分からん! なんだこれっ!」
何故かドットダメージを受け続ける現状に辛抱溜まらんと、かかとが強く地面を叩いた。
鯨に喰われていようとも、地上に宇宙が広がっていても、その音は変わりなく反響していき――
――《
二度目の被弾時カウンター。
無事成立し、紫狐は僅かに身体を強張らせ――奏雨はこれ幸いと壁に足を付ける。
「被弾が止んだなぁ? ……『離れろ』」
(MPがもう限界。私のMPが底を尽きたら憑霊も解けるし、ちょっと本気で躱すか。
さて。ドットダメージ……。
仮説①
一定時間攻撃を加えなかったら懲罰ダメージが入る。
これは多分ない、『黒の咎』は攻撃者と被弾者を明確に区別出来るシステムだ。
仮説②
実は、紫狐の纏う紫のオーラがダメージを与えてくる。
無い根拠は、強化前はそうじゃなかったってだけ。けど若干やりすぎてる気がする。
仮説③
実は、片眼鏡を出してる最中に火傷みたいな効果の魔法属性を食らった。
鬼火の爆風で身体が浮いたんだ、やっぱりノックバックで分かるはず)
「もし接触ダメなら近接死ぬぞ……!」
半分を切った状態で止まったHPを睨み付けたが、虹鯨の庇護を解いた奏雨によそ見をする暇はない。
「『響け』」
壁と虹縁の足場を蹴って、紫狐の猛攻を凌いでいく。
派生パターンを推測。あくまで無軌道ではないはずだと望みをかけて、細部まで動きを観察・記憶していった。
「だあっ……オーラダメージかよ……!」
顔を反らして爪撃を見送った――それなのにHPが削れる。間近にいたのはほんの一瞬、このダメージが勝負を分かつとしたら、些かドラマチックすぎるだろう。
ただ、ダメージを食らった事実が奏雨にとってよくない。
(《虎狼静息》が効かない……素のリジェネじゃ賄えない……!)
《虎狼静息》……ウェアウルフ・ウェアタイガーの取得可能パッシブスキル。
[一定時間攻撃しなかった場合HP持続回復]
[一定時間ダメージを受けなかった場合HP持続回復]
[一定時間魔法を使用しなかった場合MP持続回復]*2
常に『神代魔法:黒の咎』で攻撃している。これは奏雨も飲み込んでいるものだ。
問題は二項目目が封じられていること。如何に微弱なダメージでも、ダメージには変わりない。
「……ワンパンあるな…………」
宇宙からの制裁は終わりを見せない。
奏雨の身体を通り抜け――頭上を取った紫狐に流星が届く。
ぎょろりと紫狐が見下す。今まで獰猛に敵意を表していた中で、最早ささやなか素振りだった。
その静けさ、そして二本目のHPゲージが半分を切ったことで――奏雨は察する。
「……行動パターンの変化。刻むね」
天井を蹴って部屋の中央に舞い戻る『紫狐の尊・亜』
MP回復に専念するべく、奏雨もまたひと時の時間を置いた。虹色の光り輝く粒が部屋を満たし、床は果て無き宇宙が広がる。
そんな中でも、奏雨の脳内は鬱蒼としたグレーが占めていた。
中央に立つ紫狐は、足元――宇宙が塞いでどんな床の状態か分からなくなってる――から紫のオーラを取り込んでいく。行動パターンと言うより形態変化の方が正しい認識のようだ。
激化する戦闘を予見しながらも、休息を得られることに思考の焦点を置いた。
壁にもたれかかり、緩やかに回復していく自分のリソース……そして消えることのない三つのデバフをぼんやりを見つめた。
「…………っ」
突如、捥ぎ取るような勢いで奏雨は自分の耳を掴む。
「声が…………近い……」
顕在化していく紫狐の脅威度すら眼中にないようだった。
神代魔法の代償――幻聴が奏雨の意識を散らす。
――
――
――
――
――
――
――
――
――
「…………まだ、持つな」
『神代魔法:黒の咎』の解除は専用の呪文を唱えること、或いは一定
それが済むまでは常に働き続ける。流星による裁きも、幻聴も。
とても『神代魔法:黒の咎』無しに勝てる相手ではない。
魔法耐性――奏雨のダメージソースのほぼ全てに耐性を持っている相手だ。『神代魔法:黒の咎』の保有する特殊特効抜きに残り半分の体力を削り切れるとは到底思えなかった。
本来ならばもっと削れている、などと、奏雨は言っても仕方のないことを反芻してしまう。
『神代魔法だぞ、
特殊特効。
無属性である流星攻撃は、誰にでも一定以上の攻撃が望める。そのような魔法だ。
けれど、奏雨の選定の手に及んだ七つの神代魔法は趣が違う。
それらは弱点を突くための魔法。
『神代魔法:黒の咎』が司る属性は水。
この魔法は――水属性が有効な敵対者へ、強力な特効を保有する無属性魔法。
かつては処刑魔法とも、断罪魔法とも呼ばれていたか。
「欠いて倒せる奴じゃない――」
吸い上げた紫の光が、紫狐の身体に刻まれていく。
身体をなぞる、濃い紫の文様。
垂れた長舌から開く無数の眼球。
半透明の、二本目の尾。
「――これを使わず倒せる相手でもない」
奏雨は心底不愉快そうに、けれど、何処か楽しげに呟いた。
「ユニークスキル――糾魂」
神代魔法と《秘術:
秘術は神代魔法関係なく、単にすごい魔法を成立させるための儀式魔法、みたいな解釈で書いています。
約定秘術は神代魔法を使えるようになるための魔術であり、神代魔法は約定秘術の為に用意された魔法ではありません。
数多ある神代魔法が浴槽に溜まっていて、約定秘術というバケツで七つ掬う……みたいな。
あとあんまり魔法と秘術の違いは定義してないです。『術』ってついてるけど。
型月の魔法と魔術みたいな明確な関係とかは考えてませんでした。