転生チートオリ主が性格で無惨に離婚された話   作:ややや

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素で奥さんの名前を書き忘れていたので追記しました。
アンチヘイトはコレが大部分になります。


生前
転生チートオリ主が性格で無惨に離婚された話


 【悲報】ワイはどうやら未だ童貞だったらしい。

 

 推定神様に転生させていただいた我が身も40手前。前線から退いてチート能力も錆びついていた誕生日。妻から言われた言葉は己の業を思い出させた。

 

 ──貴方の人生は必ず前世と同じ結末を辿る──

 

 神様から啓示された言葉を思う。前世の自分は日本でも底辺そのものだった。孤独で、借金をして、誰も抱けず、そして誰かと口喧嘩をして死ぬ。

 

 やけ酒を呷る。

 

 チート能力で創り出した酒は世界中で最高のワインを指定していたが、その味もわからない。かれこれ半日は飲み続けている身体は負債として感覚を奪っていた。

 

 生まれた今世は19世紀のロシアだった。農業、戦争、軍役。どんなダメ人間でも痛みの前では勤勉になる。チートでちまちまズルを重ねながら軍歴を水増しし、上司から紹介されたのが妻だった。

 

 ブロンドの髪が美しく、好奇心旺盛で勝ち気でやや高飛車。興味のあることにはすぐに食いつく研究者肌な人だった。自分のような軍人に相応しいのか分からない器量が彼女にはあった。

 

 妻は浪費家だった。

 

 結婚を誓い、妻となった彼女を繋ぎ止めるには軍役しか無かった。戦争、戦争、戦争!戦地の合間に妻に会う生活だったが、苦では無かった。運悪く子供のできない彼女の慰めとなれば良いと、ぎこちなく笑ったのを覚えている。

 この時に彼女を調べるべきだった。矮小な自分に器量好しなどつかないと、客観視するべきだった。

 

 戦争が落ちつき、勲章が重みを覚えた頃、軍を退役することに決めた。三十路を超えた身体はガタが来ており、死が身近に来ることが何度もあった。神様の言葉もある。少なくとも前世超えまでゆっくりしたいと彼女に伝えた。

 

 はじめは彼女も納得してくれたようだった。だが、数ヶ月も経てば飽きてくる。食事はすっぽかし、夜間に外出し、名も知らない男女と遊びに行く。勉強と称したオカルトの傾倒に、たまらず何度も話し合いをした。極論、オカルトの是非などどうでもいい。夫の自分を抜かして参加させないのがただ嫌だった。そして言った。子供の代わりとするなら、自分も参加したいと。

 

 妻はきょとんとした後、口を開けて大笑した。

 

「魔術回路の無いあなたが参加してどうするの」

 

 呆然とする自分に妻は嘲りながら解説した。世界には魔術師が存在し、根源(正確には違うらしいが深掘りはされなかった)を目指すために一族の総力を上げていると。その中に加わるのだと彼女は浮かれた表情で言った。彼女にとって、結婚すらその界隈の話題にしか過ぎない。ただ()()()()()()()()()で白羽の矢に立ったのが自分であり、ステータス以外の価値は存在しなかった。次点で老人の副知事が候補に上がることに悍ましさを覚えた。

 

「だからね、あなたの子供はいらないの。」

 

 笑い、嗤い、微笑い。頭に触れたのは記憶操作か。脳内に溢れたのは彼女との夜の営み。ベッドにいるはずの彼女はそこには無く、あるのは薄汚れた店売りの性処理器具が1つのみ。

 

 愛を理由にチートを縮減した自分が酷く矮小になった。

 

 クソわよ!!!

 

 流石に翌日の酒が抜けた頭は現実を理解する。久方ぶりのチートを全開し、体全体を健康にする。クリミア戦争以来のリセットである。相変わらずの寿命タイマーは健康的に翌年の誕生日迄をカウントしており、ため息を吐いた。

 

 確かにクリミア戦争でファンタジーな連中は存在していた。火を放つ奴、腕が吹き飛んでも再生する奴、囚人を率いて砲撃隊を壊滅した時になどは守護者云々とか語る厨二病の時代遅れの弓兵が厨二病台詞で絨毯爆撃をしでかしていた。ぼくちんわるもんじゃないんれす〜とかナルシスト風に言い訳して戦時法ガン無視してたからオーバードーズして狂ったのかと思ってた。確かに、全能を目指す連中なら()()()()()があれだけ理不尽なのも頷ける。彼女にとって自分は猿以下の存在だったというわけだ。

 

