転生チートオリ主が性格で無惨に離婚された話   作:ややや

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ナローの宝具は「マスターなら⚪︎⚪︎出来る」が実現範囲です。切嗣が今回のルール設置を命令した場合、『衛宮切嗣が今後死ぬまでセルフギアスクロールをかけた場合の最大人数』が効果範囲になります。


婚活失敗記録/Zero④

 間桐雁夜は凡俗たる一般人である。

 

 魔術師の非情・矜持を理解できず、凡夫な魔術師の才能を磨かず、大衆普遍な幸せを理想としている。だからこそ、仄かに恋心を抱いていた遠坂葵を幸せに出来ないと理性的に判断し、その娘を救うために感情的に地獄に堕ちた。

 

 彼の能力は聖杯戦争に寄与することはない。彼の判断は一般人の適当極まりない戦術眼である。殺し合い、奪い合いを是とする魔術界には歯が立たない考えであった。

 

 彼が生き残れたのは他の参加者にとってただただ無害であったからに過ぎない。サーヴァントの真名も割れた彼に手間をかける必要は全くない。彼の所有するサーヴァント、ランスロットの死因は餓死である。放れば勝手に弱体化して死ぬサーヴァントに手間をかけるマスターは誰一人存在しなかった。

 

 日も暮れ始めた夕焼け頃。

 公園でコンビニ弁当を食べる雁夜の姿は惨めな浮浪者そのものだった。

 

 血の味がする米を無理矢理飲み込む。今日の雁夜の舌は随分と正常だった。身体中の肉が痛み、頭が狂いそうで、実際は狂った狂人が彼だった。

 

 彼は幸運では無かった。理由さえあれば処刑人が派遣される程度の、弱き一般市民が彼の価値だった。

 

「面倒極まりない。(オレ)に相応しきマスターの立ち会いを前にこの様な雑事など…令呪に免じていなければ誅伐ものだぞ…」

 

 雁夜の前に現れたのは一人のサーヴァントだった。黄金の王、ギルガメッシュは令呪の強制力に従ってやる気なさげに雁夜を見た。評定は、並以下。ナローが拵えた王に相応しいマスターの前に見た存在に、目が汚れたとギルガメッシュは舌打ちした。

 

「貴様のような死すら理解せぬ雑種に何を恐れる必要がある」

 

「あんたが──サーヴァント…!」

 

 実の所、雁夜が英霊を真に理解できる機会などなかった。魔術もなく、知恵もなく、下地すらない努力不足はあらゆる奇跡(ダイス)投げ捨てた(ファンブルした)

 

 雁夜は短絡的に考える。サーヴァントが赴き、木端の自身の名を知り、そして時臣の名前を口にする。つまりは、時臣のサーヴァント(憎き敵対者)

 

「令呪を持って命ずる─全力で!金ピカを殺せェエ!!」

 

 愚者は時として最適を選択する。要素は数あれど、この状態で雁夜が行えるのは死なば諸共の特攻しかない。全力で、一縷の望みを乗せて、隙を祈る。

 

「蛮勇とて正答は出せるか…いや、この場合は時臣が単純だと言うべきか」

「Arrrrrrrrrr!!」

 

 距離にして約二百メートル。バーサーカー、ランスロットの地獄業が始まった。

 

 突貫するランスロットの持つ札はスキル・宝具それぞれに二つあった。

 

 スキルは精神性に関わらず十全に武術を扱える『無窮の武練』と危機的な局面において優先的に幸運を呼び寄せる『精霊の加護』。どちらも戦闘時には隠すことはできない。しかし、理性の消失により戦闘技術が鈍りがちなバーサーカーのデメリットを無くしたそれらは、ギルガメッシュに対抗することを可能とした。

 

 対抗、である。勝機にはならない。理性亡きランスロットの視界には、ギルガメッシュが仄かに宙へ浮いているのを把握していた。地面は物体を加害する上で重要なファクターである。それを抜かす以上、ランスロットは予定より更に一歩踏み込む必要がある。ランスロットの死地はさらに増えた。

 

 ランスロットは一撃の奇襲性に賭けて自らの武器(宝具)無毀なる湖光(アロンダイト)を間合いまで秘することに決めた。無毀なる湖光(アロンダイト)は全てのパラメーターを1ランク上昇させる破格の性能を誇るが、雁夜という貧弱なマスターでは常用するにはとても保たない。ギルガメッシュが()()()宝具に対応するために使用するには、あまりにも魔力が足りなかった。

 

