デバフ:幻聴・動転・恐怖
狼魂・シトラス
カウンタースキル保有
現在《憑霊・足》で奏雨のAGIを強化、憑霊状態付与
虹鯨
いるだけでバフばらまくわ主を口に含むと物理無効(ただしMP大吸収)にするやべーやつ
虹色の粒の光で出来た非実体
紫狐の尊・亜
HPゲージ:[全損][1/2][満タン]
形態変化中
急に巻き込まれた単独ボス戦。凍星奏雨は情報を集めながら応戦に及ぶ。
詠唱の末発動した『神代魔法:黒の咎』の内容は無属性・弱点特効魔法だった。
思わぬ魔法耐性に阻まれながらも、無事二度目の形態移行を引き出すことに成功。
幻聴が蝕む中、奏雨は切り札を使う覚悟を決めた。
「ユニークスキル――糾魂」
ユニークスキル《
凍星奏雨専用テイマ―スキル。
自身のテイム下にあるモンスター同士を合成することが出来る。
ステータス合算。
非競合スキルの合算。*1
保有属性の取捨選択。*2
保有特性の取捨選択。*3
条件次第で固有スキル取得*4
効果中、スキル使用者はMPが徐々に減少する。
スキル使用者のMP最大値30%を下回った瞬間に解除される。
現在奏雨が場に出しているテイムモンスターは二匹。
空中に漂う虹色が――奏雨の身体へ吸い込まれていく。
「……」
奏雨の正面に表示されたウィンドウへ、彼は迷わず承認を押す。
内容は合成の詳細。あらかじめプリセットに設定していたものを、そのまま運用することに決めた。
……
…………
時間は遡る。
「え……なんでだぁ……!?」
森林マップに二人。
焚火を囲んで、簡易拠点下の休息を享受しているのは、数ヵ月前の凍星奏雨。
そして、まだその瞳に微かな光の残された、椒朔月。
「ん?」
倒木に腰を掛け、なにやらウィンドウを弄っていた奏雨が、どうにも尋常ならざる声を挙げるものだから、腕を組んで周囲を警戒していた椒も、なんとなしに近寄って様子を探る。
椒からの疑問符は聞こえていたが――いまいち自分の中で情報を消化出来ていない奏雨は、焚火の火の粉で聞き逃したフリをした。
「……え、あー…………」
痺れを切らして立ち位置に戻ろうとする椒に、奏雨はわざとらしく声を出した。
「あのー……なんだろうな、デメリットのある話じゃない……」
「ヘタな取引かよ」
「すごいそう。違くて」
苦笑しつつも、踵を返して奏雨を見下ろす椒。
奏雨はその間も、ウィンドウに視線を落としたままだった。
彼が見つめているのはスキルの詳細。魔法やスキルの中には、事前に設定しておいた内容を運用するのも少なくない。例えるなら、任意の地形を作る土属性魔法は、あらかじめ地形を設定しておき、素早くその地形を形成出来る、などだ。
奏雨がそれを見たのは偶然だった。休憩中、手慰みに近いもの。
奏雨は、なんとなしに周囲を見渡した後に言葉を続けた。
「私のスキル――《糾魂》でね……」
かちゃりと、面の動く音がした。
それに構わず、奏雨は自分の靴を撫でる。この頃の奏雨は既に『虚ろう獣爪』を装備しており、重ねて『狼魂・シトラス』の《憑霊・足》を使用している最中だった。
「いや、その前に別のスキルの話を挟むけど」
「おう」
話の行先が分からず、椒は曖昧に呟いた。
「以前どっかで言った気がするけど、なんか《群れの統率》の挙動がズルいんだよね」
「……なんだっけ」
「テイムスキル。テイムモンスターの強化が主のパッシブで、問題は効果のうち、消費MP軽減」
「あー、言ってたわ。憑霊中に、
「そう」
やや満足気に相槌を打つ奏雨。