 記憶から厨二病に対してチート解析を行い、魔術師が何なのかを理解する。どうもこの世界は世界というサーバーに有名人図鑑が存在しているらしい。何らかの功績で著名人になれば死後も人格を保ち、機会さえあれば英霊という名の分霊が第2の生として蘇ることが可能になる。要は永遠の生命体への昇華だ。そして彼女はそれにノミネートしようと努力していたと。

 

 それ本人と別では?と思うが最終的に神様のように全能になるならば人間時代の婚歴など鼻で笑うレベルなのは理解できる。自分の転生に神様が関わったことを踏まえれば、自分の役割は彼女がパーペキな英霊となるようATMになることと予測できた。時系列も無視できるなら神様自体が彼女かも知れない。それを踏まえるならチートを隠すのは悪手だった。なろう系ムーブが最適解だったとはこの『不死身の特攻兵(パーフェクトソルジャー)』と呼ばれし俺も目が曇った…!エロゲ世界と聞いていたがリアル系過ぎて忘れてたよ!

 

 じゃあもう寝取られてるじゃんこれ!ゲームオーバーじゃないかこれ!!本来ならクリミア戦争でおっ死んで未亡人END発生してるのにバグった挙動じゃんこれ!英霊候補にヤク好きのイケメンの友人()いるしもう膜破られてんじゃん!!キメセクしてんじゃん!あれ伏線か!!あの胡散臭いジジイ味方だったのかよ!追い返しちゃったよ!!フラグ折れてんじゃん!!

 

 クソわよ!!!(2回目)

 

 ちょっと叫び過ぎて近所の奥さんを気絶させてしまった。反省。まあ不妊症治したから許してくれるでしょ。チートだって喜んでる筈。後輩(元部下)の彼も気持ちはわかるって同情してくれたしね。対外的には余命宣告されてる病人だからあいつにはバチクソ切れてくれた。夫婦仲良く子沢山になっておくれ。

 

 彼らから貰った林檎を軽く水洗いして齧り付く。安っぽい、ぼやけた味の果実が極上に感じた。上っ面だけで彼女を理解しなかった自分の評価が分かった気になった。血糞に塗れた猿が飼育員に求愛していたのだ。猿が神製だから良いものの次点の人なら目も当てられない外道なのではないだろうか。

 

 本来。

 本来なら俺はこのまま死に果てた方が良いのだろう。大人しく貯蓄を切り崩し、高級オーク材のベッドの中で安らかに死ぬ。誕生日パーティーでも開けば何人かは来る。そうすれば確実に前世は超えたと笑えるだろう。

 

 だが、それは負け犬の発想である。一匹狼の死を誇りと誤魔化す詐欺師の戯言だ。前世の俺が欲していたのは繋がりだった。()()()()()()()()()()()()()()()()を望んでいた。四六時中俺の事を話題に挙げるような、そんな縁が欲しかった。子供はいない。親は死んだ。残ったのは貞操も差し出せない覚悟の無いクソだけ。つまりはどうでもいい。復讐としてウンコを擦り付けるのに躊躇はなかった。つまりは、そう。

 

 クソわよ!!!(八つ当たり)

 

 パパパパパウワードドン

 

 そして。

 

 翌年の誕生日、今まで顔出しすらしなかった妻は険しい顔で再来した。相変わらず可愛らしい顔だと感心する。裸すら見た事ないがきっと美しいのだろう。妄想のホクロは存在していたのだろうか。

 

 益体もない考えに切れたのか彼女ががなり立てる。神秘溢れる光線、爆発、刀剣が俺を襲うが、チートを全開にした俺には通じない。何を怒り狂っているのだろうか。()()()()()()()()()()()()()()()。目指す先が共通な以上、彼女以外の魔術師は邪魔でしかない。そもそも納税すらまともにしない犯罪上等の非国民(ガチ)を見逃していたのはそのオカルトサークルに彼女が関係していたからだ。詳細を知り得たからには処罰に躊躇は無かった。

 

 髭面の爺さんには感謝しかない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。成り行きで彼女と結婚した手前、俺は神様が彼女の為に俺を提供した可能性を否定できなかった。前世すら俺は神様に救われた。恩を仇で返す不信心者になることは死ぬより怖かったのだ。それ故に彼女が英霊となるために下駄を履かせることに迷いはなかった。それとも、まだ殺し足りないのか?