 ギルガメッシュが天空から落とした宝具は約三十ほど。人がずぶ濡れになる降水量十ミリに係る一秒あたりの雨粒と同等量の貴金属が唸りをあげてランスロットに降り注ぐ。

 

 宝具を控えたランスロットは素手である。ギルガメッシュの宝具に彼の着る鎧は容易く突き破られるであろう。否でも応でも、ランスロットはもう一つの宝具を切らざるを得なかった。

 

 降り注ぐ宝具をランスロットはバックステップで回避した。宝具は轟音を立てて公園の土を巻き上げるが、判定役の仮想人格は審判をくださなかった。その人格は冬木住民─要は一般人であり、呪われかねないカリスマを持つギルガメッシュを贔屓する人格は少なくなかった。

 

 突き刺さった宝具の内から直剣を掴んでランスロットは宝具『騎士は徒手にて死せず(ナイト・オブ・オーナー)』を発動した。その効果は()()()()()()()()()()()()であった。剣の柄から黒い魔力が葉脈のように広がり、剣を赤黒く染め上げる。それをギルガメッシュは手垢がついたと不満げに舌打ちした。

 

「いけェー!バァアサァアァカァァア!!」

 

 間合いは百メートルを切った。雁夜も追いつかんとばかりに走り寄った。ギルガメッシュの千里眼に不快な未来がよぎった。()()()()()()()()()()()()()を嫌った彼は、少々本気を出すことに決めた。

 

 間桐雁夜に運命力はなく、他人の運に彼の人生は委ねられていた。

 

 残り五十メートルでランスロットの全方位に波紋が展開される。ご丁寧に雁夜も含んだそれに、ランスロットは防衛のために後退を選択した。発射された宝具は全てが不壊の属性であり、彼が奪った武器は十秒もしないうちに刃こぼれができた。

 

 五十と一の距離は雁夜と時臣の実力差であった。三十にはランスロットの武器は粉々に砕け落ち、()()()()調()()()()()()()を彼は掴んだ。

 

「─痴れ者が」

 

 ギルガメッシュは千里眼にて未来を見通せる。浅ましい盗人に相応しい一品を彼は選択させた。ギルガメッシュは宝具の展開を止め、愚か者をゆっくり見た。ランスロットはその隙を()()()()。彼はそのまま剣を振りかぶり。

 

「Arrrrrrrrrr───!?」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 令呪の効果は消え、雁夜は気の抜けた顔で溢れた血を見つめた。ギルガメッシュはその甘えを認めなかった。背を向けて隙だらけのランスロットに不治の傷を与える宝具を乱射する。二十はある武器の全てがランスロットに突き刺さり、公園の土に不様なオブジェが出来上がった。

 

「a……th……!」

「あ…ぇ、…な、んで……?」

 

 西アイスランドのラックサー谷の人々のサガに登場する魔剣がある。ヴァイキングのゲイルムンドが持っていたとされ、柄はアザラシの牙から作られており、不思議な力でいかなるときも刃が錆びることはないとされる名剣だ。

 

 しかし、それは魔剣である。妻スリーズに奪われた際にゲイルムンドが呪いを掛けたことでそれは呪われし魔剣となった。その効果は『持ち主の一番大切な家族の命を奪う』というモノ。

 

 名を『足咬み』。盗人殺しの魔剣である。

 

「Ahrrrr……Ohrrrrr……」

 

 騎士は徒手にて死せず(ナイト・オブ・オーナー)と無窮の武練を持つランスロットは確かに如何なる精神的制約の影響下でも十全の戦闘力を発揮する事が可能である。しかし、その力は理性亡き振り回しのみで稼働している。使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 獣には当然の末路よ、とギルガメッシュは鼻で笑った。ランスロットは霊核が傷付き、オマケとばかりに呪詛を受けた彼に雁夜はなす術はなかった。至極順当に、雁夜はサーヴァント戦の敗北者となった。

 

「─さて、審判だ、雑種よ」

 

 令呪の効果も切れたギルガメッシュにはこの下郎達に興味はなかった。適当な宝具を本当に適当に雁夜の胴体へ飛ばす。いつものように飛ばす物品の精査などしない。ランダムで決められたソレは雁夜にぶち当たり、彼は数十メートル飛んだのち、動かなくなった。

 

「時臣よ─()()()()()()()

 

 嘲笑はしなかった。鼻息だけをしたギルガメッシュは全てを放置して固有結界に入った。彼にはもう関係ないことで、これから出会うお気に入りの飾り立てを期待するのみだった。

