ビーストテイマー/ウェアウルフ♂
プレイヤーネーム「Sera」Lv19
拳士/ウェアタイガー♀
プレイヤーネーム「アギ」Lv22
戦士/ヒューマン♂
プレイヤーネーム「ライリー・ホーン」Lv42
呪詛使い/妖精♀
プレイヤーネーム「
魔法使い/エルフ♂
『ヴォルガスト・ヴァッサーロード』
有効属性:雷・毒・打撃
抵抗属性:火・水・斬撃
残存HPゲージ:全損・1/2・満タン
制限時間は残り15分。
15分かけて半分まで削った『
四人に賭ける他あるまい。二人のセンスと、二人の経験に。
「今みたいには、流石に無理でしょ……」
アギさんは苦笑いを隠さず言った。ただでさえ軽かった敬語すら剥がれてる辺り、プレッシャーを相当感じているように思える。
横目でSeraさんの様子を見るが、彼女は全然元気そうだ。空元気ではないことを祈る。
「そうですかね? ま、やってみましょう」
言いながら、私は後衛二人の方へ《氷の矢》を放つ。
full川さんのMP状況が少し芳しくない。平行して水コボルトの処理を担っていこう。
さっきのような曲芸は何度もやりたくない、こっからは堅実にいかせてもらう。
「――振り下ろしからは三撃くらい続くことを想定しましょう!
一撃を完璧に凌がなくても良いです!」
「――遠距離攻撃が見えたら、一旦全部視界に入れて直感的に軌道を予測してみましょう!
脳内で、槍の矛先に直線を結んでみるだけで行けます!」
「――Seraさん! 雑魚敵は正面に捉えず流していきましょう、身体の向きはずっとボスへ!
ライリーさんー! アラート任せましたよー!」
「――オッケーです、いい対応! 二撃目まで凌げたら、私もこうやってカバー入れるんで!」
頭疲れる~……。
「いっち、に、っさん!」
「ナイスー!」
片手盾を両手で構えて、三連撃を受け止めるアギさん。反撃を割り切った素晴らしい受けだ。
Seraさんは無理をせず好機を待っている。正しい、先程斬撃中に横やりを入れようとした際、最後の一段だけ対象を変えてきた事が、ちゃんと頭に入っているようだ。
さて、そろそろSeraさんにも気持ちよく入れてもらわないと、楽しい経験とか一回抜きにして、打点が出ない。
「Seraさん、大技撃てます?」
「撃てはするけど撃てなぁ~いっっ!」
言ってる間にも、水で出来た短剣が数十本、Seraさんの後を追って放たれていく。
彼女の敏捷力なら、動いている限り当たりはしない。装備重量が極めて低く、ライリーさんのバフも乗っかった虎人の拳士ならば、三次元的な動きを交えてもっと身軽に戦えるとも思う。
ただ、このゲームに慣れていないと、回避と攻撃を両立させることは難しい。回避に余力を割いている今、人狼長に隙が生まれても、反撃の判断に遅れてしまうだろう。
「なら……。こう……で、うん、うん……。たーぶん……」
「??」
……いける。いや、どうにか通して見せる。
「っと、あれはヤバい。片手盾じゃ受けきれないやつ」
人狼長がやや不自然にバックステップを挟む。正面にアギさんを捉え、奴は川を背にする。
「横軸回避! 盾はいい!」
「っっす!!」
話が速い、人狼長からただ遠ざかるのではなく、人狼長の視線から逃れるようにして彼は走る。
これなら“飛沫”の被弾も少なく済む。
「俺の後ろに控えて」
黒杖ヴァングラシオにMPを注ぐ。紺碧の光は杖の先端に留まらず、河原全体を照らしていった。昼間の蛍火にあてられた河原に霜が降り、いずれ剥く牙を確かめる。
人狼長は刃を下段に構え、深く腰を落とす。切っ先が川に浸される程、深く。
長い緊張感は、然して短い猶予時間。
水飛沫を巻き上げながら放たれた斬撃と、霜に潜む敵意が露わになったのは、ほぼ同時のこと。
「《
水属性の斬撃が丸石を抉り砕きながら、縦に閃いていく。
が、既にそこは氷結の領域。侵されたと憤るかのように、氷の柱が斬撃を諫める。
地面からの氷牙を断ち切って尚猛るのは斬撃――が引き連れた水飛沫。最早それは飛礫というべき数多の破壊力だ。
躱せるかは運に近い、私の背後にはSeraさんが控えてる。
「…………」
しかめた顔を隠しながら、水の飛礫を受けた。
アギさんは躱せてそう。パーティメンバーのうち、私しか体力が減っていない。
爆発の脅威は、爆風による飛来物……そんな言説が頭をよぎってった。
斬撃防いだ後隙に狙ってくるわ、そもそもくそ避けにくいわで、この川斬撃だけクソモーションだと思うんだよなぁ。
「だいじょぶ!?」
「ぜーんぜんいけます。ま、そろそろ攻勢に出ましょ!」
実際、レベルがもたらす基礎ステのおかげで体力は
仕切り直して、反撃開始だ。
「full川さん! 本気で周囲守って!」
「はい……っ」
「ライリーさん! 大きめのヒールいけます!? いけるなら私宛てにキープ!」
「わ、分かりました!」
MP管理にも気を配る。鴉魂のスキルで徐々に削れており、急を要する場面であわやギリギリ足りないなんてことも、万一あり得るかもしれない。
「二人共、一気に削りますよ!」
「了解す!」
「けどどうやってっ?」
水の短剣の連射、別々に分かれて回避する私とSeraさん。
密度を二分し、より躱しやすくなった掃射を後にしながら言葉を続ける。
「ハメる! 条件は整いつつあるから、カウンターを叩き込む!」
「じゃー、合図は奏雨さん待ちでいいんだね!」
「それで良いです! アギさん、ちょっと踏ん張りますよ!」
「もうメチャクチャ踏ん張ってっすけどね!」
そりゃ確かに!