 

 そう聞けば彼女は信じられないとばかりに蒼白になった。そんな人だと知らなかった、そんな戯言が口にでていた。コイツは戦場の英雄に何を期待しているのだ。支えもない戦場帰りの人殺しが何もせず素面に戻ると思ったのだろうか。何百何千の兵士を殺し、それ以上の恐怖を与える異名持ちが品行方正になると期待するのはおかしいだろうに。

 

 彼女は一体俺の何を信じていたのであろう。戦場神話に語られる俺か、若しくは広報向けの軍が作成した演説を誦じる超人か。家で家事をする俺を見てないのか。評判を落とす彼女の奇行に周りへ頭を下げる行為に恥を理解しないのか。罵倒しようと口を開いた時に思い出したのは、近所の夫婦の赤ん坊だった。ああ、そうかとため息がでた。

 

「何も知らなかったんだな、お互いに」

 

 彼女の顔が気まずげに曇った。漸く知った彼女の素顔に、気が抜けたのを理解した。彼女は俺を馬鹿だと見下し、俺は彼女を弱者として愛でていた。俺は復讐をとうの昔に済ましていたのだ。馬鹿馬鹿しい。しっちゃかめっちゃかになった部屋の家具を全て消し去り、唯一残るチート魔法陣に彼女を放り投げる。彼女はもう抵抗しなかった。

 

「…殺すの…?」

 

 殺さんよと適当に答える。膜くらいは破こうかと考えていたが、萎えてしまった。あと半日もせずに俺は死ぬし、彼女は必ず根源に辿り着く。スーパーなろう神様の啓示は絶対なのだ。俺は孤独に、死を以て彼女と決別をする。

 

「今から君に魔法を懸ける」

 

 与えるのは、前世の漫画の悪役を参考にしたチート。彼女に味方するものは必ず幸せになり、敵対するものは必ず不幸となる、無敵の魔法。

 

 彼女に敵はいない。不幸にも消えるから。

 彼女の味方は無限だ。慕うだけで幸運が得られるのだから。

 彼女は必ず天寿を全うする。それがどれほど苦痛であっても。

 

◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎(奈◼︎◼︎のこ)の名を借りて宣誓する」

 

 貫禄を付けるために即興で唱えた神の名前は不思議とノイズが走った。スーパー守護者が召喚され、俺の頭に狙いを定めた。余命僅かな存在によくコストをかけるものだ。もう遅いのだが。

 

お前に不幸は訪れない

 

 魔法陣が分解し、彼女の身体に溶け込むように侵食する。不快感に声を荒らげる彼女の口から、黒いヘドロの塊が排出される。不運を概念として抽出した排泄物は、宿主を求めるべく最も幸運なスーパー守護者へと飛び込んだ。彼らは気付かない。それは負担も加担も無い、漠然とした当然の現象で。ソレを踏み潰して勝利を重ねた彼らに理解できる内容ではなかった。

 

「因果は決定した。お前は必ず根源に辿り着く。お前は必ず敵を滅ぼす。お前は必ず老衰する。何があっても、過去を改竄しようとも、お前は必ずソレを手に入れ、()()()()()()()()()()()()()。」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。お前に死も、天国もない。暇つぶしに世界でも救っているんだな」

 

 永遠に、美しく、偽物の人間で孤独を埋めながら、ただ1人で。

 

 ふらつく膝を傾け、倒れ込む先に生成したベッドに寝転がる。永続的チートを赤の他人にかけるのは流石に疲れる。もし、戯れでも彼女が()()になっていたら操作すら自在な魔法使いに成れただろう。子供だってチートの欠片程度は受け継いだ筈だ。童貞罪の罪は重いのだ、願望だから全く分からないけども。

 

 決別は着いた。今から死にゆく俺は彼女と2度と会うことはない。根源を得る彼女は自らの()を投げ捨てた。三行半を確定させたこの行為は復讐にもならない。糞と称してかりんとうを食わせただけだ。結局、俺は彼女を憎み切るほど見下さないことができなかった。猿に鞭を叩いて数学を教えるほど、愛情を保つことは出来なかった。

 

外にいたスーパー守護者は()()()別の守護者と相打ちになった。頭は枕に埋まり、痛烈な眠気が身体を襲う。背中越しに彼女が立ち上がる動きを知覚した。不明瞭な叫び声は罵倒だろうか。子供がいれば彼女を止められたであろうか。何もかもが後悔だらけの人生だが、背中の感触は心地よかった。

 俺は、微睡むように目を閉じた。

 

 そこから先の記憶はない。

 ()()()()()()()()()()()()()その先の記憶は無かった。

 

 うん、まあ?確かに木っ端でも英霊になれるよ?でも幸運以外のステがオールDの存在に何が出来るの?カウンターサーヴァントに選出されても死ぬだけだよ?チートもコピペだからかクソみたいな劣化してるし。むしろ持って来れたのに驚きだよ。凄えな本体(自画自賛)。

 

 でもなー。結果は知りたかったなー!