それを共有した時の仮説を、彼は今一度復唱した。
「多分憑霊スキルの内部処理の問題だと思うけど、何故かテイマー側にバフが乗った」
やや開けて、椒も倒木に腰を下ろした。
「けど、違った。認識が違った。『テイマーにバフが乗った』んじゃない。『テイマーがテイムモンスターと同一視されてる』んだ」
「おぉ…………?」
つまり? と暗に先を促す。
奏雨は頷いて、話を立ち返らせた。
「で、最初の話。《糾魂》はテイムモンスターを合成出来るスキル」
「あー。……え、あ?!」
「――憑霊中、私は《糾魂》の対象になってる」
もし《糾魂》がユニークスキルじゃなければ、様々なプレイヤーがこの事実に気付き、運営は手早く修正しただろう。
けれど、メスを入れる者はもう何処にもいない。
奏雨の視界が虹色に支配される。
なだれ込む虹色に、たまらず目を細めた。
あれだけ部屋中を満たしていた虹色が、奏雨に吸い尽くされた。
この身体での戦闘経験は浅い。
予感があるのだ。
この身体の経験を積み上げれば積み上げるほど、自分の人間性が欠けていくと。
「……虹星奏雨。ってね」
瞳を開ける。
凛々しく気高い碧眼が鳴りを潜め、白濁していた。
代わりに瞳を染め上げているのは、眼球の表面を泳ぐ無数の虹色。
二者の形態変化が終わる。
自らが名乗りを上げたのはたまたまだったが――奏雨は、エネミー名の変化を認めた。
【餓えし賢者開示項目】
『雪辱怨女・
有効属性:――
抵抗属性:火・水・光・闇・■・■■
「メスなんだぁ」
逆立つ毛。紫狐――もとい堕貞狐丘の尾が反り上がる。
実体と非実体の二尾が怒りに打ち震えた後、鬼火を介さずいきなり現れたのは、八本の紫矢。
奏雨にやじりを向け、漂わせたまま――堕貞狐丘は身を沈める。
「八本――矢は、そういうことか」
直立する奏雨へ――先と変わらぬ獰猛な絶速が襲う。
「……」
奏雨を引き裂いた堕貞狐丘は、地面を蹴って空中に躍り出る。
先程の奏雨のようなスタイルだった。
ともすれば打ち下ろすのも同様か。滞空していた八本の呪いの矢が奏雨に放たれ――撃ち抜く。
「…………」
壁を蹴り、斜め上から強襲を図る堕貞狐丘は――見事前足で奏雨を裂き、着地後もすれ違い様に尾で打った。
「それは……食らうの怖いな」
と、紫のオーラで出来たかりそめの尾は、バックステップで躱す。
今までと比べてキレのない戦いだ。
段々凶暴になっていく堕貞狐丘と反比例するように、奏雨の俊敏性は陰っている。
「よし、よし……。ようやく身体が、合ってきた」
右手首を回して、杖の重さを確かめた。
チラりと自分のゲージを見やる。
HPは……接敵時ドットダメージが今の堕貞狐丘にも受け継がれているようで、リジェネの甲斐虚しく、半分をやや上回ったところ。
MPはと言えば、糾魂で着々と減り続けている――ように見せかけ、実状、平時の差し引きはプラマイゼロだった。
首アクセ『魔元素還元器』のMPリジェネに、『虹鯨』のパッシブモンスタースキル《自動MP回復》や諸々のMP自動回復スキルをもってして《糾魂》と相克している。
更には、既に多くのMPを保有していた虹鯨との合成――MP加算が、ダイレクトに奏雨へ及ぶ。
大魔導士のNPCもかくやという超規模MP。
最早糾魂の解除タイミングは消失したと言っていい。
虹色の粒子を帯びた魔法使いが、怨嗟の紫に染まる狐を見上げた。
飛び込み引っ掻きが来る――腰を低くし奏雨は地面を確かめる。
