ヴァンパイアサバイバーズにハマって衝動的に書きたくなってしまったので初投稿
「田中遊樹さん。ようこそ死後の世界へ。あなたはつい先ほど、不幸にも亡くなりました。短い人生でしたが、あなたの生は終わってしまったのです」
「は?」
視界に真っ白な……部屋?
あるのは小さな事務机と椅子、そしてこの世のモノとは思えない程の聖なるオーラを放つ何かだった。
待て、まずここは何処だ?どうなっている?あのクソ共の牢獄から俺は抜け出せたのか?
それに奴は人間か?そう、俺の前でオーラを放つ女だ。
人間離れした美貌に、淡く柔らかい印象を抱かせる透き通るような青髪。年は若く見える、それこそ16、17ぐらい。しかしそれがどれだけ信頼するに足るのか。ここまで圧倒的なオーラを放っているのだから、只者で無いのは明らかだろう。
まずは状況確認からだな。危険は、無いのだろう。今の間に殺されて無いのなら取り敢えずは良い。そしてこの目の前の人型の女、言うなれば女神か?死んでから女神に会う。そんなのどっかであったような……もしかして地球の記憶か?
さっき言ってたのは、えーっと、タナカユウキ?いや誰やねん。恐らくは地球の人間、日本人だろうな。漢字の名前なんて懐かしいものだ。
やはりこの展開が引っ掛かるな。こういうのが日本の娯楽で何か……ああ、そうだ転生だ。書物にそれ関係の物が多かった気がする。思い出してきた。転生と言えばライトノベルだ。死後に神に会って転生なんて流れが多かった。
………ん?あ、そういうことか?デジャヴの正体はこれか。
「まず、一つ。俺はタナカユウキなどという存在じゃない」
「……え、マジ?」
「ああ、あなた達地球の神の管轄じゃないかもしれないな」
「何ですって?ちょっとどうするのよ!?」
それを聞いた瞬間に取り乱し始める女性。恐らくこいつ自身に何らかの不備があったんだろう。まぁこの人アホだからな。
そもそもそのタナカユウキという人間が来る筈だったろうに。イレギュラーな何かがあったに違いない。
「そもそも俺の名前は……確か、鈴木柩楽。この格好なら、そうだな。アントニオでも良いか」
俺の名前はそう、アントニオだな。元日本人。まあ体なんて何度も変わるから名前なんてどうでも良くなるが。地球に数あるサバイバルゲームの一つ、ヴァンパイアサバイバーズの世界で生きた人間。よし、これだけ整理出来ればもう良い。
「あなたは女神様?」
目の前で慌てふためく存在に問いかける。まあ俺の記憶と推察が正しいのなら、そうもなるだろうな。
「ああ、そうよ。私の名前はアクア、日本において若くして死んだ人間を導く女神よ」
当たりだな。ここはこのすばの世界だろう。ああ、確定だ。この素晴らしい世界に祝福を、懐かしいな本当に。俺の一番好きなライトノベルの筈だ。
「そうでしたか。それで、女神様。俺は死んだのですね?」
「そうなるわね。ここに魂が来てるんだから」
「その、俺はどうなるんでしょう」
「あー、えっとぉ……貴方異世界転生しなさい。これ決定ね」
「マジすか」
「マジよ」
「……じゃあ御言葉に甘えて」
…………ッシャア!!