 

 うたた寝した隙にグサーされたかも知れないし、髭の爺さんと一緒にパーリィ!したかも知れない。もしかしたら、万が一、あり得ないけど、非=童⭐︎貞に成ったかも知れない。こうして記憶が無い以上、少なくとも死ぬ瞬間に本体は起きていた筈である。分からないのはもどかしい。

 

 奇跡に賭けて聖杯戦争にはエントリーしているが、大体はロシアの軍隊召喚系統宝具の尖兵役である。本召喚はされたこともない。別に良いけどお前ら酷使しすぎだろ。『初手俺による特攻暗殺』をマニュアル化するなよ。脳死過ぎるだろそれ。もっと爺さんくらいスタイリッシュに使えよ。小説家も肖像権払えよ。知らんぞモラン大佐なんて弟子。でも宝具名と必殺技が格好良いから許す。いるか分からんがモラン君には頑張って貰いたい。

 

 精神的なごろ寝をしていたところ、召喚依頼が届く。今回は珍しく宝具枠を割いた常時召喚系だ。キャスターの爺さんかライダーの将軍辺りだろうか。しかも、召喚内容が世界救済なため、俺が会話できるほど霊基の枠が拡張されていた。有名人は太っ腹なことだ。爺さんなんか家賃的なアレで俺の座に間借りしているというのに。それでも俺より召喚されるのだから知名度って狡い。俺も参加したいなと思いつつ何時ものように派遣した。

 

 後ほど、この選択を後悔するとは思いもよらずに。

 

 意識が覚める。()()()()時の不愉快な感覚はいつも慣れない。目を開き辺りを見渡すと、謎の大楯の上で自分は浮遊していた。周りには多数の英霊達が屯しており、中には俺の知るナイチンゲールも居た。ただ、なんか美人になっていた。寝たきりになる前はあの容姿だったのかも知れない。他にも狐耳やら巨体やら国際色何処ではない豊かさだ。マスター暗殺を決行したトップサーヴァントもいる。ちょっと気まずいが、まあ宝具主が対応するだろう。

 そういえば宝具主が眼前にいない。いつもの爺さんなら『運命構図ゥ〜!』とよく分からん姿勢を強要するんだが。何より戦闘でもないのに真正面にしない理由は───

 

「───よくってよ。この()()()()()()が、あなたを導いてあげる!」

 

 声を聞いた時、俺は迷わずナイチンゲールの元へ飛び出した。無駄だと分かっている。この行動に意味は無い。けど必要だと感じたんだ。自分の身体がどうなっているのかも分かっている。それでも…間違いじゃないんだから──!

 

「──ふふっ」

「ぐェッ」

 

 飛び出した俺の身体は備え付けの首輪に紐付いたゴツい鎖に引き戻された。魔力の節約か、俺の身体は人型のぬいぐるみとなっていた。鎖は彼女の一部に繋がっており、逃走すら出来ない。同類と思われる熊のぬいぐるみが憐れみの目で見つめていたのが印象に残った。

 

 恐る恐る振り返る。全盛期の彼女は()()()()()()()()()()()。若く、美しい。裸見たことないけど。切り揃えられた髪色は何故か紫に煌めいており、肩出しの服にミニスカは正直言って阿婆擦れに見えた。童貞に理解できる筈もないけど。首に巻き付いた透明な鎖は撓むこともなく最短距離を俺の首輪にかけられていた。シチュは良いのに全く興奮しない。こいつじゃなければなぁ。

 

「ふふっ。ふふふふ。いひひ。…ハア…♡」

 

 異様に興奮した彼女は丁寧に俺を抱え上げ、子供のように頬擦りをする。そう説明すれば大事にされているように見えるが、掴む手は砕かんばかりに強化魔術をかけられている。ぬいぐるみでなければ粉砕骨折まっしぐらに間違いない。恐ろしさに固まる俺を他所に、彼女は何事も無かったかのようにドン引きしているマスターに笑いかけた。

 

「この()()()()と一緒にね!──ねぇ…あ、な、た♡」

 

 ニタァと。

 

 濁った眼をした彼女、エレナ・ブラヴァツキーは睨めつけるように俺を撫でつけた。

 

 こ、コイツ…!

 俺に逆恨みしてきやがった!!




神様「違う、そうじゃない」
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