 

 ギルガメッシュは全てを見通す。しかし、それが勝者になるとは限らない。

 

 ◼︎▫︎◼︎▫︎◼︎▫︎◼︎▫︎◼︎▫︎

 

「いやぁ!どうもどうも!お待たせしましたぁ!」

 

「セイバーのマスター様!お二人でのご参加でしたか!」

「ああ。婿()()()()()()()妻が心配でね。ダメだったかい?」

「いえいえ!何も問題は有りませんとも!ええ!」

 

「反対にランサーのマスター様はお一人のご様子。奥様は?」

「機上の中だ。ソラウを巻き添えにするなどするわけないだろうが」

「うーん正論。やっぱり愛し合う人達は尊敬する」

 

「ライダー様達は…え、身長が逆転しとる…これがアレになるんか」

「お前と会ったことないのになんでそんなことわかるんだよ!」

「ははは。…人体の神秘過ぎる…」

 

「うわぁ間に合ったよこの王様。不可能とかないんですか???」

(オレ)にそんなもの不要だ。何、全ては(オレ)の手の中だ」

「それにしてはマスターさん真っ青になってますけど…?いや、問題ないとは思いますけど」

 

 ナローの戯言が終わり、彼は遂にマスターをエスコートした。

 

 無口・無個性・中立の顔は一般的な日本人(ジャパニーズ)。歳の頃は()()()()であろうか。少々の童顔を除けばクラスで上位に位置するであろう端正な顔立ちは歩き方で可愛らしさが目立つ。

 

 アサシンのマスター、メアリー・スーはその澄んだ目を全体に見据えた。

 

「じゃあ、始めますか!怨みと愚かさが混じった聖杯戦争を!!」

 

 ◼︎▫︎◼︎▫︎◼︎▫︎◼︎▫︎◼︎▫︎

 

 ずるり、ずるりと這いずる音が鳴る。

 

「ど…ぎ…おみぃ…」

 

 串刺しとなったランスロットの足元に間桐雁夜が張り付いた。右腕は肘から下がすっぱりと切り裂かれ、血が止まらない。体内の蟲が生命維持をしているとはいえ、彼の命は半時間も無かった。

 

 雁夜はもはや正気を失っていた。拷問は彼の理性を破壊し、魔力負担は何処までも余裕を持たせなかった。彼の中にのみある浅ましい妄執が彼を支えていた。

 

「遠坂を殺したいですか?」

 

 雁夜の頭上に誰かの足が見えた。転がって顔をあげれば、色白の端整な美人が紙を掲げてそこにいた。何故、という思想は雁夜に浮かばなかった。激情を燃料に、彼はただ叫んだ。

 

「ゴヅ…ゴ…─ロズゥ…!!」

「─では、こちらにサインを」

「が…っああア!!」

 

 雁夜は言われるがままに震える手で署名した。彼女はその文を確認した後、雁夜の腕を適当に止血した。撒き散らされた血を触れない、慣れた動きだった。落ち着いた雁夜に対して、彼女はにっこりと口を歪めた。

 

「─ありがとうございます」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()自己強制証明(セルフギアス・スクロール)のサインを確認した舞弥は、子供のように無邪気に笑った。

 

()()()()()()()()()()()()()

「──は?」

 

 間桐雁夜は、彼の望み通り確かに遠坂時臣を打倒していた。

 

 彼以外の全マスターが固有結界に隔離された結果、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。ルールがどれほどエコ贔屓だろうと関係ない。一網打尽のチャンスを彼は抱えており、時臣がギルガメッシュに対処を懇願したのもそれを彼が狙っていると想定したからだった。

 

 サーヴァントが消滅しようとも、雁夜の片手(令呪)が欠損してようとも、今の状況は()()()()()()()()()()()()()()()

 

 遠坂時臣が血涙を流して悔しむチャンスを、間桐雁夜は愚かさ故にふいにした。

 

「─わたしも、我慢してたんです」

 

 死にかけの雁夜の肉体が舞弥の思考の元に動かされる。あぐらをかかされた雁夜の左手が扉を開けるように横にスライドした。L字型に広げた指から魔法少女ルールが展開し、雁夜は訳もわからず呆然とした。

 

「でも。ルールが制定されて、切嗣(あのひと)は輝いて私を自由にしたの。それで。うん。欲が出ちゃった」

 

 子供のように笑った舞弥を眺めて、雁夜は漸く自分が騙されたことを理解した。

 