キタコレ。まさかの転生続行は旨味すぎる。神の力に介入出来る程奴らも強くは無いだろうしな。
それから語られたのは魔王軍のことやこのすばの世界について。まあカズマに対してした説明だな。
「──それで転生する時は何か一つ特典を与えるの。弱いままの人間を送ったってすぐに死んじゃうんじゃ意味ないから」
現れたのは様々な異能や武具のリスト。試しに一つ取ってみれば確かに、相当凄いものだ。ただ、それ以上に忌避感がある。これらは呪いの道具を使えなくするかもしれない。俺にとっては死活問題となる。
「なら、俺が使っていた生前の力の全てを無条件にしてくれますか?」
あっちの経験値と俺の知るものが同列とは限らない。あの武器達を全て無条件で使えるようになったらあちらでも通じる筈だからな。
「良いわよ。はい。それにしてもそんなので良いなんて変わってるわねえ。神器とか伝説の武器なんてそこら辺にあるのに」
「やっぱり慣れてると助かるので。ではそろそろ…」
「それじゃあほどほどに頑張ってねー」
「ええ、またいつか」
一見するだけで相当だと分かる魔方陣の上に立つ。世界を越えるというのがどれだけ荒唐無稽なことか実感させられる。
いずれカズマと共に来るこの駄女神、アクア。しかし俺にとってはあの地獄から救ってくれた存在だ。返す機会があるからこそ多少の感謝を胸にしまって別れを言った。
◆◆◆◆◆
もう、いつの話になるんだろうか?何十年か何百年か、もしかしたら一年も経っていなかったのかもしれない。
地球という星の日本という国で俺は生きていた。他人から羨まれる人生などでは決して無かったが、俺からすれば非常に楽しく充実した日々だった。毎日ゲームが出来て、毎日睡眠が取れて、高校へ行き適度に勉強と部活をする。男しか居ないクラスだったからか友人も出来た。
しかし卒業を間近に控えたあの日、唐突に平和が崩れ去った。俺の記憶の限りでは死んでなどいない。何かあった訳でもない。突如として景色が変わった。まるで瞬間移動でもしたかのように。
気づいたら一面緑の森の中。と言っても全部枯れているが。辺りは真っ暗な夜。そこかしこに見える松明が灯りとなって周囲を照らしていた。
勿論俺はパニックになった。上を見れば雲と強い輝きを放つ月。とてもじゃないが正常ではいられない。だから俺は背後の化け物に気付かなかった。あの時一撃で死ねたらどれだけ楽だったか。
俺の三分の一もあるコウモリに噛みつかれたのだ。抉られる肉と噴水のように吹き出す血。痛みに耐えかねて思わず倒れてしまいそこからは地獄。そこかしこから集まってくるコウモリに群がられる。体全体から感じる焼かれているような熱さと、何も分からない恐怖に呑まれながら俺は初めての死を経験した。
その後十度目になってようやく服の違いに気付いて、鞭でコウモリを殺せることが分かって。三十度目にしてやっとヴァンパイアサバイバーズの世界だということに気がついた。
俺がサバイバーになった日、最悪な夜が幕を開けた日の話だ。
「ここが……」
目の前に広がるのは平原、遠くに山や森、そして町のように見える建物の群れ。綺麗な緑に囲まれたこの土地はあの夜とは違い柔和な雰囲気だ。刺すような緊張感や美しさではない、平穏その物を体現したかのよう。灰色の青春時代に憧れた異世界に俺は来れた訳だ。
「さてまずは……金稼ぎだな」
まず何を始めるしても金だ。ここはこのすばの世界だからな。モンスターを狩れば良いのではないか?冒険者ってのがあった筈だな。確か主人公のカズマもそこに所属していた。
「さてと、本当に使えるようになってるか?」
取り敢えず貰った転生特典の確認をする。この世界で生き残る為に武力は最適だ。生憎と高官になって稼げるような知能なんて持ち合わちゃいないからな。
あっちじゃ頭の中に自然とメニューのようなものが出てくるようになってたが、どうだ?
………おっ、すげえ!本当にやりたい放題じゃねえか!
「これなら流石にこの世界でもやっていけるか?よしよしよし、まずは腕試しでも……」
試し切りの相手に丁度良いのを探す。武器は翼と血染めの鞭を選択した。移動速度の強化と万が一の為の回復手段が欲しいからな。
瞬間いつの間にか手に現れたのは赤黒く染まった不気味な鞭。変態がプレイに使いそうな見た目だが、与える印象がヤバすぎてそんなことは思えないだろう。
翼は一気に最大レベルまで上げるか。
「うおっ!?」
これこれこの感覚だ。いきなり速くなるからちょっとやりづらいが、さっさと町に行きたいしな。
「見つけた、あれがカエル……」
このすばのカエルで有名なあの巨大なやつだ。正式名称は何だったか……。図体だけ見れば俺の倍はあるか?あっちだとそういうのは大体ヤバい奴だからな。そもそも強さの基準が違う可能性もある。あれで死神共の数倍強かったら……血染めも最大レベルまで引き上げるか。
「お願いだからいけてくれよ」
一応気付かれないように奇襲をしかける。腕の感覚は、よしいつも通りだな。ゲームとは違って鞭は手動だ。それ故に操作性や自由度は高いが、ミスをしたら自分の肉を削ぐことになりかねない。
「流石にその程度のミスはもう、しないが!」
赤黒い残映を残しながら鞭がしなり迫る。音を置き去りにして振るわれているのだから流石に効いて欲しいが……
「あ」
緑色の肌に触れた瞬間ズァンという音と共にカエルを両断する。鞭から伝わったグニュッという感覚で真っ二つに割れたカエル。……予想以上にグロいな。
「あー、うん、まあ、なんとかはなりそうだな。うん」
取り敢えず今日の食い扶持は確保出来たからヨシ!