唯一ヘイトを貰っていなかったアギさんが突っ込んでいく。
一瞬振り返るが、後衛は問題なさそうだ。
「よし……」
川の方へ寄っておく。
《ブレイブ・バッシュ》で肉薄したアギさんへ、人狼長は情け無用の猛撃を行なう。
何度も刃を叩き付けられるアギさんは、笑っていた。
(片手盾の使い方を掴んで来てる……もしかして)
もしかして、このまま私が手を打たずとも、彼らなら。
……いや。
もしそうだとしても――否、そうだとしたら尚のことだ。
昇華する瞬間に私が立ち会う必要は何処にもない。友達だけに囲まれて、一切の遠慮をせずに喜べた方が良い胃に決まってる。
「『
今度は私の番。川に杖の先端を浸し、魔力を流し込む。
氷雪魔法の持つ侵略性は、水辺こそ真価を発揮する。
アギさんと入れ替わり、Seraさんがスキルを叩き込む。人狼長の持つ体力ゲージは、そろそろ三分の一を迎えようとしていた。
これで一気に、最後の形態移行を引き出す!
「『……――
杖の先端が青白く光り、水面の微かな範囲を氷結させる。
氷結は――二ヵ所。
人狼長は斬撃スキルを構えた。周囲広範囲を薙ぎ払う斬撃に、水の武器が追随するものだ。
「《
一ヵ所目の氷結は無論、杖の先端に触れている川の水。
二ヵ所目は――人狼長の背後、川の流れに惑わない静かな異物がそこに在った。
堂々たる奇襲。川から杖を引き抜き、氷片を巻き散らす。それと同時に、人狼長の背後で機を伺うようにしていた氷から――勃然、獣爪のような氷柱が発生する。
腹を貫かれた人狼長は動きを止める。
ラストゲージへ突入。追い込まれた精霊付きは、守るべき環境を外敵排除へ転用し尽くす。
「水が……!」
「ラスゲか、上等!」
ライリーさんへ目を合わせ、私は前衛二人と合流しに行く。
水コボルトの身体が崩れる。人狼長が、辺りの水を頭上へ溜め始めていた。川の水は残っている、システム的に枯れないことを良い事に、人狼長の無限リソースを化してやがるのだ。
「アギさん! 私と並んで、
「「了解!」」
ふと、二つの鎧姿が頭を掠めた。
彼らほど、堅くも逞しくも、手数もないけれど。
志くらいは、追うことが出来るかな。
アギさんは自分の背後へ、片手剣を突き立てた。
《不退転の赤柱》
その旨は分からないが、赤く変色した刀剣と、同じく赤い輪郭を帯びたアギさんの防具を見るに、守勢スキルなんだろう。
正念場、アギさんは片手盾を、私は黒杖を構えて人狼長を見やる。
「障壁特性の魔法で威力を殺しに行きます。視界が悪くなりますが、悪しからず!」
「とっくの昔から、どうにでもなれってもんすよ!」
ふっと笑い――詠唱を始める。
「『破城、先駆け、坐す魔性――』」
「GrRUUUUU――――ッ!!!」
人狼長の持つ刃が水を纏い、更にリーチを伸ばす。加えて空いた左手には、水で出来た大剣を装備している。
大剣二刀流――水霊の補助がなければ成立しない、埒外な破壊の剣技。
――其に宿る罪、罰、降りかかる不幸。
――かねて呪われた其の運命。
――白き呪いにて私が雪ぐ。
《
視界の片隅、私を含めた前衛三人のHPゲージに薄緑色をしたゲージが重なる。
追加HPか。気を利かせてくれる!
「『――移ろう定め、しばし射竦める』」
私とアギさんの足元数センチ前に、一本の氷が引かれる。
対して人狼長は、ついに二刀を奔らせ荒ぶる。
「GrRUUUUUrAAAAA――――ッ!!!」
「《刹夜の氷芯》」
溢れるように、引かれた直線から雪崩れ出る氷波。
然して情け容赦なく大剣を叩き付ける人狼長、かの掘削速度には、盾の真似事も通用しない。
ならば真の盾ならばどうか!
「はぁぁッ――!」
「『散り舞えど塵に非ず――』」
アギさんの片手盾に宿る赤い光が、防御範囲を広げている。二人で身を寄せ、赤い光の内側に収まっておく。
受け止め続ける間も、私らはダメージを受け続けていた。
「《氷潤蜂起》」
追加の魔法で、自分が生み出した氷雪オブジェクトの強化を重ねる。
今なお溢れる《刹夜氷芯》の氷の強度を上げ、大剣の一太刀一太刀を削いでいく!
後はスキルで相殺していけば、問題はない――
「っあ!?」
「? …………っ!」
氷の破砕音に混じった、バキンと嫌な破壊音。
視界の先を照らしていた赤い光が途絶える。
――盾が壊れた。
《氷孔繋ぐ竜の爪》はドラゴンじゃなくてモグラです。