地面を蹴った。往く先は真正面、飛び掛かる堕貞狐丘へ愚直に突っ込む。
振り下ろされた爪が奏雨の顔を捉え、切り――否、通り抜けた。
形態変化後の今までの攻撃と同様、爪が空を切り裂く。
そして対する奏雨の身体は――虹色の粒子となって弾けていた。
「……っ、……」
慣性はそのままに、堕貞狐丘の身体へ突っ込んだ奏雨の身体は虹色の粒となってすれ違う。
完全に通り抜けた頃、奏雨の身体・装備が再構成された。
空中で振り返り、構図が反転する。
即ち、攻守もまた立ち替わる。
「《燐》」
無属性魔法。鈍色の光が杖の先に集まり――光線となって打ち下ろされた。
途中で枝分かれしていく光線は回避を至難のものにさせる、横に跳ねた堕貞狐丘にも効果は見られ、幾つかの
「あんま削れないな……やっぱり」
汎用無属性魔法と神代魔法を比べてしまえばスキルツリーも立つ瀬がない話だが、ともあれ事実。
跳び回っていた堕貞狐丘は行動パターンを変える。モーションの用意された攻撃だ、奏雨は攻撃の手を止め、内容を見定める。
矢のような物理攻撃と、鬼火のような魔法属性と思わしき攻撃を絶え間なく展開してくる。
恐らくは群がるプレイヤーに向けた一斉掃射だろうが、暴れが全てこちらに集約する様には奏雨も辟易を見せた。
「もう一回矢の派生やってくん……。……やってくんないかな」
(意識が幻聴に引っ張られてる……HPゲージ1.5本、ちゃんと飛ばせるかな)
なるべく回避行動は継続しながら、懸命に魔法を撃ちだしていく最中。
奏雨は思いついたように詠唱を始める――実際、思い出したらしく、この場には苦笑が滲んだ。
「
虹鯨の詠唱不可はあくまで口内にいる者への制約だ。
正真正銘、今の奏雨を脅かすものはない。
「奏でる剣雨――《ソードレイン》」
杖を振り下ろすと同時に、天井から無数の剣が覗いた。
物理的実体を持つ剣を生成・射出をする高位無属性魔法《ソードレイン》*5。
『紫狐の尊・亜』の耐性は魔法属性全般。堕貞狐丘になって耐性が増えたようだが、まさか更に耐性を反転することはあるまい。
緑の宇宙に突き立つ無彩色の剣が、モーション直後の堕貞狐丘を抉っていく。
「ビンゴ、こっち連射してくか……」
ダメージリアクションも程々に堕貞狐丘は奏雨へ喰いかかるが、虹体特性の前には無力。
いや、もしも堕貞狐丘の目的が人間を苦しめることなら、存外果たせているのかもしれない。
「……っ」
顔が、身体が霧散し――再結集する感覚。
「多分、どこぞにはあるんだろうな……」
明らかに異常でありながらも、感覚は嫌と言うほど稼働する。
あたまがおかしいくらい広い幅のゲームだ。グリッチ*6めいた真似をしなくとも、恐らくは用意されていたのだろう。
モンスターの身体を使うスキルなどが。
(霊系種族とか)
ただ、モンスター規格で感覚を味わうのと、人として味わうのでは話が異なる。
明確な感覚と共に自己の再構成を重ねていけば、いくらゲームのアバターと言えども、精神は摩耗する。
――
――
――
幻聴にかぶりをふって、二度目の《ソードレイン》を放つ。
怯み値にはまだ遠いか。対する堕貞狐丘も攻勢に出る。
爪撃と共に形作る、八本の矢。
「確定だな。矢の数は5本
近接迎撃か透過を選択していた奏雨は、杖を構えて矢を見据えた。
放っておいても透過するだろう。割り切って攻勢に出たと見るべきか。
しかし隙間時間に《燐》を撃ち込むよりも《ソードレイン》を連発する方がDPSは高い。それが可能なMPであることも含めて、彼は分かっている。