◆◆◆◆◆
取り敢えずと思ってカエルを三体引きずりながら街へ向かう。ほうれん草でダメージ量、もとい力を上げているから結構楽だ。トローナの箱でも良いんだが、あれは呪われてるからな。不吉なものは避けられるものなら使いたくない。
そんな訳で少々変な形になりながら街へ一歩踏み入れてみれば、言葉を出すことが出来なかった。
「そういえばこのすばの世界か……」
道を行き交う人々の顔が全員美男美女なのだ。そうだった。ここはラノベの世界で、俺は現実世界の存在なのだ。決してカズマやミツルギと同じ地球の人間では無いのだ。
そう、さっき水辺で確認したらなんと体が元の日本人の体に戻っていたのだ。なら服も戻してくれと言いたかったが、高望みなので文句は言えない。体も変え放題になってたからアントニオになっても良いんだが……あの顔も正直大差ないものだ。
「俺ゴブリン扱いとかされないよな……?」
俺もイケメンになりてえなんて、こんな正常な欲求を感じたのはいつぶりだろうか。どうでも良いところに感動を覚えながら冒険者ギルドを探し訪ねる。幸い容姿に関してはあまり触れられずに道を教えて貰えたので助かった。それよりもカエルの方が気になったらしい。引きずるのは邪魔になるので持ち上げることにしたらもっと注目された。解せぬ。
「はい、今日はどうなされましたか?」
「あー、実はカエル………街の外にいたモンスターを討伐しまして、換金したいんです」
ヤバい、緊張がヤバい。さっき道を聞いた時もそうだったがマトモな人間と会話するのなんていつぶりだ?商人の野郎とは顔見知りだから大丈夫だったものの、元々はコミュ障の陰キャ。人付き合いは苦手なんだった……
「換金ですね!それでは冒険者カードをお願いします!」
「あ、えっと、その……実は冒険者じゃないんです」
「え?」
「実は、その、田舎から出てきたばかりなんです。右も左も分からなくて取り敢えずモンスターを倒したんですけど……」
「成る程、そういうことでしたか。それでは冒険者登録を行っていただくことになりますが宜しいですか?」
マジか。いや登録はする気が無かったんだがな。やっぱりサービスを使用には登録が付き物か。金無いんだけどな……。情けないが仕方ない。
「あー、今手持ちの金を失くしてしまいまして。モンスターは持ってきたのでそこから先に引くことって出来ませんか?」
「そうですね……少々お待ち下さい」
受付嬢の職員が慌ただしく確認を取りに行く。例の如く美人である。
無一文の人間なんて早々いないだろうし前例無いんだろうなあ。まあ背に腹は変えられない。日が沈む前までには金を手にしたいのだ。睡眠と食事を手に入れる為には少しの恥は我慢するしかない。
よくよく考えればこの自動翻訳は本当に凄いよな。このすばの神様ってのは随分と面倒見が良いらしい。感謝しかない。
「お待たせしました!外にいるジャイアントトードで間違い無いですか?」
「あ、そうです」
「確認が取れましたので、それでは冒険者登録を行いましょう。まずは冒険者の簡単な説明を───」
とまあ色々言ってくれたがつまりは危険承知の職業であり、冒険者は何でも屋みたいなものだと。危険がどうこうとか本当に今更だが。
「それではこのカードに触れて下さい」
免許証や身分証、もしくは学生証ぐらいの冒険者と記されたカード。説明の通りだとこいつに触れればステータスとかが分かって職業も選べると。
正直冒険者として働きたくは無い。暫くは戦いじゃなくて平和を過ごしたいんだ。そうなると高位の職業に就いたりしたら召集の可能性があって不都合。これからカズマが来るとなると特にな。つまり理想はステータスが低くて最弱職の冒険者となること。………楽勝だな。