【info:ランスロット様から新規ルールが提案されました】

 

【info:賛成者が過半数を超えたためルールが可決されます】

 

【info:魔法少女フィールドにルールが追加されました】

 ルール⑧

  各マスターは任意の冬木住民の家族情報を参照できます。

 

 雁夜の口から出るのは()()()()()()()()()()()()()()()()()()だった。貧国の出身の、幼少から少年兵として生活した、生き別れの子供がいる女性の人生だった。

 

「嗚呼──!!」

 

 彼女の姉だろうかと雁夜は血が足りない状態で考えた。滂沱の涙を流す彼女は、彼が本来望んだはずの時臣の妻である遠坂葵の喜びに何故か似ていた。

 

「生きて…!()()()()()()()()…!!」

 

 久宇舞弥に人間性は無かった。戦争只中の貧国で幼年兵として扱われていた彼女にまともな性格など育まれる筈もなく、衛宮切嗣に拾われた時には既に彼女は精神性が生きる屍となっていた。

 

 自我が無い彼女は自身の境遇、過去にすら悲しみも怒りも懐いていない。理想も悲願も無い、その心には焼き尽くされた焦土があるだけで、故に結界の仮想人格は彼女を重病人として治療の対象に入れた。訳もわからず戦争の被害に巻き込まれた彼女を、仮想人格は救いたい存在として贔屓した。

 

 とはいえ、感性が戻ったとしても過去は変わらない。切嗣は弱体化した彼女を仕方ないと笑って解雇した。感情のある彼女を見て切嗣がありがたそうに涙したのは舞弥にとって複雑な思いだった。

 

 自由になった舞弥だが、潤沢な資金があろうとも欲が足りなかった。呆然と丸一日を過ごした後、彼女は魘された過去を振り返り、自身が産んだ息子を思い出した。義理と愛着、そして未練。孤立していた雁夜を付け狙った結果、彼女は今までの不幸が何だったのかと感じるほど容易く目的を達成した。

 

 彼女が泣いた時間は数分にも満たなかった。すっきりした顔の舞弥は浮かれた様子で近場の電話ボックスで空港へ飛行機の予約を入れていた。スキップで駆け寄った彼女は、雁夜へお礼のキスを額に贈った。

 

「ありがとう、間桐雁夜。貴方のお陰で私は希望を手に出来た」

 

 ─だから、楽に死んでください。

 

 死刑宣告に叫ぼうとした雁夜の口が別の声を作り出す。舞弥は自身の運勢を信用していない。()を出さないように()()を潰すことに躊躇いは無かった。次は息子のために残さねばならない。舞弥に切り離された片手にあった令呪が光り輝き、全てが消え去った。

 

()()()()()()()()()()()()──()()()()()()()()()()

「──Uaaaaaaaaa!!」

 

 令呪に従い、ランスロットが串刺しから肉体を引きちぎって雁夜へ駆け寄った。肉体はボロ雑巾となり、鎧は粉々で鬱々とした美丈夫の顔が露わになった。血と肉片が光となって消え去る中、ランスロットはその能力を発揮して雁夜を俵のように持ち上げて飛び上がった。

 

 廃ビルを駆け上がり、20メートル近く飛んだ雁夜にはいままでの人生がうっすらと走馬灯として流れていた。歪み、狂い、しかし善性は確かに見えた彼の人生は、彼が忌み嫌う神秘による爆死(ブロークン・ファンタズム)にてその生涯を終えた。

 

 その光景を見て真摯に祈った舞弥はやがて時計を見た。タクシーまでには少し時間があるのを確認した彼女は、処分しなければならないキャリコM950を含めた自身の武器を確認した。

 

「…まあ、最後に()()()()()()()()()()()()くらいはしておきますか」

 

 舞弥は部下として差し与えられたホムンクルスに一つの命令を下した。人格を得た彼女はある種残酷なほど敵に容赦は無かった。数分後には彼女の頭は息子へのアプローチで夢中になり、誰かのことは思い出すこともなかった。

 

『─続いてのニュースです。本日未明、住宅にタンクローリーが突っ込む事故が発生しました。警察によりますと、この事故で車を運転していた身元不明の男性がその場で死亡。民家にいた住民のうち、遠坂葵さんが病院に搬送され、意識不明の重体ということです。車は、住宅の前のT字路の交差点を直進し突っ込んだとみられ─』




前話でおじさんは参加せんやろなと不参加にした結果優勝にリーチをかけてるのに気付いたので彼には花火になってもらいました。
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