枝分かれする光線が矢を捉える。
「……やっぱり、元は魔法を吸収してた鬼火だもんな」
光線に真っ向から直撃した矢は、むしろ勢いを増して――奏雨の背後に突き刺さった。
わざわざ不便した甲斐はあった、と言いたげに力を抜く。
「矢の検証はこんなものでいいかな。次」
……
…………
早暁――四人構成のパーティがダンジョンを歩いている。
重盾を先頭に、軽装前衛と魔法使いが二人――片方は回復役だろう――が続く形だ。
彼らはやや自由気味な攻略組。
あくまでも身内用ギルドに所属し、そのギルド内で方針を決めている。よって連合による一時待機も聞く所以はなく、こうして解放されたダンジョンの攻略を進めていた。
「なんだ? 広いな……」
角を曲がった先には、四人一列に組んでも余る道幅の廊下が広がっていた。
重盾の呟きに、有翼種の軽装前衛が答える。
「もしかしたらリポップ待ちかな? この先に先行パーティがいるかもね」
「それなら少しペースを早めましょう。追いつけるかもしれません」
両手に杖を持った回復役が進言するも、重盾は首をかしげている。
「追い付いて……どうする」
「いや情報共有。アンタはまだまだいけるかもしれないけど、私らはちょっと休憩もしたいしさ」
もう一人の魔法使いが杖で小突くと、鎧から軽い金属音が鳴る。
異論を唱える様子はなく、重盾もなるほどと納得したようだった。
「よし。それならもうひと踏ん張りと行こう。休める場所を見付けていたらいいが!」
「「おー」」
「…………」
何処か違和感を拾った有翼の前衛が眉を顰める。
なにか具体的な話が出来れば足を止めさせることが出来るのに。曖昧に首をかしげて、彼は進んだ。
……そして、広く長い廊下の真ん中を過ぎる頃だった。
突然周囲に紫の炎が立ち昇る。
「っ!? 後退だ! 下がれお前ら!」
「きゃっ……ダメ、火が!」
紫色の炎が廊下に正円を描く。
炎に踊る陽炎は、壁や天井を塗り替えて――炎という精神的包囲は、物理的な壁となる。
「幻惑か……? レベルが高すぎる……ッ」
紫色の閃光が四人の視界を埋め尽くした直後。
そこは隔絶された、円形のボス部屋。
宇宙に染まった床と躍り狂う妖狐。
そして――虹の粒子を纏う、一人のウェアウルフがいた。
スキルA このスキルは『スキルB』と同時に取得出来ない。
スキルB このスキルは『スキルA』と同時に取得出来ない。
のようなシステム的競合の他、
スキル① 火属性耐性&水属性脆弱
スキル② 水属性耐性&火属性脆弱
などの内容的な競合も含める。
属性が設定されていないモンスターの場合、選択の必要はない。
基本的に設定されていないモンスターの方が僅か。
想定されているものは、相性のいいモンスター同士の合成によるスキル獲得
例『双頭・デュアルハウンド』+『番犬・ブレイブハウンド』
=《
実際にバグか、バグのような仕様かは分かれる。
特殊耐性と糾魂について。
物理攻撃への被弾判定が消失する虹鯨の固有特殊耐性が、奏雨君にそのまま乗っかってます。
あくまで被弾判定が消失なので、物理的な実体がなくなったわけじゃないです。
堕貞狐丘相手にすり抜けまくってるのは、一挙手一投足に攻撃判定が入ってるので消えているという仕組みです。
攻撃判定が一部しかない相手には、正面から通り抜けることは出来ません。
弱点みたいに言ってますが本気でおかしいと思います。
人間性の喪失と、虹鯨を呼び出した時点でくっっそ目立つ以外のデメリットがほぼない。