武器やアイテムの効果を全部切れば良い。そしたら俺の能力はひ弱な日本人に逆戻り。さて、結果は……
「はい、ありがとうございます。スズキカンラクさん、ですね。筋力、生命力、魔力に敏捷性……どれも普通ですね。幸運も低いですし……あ、器用度と知力がそこそこ高いですね」
うーん想像通りで泣けてきたわ。まあそうなるわな。というかカズマより低くても仕方ないよ。俺運動苦手だし勉強も出来る方じゃない。
「これなら盗賊になれなくも無いですが……」
「冒険者で」
「え?」
「冒険者で」
「わ、分かりました!」
これで平和は確保したも同然だな。すまんなカズマ。俺はデストロイヤーが来たらさっさと逃げるよ。これからは土嚢職人か農家を目指すって決めたんだ。
「ま、まぁ、冒険者はレベルを上げていけば転職も行えますし、全てのスキルを覚えることも出来ますから!」
「器用貧乏って言葉が似合いますよね」
「………」
まあ今後冒険者活動をすることなんて少ないだろうし、そのくらいで良いだろう。
「は、はい!それではこれから冒険者として頑張って下さい!」
「ありがとうございました」
ジャイアントトードの報酬を貰ってどうにか今夜の夕飯を稼げた。色々天引きして一万七千エリスだそうだ。うん、これなら明日から生活も出来るだろう。
ただここら辺での働き口を探す為にも暫くはジャイアントトードを狩るしかないな。
「取り敢えず飯だな。そこら辺の冒険者とも仲良くなりたいし……」
「お、お前新人か?」
背後からの声に振り替えれば青みがかった髪の少年。年若く背中に弓を背負った優しそうなイケメンだ。まあ十中八九アーチャーだよな。
取り敢えず敬語でいくか。たぶん俺の方が年上だが冒険者としては先輩だしな。
「あっと、はい。さっき登録したばかりで……」
「へぇ、冒険者じゃないのにジャイアントトードを倒したのか?」
「はは、ちょっと財布を失くしてしまって……田舎から出てきたばっかなんですけどね」
少し硬すぎるか?冒険者なんだからもっと粗野で良いのかもしれねえな。
「職業は?」
「………冒険者です」
「……なんかすまんな」
「いや気にしないで下さい!そ、そうだ、ちょっと食事でもどうです?この街に来たばかりなんで色々教えてくれませんか先輩」
い、勢いで人を誘ってしまった。距離感バグったかもしれん。いやこれはチャンスだ。ここで日雇いの仕事の情報でも聞けたら明日からそっちにいける。ここで友人確保はデカイしな。
「先輩……ああ、分かった。折角だから何か食おう」
どうらや今日は本当に幸運な日らしい。
「───成る程な。なら外壁の方に行ってみな。あそこは朝から集めてるんだ」
「まじすか、ありがとうございます」
話を聞くに、彼の名前はキース。ここの冒険者達の中じゃまだ新米と言えるぐらいの人間らしい。……まあ、名前から察するにあのキースだろうな。このすばにおいてアクセルの街でチンピラと言えばの二人、その片割れだ。もう一方はカズマにちょっかいをかけて大変なことになった筈だが、それは今は良い。
「それじゃあこれから宜しくお願いします先輩」
「おう、たまにはギルドに来いよ」
そんなこんなでキース先輩と別れる。彼の情報で馬小屋に寝泊まり出来ることを教えて貰ったのでそこで寝ることにした。馬糞のついた藁を避けて簡易的な寝床を作る。
「ふふ……めっちゃふわふわ」
睡眠なんて日本以来だ。あの世界じゃ睡眠なんてとてもじゃないが出来なかったからな。飯もそうだ。あんなに落ち着いて、しかも人と話ながらなんてどれだけ幸福だろうか。
「幸せだぁ……」
夜の帳が降りていく。これは俺の最高な異世界生活が幕を開けた話だ。
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